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養育費はいつまで支払うべき? 進学する場合や期間変更する方法について解説

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子どもが社会的・経済的に自立するとされる20歳になるまでが一般的です
子どものいる夫婦が離婚する場合、養育費について取り決めることになりますが、いつまで支払う必要があるのでしょうか。また、いったん取り決めた内容を変更することは可能なのでしょうか。この記事では養育費の支払い期間や支払方法、取り決めた内容を変更したい場合などについて弁護士が解説します。
目 次
  • 1. 養育費はいつまで支払うべき?
  • 1-1. 「20歳になるまで」が一般的
  • 1-2. 20歳未満で支払いが終わるケース
  • 1-3. 20歳を超えても支払いが必要なケース
  • 2. 養育費の支払い方法
  • 2-1. 月々支払う
  • 2-2. 一括で支払う
  • 3. 養育費の支払い期間や金額は変更できる
  • 3-1. 「成人するまで」は18歳・20歳どちら?
  • 3-2. 共同親権の制度導入による影響は?
  • 3-3. 環境の変化を理由に変更することもある
  • 4. 再婚で養育費をいつまで支払うかは変わる?
  • 4-1. 受け取る側が再婚する場合
  • 4-2. 支払う側が再婚する場合
  • 5. 養育費の支払い期間の変更については弁護士に相談を
  • 6. 養育費に関するよくある質問
  • 7. まとめ 養育費をいつまで支払うべきかは離婚時の話し合いで決めることが重要

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1. 養育費はいつまで支払うべき?

養育費をいつまで支払うべきかについて、一般的には子どもが20歳になるまでが目安 となります。しかし、子どもが20歳未満で支払いが終わるケースもあれば、20歳を超えても支払いが必要なケースがあるなど、個々の状況により判断は異なります

1-1. 「20歳になるまで」が一般的

養育費は、子どもが社会的・経済的に自立するとされる20歳になる月までを目安に支払うことが一般的 です。両親には、ともに子どもを養う扶養義務があり、離婚したからといってこの義務がなくなることはありません。そのため、子どもと同居して養育する親に対して、離れて暮らす親(別居親)が養育費を支払うことで金銭的なサポートをします。

養育費は、離婚時に親権者や面会交流の条件などと同じタイミングで決めることが一般的で、原則として取り決めた期間まで支払う必要があります。ただし、子どもの進路に変更があった場合などは、その限りではありません。

離婚時に子どもの将来の進路まで決めておくことは難しいため、ある程度の年齢に成長したときに再度、養育費について協議をする場合もあります。

1-2. 20歳未満で支払いが終わるケース

子どもが20歳未満であっても、高校卒業後に就職し、ある程度の収入を稼ぐことができる場合は、自立していると判断できます。このような場合、子どもは未成熟子ではなくなったものとして、養育費の支払い義務がなくなると考えられます 。また、子どもが20歳になる前に結婚した場合も、社会的に自立していると考えられるため、養育費の支払い義務はなくなる可能性が高いです。

他にも、親権者が再婚し、子どもが再婚相手と養子縁組をした場合は、養親が実親に優先して扶養義務を負うため、養育費の支払いが減額・免除されることもあります。

加えて、養育費の支払い義務者が失業や病気などにより経済状況が悪化した場合も、減額・免除されることがあります。なお、これらの事情があった場合でも、自己判断で養育費の支払いを止めることはリスクを伴いますので、事前に弁護士に相談することをおすすめします。

1-3. 20歳を超えても支払いが必要なケース

一般的に、養育費の支払いは子どもが20歳になるまでが目安となりますが、その年齢を超えても自立できていなければ、支払いが継続となるケースが多いです。具体的には、「子どもが大学に進学する場合」「子どもに障害がある場合」などが考えられます。

文部科学省の「令和5年度学校基本統計」によると、2023年度の大学(学部)進学率は57%を超えていることから、多くの子どもが高校を卒業しても就職せずに大学へと進学していることがわかります。20歳を超えても学生のままなら、経済的に自立していないことがほとんど だと判断できるでしょう。

離婚時に、子どもがすでに大学に進学している、または進学することが決まっている状態であれば、それを考慮して養育費の支払い期間を取り決めます。このような場合、養育費の支払期限は、「子が満22歳に達したあと最初に到来する3月まで」とすることが多いです。まだ子どもが幼く大学に進学するかどうか決まっていないような場合でも、養育費を支払う側(義務者)の同意があれば、支払いの終期を「子が満22歳に達したあと最初に到来する3月まで」とすることは可能です。

なお、協議だけでは折り合えずに家庭裁判所の審判や離婚裁判を経る場合、支払い義務者による子どもの大学進学についての同意があれば、卒業までの期間の支払いが認められやすくなっています。大学進学に同意していないような場合には、子どもの両親の学歴や資力、職業なども判断要素になります。親が高学歴だったり高収入だったりという環境にあり、子どもが大学進学を希望しているのであれば、卒業までの期間の養育費の支払いが認められやすい傾向があります。

また、子どもの心身に障害がある場合、20歳になったあとも入通院が必要であったり、働くことができなかったりする場合 があります。このような状況下では、20歳を超えてもまだ未成熟子であるといえるため、養育費の請求ができる可能性があります。ただし、20歳を超えても請求するためには、単に「障害がある」という理由だけではなく、それにより経済的な自立が困難な事情を具体的に主張していくことが重要になります。

2. 養育費の支払い方法

養育費はどのような方法により支払われるのでしょうか。原則としては月々支払う方法になりますが、ケースによっては離婚時に一括で支払う方法をとることもあります。

2-1. 月々支払う

養育費は子どもの日々の生活費として支払われるものであるという性質上、原則として一括払いではなく定期金払い(毎月払い)によって支払われる べきであると考えられています。金額については、家庭裁判所が基準とする「養育費算定表」を参考にして決めるのが一般的です。この算定表では、子どもの人数や年齢、父母の収入などをもとに金額を算出しています。

ただし、毎月払いは途中から不払いになってしまうケースが非常に多いことが現実としてあります。不払いのリスクを防ぐためには、養育費について取り決めた内容を「公正証書」にすることが重要 です。公正証書には「強制執行認諾文言」をつけることができるため、万が一養育費が不払いとなった場合であっても、相手の財産の差押えなどを裁判、調停、審判などの手続きを経ることなく実行できます。

2-2. 一括で支払う

養育費を一括で支払う場合は、養育費算定表に基づいて月額の金額を算定し、そこに支払い期間を乗じることで算出します。ただし、養育費を一括で支払う方法は、一般的に分割払いよりも支払総額が少なくなることが多い です。これは、養育費を支払う側(義務者)の負担を考慮し、金額自体は減額することを条件として取り決めをする場合がほとんどであるためです。

受け取る側(権利者)にとっても不払いや滞納のリスクがないので、その点をメリットとして一括払いを希望するケースも少なくありません。ただし、金額によっては贈与税の課税対象となってしまうため注意が必要です。

3. 養育費の支払い期間や金額は変更できる

養育費の支払い期間や金額については、主に離婚時の条件とともに取り決めます。しかし、一度取り決めた内容であっても、当事者同士の話し合いにより相手の了承を得られれば、支払い期間を延長・短縮したり、金額を増減することは可能です。

協議をしても相手との合意ができない場合は、家庭裁判所で調停手続きを行うこととなります。調停でも相手との合意まで至らない場合、今度は審判手続きに移り、養育費については裁判所が判断することになります。

なお、裁判所から養育費の変更を認められるためには、元々の合意内容を維持することが双方の公平に反したり、取り決め時には予想できなかったり、やむを得なかったりしたといった「事情変更」が生じたことを立証する必要があります。

3-1. 「成人するまで」は18歳・20歳どちら?

改正民法の施行により、2022年4月1日から成人年齢が18歳となりました。しかし、養育費の支払い期間が当然に18歳までとなるわけではない というのが、法務省の見解となります。

そのため、子どもが18歳に達し成人したとしても自立していなければ未成熟の子どもとみなされ、養育費の支払い義務も残ります 。また、成人年齢の引き下げ以前に支払い期間を「成年に達するまで」と取り決めていた場合も、合意時点での成人年齢である20歳まで続くことになります。

これから養育費について話し合うのであれば、いつまで支払ってもらうかについては具体的に「子どもが○歳になるまで」といった形でわかりやすく取り決めておくとよいでしょう。

3-2. 共同親権の制度導入による影響は?

2024年5月に成立した改正民法のもと、2026年5月までには共同親権制度が開始されます。離婚後に共同親権となった場合、養育費の支払いに何か変化はあるのでしょうか。

結論から言うと、離婚後に共同親権となった場合でも、別居親が養育費を支払う負担はなくなりません 。単独親権であろうと共同親権であろうと、離婚によって実子との親子関係はなくならないため、養育費の支払い義務に変わりはないのです。

なお今回の改正民法により、養育費が支払われない場合で養育費に関する合意書があるなど一定の条件を満たしていれば、養育費の請求権について優先的に差し押さえができる「先取特権」が与えられます。そのほか、養育費の取り決めをしていない場合でも最低限の費用を請求できる「法定養育費」が新たに導入されます。今後は新たな制度下でどのように実務に変化があるのか、注視していく必要があるでしょう。

3-3. 環境の変化を理由に変更することもある

養育費は、両親の収入や子どもの人数・年齢などに応じて、協議や調停、審判といった方法で具体的な金額を取り決めます。しかし、親(支払う側、受け取る側)や子どもの環境、事情に変化があった場合には、内容変更が認められることもあります。

増額や減額といった金額変更の請求ができる主なケースは、以下となります。

【親の収入の大幅な増減】
転職や退職といった理由で、養育費の取り決め時点と比べて支払う側や受け取る側の収入に大幅な増減が生じるときもあるでしょう。そのようなときは、増額や減額を請求することが可能です。

【親の再婚】
支払う側あるいは受け取る側が再婚した場合は、養子縁組等の事情に応じて養育費の減額請求が認められる可能性があります。

【子どもの進学】
子どもが進学や留学をすることになり、多額の教育費が必要となる場合もあるでしょう。そうした際に養育費の増額請求が認められるかについては、両親の収入といった経済的な事情以外にも、両親の学歴、職業、支払う側が進学に了承していたかなど、さまざまな事情を踏まえたうえで決められます。

【子どもまたは親の病気・けが】
養育費の基準となる算定表では、一般的な医療費は基準額の範囲内に含まれていますが、取り決めた時点で想定できないような特別な病気やけがによる医療費までは含まれていません。よって、そうした特別な医療費が子どもに必要となった場合には、受け取る側と支払う側双方の収入に応じて按分したうえ、支払い義務者が負担するべき金額分について増額を求めることができます。

また、子どもではなく、支払う側・受け取る側の親の病気・けがにより特別の医療費が必要となった状況で、就労が困難な状況に陥ったり減収につながったりするような場合には、増額あるいは減額請求が認められる可能性があります。

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4. 再婚で養育費をいつまで支払うかは変わる?

養育費を受け取る側が再婚する場合、または支払う側が再婚する場合、「養育費の支払い期間が変わるのではないか」と考える人もいるでしょう。

再婚をしたからといって、必ずしも養育費の支払い期間や金額を変更できるわけではありません。しかし、場合によっては減額請求を認められる可能性があります。

4-1. 受け取る側が再婚する場合

養育費を受け取る側が再婚をしただけでは、支払い期間や金額に変更は生じません。しかし、再婚相手と子どもが養子縁組した場合は、再婚相手(養親)が実親よりも優先して子どもに対する扶養義務を負うため、養育費が減額されたり免除されたりする可能性が高くなります 。ただし、再婚相手が無職・無収入であるような場合は、免除が認められないこともあります。

また、再婚相手と子どもが養子縁組しない場合であっても、再婚相手に経済的な余裕があり、子どもが事実上その扶養を受けているなど、支払う側に負担を求める必要性がなくなるようなケースもあるでしょう。このような場合は、支払う側の負担を減らし、受け取る側との公平性を保つ必要が出てくることから、養育費が減額または免除となることもありえます。

4-2. 支払う側が再婚する場合

養育費を支払う側が再婚した場合も、それだけでは支払い期間や金額に変更はありません。しかし、養育費を支払う側が再婚相手の子どもと養子縁組をすると扶養しなければならない人数が増えるため、支払う側の負担増加を理由として、元配偶者との子どもに対する減額が認められる可能性が高くなります

また、再婚相手との間の子どもが生まれた場合も同様に、支払う側の負担増加を理由として、養育費の減額が認められる可能性が高まります 。再婚した家庭で生まれた子どもと、元配偶者との子どもに対する扶養義務は同等であると考えられているためです。

加えて、再婚相手に何らかの事情があり働くことができない場合、また働いていたとしても生活を賄うには足りない程度の収入しかない場合は再婚相手も扶養しなければならず、この場合も減額の根拠となる可能性があります。

なお、減額が認められない可能性が高いのは、養育費を取り決めたときにはすでに再婚相手の妊娠がわかっていたといった場合です。これは、予期することのできない事情変更があったとはいえないためです。

5. 養育費の支払い期間の変更については弁護士に相談を

養育費の支払いは親としての義務であるため、子どもが社会的・経済的に自立するとされる20歳になるまで支払うのが一般的です。しかし、両親や子どもの事情によっては、支払い期間を変更できる可能性もあります。

期間変更や減額・増額したいなど養育費について悩みがある人は、ぜひ弁護士に相談してみてください。弁護士は各家庭の事情をヒアリングしたうえで、支払い期間や金額を変更できる可能性について適切にアドバイスします。

また、弁護士に依頼すれば、代理人として元配偶者と交渉することも可能です。間に弁護士という第三者が入るとお互いに冷静になり、スムーズに養育費の話し合いができるようになることが多いです。法律知識が豊富な弁護士が相手を説得して、早めに解決できるよう尽力してくれます。双方の意見がまとまらない場合でも、弁護士なら調停や裁判の煩雑な手続きを円滑に進めてくれるでしょう。

6. 養育費に関するよくある質問

Q. 養育費はいつまで遡って請求できる?
離婚協議書や公正証書、調停調書などの書面で養育費の支払い義務を取り決めていた場合には、消滅時効にかかっていない限り、過去に遡って請求することが可能です。なお、養育費の請求権は、離婚協議書や公正証書での取り決めの場合は5年、家庭裁判所の調停や審判、離婚訴訟で取り決められた場合は10年で消滅時効にかかります。 また、養育費について取り決めしていない場合であっても、相手方が支払うことを了承すれば、支払いを受けることができます。
Q. 養育費の支払い義務がなくなるのはいつ?給料差し押さえはいつまで?
子どもが満20歳になるまでは自立していないものとする考えが一般的なため、養育費の支払い義務も基本的に子どもが満20歳になるまで続きます。 養育費の合意内容を公正証書にしている場合や、調停調書、判決書などにおいて養育費の支払い義務が定められている場合は、強制執行が可能となります。そのため、相手の同意なしに養育費の支払いを一方的に打ち切ると、支払い義務がある限りは強制執行によって給与や預貯金などを差し押さえられる可能性があります。
Q. 子どもが大学(大学院)に行くとは想定していなかったときはいつまで払う?
支払い義務者が子どもの進学について同意していない場合、もしくは想定していなかった場合は、当然に卒業までの養育費の支払いが認められるわけではありません。とはいえ、養育費は子どもが自立するまで支払うのが一般的です。子どもが学生の間は一人立ちすることが難しいため、大学卒業までは養育費を支払わなければならない可能性が高いです。 一方、大学院へ進学する場合、金額の増額や支払い期間の延長が認められるかはケースバイケースです。
Q. 子どもが障害児の場合、いつまで支払うべき?
子どもに障害があったとしても、障害があることのみで社会的・経済的に自立できない状態(=末成熟子)とはいえません。子どもの障害の程度や仕事をした場合の能力などを総合的に考慮して、末成熟子といえるのかどうかが判断されます。そのうえで未成熟子と判断された場合には、特段の事情がない限り、養育費を支払う必要があります。 一方、未成熟子と言えない場合は、同居親の収入で子どもの生活費を賄いきれるか、そうでなければどの程度不足しているのかといった個々の事情を考慮する必要があります。

7. まとめ 養育費をいつまで支払うべきかは離婚時の話し合いで決めることが重要

養育費の支払いは親としての義務であるため、子どもが社会的・経済的に自立するとされる20歳になるまで支払うのが一般的 です。しかし、子どもの大学への進学や障害のために20歳を超えても支払いが必要となる場合も あります。

離婚する際には、支払い期間や金額について、話し合いで決めておく ことが非常に重要です。養育費は子どもの生活を支えるとても大切なもので、支払い期間や金額の設定、進学や入院といった臨時費用の扱いはどうするかなど、将来を見据えて考えなければならないことがたくさんあります。

離婚時の養育費の取り決めについて不安を抱えている人は、ぜひ一度弁護士にご相談ください。

(記事は2025年1月1日時点の情報に基づいています)

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