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1. 高所得者が支払うべき養育費は高額になりやすい
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2. 給与年収2000万円(自営年収1567万円)の人が支払う養育費の金額は?
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2-1. 養育費算定表の見方
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2-2. 給与年収2000万円の人が支払う養育費の相場早見表
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3. 養育費算定表を使わずに養育費を計算する方法
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3-1. 義務者と権利者の基礎収入を求める
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3-2. 子の生活費を求める
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3-3. 養育費の金額を計算する
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4. 給与年収2000万円(自営年収1567万円)超の場合、養育費の減額調整が行われることがある
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5. 高額所得者が支払う養育費に関する裁判例
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6. 2026年5月までに施行|民法改正が高額所得者の養育費に与える影響は?
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7. 年収2000万円以上の高額所得者の養育費や離婚に関する注意点
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7-1. 養育費算定表では計算できない|複雑な検討が必要
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7-2. 子どもに質の高い教育を受けさせるには、特別費用の分担もきちんと決めるべき
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7-3. 養育費以外に、財産分与も重要な論点となる
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8. 年収2000万円以上の高額所得者の離婚について弁護士に相談するメリット
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9. 年収2000万円以上の養育費相場に関するよくある質問
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10. まとめ 年収2000万円以上の場合の養育費の決め方は複雑、弁護士に相談を
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1. 高所得者が支払うべき養育費は高額になりやすい
離婚後に支払う子どもの養育費の適正額は、主に以下の要素によって決まります。
父母の収入バランス
子どもの人数
子どもの年齢
したがって、高所得者が支払う養育費の金額は高額になりがちです。相手よりも収入が多ければ多いほど、支払う養育費は高額になります。
2. 給与年収2000万円(自営年収1567万円)の人が支払う養育費の金額は?
養育費の金額を計算する際には、裁判所が公表している「養育費算定表」が参考になります。養育費算定表では、義務者(=支払う側)の年収の上限が給与所得者で2000万円、自営業者で1567万円となっています。
2-1. 養育費算定表の見方
養育費算定表は9つの表に分かれており、子どもの人数と年齢に応じて当てはまる表を選択します。子どもの人数は1人から3人までで、4人以上の場合は利用できません。
義務者(=支払う側)の年収と権利者(=受け取る側)の年収が交差する点を参照すると、毎月支払う養育費の目安額が分かります。給与所得者の場合は各種控除前の額面(=源泉徴収票の支払金額)、自営業者の場合は確定申告における所得額を年収として用います。なお、義務者または権利者の年収が以下の水準を超える場合は、養育費算定表を利用できません。
・義務者:給与所得者は2000万円、自営業者は1567万円
・権利者:給与所得者は1000万円、自営業者は763万円
養育費算定表を利用できない場合に、養育費の適正額をどのように計算するかについては後述します。
2-2. 給与年収2000万円の人が支払う養育費の相場早見表
養育費算定表に従い、給与年収2000万円の人が支払う養育費の相場を表にまとめました。
【子どもが1人(0~14歳)】
権利者の年収(給与) | 養育費の目安(月額) |
---|---|
0円 | 24~26万円 |
100万円 | 22~24万円 |
300万円 | 20~22万円 |
500万円 | 18~20万円 |
1000万円 | 14~16万円 |
【子どもが1人(15歳以上)】
権利者の年収(給与) | 養育費の目安(月額) |
---|---|
0円 | 28~30万円 |
100万円 | 26~28万円 |
300万円 | 24~26万円 |
500万円 | 22~24万円 |
1000万円 | 18~20万円 |
【子どもが2人(2人とも0~14歳)】
権利者の年収(給与) | 養育費の目安(月額) |
---|---|
0円 | 34~36万円 |
100万円 | 32~34万円 |
300万円 | 30~32万円 |
500万円 | 26~28万円 |
1000万円 | 22~24万円 |
【子どもが2人(第1子が15歳以上、第2子が0~14歳)】
権利者の年収(給与) | 養育費の目安(月額) |
---|---|
0円 | 36~38万円 |
100万円 | 34~36万円 |
300万円 | 32~34万円 |
500万円 | 28~30万円 |
1000万円 | 24~26万円 |
【子どもが2人(2人とも15歳以上)】
権利者の年収(給与) | 養育費の目安(月額) |
---|---|
0円 | 38~40万円 |
100万円 | 36~38万円 |
300万円 | 34~36万円 |
500万円 | 30~32万円 |
1000万円 | 26~28万円 |
【子どもが3人(3人とも0~14歳)】
権利者の年収(給与) | 養育費の目安(月額) |
---|---|
0円 | 40~42万円 |
100万円 | 38~40万円 |
300万円 | 34~36万円 |
500万円 | 32~34万円 |
1000万円 | 26~28万円 |
【子どもが3人(第1子が15歳以上、第2子と第3子が0~14歳)】
権利者の年収(給与) | 養育費の目安(月額) |
---|---|
0円 | 42~44万円 |
100万円 | 40~42万円 |
300万円 | 36~38万円 |
500万円 | 32~34万円 |
1000万円 | 26~28万円 |
【子どもが3人(第1子と第2子が15歳以上、第3子が0~14歳)】
権利者の年収(給与) | 養育費の目安(月額) |
---|---|
0円 | 44~46万円 |
100万円 | 40~42万円 |
300万円 | 36~38万円 |
500万円 | 34~36万円 |
1000万円 | 28~30万円 |
【子どもが3人(3人とも15歳以上)】
権利者の年収(給与) | 養育費の目安(月額) |
---|---|
0円 | 44~46万円 |
100万円 | 42~44万円 |
300万円 | 38~40万円 |
500万円 | 34~36万円 |
1000万円 | 28~30万円 |
3. 養育費算定表を使わずに養育費を計算する方法
義務者の給与年収が2000万円を超える場合、または自営年収が1567万円を超える場合には、養育費算定表を用いることができません。ここでは、養育費算定表を使わずに養育費を計算する方法を紹介します。
義務者と権利者の基礎収入を求める
子の生活費を求める
養育費の金額を決める
各ステップを順番に紹介します。
3-1. 義務者と権利者の基礎収入を求める
まずは、以下の式によって義務者と権利者の基礎収入を求めます。
[基礎収入=総収入×基礎収入割合]
基礎収入割合は、年収に応じた割合を適用します。給与年収2000万円(自営年収1567万円)以下の場合の基礎収入割合は、下表のとおりです。
【給与所得者の基礎収入割合】
総収入額 | 基礎収入割合 |
---|---|
0~75万円 | 54% |
~100万円 | 50% |
~125万円 | 46% |
~175万円 | 44% |
~275万円 | 43% |
~525万円 | 42% |
~725万円 | 41% |
~1,325万円 | 40% |
~1,475万円 | 39% |
~2,000万円 | 38% |
【自営業者の基礎収入割合】
総収入額 | 基礎収入割合 |
---|---|
0~66万円 | 61% |
~82万円 | 60% |
~98万円 | 59% |
~256万円 | 58% |
~349万円 | 57% |
~392万円 | 56% |
~496万円 | 55% |
~563万円 | 54% |
~784万円 | 53% |
~942万円 | 52% |
~1,046万円 | 51% |
~1,179万円 | 50% |
~1,482万円 | 49% |
~1,567万円 | 48% |
給与年収2000万円(自営年収1567万円)を超える場合は、上表の下限値(給与所得者:38%、自営業者:48%)を用いるか、またはさらに減算した基礎収入割合を用います。年収が高ければ高いほど、基礎収入割合を低く設定するのが適切と考えられます。
たとえば、義務者の給与年収が4000万円(基礎収入割合30%)、権利者の給与年収が100万円(基礎収入割合50%)だとします。この場合、義務者の基礎収入は1200万円(=4000万円×30%)、権利者の基礎収入は50万円(=100万円×50%)です。
3-2. 子の生活費を求める
次に、以下の式によって子の生活費を求めます。
[子の生活費=義務者の基礎収入×子の生活費指数合計÷(100+子の生活費指数合計)]
子の生活費指数は、14歳以下の子は1人当たり62、15歳以上の子は1人当たり85とされています。
たとえば前掲のケース(義務者の基礎収入:1200万円、権利者の基礎収入:50万円)において、16歳と12歳の子どもが1人ずついるとします。この場合、子の生活費は以下のとおり計算されます。
[子の生活費=1200万円×(85+62)÷(100+85+62)=714万1700円]
3-3. 養育費の金額を計算する
最後に、以下の式によって養育費の額を計算します。
[養育費(年額)=子の生活費×義務者の基礎収入÷(義務者の基礎収入+権利者の基礎収入)]
前掲のケース(義務者の基礎収入:1200万円、権利者の基礎収入:50万円、子の生活費:714万1700円)では、養育費の額は以下のとおり計算されます。
[養育費(年額)=714万1700円×1200万円÷(1200万円+50万円)=685万6032円]
これを12分割して、月額57万1336円となります。
4. 給与年収2000万円(自営年収1567万円)超の場合、養育費の減額調整が行われることがある
義務者が給与年収2000万円(自営年収1567万円)を大きく超える場合でも、子どもの生活に必要な費用が比例して増えるわけではないと考えられています。そのため、義務者の年収が非常に高い場合には、上記の計算方法を一部修正するなどして、養育費の減額調整が行われることがあります。
最もシンプルな考え方は、養育費算定表の上限で頭打ちにするというものです。この考え方に従うと、たとえば16歳と12歳の子どもがいて、権利者の給与年収が100万円であるときは、養育費の金額は月34~36万円が上限となります。
また、基礎収入割合を給与年収2000万円(自営年収1567万円)以下の下限値(給与所得者:38%、自営業者:48%)からさらに減らすという考え方もあります。後で紹介する裁判例では、年収6000万円を超える医師について、基礎収入割合が27%と認定されています。
具体的にどのような計算方法が適切であるかは家庭の状況によりますし、裁判所の判断もまちまちです。弁護士のサポートを受けながら、適正な金額の養育費を取り決めましょう。

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5. 高額所得者が支払う養育費に関する裁判例
東京家裁令和4年7月7日判決では、権利者が、義務者の給与年収を3636万2914円として養育費を計算すべき旨を主張しました。しかし東京家裁は、養育費は婚姻費用とは異なり、収入が増えてもそれに比例して増加するものではないことを指摘し、義務者の給与年収を算定表の上限である2000万円として養育費を計算しました。これは、養育費算定表の上限で頭打ちにするという考え方です。
他方で、養育費の減額が争われた福岡高裁平成26年6月30日決定では、年収6171万6840円(主に給与所得)の医師について、基礎収入割合を27%として標準算定方式を用いた養育費の計算がなされました。福岡高裁は、年収2000万円までの基礎収入割合は概ね34~42%とされているところ、それを超える高額所得者の基礎収入割合はさらに低くなると考えられるため、義務者の職業や年収額などを考慮して27%が相当であると判示しています。
このように、高額所得者が支払うべき養育費の計算方法は、裁判例においても考え方が分かれています。
6. 2026年5月までに施行|民法改正が高額所得者の養育費に与える影響は?
2026年5月までに改正民法が施行され、離婚後の親権や養育費について、以下の新制度などが導入される予定です。
【共同親権】
現行法では認められていない父母の離婚後の共同親権が、改正民法の施行によって認められるようになります。
【法定養育費】
養育費に関する取り決めをしていなくても、子どもの最低限度の生活の維持に要する養育費を、離婚時にさかのぼって請求できるようになります。
【先取特権】
養育費について、他の債権に対する優先権(=先取特権)が付与されます。養育費の不払いが生じた際には優先的に回収できるほか、確定判決などの債務名義がなくても強制執行の申立てが可能となります。
特に養育費の支払いを滞らせた場合は、先取特権に基づくスムーズな強制執行が可能となる点に注意が必要です。強制執行が申し立てられると、預貯金、給与、不動産などの財産が差し押さえられてしまいます。特に高額所得者の場合は、趣味やコレクションとして所有している動産なども差し押さえの対象になるのでご注意ください。
7. 年収2000万円以上の高額所得者の養育費や離婚に関する注意点
年収2000万円以上の高額所得者が離婚する際には、特に以下のポイントに注意しつつ対応しましょう。適切な条件でスムーズに離婚を成立させるためには、弁護士のサポートを受けることをおすすめします。
7-1. 養育費算定表では計算できない|複雑な検討が必要
義務者が給与年収2000万円(自営年収1567万円)を超える場合は、養育費算定表を用いた養育費の計算ができません。本記事で詳しい計算方法を紹介しましたが、適切に養育費の額を計算するのは大変であるうえに、裁判例によって考え方が異なる部分もあります。
高額所得者が支払う養育費の額を取り決める際には、複雑な検討が求められます。弁護士と相談しながら対応しましょう。
7-2. 子どもに質の高い教育を受けさせるには、特別費用の分担もきちんと決めるべき
毎月支払う養育費のほか、一時的に発生する以下のような費用についても、特別費用として父母間で分担することが望ましいです。
私立学校の学費(入学金、授業料など)
塾や習い事の費用
留学費用
通学などに用いる車の購入費用
医療費
特に高額所得者の家庭では、子どもの教育に大きな関心を寄せるケースが多く、高額の教育費がかかる例がよく見られます。特別費用を巡るトラブルを防ぐため、離婚時において特別費用の取り扱いを話し合って合意しておきましょう。
7-3. 養育費以外に、財産分与も重要な論点となる
高額所得者が離婚する際に、養育費以外に大きな問題になりやすいのが財産分与です。財産分与では、婚姻期間中に取得した財産を夫婦間で公平に分けます。財産分与割合は2分の1ずつとするのが原則です。高額所得者の場合は、数千万円から数億円程度の財産分与が生じるケースも少なくありません。
具体的な財産分与の内容は、夫婦間で話し合って決めることになります。その前提として、財産の調査や評価などを適切に行うことが必要です。弁護士のサポートを受けながら、適正な内容による財産分与の合意を目指しましょう。
8. 年収2000万円以上の高額所得者の離婚について弁護士に相談するメリット
年収2000万円以上の高額所得者が離婚する際には、財産分与や養育費など、お金に関する離婚条件が大きな論点になりがちです。協議や裁判手続きの進め方次第で、支払う金額が大きく変わります。
弁護士に相談すれば、家庭の状況に応じた適正な離婚条件の内容や、離婚手続きを進める際の方向性などについてアドバイスを受けられます。実際の協議、調停、訴訟などの手続きも、弁護士に依頼すれば全面的に代行してもらえるので、労力やストレスが大幅に軽減されます。
適正な条件でスムーズに離婚を成立させるためにも、離婚を検討している高額所得者の方は、早い段階で弁護士にご相談ください。

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9. 年収2000万円以上の養育費相場に関するよくある質問
義務者より権利者の方が収入が高い場合でも、基本的には養育費算定表を用いれば、養育費の目安額が分かります。ただし、権利者が給与年収1000万円(自営年収763万円)を超える場合は、養育費算定表を用いることができず複雑な計算が必要になるので、弁護士にご相談ください。
夫婦間で合意すれば、養育費の額を自由に決めることができます。特に上限は決められていません。支払う側の所得が非常に高い場合は、交渉次第で養育費を月100万円以上とすることもあり得るでしょう。
裁判所が養育費の金額を決定する際には、養育費算定表の上限で頭打ちにするという考え方が取られるケースも多く、月100万円以上となる可能性は低いと考えられます。
養育費の適正額は、支払う側の年収だけでなく、受け取る側の年収や子どもの人数、年齢などによって決まります。そのため、養育費を月20万円もらえる相手の年収については一概に言えません。
14歳以下の子どもが2人いて、自分も相手も給与所得者の場合を例に挙げると、自分の年収が100万円なら、相手の年収が1200万円程度のときに養育費が月20万円程度となります。また、自分の年収が300万円なら、相手の年収が1360万円程度のときに養育費が月20万円程度となります。
相手と話し合って養育費を減額することは可能です。相手が減額に応じない場合は、家庭裁判所に養育費減額調停を申し立てれば、調停または審判によって減額が認められることがあります。
10. まとめ 年収2000万円以上の場合の養育費の決め方は複雑、弁護士に相談を
年収2000万円以上の高額所得者は、離婚時に多額の養育費を請求される可能性があります。養育費算定表をそのまま適用できない場合、養育費の計算方法は複雑になります。弁護士に相談して、適正な養育費の額を取り決めましょう。
弁護士は養育費の問題だけでなく、財産分与や親権争いなどその他の離婚条件についても、相手との交渉や裁判手続きをサポートしてくれます。適正な条件でスムーズに離婚を成立させるためにも、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。
(記事は2025年7月1日時点の情報に基づいています)