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1. 養育費に含まれるものとは?
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1-1. 養育費とは
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1-2. 養育費の主な内訳
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1-3. 養育費に含まれない費用
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2. 毎月の養育費に含まれない特別費用とは?
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2-1. 毎月の養育費の計算方法
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2-2. 特別費用の主な内訳|高額の治療費、入学・進学にかかる費用など
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2-3. 特別費用の分担の決め方
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2-4. 特別費用の請求が認められた事例
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3. 適切に養育費を取り決めるための注意点
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3-1. 金額と支払い方法、支払期間を明確化する
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3-2. 特別費用の条項をできるだけ具体的に定める
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3-3. 公正証書を作成する
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3-4. 弁護士に相談する
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4. 2026年5月までに導入|共同親権制度や法定養育費制度が養育費に与える影響は?
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5. 養育費に含まれるものに関してよくある質問
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6. まとめ 養育費の特別費用について不安がある場合は弁護士に相談を
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1. 養育費に含まれるものとは?
ここでは、養育費の概要と養育費に含まれる費用、含まれない費用について説明します。
1-1. 養育費とは
養育費とは、子どもの養育に必要な費用のことで、民法上の扶養義務に基づき、親が負担するものです。両親の離婚後は、子どもと離れて暮らす親(以下、非監護親)が子どもを養育する側(以下、監護親)に対して、養育費を支払います。一般的には、月額を決めたうえで月に1回支払います。
1-2. 養育費の主な内訳
月々の養育費には、主に以下の費用が含まれます。
標準的な食費
標準的な住居費
水道光熱費
標準的な衣服購入費
公立の保育園や幼稚園から高校までにかかる費用(授業料や教科書代など)
日常的な医療費
標準的なお小遣いや娯楽費
要するに、養育費とは、子どもが日常生活を送るうえで必要な費用です。
1-3. 養育費に含まれない費用
養育費は子どもの生活のための費用であり、監護親の生活費や、監護親に対する慰謝料は含みません。
また、学資保険の掛け金は、たとえ養育のための資金とはいえ、日常生活を送るうえでの費用ではないため、養育費には含まれません。
子どもにかかる費用は、日常生活のための費用だけではありません。ほかにも、子どもの病気やケガ、進学などに伴って一時的な費用が発生するケースがあります。このような毎月の養育費に含まれない費用を「特別費用」と言い、月々の養育費とは別に請求できる場合があります。
2. 毎月の養育費に含まれない特別費用とは?
養育費の計算方法や特別費用の内訳と決め方を説明するほか、特別費用の請求が認められた事例を紹介します。
2-1. 毎月の養育費の計算方法
養育費の金額は、原則として親同士での話し合いによって自由に決められます。
協議をする際に参考になる目安が、家庭裁判所が公表している「養育費算定表」です。養育費算定表は、養育費を算出するための複雑な計算式を基準に、わかりやすく表にしたものです。家庭裁判所の実務ではこの算定表が用いられており、親同士の協議においても、この算定表を基準とするケースがほとんどです。
もっとも、この算定表は、子どもが4人以上いる場合のほか、連れ子がいる、複数の子どもがいる場合に支払う側の親も一部の子どもを引き取るなど、養育費の支払いをする親にも扶養家族がいる場合は想定されていません。そのため、算定表にないケースの場合は、算定表のもととなる計算式を用いて算出します。
また、親の収入が算定表の想定を超えている場合にどのように考えるかは親同士で議論の対象となる場合がほとんどです。反対に、無職で無収入であっても、場合によっては一定の収入があるとみなされるケースもあります。
2-2. 特別費用の主な内訳|高額の治療費、入学・進学にかかる費用など
典型的な特別費用として、病気やケガに伴う高額な治療費、入学金や制服代など入学や進学のための費用があります。これらが特別費用に含まれることについて親同士の意見が分かれることはほぼありません。
しかし、私立学校の学費、大学や専門学校の学費、塾代や習い事、部活の費用、海外留学費用、修学旅行費用、通学の交通費や下宿代などが特別費用として認められるかどうかはケース・バイ・ケースです。特に、塾や習い事の費用や留学費用は、両親の収入や非監護親の同意があるかどうかが影響するため、認められないケースも少なくありません。
2-3. 特別費用の分担の決め方
本来であれば、離婚時に特別費用の内容と分担を決めておくことが望ましいです。
もっとも、特に子どもが小さいうちは、将来どのような特別費用が発生するのかが不確定で、すべてを漏らさず取り決めることは難しいと言えます。そのため、私立に通学している、大学に進学しているなど、すでに費用が発生している場合を除き、「特別費用が発生した際に、別途、都度協議する」と取り決めるケースがほとんどです。
のちのトラブルをできるだけ避けるため、私立の学費、大学の学費、塾の費用など、特別費用に何が含まれるかを取り決めのなかで例示しておく場合もあります。この場合、「大学の学費等」と「等」とつけておくことがほとんどです。
分担割合についても、「別途、都度協議する」と取り決めるケースが多いですが、はじめから「折半」「収入比」と決めることもあります。なお、分担割合について議論が生じた場合、裁判所は「収入比」を基準にして判断することが多いです。
実は、月々の養育費よりも、特別費用のほうが親の間では問題になりやすく、協議や調停でも難航することが多いです。月々の養育費は算定表があるため、含まれる費用がほぼ明確で、結局は裁判所の基準で落ち着くのに比べ、特別費用はそもそも何が含まれるのかがケース・バイ・ケースだからです。
したがって、協議や調停段階では特別費用について細かく取り決めることができます。しかし、離婚裁判や養育費請求審判など、裁判所が養育費を決める場合には、すでに明らかになっている費用がない限り、特別費用が細かく決められることはまずありません。
2-4. 特別費用の請求が認められた事例
弁護士である筆者が扱った事案に、監護親である依頼者が、子どもの私立の学費や修学旅行費を請求したものがあります。このケースでは、子どもがすでに私立中高一貫校に入学していること、別居後に入学したとはいえ、非監護親は私立進学に同意していたことから、私立高校卒業までの学費や修学旅行費の請求が認められました。
また、すでに高校受験のために塾に通っていた中学生の子どもの塾代を請求した事案もあります。このケースでは、子どもが住んでいる地域では高校受験のための塾は珍しいものではないこと、非監護親が高収入であることなどから、塾の費用が特別費用として認められました。
3. 適切に養育費を取り決めるための注意点
養育費を取り決める際には、特別費用が発生することを想定し、次の4点に留意しましょう。
金額と支払い方法、支払期間を明確化する
特別費用の条項をできるだけ具体的に定める
公正証書を作成する
弁護士に相談する
3-1. 金額と支払い方法、支払期間を明確化する
毎月の養育費については、金額や支払方法、支払い期間は最低限明確化したほうがよいでしょう。特に支払い期間は、子どもの進学状況なども想定したうえで適切に定める必要があります。
現在の裁判所の基準では、養育費が必要となるのは原則として20歳までです(高校在学中に養育費が受け取れなくなってしまう可能性を考慮し、成人年齢が18歳でも20歳までとしています)。
もっとも、現代の大学進学率を考慮し、「大学進学した場合は22歳になった最初の3月まで」と取り決めるケースが多いです。なお、裁判所が決める場合、親の学歴も考慮材料となり、親が大卒の場合は、大学進学後の養育費が認められやすくなります。
3-2. 特別費用の条項をできるだけ具体的に定める
将来発生する特別費用を漏れなく取り決めることは難しいです。しかし、何が含まれるかといった例示や発生時の協議方法、分担割合などを取り決められるのであれば、できるだけ具体的に定めておいたほうがのちのトラブルを防止できます。
3-3. 公正証書を作成する
通常の離婚協議書では、もし養育費の未払いが生じて強制執行したい場合、支払督促や裁判などの裁判所の手続きを経なければなりません。
一方、強制執行認諾文言付き公正証書を作成しておけば、養育費の未払いが生じたとしても裁判所の手続きを経ることなくすぐに強制執行を申し立てられます。強制執行認諾文言付き公正証書とは、養育費の支払いが滞った際に裁判手続きを経ずに強制執行ができる公正証書であり、強い執行力を持ちます。
3-4. 弁護士に相談する
月々の養育費は算定表に基づいて決められるとはいえ、算定表にはないケースも多々あります。また、算定表を超える収入がある場合の養育費の額や支払期限など、一概に取り決められないケースもあります。
筆者の扱った事例では、支払う側が高収入であった事例で、請求されている金額を減額するケースがありました。また、支払う側の非監護親が無職であっても働いて収入を得る能力があると認めさせる、またはその逆のケースもありました。
このように、特別費用については重要ではあるものの、法的に一律には決まっておらず、個別のさまざまな事情が考慮されます。一方で、子どもの養育に関わる重大な事柄であるため、特別費用が必要になった場合は経験豊富な弁護士に相談することをお勧めします。

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4. 2026年5月までに導入|共同親権制度や法定養育費制度が養育費に与える影響は?
養育費は親権の有無にかかわらず親の扶養義務によるものであり、親権とは関係がありません。そのため、基本的には共同親権制度は養育費に影響を与えません。
養育費を定めずに夫婦間の話し合いによる協議離婚をした場合、従来は、あらためて協議するか、調停、審判といった裁判所の手続きを経る必要がありました。しかし、法定養育費制度が導入されれば、民法の規定に基づいて、離婚日にさかのぼって養育費を請求できるようになります。
ただ、だからといって、離婚の際の養育費の取り決めが不要になるわけではありません。改正民法では、法定養育費の額について、「父母の費用を受けるべき子の最低限度の生活の維持に要する標準的な額その他の事情を勘案して子の数に応じて法務省令で定めるところにより算定した額」と規定しています。法定養育費の具体的な金額や計算方法などは明らかになっていないものの、改正法の文言から、生活保護基準に照らした金額と思われ、養育費算定表の額よりも比較的低めに設定される可能性が高いです。
これらの状況を考慮すると、離婚時に養育費について取り決めておくことの重要性は変わりません。
5. 養育費に含まれるものに関してよくある質問
養育費の使途は受け取る側の自由であり、内訳を示す必要はありません。一方、特別費用については、受け取る側が、何にかかったのか、いくらかかったのかを説明する必要があるため、求められれば内訳を示さなければなりません。
子どもが使う携帯電話の料金は、現代では養育に必要な費用と考えられるため、養育費に含まれると判断される可能性が高いです。
不合理な特別費用の請求は拒否できるものの、養育に必要と考えられる場合は拒否できません。もっとも、どこまでが「必要な費用」と言えるかは、ケース・バイ・ケースであるため、判断が難しいときは弁護士に相談してください。
6. まとめ 養育費の特別費用について不安がある場合は弁護士に相談を
養育費は、長期にわたるものであり、支払う側にとっても受け取る側にとっても、そして何より子どもにとって大変重要な事柄です。
食費や住居費、教育費などを含む月々の養育費のほかにも、子どもの成長に伴う入学金や学費のほか、子どもが病気やケガをした場合に高額な医療費などが一時的に必要になることがあります。こうした特別費用については、親である当事者同士が話し合い、内容と分担を決めなければなりません。
あとで後悔しないためにも、養育費に関する疑問点は、ぜひ経験豊富な弁護士に相談してください。
(記事は2025年7月1日時点の情報に基づいています)