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別居中に不貞行為(不倫)をすると慰謝料請求される? ケース別に解説

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どのようなケースだと、別居中の不倫が不貞行為に該当する可能性が高いのでしょうか (c)Getty Images
配偶者と別居中であっても、別の異性と性交渉をすることは「不貞行為」にあたり、慰謝料請求の対象となるのが原則です。ただし、すでに婚姻関係が破綻している場合には例外的に、配偶者以外の者との性交渉をしても不貞行為にあたらず、慰謝料の支払い義務を負いません。どのようなケースでは配偶者と別居中の不倫が不貞行為や慰謝料の対象となるかなどについて、法的な観点から弁護士が解説します。
目 次
  • 1. 慰謝料請求につながる不倫(不貞行為)とは?
  • 2. 別居中の不倫が不貞行為に該当するケース
  • 2-1. 別居期間が短い場合
  • 2-2. 別居中も交流が継続している場合
  • 2-3. 婚姻関係の破綻前から不倫が続いている場合
  • 3. 別居中の不倫が不貞行為に該当しないケース
  • 3-1. 婚姻関係の破綻とは
  • 3-2. 婚姻関係の破綻が認められる要件
  • 3-3. 婚姻関係の破綻が認められる場合の具体例
  • 4. 別居中の不貞行為に関する慰謝料請求
  • 4-1. 配偶者と不倫相手の双方に対して慰謝料を請求可能
  • 4-2. 別居中の不貞行為に関する慰謝料の金額相場
  • 4-3. 配偶者と不倫相手の間の求償に注意
  • 5. 不貞行為の証拠の具体例
  • 6. 別居中の不貞行為について、配偶者に慰謝料を請求された場合の対処法
  • 6-1. すぐには支払いに応じず、持ち帰って検討する
  • 6-2. 不貞行為にあたるかどうかを確認する
  • 6-3. 請求額が妥当かどうかを確認する
  • 6-4. 弁護士に相談する
  • 7. 別居中の不貞行為に関してよくある質問
  • 8. まとめ|不貞行為にあたるかどうかの判断は弁護士に相談を

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1. 慰謝料請求につながる不倫(不貞行為)とは?

「不貞行為」とは、配偶者以外の者と自由な意思に基づいて性的関係を持つことを言います。

不貞行為は法定離婚事由とされており、離婚訴訟で不貞行為が立証されれば、判決によって強制的に離婚が成立 します(民法770条1項1号)。また、不貞行為は夫婦の貞操義務に違反する「不法行為」にあたり、行為者は配偶者に対して損害賠償(慰謝料)を支払わなければなりません(民法709条)。

なお、単に仲がよく親密であるに過ぎない場合や、キスなど性交渉に及ばないスキンシップにとどまる場合は、原則として不貞行為には該当しません。特段の事情がない限り、不貞行為が認められるには性交渉の事実が必要となります。

一方、「不倫」は既婚者が配偶者以外の異性と親しい関係にあることを指す場合が多く、肉体関係を伴わなくても不倫ととらえる人もいます。ただし、今回の記事中では「配偶者以外の異性との性交渉=不倫」として話を進めます。

2. 別居中の不倫が不貞行為に該当するケース

夫婦は原則として、別居中であっても互いに貞操義務を負います。婚姻関係が実質的に存続している限り、別居中に配偶者以外の異性と性交渉(=不倫)をすると、不貞行為に該当するので注意が必要です。

以下のようなケースにおいては、別居中の不倫が不貞行為に該当する可能性が高いと考えられます。

  • 別居期間が短い場合

  • 別居中も交流が継続している場合

  • 婚姻関係の破綻前から不倫が続いている場合

2-1. 別居期間が短い場合

夫婦が別居を始めてからの期間が短い場合は、婚姻関係が決定的に破綻しているとは認められず、修復の可能性があると判断される 可能性が高いです。

婚姻関係が実質的に存続している以上、別居中であっても、配偶者以外の異性との性交渉は不貞行為にあたります。配偶者との別居期間が短い状態で不倫をすることは、リスクが高い行為なので避けましょう。

2-2. 別居中も交流が継続している場合

配偶者と比較的長い間別居しているとしても、別居期間を通じて配偶者との交流が続いている場合には、婚姻関係の破綻は認められない可能性が高いです。たとえば、子どもの養育について定期的に配偶者と連絡を取り合っているなら、婚姻関係の破綻は認められにくい と言えます。

別居中も配偶者との交流が継続している状態で、配偶者以外の異性と性交渉をすると、不貞行為と判断されるリスクが高いと考えられます。

2-3. 婚姻関係の破綻前から不倫が続いている場合

現時点では配偶者との婚姻関係が破綻しているとしても、破綻より前から別の異性との不倫が続いている場合には、破綻前の期間における不倫が不貞行為に該当します。

不倫相手と一緒になるために、配偶者との別居を延ばして婚姻関係の破綻を狙おうとするのは、非常にリスクが高い 行為です。

3. 別居中の不倫が不貞行為に該当しないケース

配偶者と別居中に別の異性と性交渉をしても、その時点ですでに婚姻関係が破綻していれば特段の事情がない限り不貞行為に該当しません。

3-1. 婚姻関係の破綻とは

「婚姻関係の破綻」とは、夫婦が互いに婚姻継続の意思を持っておらず、かつ夫婦としての共同生活を回復する見込みがない状態を意味します。

婚姻関係が破綻している状態で、夫婦の一方が別の異性と性交渉をしても、特段の事情がない限り配偶者に対する不法行為責任を負わない と解釈されています(最高裁平成8年3月26日判決)。

3-2. 婚姻関係の破綻が認められる要件

婚姻関係の破綻が認められるためには、以下の2つの要件を満たす必要があります。

  • 夫婦が互いに婚姻継続の意思を持っていないこと

  • 夫婦としての共同生活を回復する見込みがないこと

上記の要件を満たしているかどうかは、夫婦関係に関する事情を総合的に考慮して判断されます。特に別居期間の長さや夫婦間における連絡の有無などは、婚姻関係が破綻しているかどうかを判断する際の重要な考慮要素です。

3-3. 婚姻関係の破綻が認められる場合の具体例

たとえば以下のようなケースなどでは、婚姻関係の破綻が認められる可能性が高いと考えられます。

  • 夫婦間に未成熟の子どもがおらず、別居期間が10年以上に及んでいる

  • 別居期間が10年以上に及んでおり、その間ほとんど夫婦間の連絡が行われていない

  • 夫が妻に対してひどい暴力を振るい、妻がDVシェルターに避難したあと、長期間にわたって夫からの連絡を拒絶している

なお、未成熟の子どもとは、成人になっているかどうかに関係なく、経済的に自立できていない子​​を指します。

4. 別居中の不貞行為に関する慰謝料請求

別居中の配偶者による不貞行為が判明した場合には、配偶者や不倫相手に対する慰謝料請求ができます。

4-1. 配偶者と不倫相手の双方に対して慰謝料を請求可能

不貞行為の慰謝料は、配偶者と不倫相手の双方に対して請求できます。不倫された人(以下、被害者)は、受けた精神的損害の程度に対応する慰謝料を、どちらに対しても請求可能です。

たとえば、配偶者の不貞行為によって被害者の精神的損害が200万円の慰謝料に相当する場合は、以下のように請求額を振り分けることができます。請求額をどう振り分けて請求するかは被害者の自由です。

  • 配偶者に200万円全額を請求する

  • 配偶者に50万円、不倫相手に150万円を請求する

  • 配偶者に100万円、不倫相手に100万円を請求する

  • 配偶者に150万円、不倫相手に50万円を請求する

  • 不倫相手に200万円全額を請求する

また、配偶者と不倫相手の2人を相手に、合わせて200万円を支払うよう請求することもできます。不貞行為の損害賠償責任は、配偶者と不倫相手が連帯して負うものとされているためです。

ただし、不貞行為の損害賠償を二重取りすることはできません。

たとえば上記のケースでは、配偶者と不倫相手の両方から200万円ずつ(計400万円)受け取れるわけではありません。あくまでも、客観的な損害額である200万円の限度で慰謝料を請求できるにとどまります。

4-2. 別居中の不貞行為に関する慰謝料の金額相場

不貞行為の慰謝料の額は、離婚するかどうかに応じて、以下の範囲内で定められるケースが多いです。

離婚しない場合:数十万円から200万円程度
離婚する場合 :150万円から300万円程度

実際の慰謝料の金額は、以下の要素などによって左右されます。

  • 離婚するかどうか

  • 不貞行為の回数、期間、頻度

  • 婚姻期間

  • 未成熟の子の有無

  • 反省の有無、程度

また、別居期間が長引いている場合には、その事実が考慮されて慰謝料が減額されることもあります。

4-3. 配偶者と不倫相手の間の求償に注意

配偶者と離婚しない場合において、不倫相手に対して慰謝料を請求する場合は、不倫相手の配偶者に対する求償に注意する必要があります。

配偶者と不倫相手は、不貞行為に関する責任の割合に応じて、慰謝料の支払義務を互いに分担すべきとされています。たとえば、被害者の精神的損害が200万円に相当し、配偶者と不倫相手の責任が同等であれば、配偶者と不倫相手はそれぞれ100万円の慰謝料を負担します。

しかし、被害者は配偶者と不倫相手に対していくらずつ請求するかを選べるため、たとえば不倫相手に対し負担割合を超えて請求することもできます。その場合、不倫相手が負担割合を超えて支払った分については、配偶者に対して支払いを請求できます。これを「求償」と言います。

不倫相手に対して慰謝料全額を請求するケースなどでは、不倫相手が配偶者に対する求償権を主張してくることが多い です。配偶者と離婚しない場合は、配偶者が求償に応じることにより、家計からお金が出ていってしまう点には注意が必要です。

不倫時に求償権が発生する主な流れについての図解
不倫時に求償権が発生する主な流れを図解。慰謝料を請求されたCはその一部を不倫相手のBに求償することができる

5. 不貞行為の証拠の具体例

別居中の配偶者に対する不貞慰謝料請求を成功させるには、不貞行為の証拠を確保することがポイントになります。

不貞行為の証拠には、以下の例が挙げられます。必要に応じて興信所や探偵に依頼するなどして、有力な証拠をできる限り集めましょう。

①以下の場面を記録した録音や映像、または画像
・性交渉が行われている様子、またはそれに近い状況
・自宅やホテルなど、性交渉が行われるケースが多い場所に出入りする様子

②性交渉を連想させるやりとりを内容とする通話やメッセージの記録

③ホテルの領収書やクレジットカード明細

④配偶者、または不倫相手の自白

6. 別居中の不貞行為について、配偶者に慰謝料を請求された場合の対処法

配偶者と別居している期間に、自身が不貞行為をしたことが配偶者に発覚して慰謝料を請求された場合は、以下の要領で対処するのが有効です。

6-1. すぐには支払いに応じず、持ち帰って検討する

配偶者の慰謝料請求が適正妥当であるかどうかは、不貞行為に関する事情をよく検討してみなければわかりません。

罪悪感や早く解決したいという気持ちから言い値で支払ってしまうケースもあるようですが、基本的には直ちに支払いに応じることなく、一度持ち帰って検討しましょう。

6-2. 不貞行為にあたるかどうかを確認する

慰謝料請求に応じるかどうかの検討にあたっては、まず自分の行為が不貞行為にあたるかどうかを確認する必要があります。

配偶者以外の異性と親しくなったとしても、性交渉に至っていなければ、特段の事情がない限り不貞行為にあたりません。また、配偶者との別居期間が長い場合は、婚姻関係の破綻によって不貞行為が成立しない可能性もあります。

不貞行為にあたらないと思われる場合には、慰謝料請求に応じないようにしましょう。

6-3. 請求額が妥当かどうかを確認する

自分の行為が不貞行為にあたるとしても、配偶者が請求してきている慰謝料の金額については、その妥当性を別途検討すべきです。

離婚しない場合は数十万円から200万円程度、離婚する場合は150万円から300万円程度が標準的ですが、実際の適正額は具体的な事情によって変わります。そのため、自身のケースにおいて、どの程度の慰謝料額が妥当なのかを慎重に検討する必要があります。

6-4. 弁護士に相談する

配偶者に対して慰謝料の支払義務を負うかどうかは、弁護士に相談してアドバイスを求めることをお勧めします。離婚案件を豊富に取り扱う弁護士に相談すれば、過去の経験や裁判例などに照らして、配偶者の請求をどのように判断すればよいかを教えてもらえます

また、弁護士には慰謝料請求に関する和解交渉や法的手続きへの対応を依頼することも可能です。慰謝料請求を受けて精神的なストレスを感じている場合は、速やかに弁護士へ相談するとよいでしょう。

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7. 別居中の不貞行為に関してよくある質問

Q. 別居中に不貞行為をすると、子どもの親権を得られなくなりますか?
別居中に不貞行為をしたからといって、必ずしも親権を得られないとは限りません。 不貞行為をした側でも、養育実績や子どもの意思などを考慮して、親権者となることが子どもの利益に適うと判断されれば、親権を得られる場合があります。
Q. 配偶者と5年以上別居していれば、別の異性と性交渉をしても問題ありませんか?
婚姻関係が破綻していれば不貞行為にあたりませんが、5年以上の別居で必ず婚姻関係の破綻が認められるとは限りません。 不貞行為と判断されるリスクもあるので、配偶者以外の異性との性交渉は離婚成立まで控えるのが賢明です。
Q. 別居中に不倫相手と同棲したら、配偶者から慰謝料を請求されますか?
配偶者との婚姻関係が実質的に存続していれば、慰謝料の支払義務を負う可能性が高いでしょう。 これに対して、婚姻関係が破綻していれば、特段の事情がない限り慰謝料の支払義務を負いません。ただし、婚姻関係が破綻しているかどうかについては専門的な判断を要するので、弁護士に相談することをお勧めします。

8. まとめ|不貞行為にあたるかどうかの判断は弁護士に相談を

配偶者と別居中に別の異性と性交渉をした場合、それが不貞行為にあたるかどうかは、婚姻関係が破綻しているかどうかによって決まります。

別居期間が長引けば長引くほど、婚姻関係の破綻が認定される可能性は高まるものの、「○年以上で破綻」と明確に決まっているわけではありません。自分で速断して別の異性と性交渉をすると大きなリスクを負うので、不安がある際は弁護士に相談してアドバイスを受けることをお勧めします。

(記事は2024年12月1日時点の情報に基づいています)

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