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50代熟年離婚の慰謝料相場はいくら? 請求できる条件や増額要因を解説

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50代で熟年離婚をした場合、条件次第では慰謝料を請求できます (c)Getty Images
長い結婚期間を経て50代で熟年離婚をした場合、その離婚原因によっては相手に慰謝料を請求できます。慰謝料を請求できる条件や金額の相場、増額される条件などについて、弁護士が解説します。
目 次
  • 1. 50代熟年離婚の慰謝料相場|50万~300万円程度
  • 2. 熟年離婚で慰謝料を請求できる条件は?
  • 3. 熟年離婚で慰謝料請求が難しいのはどんなとき?
  • 4. 熟年離婚の慰謝料が増額される要因は?
  • 4-1. 結婚期間の長さ
  • 4-2. 未成熟の子の有無
  • 4-3. 夫婦関係の円満度
  • 4-4. 不貞行為の内容
  • 4-5. DVの内容
  • 4-6. 悪意の遺棄の内容
  • 4-7. 性交拒否の内容
  • 5. 熟年離婚で高額の慰謝料請求が認められた事案
  • 5-1. 【事例1】不貞行為で300万円の慰謝料が認められたケース
  • 5-2. 【事例2】繰り返しの不貞行為で800万円の慰謝料が認められたケース
  • 6. 熟年離婚で慰謝料を請求する手続きの流れ
  • 7. 熟年離婚で慰謝料以外に請求できるお金
  • 7-1. 財産分与
  • 7-2. 年金分割
  • 7-3. 婚姻費用
  • 7-4. 養育費
  • 8. 50代の離婚慰謝料に関してよくある質問
  • 9. まとめ 50代での熟年離婚は離婚慰謝料が増額される可能性がある

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1. 50代熟年離婚の慰謝料相場|50万~300万円程度

熟年離婚は、一般的には「長い結婚期間を経ての離婚」を指します。

夫婦が離婚する場合、一定の条件を満たすと離婚慰謝料を請求できます。慰謝料とは精神的苦痛に対する損害賠償のことです。

離婚慰謝料の額は個別の事案に応じて算定されますが、相場としては50万円から300万円程度と言われています。50代の熟年離婚の場合、結婚期間が長いケースが多く、それが理由となって慰謝料が増額される可能性があります。

2. 熟年離婚で慰謝料を請求できる条件は?

離婚慰謝料が認められるためには「配偶者の有責行為によって離婚を余儀なくされ、精神的苦痛を被った」と認定される必要があります。有責行為とは、婚姻関係を破綻させるおそれがあり、かつ配偶者にその責任がある行為を指します。

たとえば、不貞行為、DV(ドメスティック・バイオレンス、家庭内暴力)、悪意の遺棄、性交拒否(セックスレス)などがこれに該当します。

不貞行為とは、自由な意思に基づいて配偶者以外の人間と性的関係を結ぶ行為です。悪意の遺棄とは、結婚生活を破綻させる意思を持ち、正当な理由なく一方的に別居する、最低限の生活費を渡さないなど夫婦の義務を履行しない行動を指します。

なお、モラル・ハラスメント、いわゆるモラハラも有責行為に該当する場合があります。ただし、モラハラには法律上の明確な定義がなく、さまざまなものがあり得るため、すべてが有責行為に該当するわけではありません。一般的には、内容や程度が重大なものについては有責行為に該当すると考えられています。

3. 熟年離婚で慰謝料請求が難しいのはどんなとき?

離婚慰謝料が認められるためには、配偶者による有責行為が存在しなければなりません。したがって、配偶者による有責行為以外の理由で婚姻関係が破綻した場合は、離婚慰謝料を請求できません。

たとえば、性格や価値観の不一致、配偶者の病気、義両親との不仲などは、通常は配偶者に責任がある有責行為とは言えないため、これらを理由とする離婚慰謝料の請求は原則できません

配偶者が有責行為の存在を認めない場合は、有責行為の存在を立証しなければなりません。そのためには証拠が必要となり、客観的な証拠が不十分な場合は離婚慰謝料の請求が難しくなります。

4. 熟年離婚の慰謝料が増額される要因は?

慰謝料の額は裁判所がさまざまな事情を考慮し、その裁量によって算定するとされています。離婚慰謝料が増額される要因には次のようなものがあります。

  • 結婚期間の長さ

  • 未成熟の子の有無

  • 夫婦関係の円満度

  • 不貞行為の内容

  • DVの内容

  • 悪意の遺棄の内容

  • 性交拒否の内容

4-1. 結婚期間の長さ

結婚期間が長くなれば離婚慰謝料は増額され得ると考えられています。夫婦関係は結婚期間が長いほど強固になり、これが破壊されたときの精神的苦痛も大きくなると言えるからです。

50代の熟年離婚の場合、結婚期間が20年~30年と長くなるケースが多いため、慰謝料が増額される可能性があります。

4-2. 未成熟の子の有無

夫婦の間に未成熟の子がいる状態で離婚を余儀なくされた場合には、精神的苦痛がより大きくなるため、離婚慰謝料が増額される可能性があります。未成熟の子とは、経済的に独立して生活できる能力のない子どもを指します。

50代の熟年離婚の場合、子どもがいても経済的に独立している場合が少なくないと思われるため、未成熟の子がいることを理由に慰謝料が増額されるケースはそれほど多くないでしょう。

4-3. 夫婦関係の円満度

夫婦関係の円満度も慰謝料の額に影響を与えると考えられています。円満な夫婦関係を破綻させた場合は、慰謝料が増額される可能性があります。逆に、もともと夫婦関係が悪かったケースでは、慰謝料が減額される可能性があります。

4-4. 不貞行為の内容

不貞行為によって夫婦関係が破綻した場合の離婚慰謝料の相場は、150万円から200万円程度と言われています。

不貞行為が繰り返し行われていたり、不貞関係が長期間に及んでいたりする場合には、悪質な不貞行為といえるため、離婚慰謝料が増額される要因になると考えられます。不貞行為が悪質であるほど配偶者の精神的苦痛が大きくなるからです。

裁判例では、不貞関係が5カ月に及ぶことを慰謝料の増額要因としているものがあり、半年程度の不貞期間であっても慰謝料の増額要因とされる可能性があります。

4-5. DVの内容

DVとは、配偶者からの暴力を指します。

配偶者暴力防止法によると、「配偶者からの暴力」とは「配偶者からの身体に対する暴力」または「これに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動」とされています。このように、DVには、身体に対する暴力と精神的暴力の両方が含まれます

身体に対する暴力によって夫婦関係が破綻した場合の離婚慰謝料の相場は、100万円程度と言われています。身体に対する暴力については、暴力やそれによって負った傷害の内容や程度などが慰謝料の額に影響を与えると考えられます。たとえば、激しい暴行を受けた場合や、重い傷害を負った場合は、慰謝料が増額される可能性があります。悪質なケースでは200万円から300万円程度の慰謝料が認められる可能性もあります。

精神的暴力によって夫婦関係が破綻した場合の離婚慰謝料の相場は、100万円程度と言われています。精神的暴力についても、内容や程度が重大であれば慰謝料が増額されると考えられます。たとえば、侮辱行為が繰り返されうつ病になったといったケースでは、慰謝料が増額される可能性があるでしょう。

4-6. 悪意の遺棄の内容

悪意の遺棄によって夫婦関係が破綻した場合の離婚慰謝料の相場は、100万円程度と言われています。

悪意の遺棄は、同居義務、協力義務、扶助義務それぞれの違反の内容や程度が重大であれば、慰謝料が増額される可能性があると考えられます。たとえば、長期間にわたって一切生活費を渡さないといったケースでは、慰謝料が増額される可能性があります。

4-7. 性交拒否の内容

性交拒否によって夫婦関係が破綻した場合の離婚慰謝料の相場は、100万円程度と言われています。

夫婦の性生活は、婚姻の基本となる重要な事項と考えられており、正当な理由がない性交拒否は有責行為に該当する可能性があります。裁判例では、夫婦の性交渉が全くない状態なのに夫が自慰行為にふけり、行動を改めなかった事案において、120万円の慰謝料が認められた事案があります。

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5. 熟年離婚で高額の慰謝料請求が認められた事案

熟年離婚で高額の慰謝料が認められた事案には次のようなものがあります。

5-1. 【事例1】不貞行為で300万円の慰謝料が認められたケース

当事者である夫婦は、判決当時60代で、30年以上の結婚期間がありました。夫が不貞行為に及んだうえ、妻に離婚を求め、自宅のドアを破壊するなどの暴力行為を行ったために婚姻関係が破綻したと認定されました。裁判所は、離婚に至る経緯や結婚期間などを考慮し、300万円の慰謝料を認めました。

5-2. 【事例2】繰り返しの不貞行為で800万円の慰謝料が認められたケース

当事者である夫婦は、判決当時60歳前後で、30年以上の結婚期間がありました。妻は、夫に不貞行為があったと主張し、離婚請求や慰謝料請求を行いました。裁判所は、結婚期間が30年以上に及ぶことや夫が不貞行為を繰り返していたことを考慮して、800万円の慰謝料を認めました。

この事案では800万円という非常に高額な離婚慰謝料が認められましたが、現在では300万円を超える離婚慰謝料が認められるケースは少ないとされています。

6. 熟年離婚で慰謝料を請求する手続きの流れ

離婚慰謝料は多くの場合、離婚の手続きの際に請求されます。離婚の手続きには、協議離婚、調停離婚、裁判離婚があります。離婚を希望する場合、まずは協議離婚をめざすのが一般的です。

協議離婚とは、家庭裁判所を利用せずに夫婦の話し合いで離婚する手続きのことです。慰謝料の支払いの有無や、金額なども話し合います。

話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に離婚調停を申し立てて調停離婚をめざします。慰謝料についても家庭裁判所で話し合います。

調停での話し合いもまとまらず、調停不成立となった場合は、家庭裁判所に訴訟を提起して裁判離婚をめざします。離婚訴訟においては、離婚の請求に併せて離婚慰謝料の請求が可能です。

7. 熟年離婚で慰謝料以外に請求できるお金

熟年離婚で慰謝料以外に請求できるものとしては、以下の4つがあります。

  • 財産分与

  • 年金分割

  • 婚姻費用

  • 養育費

7-1. 財産分与

財産分与とは、離婚するにあたって、夫婦が婚姻中に協力して築いた共有財産を分ける作業です。

財産分与においては、共有財産を2分の1の割合で分けるのが原則とされています。結婚期間が長いと、共有財産も多額になると考えられます。したがって、熟年離婚の場合は財産分与で受け取れる金額が高額になる傾向があります

7-2. 年金分割

年金分割とは、夫婦が離婚した場合に、結婚期間中に双方が支払った保険料納付額に対応する厚生年金を分割し、それぞれを自分の年金にできる制度です。単純に相手の年金額を自分に分けてもらう制度ではない点に注意が必要です。

厚生年金の支給額は標準報酬に基づいて算定されます。たとえば、夫がサラリーマンで妻が専業主婦のケースにおいて年金分割を行うと、夫の標準報酬が妻に分割され、妻は分割後の標準報酬に基づいて算定された年金額を受給できるようになります。

なお、年金分割に必要な情報が記載されている「年金分割のための情報通知書」は、年金事務所に請求することで取得できます。

7-3. 婚姻費用

婚姻費用とは、夫婦や未成熟の子の生活費といった婚姻生活を維持するために必要な費用を指します。離婚前に夫婦が別居している場合、収入の低い側は、収入の高い側に婚姻費用を請求できます。

婚姻費用の額は、双方の収入をベースに、裁判所のホームページで公表されている「婚姻費用算定表」に基づいて算定されるのが原則です。なお、離婚が成立すると、それ以降の婚姻費用は請求できません

7-4. 養育費

養育費とは、未成熟の子が生活するために必要な費用のことです。未成熟の子を養育している親は、もう一方の親に対して養育費を請求できます。

養育費の額は、双方の収入をベースに、裁判所のホームページで公表されている「養育費算定表」に基づいて算定されるのが原則です。

8. 50代の離婚慰謝料に関してよくある質問

Q. 熟年離婚をする際、10年以上前の不倫について慰謝料は請求できる?
離婚慰謝料は原則として、離婚成立から3年を経過すると時効によって消滅します。 10年以上前の不倫が原因で離婚に至った場合でも、離婚成立から3年以内であれば、離婚慰謝料を請求できる可能性があります。ただし、個々の事案で時効が成立しているのかを正確に判断するためには専門的知識が不可欠であるため、弁護士に相談したほうがよいでしょう。
Q. 熟年離婚で得た慰謝料に税金はかかる?
慰謝料は所得税法上、非課税とされているため(所得税法第9条第1項第18号、所得税法施行令第30条第1号)、所得税はかかりません。また、慰謝料の支払いは贈与ではないため、贈与税もかかりません。 ただし、慰謝料の額が社会通念上相当と考えられる額を超える場合、その部分については実質的には贈与に該当するとして贈与税がかかる可能性があります。

9. まとめ 50代での熟年離婚は離婚慰謝料が増額される可能性がある

不貞行為やDV、悪意の遺棄、性交拒否など相手の有責行為が原因となって50代で熟年離婚をする場合、相手に対して離婚慰謝料を請求できます。離婚慰謝料の相場は、50万円から300万円程度とされています。

結婚期間が長期間に及ぶ場合や未成熟の子がいる場合、円満な夫婦生活を破綻させられた場合などは、離婚慰謝料が増額される可能性があります。

離婚の話し合いの難航を回避し、適切な条件で離婚を成立させるためには、弁護士に相談してサポートを受けるのがお勧めです。

(記事は2024年12月1日時点の情報に基づいています)

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