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1. 貞操権とは
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2. 貞操権侵害とは
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2-1. 貞操権侵害の要件
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2-2. 貞操権侵害の成否に影響する要素
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3. 貞操権を侵害されたら、慰謝料請求ができる
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3-1. 貞操権侵害の慰謝料を請求できるケース
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3-2. 貞操権侵害の慰謝料を請求できないケース
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3-3. 貞操権侵害の慰謝料相場|数十万円~200万円程度
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4. 貞操権侵害が問題となった事例(裁判例)
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4-1. 離婚する意思があると男性が女性を騙していた事例(最高裁昭和44年9月26日判決)
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4-2. 既婚者である事実を隠した相手と性的関係を結んだ事例(東京地裁平成19年8月29日判決)
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5. 貞操権侵害の慰謝料を請求する方法と手続き
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5-1. 【STEP1】貞操権侵害に関する証拠の確保
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5-2. 【STEP2】相手方との示談交渉|合意したら示談書を締結
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5-3. 【STEP3】民事訴訟|裁判所の判断を求める
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5-4. 【STEP4】強制執行|相手方の財産から強制的に回収
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6. 貞操権を侵害されたら弁護士に相談を
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7. 貞操権侵害の慰謝料請求を弁護士に依頼した場合の費用相場
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8. 貞操権侵害に関してよくある質問
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9. まとめ|貞操権侵害による慰謝料請求は弁護士に相談を
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1. 貞操権とは
「貞操権」とは、性的関係を持つ相手を自分の意思で決める権利 です。貞操権は、男女を問わず認められます 。
貞操権は、結婚している配偶者に対しても主張できますが、本記事では独身女性の貞操権に焦点を当てて解説します。
2. 貞操権侵害とは
「貞操権侵害」とは、性的関係を持つ相手を自分の意思で決める権利である貞操権を侵害され、不本意な性的関係を強いられること を意味します。
2-1. 貞操権侵害の要件
貞操権侵害が認められるためには、以下の要件を満たす必要があります。
①相手と性的関係を持ったこと
貞操権侵害の慰謝料の請求先は、性交渉またはオーラルセックスなどの性交類似行為をした相手です。
②性的関係に関する自由な意思決定が、不法に侵害されたこと
自分の自由な意思に反して、不本意に性的関係を持たされたと言えることが必要です。暴行や脅迫などによって無理やり性的行為をされた場合のほか、相手に騙されていた場合にも貞操権侵害が成立することがあります。
2-2. 貞操権侵害の成否に影響する要素
性的関係に関する自由な意思決定が違法に侵害されたと言えるかどうかは、以下の要素などを総合的に考慮して判断されます。
侵害行為の態様
相手の社会的地位や年齢
被害者の社会的地位や年齢
被害者の婚姻歴の有無
当事者間の関係性
侵害行為の反復継続性
被害者の対応
3. 貞操権を侵害されたら、慰謝料請求ができる
貞操権を侵害され、不本意に相手と性的関係を持たされた場合は、相手に対して慰謝料を請求できます。
3-1. 貞操権侵害の慰謝料を請求できるケース
たとえば、以下のようなケースでは、貞操権侵害による慰謝料を請求できる可能性が高いと言えます。
相手から暴行を受けて、無理やり性的行為をさせられた
相手から脅迫されて、無理やり性的行為をさせられた
相手から「独身だ」と言われて交際し、性的行為をしたが、実は相手は既婚者だった
既婚者である相手から「もうすぐ離婚してあなたと結婚するつもりだ」と伝えられたので性的行為をしたが、実は相手にはまったく離婚するつもりがなかった
暴行や脅迫によって無理やり性的行為をさせられた場合は、貞操権侵害による慰謝料請求はもちろん、不同意わいせつ罪(刑法第176条)や不同意性交等罪(刑法第177条)による刑事告訴も検討しましょう。
また、当時は自分の意思で性的関係を持ったとしても、相手が既婚者であることを隠していた場合や、離婚して自分を結婚するつもりだと騙していた場合などには、性的関係に関する自由な意思決定が侵害されていると言えます。これらの場合にも、貞操権侵害による慰謝料請求を検討しましょう。
3-2. 貞操権侵害の慰謝料を請求できないケース
以下のようなケースでは、貞操権侵害の慰謝料を請求できない可能性が高いと考えられます。
性交渉または性交類似行為がなかった
「独身だ」と言っている相手とデートをしたが、途中で既婚者であることが判明したので、デートを打ち切って帰宅した。キスはしたが、性交渉や性交類似行為には至らなかった
相手の嘘を知っていながら性的関係を持った
相手は独身だと言っていたものの、実際には既婚者であることを知りつつ、性的行為をした
対価を受け取って性的関係を持った
いわゆる「パパ活」としてデートをした相手から、高額の対価と引き換えに性交渉をすることを提案されたので、それを受け入れて性交渉をした
貞操権侵害による慰謝料を請求できるのは、性交渉またはそれに近い性交類似行為をさせられた場合のみ です。デートやキスなどにとどまり、性交渉や性交類似行為には至らなかった場合には、貞操権侵害による慰謝料は請求できません。
既婚者の相手から「独身だ」などと嘘をつかれていても、実際には既婚者であることを知りながら性的行為をした場合には、貞操権侵害による慰謝料は請求できません 。この場合、性的関係を持つことに関する自由な意思が侵害されているとは言えないからです。
また、「パパ活」では、男性が女性に対して対価を支払って性交渉がなされるケースがあるようです。この場合も貞操権侵害による慰謝料請求はできません。対価を受け取っている点を考慮すると、女性側も自由な意思で性交渉に応じていると考えられるからです。
3-3. 貞操権侵害の慰謝料相場|数十万円~200万円程度
貞操権侵害の慰謝料は、数十万円~200万円程度の範囲内で認められるケースが多く見られます。
実際の慰謝料額は、貞操権侵害にあたる行為の内容と態様や、被害者の損害につながる事情などを考慮して決定されます。被害者にとってあまりにも酷と思われる事情がある場合には、相場よりも高額の慰謝料が認められる可能性があります。
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4. 貞操権侵害が問題となった事例(裁判例)
貞操権侵害に基づく慰謝料請求が争われた裁判例を2つ紹介します。
4-1. 離婚する意思があると男性が女性を騙していた事例(最高裁昭和44年9月26日判決)
貞操権侵害に基づく慰謝料請求が認められた初の最高裁判例です。
女性は勤務先で男性と知り合い、交際関係になりました。男性は既婚者で、女性もそのことを知っていました。男性は女性に対して、実際にはそのつもりがないにもかかわらず、妻と離婚して女性と結婚する意思があると騙していました。
女性は男性と性的関係を持ち、男性の子を妊娠しました。男性は女性から妊娠を告げられると、女性と会うことを避けるようになりました。女性が男性の子を出産した際、男性は分娩費用の相当部分を支払いましたが、女性との交際を一切絶ちました。
最高裁は結論として、女性の貞操権が侵害されたことを認めました。男性が既婚者であることを女性が知っていたとしても、その不倫関係を生じさせた主な責任が男性にあり、女性側の動機の不法の程度に比べて男性側の違法性が著しく大きいと評価したためです。
そのうえで最高裁は、男性に対して慰謝料60万円の支払いを命じた原審判決を維持して、男性側の上告を棄却しました。
4-2. 既婚者である事実を隠した相手と性的関係を結んだ事例(東京地裁平成19年8月29日判決)
既婚男性と独身女性が、12年間にわたって交際していた事案です。
男性は既婚者であることを女性に対して一切告げず、将来の結婚を約束していました。女性は男性の言葉を信じ、将来の結婚を期待していました。
女性は3度にわたり男性の子を妊娠し、1回目と2回目は中絶しましたが、3回目に妊娠した子を出産しました。男性は女性が出産したことを知り、女性と別れようとしましたが、認知の訴えを提起されたためにやむなく子どもを認知しました。
東京地裁は、男性が既婚者である事実を隠していた点や、女性がシングルマザーになることを強いられた点に加えて、20代から30代の貴重な時期を12年間も奪われた点を重く評価し、男性に対して500万円の慰謝料の支払いを命じました。
500万円という慰謝料は、貞操権侵害によるものとしては非常に高額ですが、長期間にわたって女性が受けた損害の大きさに配慮した判決と言えます。
5. 貞操権侵害の慰謝料を請求する方法と手続き
貞操権侵害に基づく慰謝料請求は、大まかに以下の流れで行います。
5-1. 【STEP1】貞操権侵害に関する証拠の確保
まずは、貞操権侵害に関する証拠を確保します。
性交渉または性交類似行為については、その現場で撮影した写真や動画、相手とやりとりしたメッセージなどが証拠になり得ます。
相手に騙されていたことについても同様です。相手とやりとりしたメッセージなどから、既婚者であるとは知らなかったこと、結婚すると嘘をつかれていたことなどを立証できる可能性があります。
貞操権侵害を立証するに足る証拠を十分に集める際には、弁護士のアドバイスを受けることをお勧め します。
5-2. 【STEP2】相手方との示談交渉|合意したら示談書を締結
貞操権侵害の証拠が確保できたら、相手との間で慰謝料の支払いに関する話し合い(=示談交渉)を行います。
慰謝料の請求は口頭でも行えますが、相手が応じない場合は内容証明郵便の送付などを検討しましょう。特に、弁護士名で内容証明郵便の請求書を送付すれば、相手が示談交渉に応じる可能性が高まります。
示談交渉をまとめるためには、弁護士のアドバイスをふまえて、客観的に適正な額の慰謝料を提示する ことがポイントです。弁護士に依頼すれば、代理で示談交渉をしてもらうこともできます。
慰謝料の精算について相手と合意できたら、その内容をまとめた示談書を締結しましょう。
慰謝料の不払いが心配な場合は、示談書を公証人が作成する公正証書で締結することもできます。公正証書があれば、万が一慰謝料が不払いとなったとしても、直ちに強制執行を申し立てられます。
5-3. 【STEP3】民事訴訟|裁判所の判断を求める
慰謝料請求の示談交渉がまとまらないときは、裁判所に訴状を提出して民事訴訟を提起しましょう。貞操権侵害を立証できれば、裁判所が相手に対して慰謝料の支払いを命じる判決を言い渡します。
訴訟では、貞操権侵害を立証し得る証拠をできるだけ多く提出したうえで、法的に説得力のある主張を行うことが大切 です。弁護士を代理人とすれば、訴訟手続きにもスムーズかつ適切に対応することができます。
5-4. 【STEP4】強制執行|相手方の財産から強制的に回収
示談交渉や訴訟などで決まった慰謝料を相手が支払わない場合は、裁判所に強制執行を申し立てましょう。確定判決や公正証書などを債務名義として強制執行を申し立てれば、相手の財産を強制的に差し押さえて、慰謝料の支払いに充当できます 。債務名義とは、強制執行に必要となる、公的機関が作成した文書を指します。
強制執行の申立てにあたっては、相手の財産(動産の場合はその場所)を特定しなければなりません。財産を特定する方法がわからないときは、弁護士に相談してください。
6. 貞操権を侵害されたら弁護士に相談を
貞操権侵害によって不本意に性的行為をさせられた場合は、弁護士へ相談することをお勧めします。
弁護士のサポートを受ければ、貞操権侵害に関する証拠の収集のほか、示談交渉や訴訟への対応をスムーズかつ適切に行うことができます 。その結果、相手から適正額の慰謝料を受け取れる可能性が高まるでしょう。
また、相手との示談交渉や訴訟への対応を一任すれば、労力や精神的負担が大幅に軽減されることも、弁護士に依頼することの大きなメリットです。
貞操権を侵害されたのではないかと感じる場合は、早めに弁護士へ相談してみてください。
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7. 貞操権侵害の慰謝料請求を弁護士に依頼した場合の費用相場
貞操権侵害の慰謝料請求を弁護士に依頼するときは、弁護士費用を支払う必要があります。
慰謝料請求の弁護士費用は依頼先によって異なりますが、目安はおおむね以下のとおりです。
【着手金】
請求額の8.8%程度
【報酬金】
獲得額の17.6%程度
※別途実費や日当などがかかることがあります。
(例)200万円の慰謝料を請求し、100万円を獲得した場合
着手金
=200万円×8.8%
=17万6000円程度
報酬金
=100万円×17.6%
=17万6000円程度
合計:35万2000円程度
弁護士費用については、必ず依頼前の段階で弁護士に見積もりを提示してもらいましょう 。
8. 貞操権侵害に関してよくある質問
9. まとめ|貞操権侵害による慰謝料請求は弁護士に相談を
暴行や脅迫を受け、あるいは「独身だ」「離婚して結婚するつもりだ」などの言動によって騙され、自分の意思に反して性的行為をさせられた場合は、貞操権侵害による慰謝料請求を検討 しましょう。
弁護士に相談すれば、貞操権侵害による慰謝料請求の成否に関する見通しや、慰謝料請求を成功させるために必要な対応などについてアドバイスを受けられます。実際の慰謝料請求の手続きも、弁護士に依頼すれば一任できるので安心です。
貞操権侵害による慰謝料請求は、弁護士に相談してください。
(記事は2025年1月1日時点の情報に基づいています)