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1. 示談書とは
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2. 示談書にサインしてしまったらどうなる?|サインした示談書は原則有効
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3. サインした示談書が無効や取り消しになるケース
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3-1. 内容が公序良俗に反する場合(民法90条)
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3-2. 強迫行為があった場合(民法96条)
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3-3. 詐欺行為があった場合(民法96条)
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3-4. 錯誤に基づいて、契約を締結した場合(民法95条)
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4. サインしてしまった示談書の無効や取消しを主張する方法
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4-1. 相手方と協議して示談書の撤回を求める
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4-2. 裁判で争う
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5. 示談書に関する悩みは離婚に詳しい弁護士に相談を
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6. 示談書にサインしてしまった際によくある質問
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7. まとめ|示談書の問題は、男女トラブルの対応に強い弁護士に相談を
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1. 示談書とは
「示談書」とは、何らかのトラブルがあった場合に、その当事者間で、トラブルを解決する条件を約束 するものです。
たとえば、不倫トラブルの場合であれば、以下のような内容を盛り込みます。加害者は不倫した人、被害者は不倫された人を指します。
加害者は、被害者に対し、不倫した事実を謝罪する
加害者は、被害者に対し、慰謝料200万円を支払う
加害者は、被害者に対し、もう配偶者には接触しないことを約束する
今回のトラブルについて、第三者に口外しない
この示談書の成立をもって、このトラブルは解決したものとする
そのほかに、合意書、確認書、和解書という題名の書面もつくられることがありますが、「トラブルを解決する条件」が定められていれば、題名が異なるだけで、その意味合いは示談書と同じです。
2. 示談書にサインしてしまったらどうなる?|サインした示談書は原則有効
法の大原則として「契約自由の原則」というルールがあります。これは、当事者は自由に契約を締結することができ、その契約は原則有効で当事者を拘束するというものです。
示談書も一種の契約であるため、この契約自由の原則により、原則有効となります。そのため、示談書にサインした以上は原則示談書の内容に従う必要 があります。
3. サインした示談書が無効や取り消しになるケース
もっとも、契約自由の原則にも例外があり、例外に該当する場合には民法に照らして示談書の効力を否定できます。
不貞慰謝料の示談書の場合でよくあるのは以下の4ケースであり、それぞれの内容を紹介します。
3-1. 内容が公序良俗に反する場合(民法90条)
「内容が公序良俗に反する場合」とは、簡単に言えば、その内容が一般的に考えると明らかに不当であったり、違法なケースです。わかりやすいものであれば、「人を殺した場合には、報酬を支払う」という契約は、違法な行為を約束したものであり、公序良俗に反して無効となります。
不貞慰謝料の示談書のケースでは、慰謝料の金額が一般的な相場からかけ離れた金額の場合には、相場を超える部分は公序良俗に反し無効となることがあります 。
不貞慰謝料の相場は100万円から300万円程度になることが多いため、たとえば1000万円の慰謝料を支払うという示談書にサインした場合、特殊な事情がなければ300万円を超える部分は無効となり、実際の支払金額は300万円になるといったケースが考えられます。
3-2. 強迫行為があった場合(民法96条)
「強迫行為があった場合」とは、相手から体や名誉に対し危害を加えることを伝えられ、怖くなって示談書にサインしたようなケースです。
不貞慰謝料の示談書締結の場面でよくあるのは、不倫相手の配偶者から「示談書にサインしないと、あなたの職場に不倫の事実をばらす」「あなたの配偶者にも不倫をばらす」などと脅されて、示談書にサインしたといったケースが挙げられます。このような場合には、民法が適応され示談書の成立を取り消すことが可能です。
3-3. 詐欺行為があった場合(民法96条)
「詐欺行為があった場合」とは、相手に騙されてサインしたような状況を指します。
不貞慰謝料のケースで言うと、不倫相手の配偶者から「不貞されて大変ショックを受けたから、慰謝料を払え」と言われて示談書にサインしたものの、のちのち調べてみると、不倫の時点ですでに夫婦は別居しており、婚姻関係が破綻していたと言えるような場合です。こうした状況でも、示談書の成立を取り消すことができます。
3-4. 錯誤に基づいて、契約を締結した場合(民法95条)
「錯誤に基づいて、契約を締結した場合」とは、簡単に言うと勘違いで契約してしまったケースです。
不貞慰謝料の示談書締結の場面では、不倫相手の配偶者が急に会いに来て、示談書にサインしてほしいと言われ、「慰謝料100,000円」と書いてあると思い込みサインしたところ、家に帰ってから見てみると「慰謝料1,000,000円」と書いてあったようなケースが当てはまります。
4. サインしてしまった示談書の無効や取消しを主張する方法
上記のような理由から、思いがけずサインしてしまった示談書の無効や取消しを主張するためには、大きく2つの方法が考えられます。
4-1. 相手方と協議して示談書の撤回を求める
契約は原則、当事者を拘束するものですが、当事者全員が撤回してよいと合意した場合には撤回することが可能です。そのため、一度本意ではない示談書にサインしてしまった場合でも、相手が撤回することに応じてくれるのであれば、撤回することができます 。
もっとも、相手としては一度サインしたものを素直に撤回してくれる可能性は限りなく低く、きちんとした理由や根拠を示し、相手を納得させない限り撤回には応じてくれないはずです。
先ほど説明した公序良俗違反、あるいは強迫や詐欺行為があった場合には、弁護士に依頼すれば、その問題点を指摘し、撤回するよう求めることができます 。きちんとした根拠を示し、論理的に説得することで撤回に応じてもらえる可能性が高まります。
4-2. 裁判で争う
相手が示談書の撤回に応じない場合、最終的には裁判で示談書の有効性が争われることになります。
「私には慰謝料を払う義務がないんだ」と主張して、相手の要求が過剰である際などに用いる債務不存在確認訴訟を提起することも可能ですが、基本的には相手から「示談書どおりに慰謝料を支払え」という内容の裁判を起こされて、そのなかで示談書の有効性を争うことになります。
裁判のなかでは、上述したような公序良俗違反の有無、強迫や詐欺、あるいは錯誤の有無が判断されることになります。これは示談書の効力を否定する側が証拠をもって証明する必要があり、そのハードルは高い です。
慰謝料の金額が一般の相場からかけ離れた金額の場合のような公序良俗違反については、裁判官による評価次第であり、大きな問題はないと言えます。しかし、強迫、詐欺、錯誤を主張する場合は、実際に強迫や詐欺行為や勘違いしていたことを証明する必要があります。そのため、相手とのやりとりの録音や、メールやLINEなどのメッセージが残っていない限り、示談書の効力を否定することは難しい場合が多いです。
裁判は、証拠をもって裁判所を説得する作業が必要になり、非常に専門性が高く知識経験が必要です。そのため、裁判となった場合には、弁護士に依頼することをお勧めします。
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5. 示談書に関する悩みは離婚に詳しい弁護士に相談を
示談書の効力を否定できる方法について説明してきましたが、間違いなく最善と言えるのは、示談書にサインする前に弁護士に相談することです。
サインしてしまったあとに示談書の効力を否定するハードルは高いですが、サイン前であれば慰謝料の減額交渉や、場合によっては支払いを拒絶することもできます。そのため、示談書にサインを求められた場合でも、その場ですぐサインすることはせずに、「一度持ち帰って検討させてください」と答えられるようにしておきましょう 。
また、サインしてしまったという場合でも、事情に応じて示談書の撤回を求めたり、記載の金額よりも下げるように交渉できたりすることもあるため、まずは一度弁護士に相談することが大切です。
6. 示談書にサインしてしまった際によくある質問
7. まとめ|示談書の問題は、男女トラブルの対応に強い弁護士に相談を
既婚者との不倫がばれて示談書にサインを求められた場合、まずは弁護士に相談することをお勧め します。示談書も一種の契約であるため、サインしてしまえば原則有効となってしまうからです。
仮に示談書にサインしてしまった場合、「内容が公序良俗に反する」「強迫行為があった」「詐欺行為があった」「錯誤に基づいて、契約を締結した」という主張でその効力を否定することはできなくはないものの、示談書の撤回をめざすハードルは高く、自分だけで対応することは困難です。サインしてしまい後悔している場合は一人で悩まず、一度男女トラブルの対応に強い弁護士に相談してみてください 。
(記事は2025年1月1日時点の情報に基づいています)