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キスは不倫になる? 離婚や慰謝料請求が認められるか解説

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キスだけだったとしても、相手の夫婦生活を壊すなどすると、慰謝料請求の対象になることがあります(c)Getty Images
「どこからが不倫か」の判断基準は人によって異なります。キスだけでも不倫だと思う人もいれば、肉体関係がない以上は不倫ではないと考える人もいるでしょう。キスが不倫に当たるのか、キスだけで離婚や慰謝料が認められるのかなどを弁護士が解説します。
目 次
  • 1. 不倫とは?キスは不倫に当たる?
  • 2. 不貞行為とは?キスは不貞行為に当たる?
  • 2-1. 不貞行為の定義・要件|キスだけなら不貞行為ではない
  • 2-2. 不貞行為の具体例
  • 3. キスやハグだけを理由に離婚できる?
  • 3-1. 配偶者と合意すれば離婚できる
  • 3-2. 配偶者が拒否する場合は法定離婚事由が必要|キスやハグだけでは難しい
  • 3-3. キスやハグ以外の法定離婚事由の具体例
  • 4. キスやハグだけを理由に慰謝料は請求できる?
  • 4-1. 慰謝料を請求するには「不法行為」が必要
  • 4-2. キスやハグが不法行為に当たるかどうかの判断基準
  • 4-3. 不貞行為がなくても慰謝料請求が認められた裁判例
  • 5. 配偶者がキスやハグをした不倫相手に、慰謝料を請求するための要件
  • 5-1. キスやハグによって平穏な夫婦生活が害されたこと
  • 5-2. 不倫相手に故意または過失があること
  • 6. キスやハグだけで離婚や慰謝料を請求するには、何をすべき?
  • 6-1. 本当に不貞行為がないかどうか調査する
  • 6-2. 離婚や慰謝料の合意を目指して交渉する
  • 6-3. 弁護士に相談する
  • 7. 不倫とキスに関するよくある質問
  • 8. まとめ キスだけでは不貞行為とはならないが、慰謝料請求できる可能性はある
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1. 不倫とは?キスは不倫に当たる?

「不倫」とは、道徳的に許されない男女の関係を意味します。男女の関係にはさまざまな段階がありますが、どこからが不倫だと判断するかは人によって異なります。キスが不倫に当たるかどうかも、人によって判断が分かれるところで、一概にはいえません

2. 不貞行為とは?キスは不貞行為に当たる?

「不倫」は一般用語ですが、法律用語では、許されない男女の関係を表すものとして「不貞行為」という言葉があります。不貞行為が認められれば、配偶者が拒否しても、訴訟を通じて強制的に離婚を成立させることができます 。しかし、キスだけでは不貞行為には当たらない と解されています。

2-1. 不貞行為の定義・要件|キスだけなら不貞行為ではない

「不貞行為」とは、自由な意思に基づいて、配偶者以外の異性と性的関係を結ぶこと をいいます。

キスをしただけでは「性的関係」に当たらず、不貞行為には該当しません。したがって、配偶者が自分以外の異性とキスをしたことが分かっても、それ以上の行為が認められない場合は、不貞行為による離婚請求は認められません

2-2. 不貞行為の具体例

不貞行為に当たる「性的関係」とは、性交または性交類似行為 を意味するとされています。「性交」とは、性器の挿入を伴う性交渉のこと、「性交類似行為」とは、肛門性交や口腔性交など、実質的に性交と同視できる行為のことをいいます。

3. キスやハグだけを理由に離婚できる?

配偶者が隠れて異性とキスやハグをしていた場合、それを理由に離婚できるのでしょうか。

3-1. 配偶者と合意すれば離婚できる

配偶者と合意すれば、どのような理由であっても離婚できます。したがって、合意があれば、配偶者が別の異性とキスやハグをしたことを理由にした離婚は可能 です。

配偶者との合意によって離婚を成立させる場合、主な方法は以下のとおりです。

  • 夫婦間で直接話し合って、離婚の合意をする

  • 弁護士を通じて話し合って、離婚の合意をする

  • 離婚調停において、調停案につき合意する

  • 離婚訴訟において、和解案につき合意する

仮に裁判になったとしても、途中で両者が合意できれば、判決ではなく「和解」という形で離婚が成立します。

3-2. 配偶者が拒否する場合は法定離婚事由が必要|キスやハグだけでは難しい

話し合いや調停を通し、配偶者が離婚を拒否し続ける場合、強制的に離婚を成立させるためには、離婚訴訟を提起し、民法で定められた離婚理由(法定離婚事由)を立証する必要があります。

不貞行為は法定離婚事由の一つですが、キスやハグだけでは不貞行為として認められないため、相手が拒否する限りは離婚はできません。

したがって、強制的に離婚するには、不貞行為以外の法定離婚事由を裁判で立証する必要 があります。

3-3. キスやハグ以外の法定離婚事由の具体例

法定離婚事由は、以下の5つです(民法770条1項各号)。いずれかに当てはまることを証明できれば、裁判所は離婚を認めます。

【不貞行為】
・性交や肛門性交、口腔性交などの性交類似行為

【悪意の遺棄】
・正当な理由なく夫婦間の義務を果たさない行為
・正当な理由のない無断別居
・生活費の分担の拒否など

【配偶者の生死が3年以上不明である】
・3年以上連絡が取れず、生きているのかどうかわからない状態

【配偶者が強度の精神病に罹り、回復の見込みがない】(民法改正により2026年5月までには削除予定)
・精神疾患のために正常な意思疎通ができず、家庭生活を維持するのが難しい状態

【その他婚姻を継続し難い重大な事由】
・DV
・モラハラ
・犯罪行為
・長期間の別居など

キスをしているということは、不貞行為をしている可能性が高いと考えられます。また、配偶者が不倫相手と親密になり過ぎていたり、家に帰ってこなくなったりして婚姻関係が破綻しているのであれば、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する可能性があります。どのような事情を法定離婚事由として主張できるのか、弁護士と相談しながら検討しましょう。

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4. キスやハグだけを理由に慰謝料は請求できる?

キスやハグだけでは、離婚請求が認められる法定離婚事由には当たりませんが、慰謝料については請求できることがあります

4-1. 慰謝料を請求するには「不法行為」が必要

配偶者や不倫相手に対して慰謝料を請求するためには、「不法行為」が認められることが必要です。
「不法行為」とは、故意または過失により、違法に他人の権利や利益を侵害して損害を与えることをいいます。

4-2. キスやハグが不法行為に当たるかどうかの判断基準

配偶者が自分以外の異性とキスやハグをしていると知れば、誰でも心穏やかではいられません。受け止め方には個人差がありますが、強い不快感を覚えたり、離婚を考えるきっかけになったりするのは当然です。

結婚していながら配偶者以外の異性とキスやハグをする行為は、夫婦関係の平和を乱すものです。このような行為によって精神的な損害を受けた場合、配偶者やその不倫相手に対して慰謝料を請求できる可能性 があります。

4-3. 不貞行為がなくても慰謝料請求が認められた裁判例

不貞行為がなくても慰謝料請求が認められた裁判例を2つ紹介します。

【性的関係はなかったが、浮気が原因で離婚に至ったケース】
東京地裁平成17年11月15日判決の事案では、夫が妻の不倫相手に対して慰謝料を請求しました。裁判所は、妻と不倫相手の間に性的関係を認めませんでした。しかし、妻と不倫相手が結婚を前提として交際しており、その結果として夫との別居および離婚に至ったという経緯を考慮 し、不倫相手に対して70万円の慰謝料の支払いを命じました。

【性的関係もなく、離婚もしなかったが、妻の精神的苦痛が認められたケース】
東京簡裁平成15年3月25日判決の事案では、妻が夫の不倫相手に対して慰謝料を請求しました。裁判所は、妻と不倫相手の間に性的関係を認めませんでした。しかし、夫が不倫相手に数万円程度のプレゼントを繰り返し送っていたことや、夫と不倫相手が一緒に数日間旅行に出かけたことなどによる妻の精神的苦痛を認定 し、不倫相手に対して10万円の慰謝料の支払いを命じました。

数十万円程度の慰謝料では、弁護士費用などを考慮すると赤字になる可能性もあります。不貞行為が証明できない状態で慰謝料を請求しようとする際には、担当弁護士の見解をよく聞いたうえで判断した方がいいでしょう。

5. 配偶者がキスやハグをした不倫相手に、慰謝料を請求するための要件

キスやハグを理由とする慰謝料は、配偶者だけでなく不倫相手にも請求できます。不倫相手に対してキスやハグの慰謝料を請求するためには、以下の要件を満たすことが必要です。

5-1. キスやハグによって平穏な夫婦生活が害されたこと

キスやハグが不法行為に該当するためには、その行為によって平穏な夫婦生活が害されたと認められることが必要です。単に1回キスやハグをしただけでは、平穏な夫婦生活が害されたとまでは言えず、慰謝料請求は認められにくい でしょう。

これに対して、以下のような事情があれば、平穏な夫婦生活が害されたものとして慰謝料請求が認められる可能性が高まります。

  • 何度も繰り返しキスやハグをした

  • 結婚を前提とした交際をしていた

  • 二人で旅行に行っていた

  • 高額のプレゼントをあげていた

これらの行為が原因で別居や離婚に至った場合には、慰謝料請求できる確率がより高くなります。

5-2. 不倫相手に故意または過失があること

不倫相手の不法行為が認められるためには、不倫相手に故意または過失があることが必要です。つまり「相手が既婚者だと知っていた(故意)」または「既婚者だと知ろうと思えば知ることができた(過失)」と証明できなければいけません。

配偶者が不倫相手に対して既婚者であることを隠しており、不倫相手が気付くきっかけが全くなかった場合は、不倫相手に対して慰謝料を請求することはできません

6. キスやハグだけで離婚や慰謝料を請求するには、何をすべき?

配偶者が自分以外の異性とキスやハグをしたことが分かっているものの、それ以上の行為(性行為など)がなされたかどうか分からない場合でも、離婚や慰謝料を請求する余地はあります。

キスやハグを理由に離婚や慰謝料を請求したいなら、以下の対応を行いましょう。

6-1. 本当に不貞行為がないかどうか調査する

性交などの不貞行為の証拠は、適切な方法によって調査すれば見つかる可能性があります。自分で確認できる情報だけでは証拠が得られない場合は、探偵に浮気調査を依頼する方法 なども考えられます。

キスやハグだけを材料に離婚や慰謝料を請求するのは分が悪いので、本当に不貞行為がなされていないかをよく調査 しましょう。

6-2. 離婚や慰謝料の合意を目指して交渉する

キスやハグだけでは、法的に離婚や慰謝料が認められることは難しいです。しかし、交渉によって離婚や慰謝料についての合意を得られる可能性は十分あります。どうしても不貞行為の証拠が見つからない場合は、配偶者や不倫相手に話し合いを持ちかけてみましょう

ただし不貞行為の証拠がないことを相手に悟られると、離婚や慰謝料に関する交渉は不利になります。どのように交渉を進めるか、あらかじめきちんと戦略を立てることが大切 です。

6-3. 弁護士に相談する

離婚請求や慰謝料請求の事前準備や対応については、弁護士に相談することをおすすめします。弁護士に相談すれば、不貞行為に関する証拠の収集方法や、相手方との交渉の進め方などについて具体的なアドバイスを受けられます

訴訟などの裁判手続きに発展した場合でも、弁護士に対応を任せれば労力やストレスが軽減され、満足いく結果を得られる可能性が高まります。

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7. 不倫とキスに関するよくある質問

Q. キスやハグだけでも、頻度や回数が多ければ不倫になる?
どこまでの行為が「不倫」に当たるのかは人によって判断基準が異なるので、一概に言えません。法的には、離婚請求が認められる「不貞行為」に当たるかどうかや、慰謝料請求が認められる「不法行為」に当たるかどうかが問題になります。 キスやハグだけでは、頻度や回数が多くても不貞行為には当たりません。これに対して、平穏な夫婦生活を害する不法行為に該当すれば、慰謝料請求が認められる可能性はあります。
Q. 不貞行為(肉体関係)を証明できる証拠は?
性交渉の場面や、自宅やホテルへ出入りする場面の記録があれば、有力な証拠となります。証拠は映像や画像に残してください。性的関係を連想させるメッセージの記録なども有力です。
Q. 不貞行為の証拠を集めるためのポイントは?
一般の人が不貞行為の証拠を集めるのは難しいです。探偵や弁護士などのプロに相談することをおすすめします。
Q. 不倫慰謝料の金額相場はどのくらい?
不貞行為が認められるなら、離婚しない場合で100万円から200万円程度、離婚する場合で150万円から300万円程度が相場です。不貞行為を立証できない場合は、認められても数十万円程度となる可能性が高いでしょう。 高額の慰謝料を得られるかどうかは、不貞行為を立証できるかどうかによって左右されます。弁護士のアドバイスを受けながら、不貞行為の客観的な証拠を確保できるように努めましょう。

8. まとめ キスだけでは不貞行為とはならないが、慰謝料請求できる可能性はある

法的には、キスやハグだけでは「不貞行為」に当たりません。「不法行為」に当たる余地はありますが、高額の慰謝料は期待できないでしょう。

離婚請求や慰謝料請求を成功させるには、配偶者と不倫相手の性的関係(=不貞行為)を立証する証拠を確保することが大切 です。弁護士に相談して、不貞行為の証拠を確保するためにどのようなアプローチが考えられるかをよく検討しましょう。

(記事は2025年3月1日時点の情報に基づいています)

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