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1. 養育費算定表とは
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1-1. 養育費算定表|離婚後の養育費の目安額を把握できる
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1-2. 2019年に最新版が公表|近年の実情を反映
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2. 【最新版】養育費算定表の見方
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2-1. 9つの表から該当するものを選択する
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2-2. 義務者と権利者の年収額と収入形態を確認する
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2-3. 義務者と権利者の年収が交差する部分の金額を確認する
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3. 養育費算定表を利用する際の注意点
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3-1. いずれかの収入が非常に高い場合は利用できない
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3-2. 子どもが4人以上の場合は利用できない
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3-3. 子どもの親権者が分かれる場合は利用できない
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3-4. 給与収入と自営収入が両方ある場合の取り扱い
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3-5. 特別費用は含まれない|別途ルールを取り決めるべき
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4. 養育費算定表を利用せずに養育費の額を計算する方法
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4-1. 【STEP1】義務者と権利者の基礎収入を求める
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4-2. 【STEP2】子の生活費を求める
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4-3. 【STEP3】養育費の金額を計算する
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5. 養育費を自分で請求することは可能?
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6. 養育費の計算や請求を弁護士に相談するメリット
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7. 2026年5月までに導入|共同親権制度が養育費算定表に与える影響は?
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8. まとめ|養育費の計算は、離婚問題に強い弁護士に相談するのが理想
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1. 養育費算定表とは
「養育費算定表」とは、離婚後に支払う養育費の金額を計算する際に役立ててもらうため、裁判所が公表している算定表です。
1-1. 養育費算定表|離婚後の養育費の目安額を把握できる
子どもがいる夫婦が離婚する際には、子どもと一緒に暮らさない側(=非監護親)が一緒に暮らす側(=監護親)に対して「養育費」を支払う義務を負います。養育費を支払う側を「義務者」、養育費を受け取る側を「権利者」と呼びます。
養育費とは、子どもの養育に必要な費用です。生活費、教育費、医療費などが養育費に含まれます。親同士が離婚しても親子関係は続くため、親の子どもに対する扶養義務(民法877条1項)を根拠に養育費の支払い義務が生じます。
養育費の適正額は、子どもの人数や年齢、親同士の収入バランスなどによって決まります。養育費算定表を用いると、これらの要素を当てはめることにより、養育費の適正額を簡単に計算できます。
養育費算定表は、ポイントを理解すれば比較的簡単に利用できます。離婚後の養育費の目安額を知りたい場合は、裁判所が公表している「平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について」の養育費算定表を利用するとよいでしょう。
1-2. 2019年に最新版が公表|近年の実情を反映
裁判所の公式サイトに掲載されている養育費算定表は、2019年12月23日に公表された最新の研究報告によるものです。
養育費の計算に関する基本的な考え方は以前から変わっていませんが、最新版では基礎とする統計資料などが最新のものに更新されています。それに伴って、基礎収入割合や生活費指数などの値が従前から変更されました。
基礎収入割合と生活費指数の内容は以下のとおりです。
【基礎収入】
総収入から公租公課(国や地方自治体、地方公共団体に納める税金など)、職業費および特別経費を控除した額を言います。養育費を計算する際の基礎となる金額です。収入額によって、総収入に占める基礎収入の割合(=基礎収入割合)が変わります。
【生活費指数】
成人を100とした場合に、子どもの生活費がどのくらいの割合でかかるかを示した指数です。最新版では、14歳以下の子どもが62、15歳以上の子どもが85となっています。
2. 【最新版】養育費算定表の見方
養育費算定表を用いて養育費の目安額を計算する際の手順は、以下のとおりです。
2-1. 9つの表から該当するものを選択する
裁判所の公式サイトでは、子どもの人数と年齢に応じて、以下の9つの養育費算定表が公表されています。夫婦間の子どもの数と年齢から、該当する表を選択しましょう。
(表1)養育費・子1人表(子0~14歳)
(表2)養育費・子1人表(子15歳以上)
(表3)養育費・子2人表(第1子及び第2子0~14歳)
(表4)養育費・子2人表(第1子15歳以上,第2子0~14歳)
(表5)養育費・子2人表(第1子及び第2子15歳以上)
(表6)養育費・子3人表(第1子,第2子及び第3子0~14歳)
(表7)養育費・子3人表(第1子15歳以上,第2子及び第3子0~14歳)
(表8)養育費・子3人表(第1子及び第2子15歳以上,第3子0~14歳)
(表9)養育費・子3人表(第1子,第2子及び第3子15歳以上)
2-2. 義務者と権利者の年収額と収入形態を確認する
養育費算定表に、夫婦のそれぞれ年収額を当てはめて養育費の額を求めます。そのため、養育費の計算に先立って、夫婦それぞれの年収額を把握しましょう。
養育費算定表では、収入形態が給与所得者と自営業者の2つに分かれています。会社勤めや公務員の場合は給与所得者、個人事業主の場合は自営業者に該当します。
養育費算定表において用いる年収は、給与所得者は税金や社会保険料を控除する前の支給額、自営業者は確定申告をした所得額となります。
なお、副業などをしているために、給与収入と自営収入の両方がある場合の取り扱いについては、「3-4. 給与収入と自営収入が両方ある場合の取り扱い」で説明します。
2-3. 義務者と権利者の年収が交差する部分の金額を確認する
養育費算定表の縦軸は「義務者の年収(万円)」、横軸は「権利者の年収(万円)」です。「義務者」は養育費を支払う側、「権利者」は養育費を受け取る側を指します。
給与所得者は外側、自営業者は内側の数値を用いて、夫婦の年収が交差する点を参照すると、養育費の目安額(月額)がわかります。たとえば、夫婦がいずれも給与所得者で、義務者である夫の年収が600万円、権利者である妻の年収が200万円、0~14歳の子どもが1人の場合、図表「養育費の目安額(月額)」のとおり、養育費の目安額は「月4~6万円」です。
なお、同じ「月4~6万円」の範囲内であっても、交差点がグラフの下部に位置しているほど少額、グラフの上部に位置しているほど高額となります。上記のケース(夫600万円、妻200万円)では、「月4~6万円」の範囲内では比較的上部に位置しているので、養育費の適正額は「月5~6万円」程度であると考えられます。
3. 養育費算定表を利用する際の注意点
養育費算定表は、養育費の目安額を計算する際に便利ですが、具体的な状況によってはそのまま当てはめることができないケースもあります。
特に以下の5点については、養育費算定表を利用する際に注意が必要です。
いずれかの収入が非常に高い場合は利用できない
子どもが4人以上の場合は利用できない
子どもの親権者が分かれる場合は利用できない
給与収入と自営収入が両方ある場合の取り扱い
特別費用は含まれない|別途ルールを取り決めるべき
3-1. いずれかの収入が非常に高い場合は利用できない
養育費算定表における年収は、以下の金額が上限となっています。
義務者:給与所得者2000万円、自営業者1567万円
権利者:給与所得者1000万円、自営業者763万円
義務者と権利者のいずれかの年収が上記の額を超える場合は、養育費算定表は利用できません。この場合は、養育費算定表を利用せずに別途、養育費の額を計算する必要があります。
3-2. 子どもが4人以上の場合は利用できない
養育費算定表は、子どもが3人以下のケースに対応しています。
子どもが4人以上いる場合には、養育費算定表を利用できません。この場合にも、養育費算定表を利用せずに養育費の額を計算する必要があります。
3-3. 子どもの親権者が分かれる場合は利用できない
養育費算定表は、すべての子どもの親権者が同じであるケースにのみ対応しています。
複数の子どもの親権者が分かれる場合、養育費算定表は利用できません。たとえば長男の親権者を父、二男の親権者を母とする場合などが該当します。こうした場合にも、養育費算定表を利用せずに養育費の額を計算する必要があります。
3-4. 給与収入と自営収入が両方ある場合の取り扱い
会社勤めと同時に副業をしているなど、給与収入と自営収入が両方ある場合には、両方の収入を養育費に反映させるのが公平です。
養育費算定表を用いる場合には、一例として、いずれかの収入をもう一方に換算したうえで、両方を合算する方法が考えられます。
たとえば、義務者の給与年収が500万円、自営年収が203万円だとします。養育費算定表では、自営年収203万円は給与年収275万円と同水準とされています。そのため、義務者の給与年収が775万円(=500万円+275万円)であるものとして養育費を計算するのが一案です。
ただし、上記は養育費の適正額を細かく厳密に計算する方法ではなく、あくまでも簡易的な方法に過ぎません。個別の事情に応じた養育費の適正額をきちんと計算したい場合は、弁護士に相談するのが望ましいです。
3-5. 特別費用は含まれない|別途ルールを取り決めるべき
養育費算定表によって計算される養育費の金額には、平均的な生活費や公立高校までの学費などが含まれています。
その一方で、私立学校への進学費用、習い事の費用、突発的に生じる医療費などは、養育費算定表によって計算される養育費に含まれません。権利者は義務者に対し、これらの費用を「特別費用」として請求できることがあります。
夫婦が離婚する際には、毎月支払う養育費だけでなく、臨時的に発生する特別費用の分担についても合意しておくようにしましょう。

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4. 養育費算定表を利用せずに養育費の額を計算する方法
養育費の適正額は、養育費算定表を利用しなくても、以下の手順で計算することができます。
4-1. 【STEP1】義務者と権利者の基礎収入を求める
「基礎収入」とは、総収入から子の養育費に充てるべきでないもの(公租公課、就労のための費用、住居関係費など)を控除した額です。
基礎収入の額は、以下の式によって計算できます。基礎収入割合は、収入形態と総収入額に応じて決まっています。
基礎収入=総収入×基礎収入割合
給与所得者の基礎収入割合
総収入額 | 基礎収入割合 |
---|---|
0~75万円 | 54% |
~100万円 | 50% |
~125万円 | 46% |
~175万円 | 44% |
~275万円 | 43% |
~525万円 | 42% |
~725万円 | 41% |
~1325万円 | 40% |
~1475万円 | 39% |
~2000万円 | 38% |
自営業者の基礎収入割合
総収入額 | 基礎収入割合 |
---|---|
0~66万円 | 61% |
~82万円 | 60% |
~98万円 | 59% |
~256万円 | 58% |
~349万円 | 57% |
~392万円 | 56% |
~496万円 | 55% |
~563万円 | 54% |
~784万円 | 53% |
~942万円 | 52% |
~1046万円 | 51% |
~1179万円 | 50% |
~1482万円 | 49% |
~1567万円 | 48% |
(例)
権利者の総収入額が600万円(給与)、義務者の総収入額が200万円(給与)の場合
権利者の基礎収入=600万円×41%
=246万円
義務者の基礎収入=200万円×43%
=86万円
なお、総収入額が上表の上限(給与所得者2000万円、自営業者1567万円)を超える場合には、具体的な事情に応じて基礎収入割合が下限(給与所得者38%、自営業者48%)よりも引き下げられることがあります。
4-2. 【STEP2】子の生活費を求める
「子の生活費」とは、義務者の基礎収入を義務者自身の生活に充てる部分と子どもの生活費に充てる部分に分けた際に、子どもの生活費に充てる部分にあたる額を言います。
一年あたりの子の生活費は、以下の式によって計算します。
子の生活費=義務者の基礎収入×子の生活費指数合計÷(100+子の生活費指数合計)
※子の生活費指数:14歳以下の子は1人あたり62、15歳以上の子は1人あたり85
(例)0~14歳の子どもが1人
義務者の総収入額が600万円(給与)→基礎収入は246万円
権利者の総収入額が200万円(給与)→基礎収入は86万円
子の生活費=246万円×62÷(100+62)
=94万1481円
4-3. 【STEP3】養育費の金額を計算する
基礎収入と子の生活費の金額を以下の式に当てはめると、養育費の金額(年額)を計算できます。
養育費=子どもの生活費×義務者の基礎収入÷(義務者の基礎収入+権利者の基礎収入)
(例)
0~14歳の子どもが1人
義務者の総収入額が600万円(給与)→基礎収入は246万円
権利者の総収入額が200万円(給与)→基礎収入は86万円
子の生活費は94万1481円
養育費(年額)
=94万1481円×246万円÷(246万円+86万円)
=69万7603円
※小数点以下四捨五入
養育費(月額)
=69万7603円÷12
=5万8134円
※小数点以下四捨五入
5. 養育費を自分で請求することは可能?
夫婦間で建設的な話し合いができる状況なら、養育費を当事者だけで取り決めることができるかもしれません。
一方、養育費を含む離婚条件について揉めている場合は、養育費の支払いについて適正な内容で合意することは困難です。夫婦間の話し合いがまとまらなさそうであれば、早めに弁護士へ相談しましょう。

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6. 養育費の計算や請求を弁護士に相談するメリット
離婚にあたって養育費を計算したり請求したりする際には、弁護士に相談することをお勧めします。
弁護士に相談すれば、適切な方法を用いて、請求できる養育費の金額を正しく計算してもらえます。また、弁護士に養育費の請求を依頼すれば、配偶者との協議や法的手続きへの対応を一任できます。弁護士に任せれば、適正額の養育費を得られる可能性が高まる一方で、労力や精神的な負担は大幅に軽減されるでしょう。
7. 2026年5月までに導入|共同親権制度が養育費算定表に与える影響は?
現行法のルールでは、離婚後の子どもの親権者は、父母のうちいずれか一方に定める必要があります(=単独親権)。しかし、2026年5月までに改正民法が施行され、離婚後も子どもの親権者を父母の両方とすること(=共同親権)が認められるようになる予定です。
離婚後の共同親権が導入されても、養育費の分担に関する基本的な考え方に変更はありません。父母の収入バランスに応じて、子の養育に必要な費用を分担することになります。養育費算定表についても、基本的にはそのまま利用できると考えられます。
ただし、共同親権によって両方の親が積極的に育児へ関与し、そのなかで自然に費用を分担するようになれば、父母の間でやりとりする養育費の額にもその関係性を反映させるのが公平でしょう。また、離婚後の共同親権の導入と併せて、法定養育費制度、先取特権の付与など、養育費に関する新たな制度も導入されます。その結果、養育費の請求方法にも影響が生じることが予想されます。
ある程度期間が経ってから離婚しようと考えている方は、法改正によってどのような影響が生じ得るのかについて、弁護士のアドバイスを求めましょう。
8. まとめ|養育費の計算は、離婚問題に強い弁護士に相談するのが理想
「養育費算定表」とは、離婚後に支払う養育費の金額を計算する際に活用するため、裁判所が公表している算定表で、この養育費算定表を利用すれば、離婚後に支払う養育費の金額を簡単に計算できます。
ただし、養育費を支払う側か受け取る側のいずれかの収入が非常に高い場合や子どもが4人以上の場合など、養育費算定表は利用できないケースがあるほか、1円単位で正確に養育費の額を計算することはできません。個々の事情をふまえた養育費の額をきちんと計算したうえで請求したい場合は、離婚問題に強い弁護士に相談しましょう。
(記事は2025年7月1日時点の情報に基づいています)