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1. 養育費の減額調停とは
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2. 養育費減額が認定・不認定になるケース
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2-1. 認められるケース
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2-2. 認められないケース
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3. 養育費減額調停の流れ
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3-1. まずは当人同士で話し合う
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3-2. 調停の申し立て
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3-3. 1回目の養育費減額調停
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3-4. 2回目以降の養育費減額調停
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3-5. 調停終了
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4. 養育費減額調停に必要な書類と費用
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5. 養育費減額審判とは
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6. 養育費減額調停で調停委員に聞かれること
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7. 養育費減額調停を有利に進めるためのポイント
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7-1. 養育費減額の根拠を明確にする
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7-2. 養育費の相場を理解しておく
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7-3. 調停委員には丁寧に対応する
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7-4. 弁護士に依頼する
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8. 養育費減額調停は弁護士なしで可能?
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8-1. 弁護士なしで調停を行うことはできる
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8-2. 養育費減額調停を依頼した場合の弁護士費用
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9. 養育費減額請求が認められた事例
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9-1. 事例① 転職によって収入が減少し、再婚相手との間に子どもができたケース
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9-2. 事例② 定年退職で収入が減少したケース
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10. 共同親権制度や法定養育制度、先取特権が養育費の減額請求に与える影響
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11. 養育費減額調停に関するよくある質問
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12. まとめ 養育費の減額を認めてもらえない場合は調停を検討する
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1. 養育費の減額調停とは
養育費減額調停とは、離婚時に合意した養育費の金額について、その後の事情の変更(収入の減少、再婚による扶養家族の増加など)を理由に、減額を求めるために行う調停です。養育費の支払義務を負う親(非監護親)が、養育費の支払いを受けている親(監護親)に対して、申し立てることになります。
養育費減額調停では、調停委員が間に入って中立の立場からお互いの言い分を交互に聞き、その内容を相手に伝達したり、改善案や解決案なども提示したりしてくれます。
2. 養育費減額が認定・不認定になるケース
まず一般的にどのようなケースで養育費の減額が認められるかを確認しましょう。いくらお金がないといっても、条件を満たさなければ、養育費を減額することはできないのです。
2-1. 認められるケース
養育費の減額が認められるためには、「事情の変更」が必要となります(民法880条)。事情の変更は、以下の3点を満たした場合に認められると考えられています。
合意の前提となった事情に変更が生じたこと
事情変更を当事者が予測できなかったこと
事情変更が当事者の責任によって生じたものではないこと
上記3点を満たす事情とはどんなものがあるのか、例を挙げてみます。
【養育費を支払う側の事情】
・離婚後に再婚し、再婚相手との間に子どもが生まれた
・再婚相手の連れ子と養子縁組をしたなど扶養家族が増えた
・合意時には予想できない事情により収入が大幅に(2割程度)減少した
【養育費を受け取る側の事情】
・離婚後に再婚し、元配偶者との子どもが、再婚相手と養子縁組をした
・受け取る側の収入が合意時と比べて著しく増加した
基本的には、「支払う側の経済状況が厳しくなった」もしくは「受け取る側の経済状況が良くなった」ケースで認められることが多いです。
2-2. 認められないケース
養育費の減額が認められないケースには、次のような例があります。
【住宅ローンの支払いが厳しい場合】
住宅ローンの支払いを理由に養育費の減額を求めることはできません。住宅ローンの返済は支払う本人の資産形成の一環とみなされるため、養育費の減額理由としては認められないのです。
【合意後に自分の意思で収入が減った場合】
養育費の合意後に会社を退職し、働く能力や機会があるにもかかわらず働かずに収入が減少した場合、収入の減少は自己責任とされ、養育費の減額は認められません。
【自分の判断で転職や自営業への転身をした場合】
収入が減少する可能性を理解していながら、自らの都合で転職や自営業に切り替えた結果、収入が減った場合も、これは自己責任となり、養育費の減額は認められません。
いずれの場合も、減額理由が自己の選択や責任に起因するものである限り、養育費の減額は難しいと考えられます。
3. 養育費減額調停の流れ
3-1. まずは当人同士で話し合う
養育費減額調停を申し立てる前に、当事者同士での話し合いを試みることになります。話し合いの結果、養育費の減額について合意できた場合には、合意書などの書面を交わしておくことをおすすめします。話し合いで解決できない場合には、養育費減額調停を申し立てることになります。
3-2. 調停の申し立て
調停を行う場合、必要書類(戸籍謄本、源泉徴収票等)を揃えて、家庭裁判所に養育費減額調停を申し立てることになります。申立先の家庭裁判所は、相手の住所を管轄する家庭裁判所です。
もっとも、離婚時の離婚協議書等において別途、管轄裁判所を指定したような場合には、指定された裁判所が管轄裁判所となります。
3-3. 1回目の養育費減額調停
通常、申立から約1カ月後に第1回目の調停期日が指定され、裁判所から相手に対して、期日の通知書とともに申立書が送付されます。初回から調停委員の立ち合いのもと、調停を進めることになります。
3-4. 2回目以降の養育費減額調停
初回だけで調停が成立することはほぼないので、2回目、3回目と期日を重ねることになります。
通常、期日は1カ月から1カ月半間隔で行うことが多いです。自分の主張に対する相手の反応によって、どの程度調停を行うかどうかが変わってきます。相手が自分の主張を争ってくる場合には、争点について複数回の書面のやり取りが必要となってきますので、それだけで3回か4回の期日を費やすことになります。
私の経験上、養育費減額調停を申し立てて、相手が争ってこなかったケースはありませんでした。平均すると、調停が成立あるいは不成立になるまで、5回から6回程度の期日を重ね、期間としては、半年から8カ月程度要しています。
3-5. 調停終了
双方で金額が折り合った場合には、調停が成立となり、調停調書が作成されます。一方、双方で金額が折り合わなかった場合には、調停は不成立となり、審判手続に移行します。審判手続では、双方の主張や証拠に基づき、裁判官が養育費の減額を認めるかどうか、認める場合にはいくら減額をするのかを判断することになります。

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4. 養育費減額調停に必要な書類と費用
養育費減額調停を申し立てるために必要な書類は、下記のとおりです。なお、各種書類については、裁判所のホームページからダウンロード可能です。
養育費減額調停申立書 3通
子どもの戸籍謄本(全部事項証明書) 1通
収入関係の書類(源泉徴収票、給与明細、確定申告書等の写し)
収入印紙 1200円(子1人あたり)
郵便切手代 1240円(東京家庭裁判所の場合)
送達場所等届出書
事情説明書
進行に関する照会回答書
必要書類や手続きに関する疑問点は、管轄する家庭裁判所に直接問い合わせることができます。
5. 養育費減額審判とは
養育費減額審判は、調停が不成立となった場合に進む手続きです。ここでは裁判官が、提出された書類や家庭裁判所調査官の調査結果などを基に、養育費の減額が認められるかどうかを判断します。
調停から審判に進む際、特別な手続きは不要です。調停と異なり、審判の結果について当事者の合意は必要なく、裁判官の判断に両者が拘束されます。なお、審判の結果に不服がある場合は、結果通知から2週間以内に即時抗告を申し立てることで、高等裁判所での審理が可能です。
【審判のメリット】
自身の主張に法律的な根拠があれば、養育費の減額が認められる可能性があります。
【審判のデメリット】
調停とは異なり、柔軟な解決が難しい点や、法律的な根拠がない場合には養育費の減額が認められない点が挙げられます。
6. 養育費減額調停で調停委員に聞かれること
養育費減額調停では、調停委員から希望する養育費の額や期間について確認されます。申立書でも記載はするのですが、改めて口頭で説明することになります。
次に、合意後の「事情の変更」について聞かれます。具体的には、合意後に収入が減少した事情、再婚した場合には再婚に至るまでの経緯や新たな扶養親族についての事情などです。
なお、調停の場ですべて説明することが難しい場合には、後日、主張書面を提出して、自らの主張を補充することになります。
7. 養育費減額調停を有利に進めるためのポイント
調停は、単なる当事者同士の話し合いではなく、調停委員を交えて行う協議です。単に自分の思いや主張が強いだけでは、いい結果を得られません。ここでは、養育費減額調停を有利に進めるためのポイントを紹介します。
7-1. 養育費減額の根拠を明確にする
単に支払いが苦しいといったことだけではなく、「事情の変更」という法律上の要件が認められるために必要な具体的な主張をし、その主張を裏付ける資料を提出する必要があります。場合によっては、過去に事情の変更が認められた審判や参考文献等を引用して、自らの主張の正当性を主張しなければなりません。
7-2. 養育費の相場を理解しておく
養育費の減額を認めてもらうには、養育費の相場を理解する必要があります。具体的には、「現在支払っている養育費が多すぎるのか、それとも妥当なのか」を正しく把握することです。
養育費は、お互いの収入、子どもの人数、年齢などによって、養育費算定表を基に金額を決定します。養育費算定表に照らし合わせた結果、現在払っている養育費が高すぎるようであれば、それを調停の場で主張できるでしょう。
7-3. 調停委員には丁寧に対応する
調停委員は中立的な立場なので、どちらか一方の味方をすることはありませんが、中には価値観や相性が合わない調停委員もいるでしょう。しかし、調停委員と敵対してもいいことはないので、気持ちよく調停を進めるためにも、丁寧な対応を心がけましょう。
7-4. 弁護士に依頼する
弁護士に依頼するメリットとしては、申立書や主張書面の作成から提出、調停の場に同席してフォローしてもらえるという点にあります。また、自らに有利な過去の審判例や文献等を調査してもらうことで、調停を有利に進めやすくなります。

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8. 養育費減額調停は弁護士なしで可能?
調停は、家庭裁判所に申し立てを行い、調停委員を交えて行う協議です。手続きが難しそうに思えたり、「果たして自分にできるのだろうか?」と不安に思ったりする人もいるでしょう。ここでは、養育費減額調停は弁護士がいなくてもできるのかについて説明します。
8-1. 弁護士なしで調停を行うことはできる
弁護士は必ずしも必要ではなく、弁護士なしで調停に参加することも可能です。しかし、弁護士に相談すると、有利な証拠の集め方や調停をスムーズに進めるためのポイントについてアドバイスを受けられます。また、正式に依頼すると、弁護士が代理人として調停に同席してくれるため、心理的な負担が軽くなるだけでなく、調停を有利に進めやすくなります。
さらに、相手がすでに弁護士をつけている場合、相手に有利な形で調停が進んでしまう可能性が高くなるため、こちらも弁護士に依頼して対等に交渉することが望ましいでしょう。
8-2. 養育費減額調停を依頼した場合の弁護士費用
養育費減額調停を弁護士に依頼する際の費用は、「着手金」と「報酬金」の2つがあります。費用は事務所によって異なりますが、一般的な相場は次の通りです。
・着手金:20万円~40万円
・報酬金:減額が認められた金額の10~16%
たとえば、調停の結果、月々2万円の減額が3年間認められた場合、報酬金は次のように計算されます。
2万円 × 12(カ月) × 3(年) × 0.16(16%) = 11万5200円
9. 養育費減額請求が認められた事例
次に、実際に私が担当した養育費減額請求の事例について、簡単に紹介します。
9-1. 事例① 転職によって収入が減少し、再婚相手との間に子どもができたケース
離婚時に養育費を月7万円と決めていたものの、離婚後に会社を退職して農家に転職し、収入が半分に減少。また、再婚して新しい子どもが1人生まれたため、養育費が月5万円に減額されました。
9-2. 事例② 定年退職で収入が減少したケース
離婚時に月20万円の養育費で合意していたが、離婚から5年後に会社を定年退職し、再就職した結果、収入が3割減少。これにより、養育費が月15万円に減額されました。
10. 共同親権制度や法定養育制度、先取特権が養育費の減額請求に与える影響
共同親権が認められても、別居している親が子どもの日常的な世話をするわけではないため、養育費が減額されることはありません。また、法定養育費制度や養育費請求権の先取特権が導入された場合でも、「事情の変更」があれば養育費の減額請求が認められる点は変わりません。
11. 養育費減額調停に関するよくある質問
12. まとめ 養育費の減額を認めてもらえない場合は調停を検討する
養育費は、支払う側と受け取る側の同意があれば、金額を自由に変更することができます。とはいえ、「養育費を減額したい」と伝えても、相手にとって中々受け入れられるものではないでしょう。
当事者同士で合意に至らない場合には、養育費の減額を求めて調停の申し立てを検討しましょう。調停を行えば、調停委員に入ってもらいながら、妥当な養育費の金額について話し合うことができます。
調停を有利に進めたい、話し合いをするのが苦手だと感じる人は、弁護士に依頼することをおすすめします。申し立ての準備から調停当日の同席など、依頼者の味方になってトータルでサポートしてもらえます。
(記事は2025年2月1日時点の情報に基づいています)