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熟年離婚したら生活できない?【50代・60代で貯金なし】  対処法を解説

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熟年離婚後の生活は、事前準備をしっかりすることが大切です(c)Getty Images
50代や60代で離婚を考えるとき、多くの人が気になるのは「離婚後に一人で生活していけるかどうか」です。安定した収入がある人は別として、収入のない人や少ない人にとっては、財産分与や年金分割、慰謝料といったお金の問題がとても重要になります。熟年離婚後に後悔せず、自立した生活を送るために知っておきたいポイントを、弁護士が解説します。
目 次
  • 1. 50代・60代で貯金なしの場合、熟年離婚したら生活できない?
  • 2. 熟年離婚後に生活できない人の特徴は?
  • 2-1. 夫婦の財産が少ない
  • 2-2. 頼れる親族がいない
  • 2-3. 仕事のブランク期間が長く、スキルや資格がない
  • 2-4. 国民年金しか受け取れない
  • 2-5. 自炊などの家事ができない
  • 3. 熟年離婚した後の生活費はどれくらいかかる?
  • 4. 熟年離婚したときにもらえるお金
  • 4-1. 財産分与
  • 4-2. 慰謝料
  • 4-3. 年金分割
  • 4-4. 養育費
  • 5. 熟年離婚後に生活できないと悩む人が準備すべきこと
  • 5-1. 離婚後に住む家を考える
  • 5-2. 離婚後の生活費を具体的に考える
  • 5-3. 仕事に目途をつけておく
  • 5-4. 子どもたちに支援を頼む
  • 5-5. 弁護士に相談する
  • 6. 熟年離婚を決意したあとの流れ
  • 7. 熟年離婚後の生活でよくある質問
  • 8. まとめ 離婚後の生活の見通しを十分に立ててから離婚すべき
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1. 50代・60代で貯金なしの場合、熟年離婚したら生活できない?

50代・60代で貯金がないと、離婚したいと思ってもなかなか踏み出せないものです。特に、離婚後の収入や生活の見通しが立たないと、「このまま一人でやっていけるだろうか」と不安になるのは当然です。

年金だけで暮らしていけるのか、住む場所はどうするのか、医療費や生活費は足りるのか、そうした現実的な問題をしっかり考えておく必要があります。何も準備せずに離婚すると、思った以上に生活が苦しくなり、後悔するかもしれません。

離婚を考えるなら、まずは離婚後の生活が本当に成り立つのか、しっかり検討してから決断すべきです。

2. 熟年離婚後に生活できない人の特徴は?

2-1. 夫婦の財産が少ない

離婚の際には、夫婦が婚姻中に築いた財産を「共有財産」として分け合うのが一般的です。熟年離婚では婚姻期間が長く、まとまった財産があるケースも多いため、財産分与によってある程度の金額を受け取れることがあります。

しかし、そもそも夫婦の財産が少ない場合は、分与で得られる金額も限られます。結果として、離婚後すぐに貯蓄を使い果たしてしまい、生活が立ち行かなくなるリスクがあります。

2-2. 頼れる親族がいない

離婚後、生活が安定するまでの間に親や子どもに一時的に頼るという選択肢は、精神的にも経済的にも大きな支えになります。例えば、実家に戻ったり、子どもの扶養に入ったりすることで、生活費や住まいの負担を軽減できる場合もあります。

一方で、頼れる親族がいないと保証人を立てられず、入居のハードルが高くなることもあります。高齢者は特に賃貸契約で不利になりやすいため、注意が必要です。

2-3. 仕事のブランク期間が長く、スキルや資格がない

離婚後に十分な貯金がない場合は、収入を得るために働く必要があります。しかし、長年専業主婦(主夫)だったり、退職してブランクが長かったりすると、再就職のハードルが高くなります。

特に、年齢が高くなると、選べる仕事の幅が狭まり、希望する収入を得るのも難しくなります。若い頃に比べて体力も落ちているため、継続的に働くこと自体が負担に感じる人も少なくありません。

2-4. 国民年金しか受け取れない

自営業の場合は、国民年金しか加入していない可能性があります。

会社員や公務員として厚生年金や共済年金に加入していた人の平均受給額は月14万円ほどですが、自営業などで国民年金のみに加入していた人の受給額は、平均で月5万6千円程度とかなり少なくなります(令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況)。

国民年金だけでは生活費をまかなうのが難しいため、離婚後も仕事を続けて一定の収入を確保する必要があります。

2-5. 自炊などの家事ができない

特に男性に多い傾向ですが、長年家事を配偶者に任せきりだった人は、離婚後に困る場面が増えてきます。食事の準備ができなければ、外食やコンビニ弁当が中心の生活になりがちです。このような生活は栄養が偏りやすく、健康面で不安が出てくるだけでなく、食費もかさんで家計を圧迫します。

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3. 熟年離婚した後の生活費はどれくらいかかる?

令和5年(2023年)家計調査年報(家計収支編)」では、単身世帯(平均58.2歳)の1カ月の消費支出は約16万7620円とされています。一方、「令和5年度(2023年度)厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、離婚時に年金分割を受けたとしても、年金月額は平均9万1000円程度です。

つまり、ただ年金をもらうだけでは、毎月7.5万円程度の赤字が発生することになります。足りない分は支出を抑えたり、収入を増やしたりなど、何かしらの対策を講じる必要があるでしょう。

4. 熟年離婚したときにもらえるお金

離婚後に自立した生活を送るためには、離婚時にもらえるお金が重要になります。ここでは、熟年離婚したときにもらえるお金について説明します。

4-1. 財産分与

財産分与とは、夫婦が婚姻期間中に共同で築いた財産を、離婚時に公平に分ける制度です。名義がどちらであっても、基本的には婚姻中に形成された財産は、夫婦の共有財産とみなされ、原則として2分の1ずつ分け合うことになります。

例えば、専業主婦であっても、夫の収入で築いた財産の半分を受け取る権利があります。また、相手から財産分与を請求された場合、基本的に拒否はできません。

離婚後でも、2年以内であれば財産分与を請求できます。対象になる財産としては、婚姻後に購入した不動産や預貯金、株式、退職金、自動車、家電、家具などがあります。一方で、婚姻前に保有していた資産や、相続・贈与によって得た財産は「特有財産」として分与の対象外となります。

令和5年度の司法統計によれば、婚姻期間が25年以上の熟年離婚では、財産分与の相場は1000万から2000万円のケースがもっとも多いとされています。

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4-2. 慰謝料

配偶者に離婚原因がある場合は、慰謝料を請求できることがあります。例えば、不倫やDVなどが該当します。慰謝料の相場はケースにもよりますが、一般的には200万円から300万円程度が目安とされています。

ただし、慰謝料は必ず発生するわけではなく、原因が明確で証拠がある場合に限られるため、事前に弁護士に相談しておくと安心です。

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4-3. 年金分割

離婚すると、夫婦の年金の一部を分けてもらえる制度があります。これは「年金分割」と呼ばれ、対象となるのは厚生年金や共済年金です(自営業などが加入する国民年金は対象外)

年金分割には、大きく分けて2つの方法があります。1つは「合意分割」といって、夫婦の話し合いや、調停・裁判を通じて年金の分け方を決める方法です。もう1つは「3号分割」と呼ばれるもので、夫の扶養に入っていた妻などが、手続きだけで年金の半分をもらえる制度です。

手続きをすると、将来もらえる年金額が月2〜3万円ほど増えるケースもあります。離婚後に請求できるため、早めに年金事務所で確認しておくと安心です。

4-4. 養育費

子どもが未成年で自分が親権者となった場合、相手に養育費を請求できます。厚労省の調査(2016年)によると、ひとり親世帯の養育費の平均月額は3〜4万円程度です。子どもの生活を支える大切な費用ですので、離婚時にしっかり取り決めをしておきましょう。

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5. 熟年離婚後に生活できないと悩む人が準備すべきこと

離婚後の生活を安定させるには、事前の準備がとても重要です。ここでは、生活再建に向けてやっておきたい5つのことを紹介します。

5-1. 離婚後に住む家を考える

離婚後に自宅を出る場合は、新たな住まいを確保する必要があります。しかし、年齢が高くなると、賃貸物件を借りるのが難しくなるケースがあります。特に70代以降になると、収入や健康面の不安から、貸主に敬遠されがちです。

安定した収入を確保しておくことはもちろん、家賃保証会社の利用や、身元保証を行ってくれるNPO法人を検討するのも一つの方法です。また、公営住宅の申し込みも視野に入れておくとよいでしょう。

5-2. 離婚後の生活費を具体的に考える

離婚後の生活を安定させるには、生活費の見通しを立てておくことが大切です。年金や仕事で得られる収入に加え、家賃や食費、光熱費、医療費、介護費用など、今後かかるお金をできるだけ具体的に見積もっておきましょう

老人ホームに入る場合は、費用にも幅があります。例えば、老健施設なら月6〜15万円、有料老人ホームでは月10〜40万円かかることもあります。衣類や交際費、葬儀費用も含め、90歳までのライフプランを立てておくと安心です。

不安がある場合は、ファイナンシャルプランナー(FP)に相談して、具体的な生活設計をサポートしてもらうのもおすすめです。

5-3. 仕事に目途をつけておく

収入が不十分な場合は、離婚後に働くことも選択肢になります。年齢が高いと就職は難しい面もありますが、最近では高齢者向けの求人も増えています。働くことで収入が得られるだけでなく、社会とのつながりができ、生活にメリハリが生まれるメリットもあります。

全国のハローワークには「生涯現役支援窓口」が設けられており、高齢者の就職活動をサポートしてくれます。無理のない範囲で働ける仕事を探してみるとよいでしょう。

5-4. 子どもたちに支援を頼む

子どもがいる場合は、生活が落ち着くまで一時的に援助を受けるのも一つの方法です。経済的な支援だけでなく、気軽に相談できる相手がいることは精神的にも大きな支えになります。場合によっては、子どもの扶養に入ることで健康保険料や医療費の負担が軽くなるケースもあります。無理のない範囲で支援を受けることを考えてみましょう。

5-5. 弁護士に相談する

離婚の手続きや話し合いに不安がある場合は、早めに弁護士に相談するのがおすすめです。調停や裁判といった複雑な手続きにも対応してもらえるほか、相手とのやり取りも代わりに行ってくれます

「相手と直接話すのがつらい」などの不安があっても、弁護士が間に入ることで冷静に話を進めることができます。実際に、私が過去に担当したケースでも、私が弁護士として就任した途端、それまでかたくなだった相手が交渉に応じるようになった例が何度もありました。

また、離婚条件をきちんと書面に残すことで、後から「言った・言わない」のトラブルを防げます。養育費などのお金の取り決めも、公正証書にしておけば、万が一支払いが滞ったときに強制執行が可能です。

法律や手続きに詳しくなくても、弁護士に頼れば安心して離婚を進めることができます

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6. 熟年離婚を決意したあとの流れ

離婚を決意したら、まずは夫婦で話し合い(協議)を行い、条件を決めます。離婚した夫婦の約9割が協議による離婚です。話し合いが難しい場合は、弁護士をつけることで離婚への本気度が伝わり、スムーズに進むこともあります。実際、私が弁護士として就任したことで、相手が急に協議に応じたケースもありました。

協議で決まらない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てます。調停委員が間に入って話し合いをサポートしますが、合意がなければ成立しません。

調停でも合意できなければ、裁判での決着となります。裁判では、法定離婚事由があるかを裁判官が判断し、離婚の可否が決まります。ただし、裁判には時間がかかり、私が担当した事例では1年ほどかかったこともあります。

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7. 熟年離婚後の生活でよくある質問

Q. 熟年離婚して生活ができない場合、生活保護は受けられる?

生活保護の支給条件を満たしていれば、受け取ることができます。収入や資産の状況によって判断されるため、まずはお住まいの自治体に相談してみましょう。

Q. 熟年離婚で生活していくためには、いくら貯金があればいい?

必要な貯金額は、年金や収入の有無によって大きく変わります。一つの目安としては、「毎年の赤字見込み額×90歳までの年数分」を用意しておくと安心です。生活費のシミュレーションをしてみると、より現実的に考えられます。

Q. 熟年離婚後、手元の貯金を増やすために投資をしたほうがいい?

投資は、あくまで余裕資金がある場合に行うのが基本です。株価が下がるリスクもあり、年齢的に回復までの時間が限られている点には注意が必要です。これまで投資経験がない方は、無理に始めず、元本保証のある国債など安全性の高い商品を検討するのが安心です。

8. まとめ 離婚後の生活の見通しを十分に立ててから離婚すべき

熟年離婚を考える際は、離婚後の生活の見通しをしっかり立ててから決断することが大切です。特に、専業主婦やパート勤務だった方は、収入が限られがちなため、離婚後の生活費に苦労するケースが多いです。

そのため、財産分与や年金分割では、少しでも多く受け取れるように条件をしっかり確認しておきましょう。また、収入を確保する手段として、働く選択肢を持っておくことも重要です。

話し合いがうまく進まなかったり、相手が離婚に応じてくれないときは、無理に一人で抱え込まず、弁護士に相談することで道が開けることもあります。離婚後に後悔しないためにも、できる準備を進めながら、必要に応じて支援を受けることが大切です。

(記事は2025年9月1日時点の情報に基づいています)

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