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1. 托卵とは?
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1-1. 「托卵妻」や「托卵女子」とは?
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1-2. 「托卵女子」はなぜ托卵する?
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1-3. 托卵について調べる方法
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2. 托卵をされていたら離婚できる?
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3. 托卵で離婚する場合の慰謝料はどうなる?
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3-1. 慰謝料の金額の相場
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3-2. 慰謝料を請求する方法
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3-3. 慰謝料請求をする相手
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4. 托卵で離婚する場合の財産分与はどうなる?
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5. 托卵離婚のその後|親子関係や養育費はどうなる?
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5-1. 嫡出否認の訴え
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5-2. 親子関係不存在確認の訴え
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5-3. 親子関係を否定できないときは妻に権利の濫用を主張
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6. 托卵離婚を弁護士に相談するメリット
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6-1. 精神的な負担の軽減
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6-2. 最適な方法で解決できる
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7. 托卵についてよくある質問
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8. まとめ 托卵が疑われる場合や托卵が発覚した場合は弁護士に相談を
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1. 托卵とは?
「托卵(たくらん)」とは本来、カッコウやホトトギスなどの鳥が、ほかの鳥の巣に自分の卵を産みつけて、代わりに育てさせる行動を意味します。
しかし、最近では人間関係でも比喩的に用いられ、ほかの男性の子どもを意図的に自分の夫に育てさせる行為の表現としても使われています。
1-1. 「托卵妻」や「托卵女子」とは?
「托卵妻」や「托卵女子」とは、夫以外の男性との子を夫に実の子であると信じさせ、育てさせる女性のことです。
1-2. 「托卵女子」はなぜ托卵する?
鳥が托卵するのは、巣を分散させることによって外敵の攻撃を回避したり、巣づくりにかかる労力を省いたりして、効率的に子孫を残すことが理由だそうです。
一方、「托卵女子」が托卵するのには別の理由があります。
ケースバイケースですが、「不貞相手との子どもを妊娠してしまい、夫からの離婚や慰謝料請求を避けたい」「経済的に自立していない女性が、養ってもらうことだけを目的にある男性の子を身ごもったと言って結婚するが、実はその子はほかの男性との間でもうけた子どもだった」といった事例が見受けられます。
1-3. 托卵について調べる方法
配偶者が「托卵」をしているのではないかと疑いを持った場合、托卵を調べる方法は主に以下の3つです。
【妻に直接聞いてみる】
最もわかりやすく、直接的な方法です。ただし、托卵を素直に認める女性は少ないでしょうから現実ではとりにくい方法と言えます。
【血液型を調べる】
自分と妻の血液型の組み合わせからは産まれるはずのない血液型の子が産まれれば、「自分の子ではない=托卵であること」がわかります。
ただし、偶然自分と不貞相手の男性の血液型が一致した場合は参考にならないこと、胎児の段階では血液型を特定することができないことなどから、托卵を特定できる場面は限定的です。
【DNA鑑定を行う】
托卵を確認する最も確実な方法はDNA鑑定 です。子どもと父親のDNAを比較することで血縁関係を確認できます。最近では個人で利用できるDNA鑑定サービスも増えています。
鑑定の実施にあたっては、サンプルの提供などについて妻の協力が必要であり、妻が協力を拒否すればこれを強制することはできません。
ただし、妻が協力を拒否することについて合理的な理由がない場合、協力しないという事実自体が、夫以外の子であることを推認させる事情となり得るため、協力を拒否された場合には、その理由を追及することが重要となります。
2. 托卵をされていたら離婚できる?
托卵の事実が発覚した場合、夫は離婚を請求することができます。
配偶者が自分以外の男性の子を妊娠したということは、自分以外の男性との性行為があったことが強く推認されるためです。つまり、「配偶者に不貞な行為があったとき」にあたり、法律が定める離婚事由が認められます。
仮に妊娠や性行為自体は結婚前であった場合や、体外受精や顕微授精など性行為を伴わない方法によって妊娠をした場合でも、それを隠して出産したこと自体が「婚姻を継続し難い重大な事由がある」ものにあたるため、離婚が認められる可能性は高いです。
逆に、托卵した妻から離婚を請求することはできません。托卵妻は離婚の原因をつくった有責配偶者となるためです。ただし、夫が離婚に同意した場合に限り、離婚できます。
3. 托卵で離婚する場合の慰謝料はどうなる?
托卵が原因で離婚する場合、夫が妻に対して慰謝料を請求するケースが一般的です。相場や請求する方法などについて解説します。
3-1. 慰謝料の金額の相場
一般的に不貞行為が原因で離婚した場合の慰謝料の相場は200万から300万円と言われており、托卵離婚の場合も同様に考えられます。
もっとも、托卵による精神的な苦痛は、単なる不貞行為より重いと考えることもできます。「実の子」と信じて育ててきた期間が長期間に及ぶなど、行為の悪質さや夫の苦痛の度合いが大きいケースでは、200万から300万円の相場を超える金額が認められる可能性もあります。
3-2. 慰謝料を請求する方法
托卵を理由に妻に対して慰謝料を請求する場合、まず任意の支払いを求める交渉をします。
妻が支払いに応じなかったり、支払額で折り合いがつかなかったりした場合は、調停や裁判で支払いを求めることになります。
なお、慰謝料の請求は単体で調停や裁判を起こすこともできますし、離婚調停や離婚裁判のなかで合わせて請求することも可能です。
3-3. 慰謝料請求をする相手
慰謝料請求の相手は托卵妻のほか、不貞相手の男性も対象になります。どちらか一方に請求することも、両者に対して同時に請求することもできます。
ただし、相手男性が、既婚者と知らずに妻と関係をもった場合や、不貞行為の当時、すでに夫婦関係が破綻していたと認められた場合などは慰謝料請求はできないため注意が必要です。
4. 托卵で離婚する場合の財産分与はどうなる?
夫婦が共同して築き上げた財産を離婚の際に分け合うことを財産分与と言います。
財産分与は、主に夫婦が築いた財産を離婚時に清算することを目的としているため、托卵による離婚であっても、財産を清算する必要性は消えず、通常の離婚と同様に2分の1ずつ分配するのが原則です。托卵や不貞行為による精神的苦痛は、財産分与ではなく慰謝料として補償されるべきものとされています。
なお、夫婦間で財産分与をしないとする合意も有効ですが、後々揉めないように離婚協議書や公正証書などの書面でその旨をきっちり定めておくほうが望ましいでしょう。

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5. 托卵離婚のその後|親子関係や養育費はどうなる?
托卵が発覚して離婚に至った場合でも、法律上の親子関係がすぐに否定されるわけではありません。
というのも、以下の3つのケースでは夫の子どもであることが推定されるからです。これを「嫡出推定(ちゃくしゅつすいてい)」と言います。
婚姻の成立した日から200日を経過した日よりあとに生まれた子
離婚等により婚姻を解消した日から300日以内に生まれた子
婚姻解消の日から300日以内に生まれた子のうち、母が前夫以外の男性と再婚したあとに生まれた子
上記のいずれかに当てはまる子は、夫婦間の子である「嫡出子」として扱われます。そのため、これを覆さない限り、父子関係があるものとして各種の権利や義務も生じてしまいます。
5-1. 嫡出否認の訴え
嫡出子として扱われる子について、嫡出子であることを否定するためには、嫡出否認の訴えを起こす必要があります。
嫡出否認の手続きで注意すべきポイントは2点あります。
まず、裁判所外で完結することはできないということです。
夫妻ともに子が嫡出子でない点に争いはないとしても、裁判所外で合意をし、手続きを進めることはできません。必ず裁判所に嫡出否認の訴えを起こし、調停またはは裁判手続きを利用する必要があります。
次に留意すべきは、手続きは子の出生から3年以内に行う必要があるということです。これは2024年4月1日以降に生まれた子に限り、それ以前の場合は出生から1年以内です。
子どもがいつまでも嫡出子かどうかが決まらなければ子どもの地位は不安定なものとなってしまうため、子の出生から3年(夫は出生を知ったときから3年)以内に嫡出否認の訴えを申し立てなければ、それ以降、嫡出性を争うことはできないものとなっています。
弁護士として私が男性側の相談を受けているなかで、嫡出否認を希望しながらこれをあきらめなければならない理由で最も多いのは、この3年(従前は1年)を経過してしまったというものです。自分の子どもではないと疑いを持ったとしても、すぐに嫡出否認の手続きをとるケースは少なく、弁護士に相談する時点ですでに子どもが3歳以上になっていた場合も少なくありません。
非常に悩ましい問題ですが、わが子がどうかの疑いを持った時点ですぐに弁護士に相談することをお勧めします。
5-2. 親子関係不存在確認の訴え
民法に明文の規定はないものの、何らかの事情によって実の父または母の子ではないにもかかわらず、その子として戸籍がつくられている場合には、親子関係の不存在を確認する訴えを起こすことができます。
この手続きによって、生物学上の親子関係がないことが確認されれば、法的に親子関係がないと確定し、戸籍を訂正することも可能です。
この親子関係不存在確認の手続きは、嫡出否認の訴えと違い、出生から3年という時間制限はなく、いつまでも申し立てることが可能です。そうすると、嫡出推定の時間制限を過ぎてしまった場合でも、この手続きをとればよいと思うかもしれません。
しかし、この手続きには嫡出推定が及ばないことという要件があり、嫡出否認の手続きの対象となる人は、この親子関係不存在確認の訴えを起こすことはできません。法律が嫡出推定の手続きにわざわざ時間制限を設けた以上、いつでもこの手続きをとることができるとすれば、嫡出推定に時間制限を設けた意味がなくなってしまいます。
これは、DNA検査で、親子の生物学的なつながりがないことが判明した場合であっても同様です。嫡出否認の時間制限を超過したあとに、DNA検査の結果をもとに親子関係を否定することはできないのです。
5-3. 親子関係を否定できないときは妻に権利の濫用を主張
法的な父子関係が認められる場合、父は子を監護養育する義務を負います。
托卵された父の側からすると、自分と生物学的なつながりのない子の監護養育義務を負わされることには強い抵抗感を覚える可能性が高いと言えるでしょう。
自身と生物学的なつながりのない子の養育費の支払いをめぐって争いとなった裁判で、最高裁が、男性側が養育費の支払い義務を負うのが原則であることを前提としつつ、妻から夫に対して子の養育費の負担を求めることが「権利の濫用」にあたると判断した判例があります。
弁護士としての経験上、権利の濫用が認められる場面は限定的に思われますが、悩んでいる場合は弁護士に相談することをお勧めします。
6. 托卵離婚を弁護士に相談するメリット
托卵離婚を弁護士に相談するメリットは主に2つあります。
6-1. 精神的な負担の軽減
托卵は、不倫だけでなく、子の実の父を偽るという二重の裏切り行為です。
托卵が発覚したあとは、非常に大きな精神的負担がかかりますし、冷静に対処することは極めて難しいでしょう。弁護士に相談すれば、精神的な負担を軽減しながら適格に対処することが可能です。
6-2. 最適な方法で解決できる
托卵離婚では、離婚問題のほか、嫡出否認の手続きを含め親子関係をどうするのか、慰謝料請求をするのかどうかなど多くの問題が同時に発生するため、すべてを的確に処理することは困難です。
嫡出否認には子の出生から3年以内という時間制限があるため、複雑な手続きを弁護士に一任できることは大きなメリットがあります。
7. 托卵についてよくある質問
8. まとめ 托卵が疑われる場合や托卵が発覚した場合は弁護士に相談を
近年、ほかの男性の子どもを意図的に自分の夫に育てさせる「托卵」というテーマが目立って取り上げられるようになってきました。
托卵が原因の離婚問題では、離婚、親子関係、慰謝料という複数の問題が発生し、自力ですべてを的確に処理することは困難と言え、精神的な負担も大きなものとなります。
手続きには3年以内という時間制限もあります。托卵が疑われる場合や托卵が発覚した場合は、すぐに弁護士に相談することをお勧めします。
(記事は2024年12月1日時点の情報に基づいています)