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養育費は増額できる? 条件や請求のポイント、養育費増額調停について解説

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養育費の増額は、収入の増減や子どもの教育費・医療費の増加など、離婚時に予想しえない事情の変化があれば可能です(c)Getty Images
子どもの成長や自身の収入などに変化が生じると、離婚時に取り決めた養育費だけでは生活が苦しくなることがあります。しかし、養育費は取り決めた後でも増額できる場合があります。養育費の増額が認められるケースと認められないケース、増額を認めてもらうためのポイントについて、弁護士が詳しく解説します。
目 次
  • 1. 養育費は途中から増やせる?|増額は可能
  • 2. 養育費の増額が認められるケース
  • 2-1. 双方の収入に変化があった場合
  • 2-2. 子どもの教育費が増加した
  • 2-3. 子どもの医療費が増加した
  • 3. 養育費の増額が認められないケース
  • 4. 養育費はどれくらい増額できる?
  • 5. 養育費の増額請求をする際の流れ
  • 6. 養育費増額調停とは
  • 6-1. 必要書類と申し立ての手続き
  • 6-2. 養育費増額調停にかかる費用
  • 6-3. 養育費増額調停で聞かれること
  • 7. 養育費の増額を認めてもらうポイント
  • 8. 養育費の増額請求は弁護士に依頼できる
  • 8-1. 弁護士に依頼するメリット
  • 8-2. 養育費の増額請求にかかる弁護士費用
  • 8-3. 養育費の増額が認められた事例
  • 9. 2026年5月までに導入|共同親権制度や法定養育費制度が養育費の増額に与える影響は?
  • 10. 養育費の増額でよくある質問
  • 11. まとめ 養育費の増額は収入の増加や事情の変化があれば請求可能
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1. 養育費は途中から増やせる?|増額は可能

養育費は、一度取り決めた後でも変更が可能です。増額理由としてよくあるのは、子どもの大学進学に際して教育費が不足する場合や、元配偶者の収入が大幅に増えた場合などです。

増額を求める場合、まずは元配偶者に請求し、相手が応じれば金額を変更できます。もし増額を拒否されたり、話し合いに応じてもらえなかったりした場合には、養育費増額調停という裁判所の手続きを利用することで増額できる可能性があります。

2. 養育費の増額が認められるケース

養育費の増額が認められるのは、養育費を取り決めた時点で予測できなかった事情の変更がある場合に限られます。増額が認められる事情変更としては、以下のようなケースが挙げられます。

  • 双方の収入に変化があった場合

  • 子どもの教育費が増加した

  • 子どもの医療費が増加した

それぞれについて解説します。

2-1. 双方の収入に変化があった場合

養育費は双方の収入を基に分担額が決められます。そのため、算出の根拠となる収入に大きな変化があった場合、原則として増額が認められます

具体的には以下のようなケースです。

  • 貰う側(親権者)の収入がリストラ、病気などのやむを得ない事情により大幅に減少した場合

  • 支払う側の収入が転職・昇進などにより大幅に増加した場合

ただし、勤務年数が長くなるほど収入は上がるケースが多いため、わずかな増額であれば「予測できない事情変更」とはいえず増額は認められません。

2-2. 子どもの教育費が増加した

養育費算定表は公立学校への進学を前提として作成されています。そのため、子どもが私立学校や大学に進学した場合に掛かる教育費は算定表の金額には含まれていません。追加の教育費は、以下のような場合に支払いを求めることができます。

【支払う側が子の進学を承諾している場合】
支払う側が子どもの進学を承諾している場合は、教育費の支払いを求めることが可能です。明確な承諾がなくても、黙示的な快諾が認められる場合も含まれます。例えば子どもの受験を激励した場合には、黙示の承諾ありとされる可能性は高いでしょう。

【支払う側の収入や学歴などから教育費負担が不合理でない場合】
支払う側の親の収入が高く、自身も大卒であるような場合には、たとえ大学進学に同意していなくても増額が認められる可能性があります。

2-3. 子どもの医療費が増加した

子どもがケガや病気になり、高額な医療費が発生した場合には、収入に応じて按分負担をとるケースが多いです。また、離婚後に子どもに障害が見つかり、継続的な治療やカウンセリングが必要になった場合も、相手に費用負担を請求できます。

3. 養育費の増額が認められないケース

養育費の増額を求めるには、正当事由が必要です。単に「子どもにもっとよい生活をさせたい」という理由や、新算定表が公表された2019年(令和元年)以前に取り決めた養育費について「新算定表の方が高いのでそちらに変えてほしい」という理由だけでは、増額は認められません。

また、実務上でよく問題になるのは、塾代や習い事の費用です。これらは実際に子どもを監護する親の責任で行うべきものであり、他方の親が同意していない限り、原則として請求はできません

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4. 養育費はどれくらい増額できる?

養育費を増額する場合、ベースとなるのは養育費算定表です。まずは、子どもの年齢・人数から適切な算定表を選択し、双方の収入をあてはめて基準となる養育費を算定します。そのうえで、実際にいくらの上乗せ分が必要なのか、その内訳を資料にもとづき説明しましょう。根拠として示す資料は、以下のものを提出するとよいでしょう。

  • 私立学校の学費 :入学時の配布資料

  • 塾代や習い事  :ホームページに掲載された授業料一覧

  • 病気による医療費:診断書や診療報酬明細

最も多い増額事由は私学や大学への進学ですが、その場合の増額分は「年間の授業料-公立高校相当学費」を双方の収入で按分することが多いです。

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5. 養育費の増額請求をする際の流れ

養育費の増額請求をする際の流れは、話し合いから始まり、合意に至らなければ調停や審判で決定します。

【話し合い】
まずは電話やメールで相手に連絡して、養育費が不足する事情を説明して増額を求めましょう。普段から子どもと面会交流をしている場合、ある程度の理解を得られるかもしれません。

【養育費増額調停】
話し合いで合意に至らない場合は、家庭裁判所に養育費増額調停を申し立てましょう。調停では、裁判所で双方が調停委員を通じて話し合いを行います。双方が別々に部屋に入り調停委員と話すため、顔を合わせる必要はありません。

【審判】
調停で合意ができなければ、調停は自動的に審判に移行します。審判では、当事者が提出した主張書面や資料をもとに、最終的に裁判官が増額の有無と金額を決定します。

6. 養育費増額調停とは

養育費増額調停とは、家庭裁判所で調停委員を交えて養育費の増額を話し合う手続きです。当事者の話し合いで合意ができれば、調停調書が作成されます。この調停調書には強い効力があり、公正証書と同様、将来不払いがあった際には強制執行を申し立てることが可能です。

6-1. 必要書類と申し立ての手続き

養育費増額調停を申し立てる際には、以下の書類を家庭裁判所に提出します。書式は家庭裁判所のホームページからダウンロード可能です。

  • 申立書原本及び写し各1通

  • 送達場所の届出書1通

  • 事情説明書1通

  • 進行に関する照会回答書1通

  • 未成年者の戸籍謄本(全部事項証明書)1通

  • 申立人の収入関係の資料(給料明細、源泉徴収票、確定申告書等の写し)

  • 非開示の希望に関する申出書(必要に応じて提出)

養育費増額調停は、相手方の住所地の家庭裁判所に申し立てます。ただし、当事者間で合意があれば、他の家庭裁判所でも手続き可能です。

6-2. 養育費増額調停にかかる費用

申し立てに必要な費用は、以下のとおりです。

  • 収入印紙1200円分(子ども1人につき)

  • 連絡用の郵便切手

連絡用の郵便切手代は各裁判所によって異なります。申し立て前に家庭裁判所に確認しましょう。

6-3. 養育費増額調停で聞かれること

調停では、調停委員が当事者を交互に呼び出し、それぞれの話を聞きます。調停委員からは、現在の収入や生活状況、子どもの進学や病気など、養育費の増額が必要な理由について詳しく尋ねられます。口頭による説明が基本ですが、必要に応じて資料や主張書面を提出するとよいでしょう。

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7. 養育費の増額を認めてもらうポイント

まずは、相手の現在の収入を正確に把握することが重要です。相手には直近の源泉徴収票や課税証明書の提出を求めましょう

次に、相手に対して変化した状況の重要性や離婚時には予測できなかったことを、資料を交えながら具体的に説明しましょう。家計表(収入と支出)を示すことで、こちらが生活に困窮している状況を理解してもらえ、増額に応じてもらえる場合があります。

話し合いで合意できた場合は、公正証書に残すようにしましょう。公正証書を作成しておけば、将来養育費の不払いがあった際に、相手の預貯金や給与の差し押さえが簡単にできるようになります。

相手に増額を認めてもらうポイントは、むやみに対立しないことです。養育費は今後も継続的に支払ってもらうものなので、別れた夫婦であっても一定の信頼関係を築くことが重要です。

増額するには、養育費の正確な計算や正当な理由の説明が求められるため、弁護士に相談すると安心です。調停や審判になると手続きが長期化する可能性があるため、まずは弁護士による代理交渉を目指すとよいでしょう。

8. 養育費の増額請求は弁護士に依頼できる

養育費の増額請求も弁護士に依頼できます。弁護士費用はかかりますが、調停や裁判に発展した場合の対応を任せることができ、増額が認められるメリットがあります。

8-1. 弁護士に依頼するメリット

弁護士は、養育費の増額請求が可能か、適正額はいくらか正確なアドバイスができます。特に自営業の場合、正確な収入の把握が難しいため、弁護士に相談するのがおすすめです。

弁護士に交渉を依頼すれば、相手と直接協議する必要がなくなり、精神的な負担が軽減されます。調停・審判と続いても引き続き対応可能なので、すべてを任せられて安心です。

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8-2. 養育費の増額請求にかかる弁護士費用

養育費増額請求にかかる弁護士費用の相場は、以下の金額となることが多いようです。

【協議で養育費増額を求める場合】
・着手金 :20万円~30万円
・成功報酬:20万円~50万円
・トータル:40万円~80万円

【交渉後に調停・審判に進む場合】
・追加着手金:10万円~20万円
・日当   :1回あたり2万円~3万円

協議の段階で増額が成功しなければ、成功報酬金は発生しません。調停や審判に進む場合には、それぞれ追加の着手金と日当、養育費の増額が成功した場合に報酬金が発生します。

8-3. 養育費の増額が認められた事例

以下は当事務所が担当した、大学進学に際して夫に養育費の増額を請求した事案です。

依頼者は子どもが高校生のときに夫が家を出る形で離婚しました。その後子どもが大学に進学したため夫に養育費の増額を請求しましたが、夫側は大学進学に同意していないとして増額を争うことになりました。裁判所は①夫の学歴も大卒であること、②夫には十分な収入があることなどを理由に、年間の学費から公立高校相当分の25万9,342円を控除した金額を夫婦の収入割合に応じて按分する形になりました。

9. 2026年5月までに導入|共同親権制度や法定養育費制度が養育費の増額に与える影響は?

共同親権の導入により、離婚後も父母双方が子どもに関わる機会は多くなると予想されます。その結果、普段から双方が子どもの養育に関心をもつようになり、大学進学などの事情変更にも比較的柔軟に対応できるケースの増加が期待できます。

一方で、当初から子どもの養育に関心を持たず、離婚後に養育費を支払わない親も少なからず存在します。法定養育費制度が導入され、夫婦間で養育費の取り決めがなくても一定の養育費を請求できるようになります。

ただし、その金額は最低限の生活を維持できるレベルであり、養育費としては十分とはいえません。そのため、無関心な親に対しては、従前どおり養育費(増額)調停の申し立てが必要となり、法定養育費制度の導入による養育費増額の影響は限定的と言えるでしょう。

10. 養育費の増額でよくある質問

Q. 離婚後、子どもに発達障害があることが判明。それを理由に養育費の増額を請求できる?

子どもの発達障害は、離婚時に予測できなかった事情の変更に該当します。発達障害により継続的なカウンセリングや薬物の投与が必要な場合、その費用について増額が認められるでしょう。

Q. 養育費の新算定表で計算すると旧算定表よりも金額が高くなっていた。増額請求できる?

2019年12月から採用されている新しい養育費算定表では、同じ収入を当てはめると旧算定表より金額が高くなります。しかし、算定表の改定は事情変更には該当せず、それだけを理由に増額請求しても認められません。ただし、ほかに増額の正当な理由がある場合には、新算定表を適用して算定されることになります。

Q. 養育費を増額してほしいと元配偶者から言われたが、そんな余裕はなく拒否したい。無視してもいい?

元配偶者からの増額請求を無視すると、養育費増額調停を申し立てられる可能性があります。調停が開始されるとなると月1回程度、裁判所への出頭が必要です。また、裁判所の呼び出しも無視し続けると、調停は自動的に審判に移行します。


審判で有効な反論をしなければ、相手の主張がそのまま認められる形で増額命令を受ける可能性もあります。支払い命令も無視すれば、最終的には預貯金や給与の差し押えに至るおそれもあります。増額に正当な理由がある場合には、協議段階で出来る限り応じることをおすすめします。

Q. 子どもが15歳になったら養育費を増額できる?

子どもが15歳に達したことが増額事由にあたると判断された裁判例があります。東京高裁令和3年3月5日決定では、「子が15歳に達した後も養育費を増額させないことを前提とする合意などの特段の事情がない限り、原則として養育費を増額すべき事情の変更に該当する」と判断されました。

11. まとめ 養育費の増額は収入の増加や事情の変化があれば請求可能

養育費は取り決め後でも、収入の増減や子どもの教育・医療費の増加など、予測できなかった事情の変化があれば増額が認められる可能性があります。私立や大学進学、塾代や習い事については相手の同意が必要です。増額を相手に承諾してもらうには、面会交流を行い、子どもの事情について理解を求めましょう。交渉や調停・裁判が困難な場合には、弁護士へ相談することをおすすめします。

(記事は2025年7月1日時点の情報に基づいています)

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