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1. 養育費の決め方は?
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1-1. 養育費とは
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1-2. 養育費は両親の合意で決めるのが原則
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1-3. 合意ができない場合の養育費の決め方
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1-4. 養育費算定表を用いた養育費の計算方法
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2. 毎月の養育費に含まれる費用と含まれない費用
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2-1. 毎月の養育費に含まれる費用
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2-2. 毎月の養育費に含まれない費用
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3. 支払う側の年収別|子ども3人の場合の養育費相場
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4. 子ども3人の養育費の計算例|夫の給与年収400万円・妻の給与年収100万円の場合
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5. 子ども3人の養育費を支払うべき期間は?
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6. 養育費を支払う必要がないケース
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6-1. 子どもが経済的に自立している場合
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6-2. 自分は同意していない特別費用が発生した場合
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6-3. 養育費の支払期間が終わった場合
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7. 養育費の額は増減できる?その方法は?
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7-1. 養育費の増額が認められるケース
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7-2. 養育費の減額が認められるケース
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7-3. 養育費を増額・減額する手続き
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8. 2026年5月までに導入|法定養育費制度が子ども3人の養育費に与える影響は?
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9. 離婚時に請求できる養育費以外のお金
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9-1. 財産分与
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9-2. 年金分割
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9-3. 慰謝料
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9-4. 婚姻費用
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10. 子ども3人の養育費を取り決める際の注意点
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10-1. 必要な費用を事前にシミュレーションする
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10-2. 特別費用の取り扱いを決めておく
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11. 子どもが3人を超える場合の養育費相場は?
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12. 養育費の額や決め方に関する不安は弁護士に相談を
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13. 子ども3人の養育費相場に関するQ&A
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14. まとめ 子ども3人の養育費の相場は子どもの年齢や夫婦の年収しだい
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1. 養育費の決め方は?
養育費の適正額は、父母の収入バランスや子どもの人数と年齢によって決まります。実際の養育費の金額は両親の合意で決めるのが原則ですが、合意ができない場合は裁判手続きを通じて決定します。
1-1. 養育費とは
養育費とは、子どもを養育するために必要な費用です。生活費、教育費、医療費などが養育費に含まれます。
父母はそれぞれ、子どもに対する扶養義務の一環として養育費を分担する義務を負います。離婚後に子どもと同居しない親は、同居する親に対して養育費を支払い、親としての扶養義務を果たすことになります。
1-2. 養育費は両親の合意で決めるのが原則
養育費の金額は、両親の合意によって決めるのが原則です。離婚協議の際に養育費も決めるケースが多いですが、離婚後に協議して養育費を取り決めることもできます。
養育費に関する合意が得られたら、トラブル防止のためその内容をまとめた書面(離婚協議書など)を作成しておきましょう。
1-3. 合意ができない場合の養育費の決め方
養育費について両親の合意が得られない場合は、裁判手続きを通じて養育費を取り決めます。離婚前の段階では、まず家庭裁判所に離婚調停を申し立てて、調停委員の仲介の下で養育費を含む離婚条件を話し合います。
離婚調停が不成立になった後、引き続き離婚を求める場合は、裁判所に離婚訴訟を提起します。離婚訴訟でも、養育費の請求が可能です。
離婚成立後に養育費を取り決める場合は、家庭裁判所に養育費請求調停または審判を申し立てます。調停は話し合いの手続きですが、審判は家庭裁判所が養育費の金額を決定する手続きです。
1-4. 養育費算定表を用いた養育費の計算方法
養育費の適正額を計算するためには、裁判所の「養育費算定表」を用いるのが一般的です。養育費算定表は、子どもの人数(1人から3人)と年齢に応じた9つの表で構成されています。養育費を受け取る側が「権利者」、養育費を支払う側が「義務者」です。
それぞれの年収が交差する部分を参照すると、毎月の養育費の適正額の目安を知ることができます。なお、給与所得者の場合は源泉徴収票の「支払金額」(=各種控除前の金額)、自営業者の場合は確定申告における所得額を収入とします。
2. 毎月の養育費に含まれる費用と含まれない費用
子どもにかかるお金をすべて養育費で賄えるわけではありません。一時的に大きな出費がかかる際は、特別費用として元配偶者に請求できることがあります。
2-1. 毎月の養育費に含まれる費用
養育費算定表の金額に含まれているのは、以下の費用などです。
標準的な食費
標準的な住居費
標準的な水道光熱費
標準的な衣服購入費
義務教育にかかる費用
公立高校の入学金や授業料
標準的な医療費
基本的には、標準的な生活に必要な費用だけが毎月の養育費に含まれています。教育費は、義務教育および公立高校の費用だけがカバーされている点に注意が必要です。
2-2. 毎月の養育費に含まれない費用
以下のような費用は、養育費算定表の金額には含まれていません。
私立学校の入学金や授業料
大学の入学金や授業料
部活動の費用
習い事や進学塾の費用
留学費用
標準的な範囲を超える医療費
これらの費用も、子どもの養育に必要であれば、父母が経済状況に応じて分担する義務を負います。毎月の養育費に含まれない費用の支出が生じる際には、特別費用として元配偶者に対して請求できる可能性があります。
特別費用については、出費が発生した際に元配偶者と相談して取り決めを行ったり、協議離婚の段階で都度相談するという形で決めておいたりすることが考えられます。
3. 支払う側の年収別|子ども3人の場合の養育費相場
子ども3人の場合における養育費の適正額は、養育費算定表の表6から表9を用いて大まかに知ることができます。
受け取る側(権利者)の年収が100万円(給与)だと仮定すると、支払う側(義務者)の年収および子どもの年齢に応じた養育費の適正額は、おおむね下表のとおりです。
子ども3人の場合の養育費相場
養育費を支払う側 (義務者)の年収 | 子ども3人とも 0~14歳 | 子ども1人が 15歳以上 子ども2人が 0~14歳 | 子ども2人が 15歳以上 子ども1人が 0~14歳 | 子ども3人とも 15歳以上 |
---|---|---|---|---|
給与200万円 /自営148万円 | 2~4万円 | 2~4万円 | 2~4万円 | 2~4万円 |
給与300万円 /自営218万円 | 4~6万円 | 4~6万円 | 4~6万円 | 4~6万円 |
給与400万円 /自営294万円 | 6~8万円 | 6~8万円 | 6~8万円 | 6~8万円 |
給与500万円 /自営373万円 | 8~10万円 | 8~10万円 | 8~10万円 | 10~12万円 |
給与600万円 /自営453万円 | 10~12万円 | 10~12万円 | 12~14万円 | 12~14万円 |
給与700万円 /自営527万円 | 12~14万円 | 12~14万円 | 14~16万円 | 14~16万円 |
給与800万円 /自営601万円 | 14~16万円 | 14~16万円 | 16~18万円 | 16~18万円 |
給与900万円 /自営681万円 | 16~18万円 | 16~18万円 | 18~20万円 | 18~20万円 |
給与1000万円 /自営763万円 | 18~20万円 | 20~22万円 | 20~22万円 | 20~22万円 |
給与1100万円 /自営840万円 | 20~22万円 | 22~24万円 | 22~24万円 | 22~24万円 |
給与1200万円 /自営922万円 | 22~24万円 | 24~26万円 | 24~26万円 | 24~26万円 |
給与1300万円 /自営1009万円 | 24~26万円 | 26~28万円 | 26~28万円 | 28~30万円 |
給与1400万円 /自営1086万円 | 26~28万円 | 28~30万円 | 28~30万円 | 28~30万円 |
給与1500万円 /自営1159万円 | 28~30万円 | 28~30万円 | 30~32万円 | 30~32万円 |
4. 子ども3人の養育費の計算例|夫の給与年収400万円・妻の給与年収100万円の場合
夫の給与年収が400万円、妻の給与年収100万円であるケースを想定して、養育費算定表を用いて養育費の適正額を調べてみましょう。なお、給与年収400万円は自営年収294万円に相当します。
子どもが3人なので、用いる養育費算定表は表6から表9のいずれかです。3人の子どもの年齢に応じた表を選択します。
表6:子ども3人とも0~14歳
表7:子ども1人が15歳以上、子ども2人が0~14歳
表8:子ども2人が15歳以上、子ども1人が0~14歳
表9:子ども3人とも15歳以上
そして、義務者の年収(縦軸)を「400」、権利者の年収(横軸)を「100」として、両者が交差する部分の金額を確認します。
表6・表7・表8・表9のいずれも「6万円から8万円」ですが、表6では真ん中くらい、表7・表8・表9では上の方に位置しています。したがって、子ども3人とも0歳から14歳であれば月7万円前後、それ以外のケースでは月7万数千円程度の養育費が適正と考えられます。

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5. 子ども3人の養育費を支払うべき期間は?
養育費の支払期間について、法律上の画一的な基準はありません。離婚時または離婚後に、両親の合意によって養育費の支払期間を決めるのが一般的です。合意が調わなければ、訴訟や審判によって養育費の支払期間が決定されます。
養育費の支払期間は、「子どもが18歳になるまで」「子どもが20歳になるまで」「子どもが大学を卒業するまで」などと決めるケースがよく見られます。子どものキャリアを見据えて、自立が見込まれる時期までは養育費を支払うことが望ましいでしょう。
6. 養育費を支払う必要がないケース
以下のようなケースでは、養育費を支払う必要がないと考えられます。
6-1. 子どもが経済的に自立している場合
子どもが十分な収入を得ている場合には、その収入で自分の生活費を賄うことができるので、親が養育費を支払う必要はありません。たとえば、子どもが芸能活動で成功している場合や、若くして自ら会社を経営している場合などには、養育費の支払いが不要となるケースが多いでしょう。
6-2. 自分は同意していない特別費用が発生した場合
毎月の養育費に含まれない特別費用を分担すべきかどうかは、医療費などの避けられない支出を除き、子どもと同居していない親の同意があったか否かも考慮して判断されます。
特に問題になりやすいのは、進学、留学、習い事などにかかる教育費です。元配偶者との間で十分な話し合いがなされていないのに、同居している親が勝手に多額の教育費を支出した場合は、養育費を負担する側が分担を拒否できる可能性があります。
6-3. 養育費の支払期間が終わった場合
元配偶者との間で取り決めた養育費の支払期間が終わったら、それ以降は原則として養育費を支払わなくてよくなります。ただし、支払期間が終わっても子どもが経済的に自立していない場合は、改めて養育費の分担を請求される可能性があります。
7. 養育費の額は増減できる?その方法は?
養育費の金額は、取り決めた時点以降に事情変更が生じた場合には、増額や減額が認められることがあります。
7-1. 養育費の増額が認められるケース
以下のようなケースでは、養育費の増額が認められる可能性があります。
受け取る側の収入が減少した場合(失業、転職、事業の不振)
支払う側の収入が増加した場合(転職、昇進、事業の成功)
子どもに関する支出が増えた場合(私立学校への進学、慢性疾患の発病)
7-2. 養育費の減額が認められるケース
以下のようなケースでは、養育費の減額が認められる可能性があります。
受け取る側の収入が増加した場合(転職、昇進、事業の成功)
受け取る側の再婚相手が経済的に豊かである場合
支払う側の収入が減少した場合(失業、転職、事業の不振)
支払う側が再婚して、再婚相手との間に子どもが生まれた場合
7-3. 養育費を増額・減額する手続き
養育費を増額または減額するためには、元配偶者と話し合って合意するのが一つの方法です。合意ができたら、新たな養育費の額や支払い方法などをまとめた合意書を作成しましょう。
話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所に調停または審判を申し立てます。調停や審判で決定した内容は、調停調書や審判書にまとめられます。
8. 2026年5月までに導入|法定養育費制度が子ども3人の養育費に与える影響は?
2024年5月に成立した改正民法により、2026年5月までに「法定養育費制度」が導入される予定となっています。
法定養育費制度は、養育費を定めずに協議離婚をした場合に、離婚の日に遡って一定額の養育費を請求できる制度です。元配偶者との間で取り決めがなくても、法律に従った額の養育費を受け取ることができます。養育費を受け取れていない子ども3人のひとり親は、法定養育費制度が生活の大きな助けとなるでしょう。
9. 離婚時に請求できる養育費以外のお金
離婚する際には、養育費のほかに、配偶者に対して以下の金銭的請求ができることがあります。離婚後の生活を楽にするため、漏れなく請求を行いましょう。
財産分与
年金分割
慰謝料
婚姻費用
9-1. 財産分与
夫婦が離婚する際には、共有財産を公平に分ける「財産分与」を行います。いずれか一方が単独名義で取得した財産でも、婚姻中に取得したものであれば、原則として財産分与の対象です。
特に専業主婦(主夫)や、配偶者よりも収入が少ない人は、離婚後の生活を安定させるためにも、忘れずに請求しましょう。
9-2. 年金分割
婚姻期間中の厚生年金保険料などの納付記録は、「年金分割」という手続きによって公平に分けることができます。配偶者が会社員や公務員などで、自分よりも多くの収入を得ていた場合には、年金分割によって将来の年金を増やせる可能性が高いです。
9-3. 慰謝料
離婚原因が配偶者にある場合は、慰謝料を請求できることがあります。たとえば不貞行為、DV、モラハラ、正当な理由のない無断別居などが慰謝料の対象です。100万円から300万円程度が相場であるため、こちらも忘れずに請求しましょう。
9-4. 婚姻費用
婚姻費用とは、生活費や子どもの教育費など、生活に必要な費用のことです。離婚成立前に別居期間がある場合は、別居期間中も夫婦が互いに婚姻費用を分担する義務を負います。別居をしても離婚をしていない以上は夫婦であるため、別居期間中に子どもと同居する人や、配偶者よりも収入が少ない人は、婚姻費用を請求できる可能性があります。調停や審判を通じて早めに請求を行いましょう。
10. 子ども3人の養育費を取り決める際の注意点
離婚後の子ども3人の養育費を取り決める際には、特に以下の2点に留意しましょう。
必要な費用を事前にシミュレーションする
特別費用の取り扱いを決めておく
10-1. 必要な費用を事前にシミュレーションする
養育費算定表に基づく養育費の額は、あくまでも目安に過ぎません。実際に必要な養育費の額は、個々の家庭によって異なります。そのため、生活費や教育費などについて、子どもの成長も想定したうえで、具体的なシミュレーションを行い、それを十分に賄える額の養育費を取り決めましょう。
10-2. 特別費用の取り扱いを決めておく
毎月の養育費に含まれない特別費用の分担についても、トラブル防止のため、離婚時に決めることが望ましいです。あらかじめ分担を決めておく進学費用や、予定外に発生した医療費の分担方法などを決めておきましょう。
11. 子どもが3人を超える場合の養育費相場は?
養育費算定表を利用できるのは、子どもが3人までの場合です。子どもが4人以上である場合は、養育費算定表を利用できません。4人以上の子どもの養育費の適正額は、親の基礎収入や子の生活費などから計算して求めます。具体的な計算方法は、以下の記事をご参照ください。
12. 養育費の額や決め方に関する不安は弁護士に相談を
以下のようなことに悩んでいる人は、弁護士に相談しましょう。
離婚後に養育費をもらえるかどうか不安
養育費の適正額が分からない
相手が養育費の支払いを拒否している
弁護士に相談すれば、子どもの人数や状況に応じた適正な養育費が判断できます。離婚後に養育費の支払いが受けられていない場合は、支払いを確保する方法についてアドバイスがもらえます。
養育費を決めるための協議や裁判手続きも、弁護士に依頼すれば一任できるので安心です。相談したからといって依頼が必須ということではありません。実際にどのような方法があるのか、弁護士費用がいくらなのかも含めて相談してみましょう。

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13. 子ども3人の養育費相場に関するQ&A
自分の収入がどの程度かにもよりますが、平均的な収入(年400万円から500万円程度)を前提とすると、子ども3人を養育費なしで育てるのは大変です。養育費を月6万円から8万円程度受け取ることができれば、年間の収入が72万円から96万円程度増えますので、楽ではないもののかなり生活の助けになるでしょう。
配偶者と合意すれば、養育費を一括で受け取ることもできます。ただし、一括で養育費を受け取る場合は、毎月受け取る場合に比べて金額が少なく抑えられるケースが多いです(中間利息控除を行うため)。配偶者が一括払いに応じなければ、基本的には毎月払いとなります。
子どもが住んでいる家の住宅ローンを払っているのであれば、一般的な水準に比べて養育費を減額できる可能性があります。これに対して、自分が住んでいる家のローンを払っている場合は、養育費の減額は認められにくいです。
養育費を決めた時には予期できなかった事情変更が生じた場合は、養育費を増額できる可能性があります。まずは元配偶者と協議をして、協議がまとまらなければ家庭裁判所の調停または審判を申し立てましょう。
14. まとめ 子ども3人の養育費の相場は子どもの年齢や夫婦の年収しだい
養育費の相場は、子どもの年齢や夫婦の年収によって異なります。養育費を決める際は、算定表を参考にするほか、個々の事情に合わせて配偶者とよく協議して適切な金額を決めましょう。
配偶者との協議がまとまらないときは、調停や審判を申し立てるのがおすすめです。調停が不成立に終わっても、審判で適切な養育費の金額を決定してもらえます。「自分で対応するのは不安」「養育費が支払われない」「養育費が払えない」という人は弁護士に相談しましょう。配偶者との協議や裁判手続き、養育費の回収にも適切に対応してもらえます。
(記事は2025年7月1日時点の情報に基づいています)