-
1. 離婚前に確認!夫婦共有名義の住宅ローンの種類
-
1-1. ペアローン|夫婦がそれぞれが契約する住宅ローン
-
1-2. 連帯債務型|複数の契約者が対等な立場で全額の返済義務を負う
-
1-3. 連帯保証型|夫婦のどちらか一方が主債務者で、もう一方が連帯保証人
-
2. 共有名義の住宅ローンは離婚後も夫婦双方に返済義務が残る
-
3. 共有名義の住宅ローンが離婚時も残っている場合の主な対処法
-
3-1. 家を売却してローンを一括返済する
-
3-2. 一方の単独名義ローンに借り換える
-
3-3. 住宅ローンが共有名義のまま住み続ける(リスク大)
-
3-4. 任意売却をする(オーバーローンで補塡できる貯蓄もなく、家が売れない場合)
-
4. 共有名義の住宅ローンが離婚後に返済できなくなった場合はどうなる?
-
4-1. 家が競売に出されて強制的に住めなくなる
-
4-2. 競売による売却額でも住宅ローンが残る場合は、残額を返済し続ける
-
4-3. 最悪の場合、自己破産に至るリスクがある
-
5. 離婚時における共有名義の住宅ローンに関するよくある質問
-
6. まとめ|共有名義の住宅ローンが離婚後も残る場合は早めに行動を
無料相談OK 事務所も!
離婚問題に強い弁護士を探す
1. 離婚前に確認!夫婦共有名義の住宅ローンの種類
離婚時に夫婦共有名義の住宅ローンが残っている場合は、まず住宅ローンの契約内容を正確に把握することが大切です。夫婦で住宅ローンを利用する主な形態には、「ペアローン」「連帯債務型」「連帯保証型」などがあります。
住宅ローンの種類によって、離婚後の返済義務や名義変更の手順などが異なるため、まずは手元の金銭消費貸借契約書を確認し、どの種類に当てはまるかチェックしておきましょう。
1-1. ペアローン|夫婦がそれぞれが契約する住宅ローン
ペアローンとは、1つの物件に対して夫婦がそれぞれローンを1本ずつ契約する形式の住宅ローンです。夫婦がそれぞれ独立した主債務者(お金を借りた本人)となっており、お互いに相手が契約したローンの連帯保証人となります。
基本的には自身が借り入れた分の残債を返済する義務を負いますが、万が一相手が返済できなくなった場合は、連帯保証人として相手の滞納分も肩代わりして返済する必要があります。
1-2. 連帯債務型|複数の契約者が対等な立場で全額の返済義務を負う
連帯債務型とは、1本の住宅ローンを夫婦など複数人で契約し、それぞれがローン全額について返済義務を負う形式です。住宅ローンの契約上は、便宜的に「主債務者」と「連帯債務者」という区分が設けられることがありますが、法律上はどちらかが従属する関係ではなく、両者が対等な立場で全額の返済義務を負う点が特徴です。
そのため離婚後であっても、便宜上の主債務者・連帯債務者の区別に関係なく、双方が住宅ローン全額について返済義務を負い続けることになります。
住宅ローンの負担割合は法律上は定められていませんが、実務上は持分割合や収入割合などを参考に夫婦間で決めるケースが多いです。しかし、これはあくまで夫婦間の約束事に過ぎません。
金融機関に対しては2人とも全額の返済義務を負っているため、相手が支払いを拒否・滞納した場合は、相手が本来負担すべき分も肩代わりして返済する必要があります。
1-3. 連帯保証型|夫婦のどちらか一方が主債務者で、もう一方が連帯保証人
連帯保証型とは、夫婦のどちらか一方が主債務者となり、もう一方が連帯保証人となる状態の住宅ローンです。ローンの契約は1本で、基本的にはローンの名義人である主債務者が全額に対する返済義務を負います。
連帯保証人は、主債務者と同等の重い返済責任を負います。単なる保証人とは異なり、「まずは主債務者に請求してほしい」と主張する権利がありません。そのため、主債務者が返済を少しでも滞納すれば、主債務が期限の利益を喪失する結果、主債務者に支払い能力があるかどうかに関わらず、金融機関から連帯保証人へ突然一括請求されるリスクがあります。
連帯保証人としての責任は、離婚して夫婦関係が解消されても自動的には消滅しないため、主債務者が返済を終えるまでは、離婚後も突然返済を求められるリスクが残り続けます。
2. 共有名義の住宅ローンは離婚後も夫婦双方に返済義務が残る
住宅ローンは金融機関との契約であるため、離婚して夫婦関係が解消されても、契約内容は一切変わりません。そのため、住宅ローンの契約形態によっては、離婚後も夫婦双方に返済義務や保証責任が残る場合があります。
たとえ、離婚協議書で「夫(または妻)が残債を全額支払う」といった取り決めをしていたとしても、これはあくまで夫婦間の約束事に過ぎないため、金融機関に対する返済義務からは逃れられません。
なお、共有名義の住宅ローンが残っている状態で家をどちらか一方の単独名義に変更したい場合は、事前に金融機関から承諾を得る必要があります。
多くの住宅ローンでは、主債務者または契約者が自己居住することが融資条件とされています。
承諾なしで所有権の移転などを行うと、契約違反と判断され、一括返済を求められる可能性があるため、必ず金融機関に相談するようにしましょう。なお、実際に私の経験上、承諾なしの所有権移転によって一括弁済を求められた事例があります。
3. 共有名義の住宅ローンが離婚時も残っている場合の主な対処法
共有名義の住宅ローンが残ったまま離婚すると、離婚後も夫婦双方に返済義務が生じるだけでなく、後に深刻な法的・金銭的トラブルを招く恐れもあります。
トラブルを未然に防ぎつつ、新たな気持ちで新生活をスタートさせるためにも、住宅ローンの残債処理や家の財産分与をどのように行うのか、夫婦で話し合って適切に対処することが大切です。
ここからは、共有名義の住宅ローンが離婚時も残っている場合の具体的な対処法を4つご紹介します。
3-1. 家を売却してローンを一括返済する
アンダーローンの状態であれば、家を売却してローンを一括返済するのが最も現実的な対処法です。アンダーローンとは、ローンの残債が家の売却代金を下回っている状態を指します。
家を売却してローンを完済する最大のメリットは、以下のリスクから完全に解放される点です。
家の管理責任や維持管理費の負担
離婚後の住宅ローンの返済
相手の不払いによる一括請求
相手の経済状況や行動によって離婚後の生活を脅かされる心配がなく、相手との関係もきっぱりと断ち切った状態で離婚後の生活をスタートできます。ローンを完済した後に残った現金は財産分与の対象となるため、夫婦で分け合うことになります。
なお、手持ちの資金で住宅ローンを完済できるのであれば、無理に家を売却せず、どちらか一方が住み続ける選択肢もあります。
ただし、ローン完済後であっても家の名義が「共有名義」のままだと、将来の売却や相続の際に元配偶者の同意が必要になり、大きなトラブルの火種となりかねません。
そのため、自己資金でローンを完全に精算した後は、必ず「財産分与」を原因とする所有権移転登記を行い、家に住み続ける側の単独名義へ変更しておきましょう。
3-2. 一方の単独名義ローンに借り換える
離婚後も家を売却せずに住み続ける場合は、家に住み続ける側が単独名義でローンを借り換えるという選択肢もあります。借り換えを行うことで、住宅ローンの名義も家の名義も家に住み続ける側の単独名義に統一できます。
家を出ていく側は、住宅ローンの返済義務や連帯保証人としての責任から解放されるため、将来的な金銭トラブルに怯えることなく再出発を図れます。
ただし、夫婦共有名義の住宅ローンは、もともと夫婦2人の収入合算で審査に通過しているため、単独名義への変更は極めてハードルが高いです。
借り換え時の審査では、1人で完済できる見込みがあるかどうかが厳しくチェックされるため、名義人となる側の年収が契約当時の合算年収に近い水準に達していることが前提となります。
もし、現時点で収入が不足している場合は、自己資金で住宅ローンの一部を返済し、残債額を大幅に減らすことで、審査に通過できる可能性を高められます。
また、一方の単独名義ローンへの変更は、離婚後も住宅ローンの返済を続けながら家に住み続ける場合の有効な解決策となりますが、収入や残債額によっては変更が認められないケースもあります。
そのため、現在の状況で借り入れが可能かどうか、早めに金融機関へ相談することが大切です。
なお、借り換えに伴って家の名義を相手の持分から自分の単独名義へ変更(所有権移転)する場合は、その手続きを「離婚成立後」に行うことが重要です。
離婚前の婚姻期間中に名義変更を行ってしまうと、夫婦間の単なる贈与とみなされ、贈与税が課される可能性があります。一方、離婚成立後であれば「財産分与」として扱われるため、原則として贈与税は課されません。
相談アリ
得意な弁護士
探せる
3-3. 住宅ローンが共有名義のまま住み続ける(リスク大)
家を売却せずに残しておきたい場合は、住宅ローンが共有名義のまま住み続けるという選択肢もあります。離婚後も現状の契約をそのまま引き継ぐため、借り換えや名義変更などの手間はかかりませんが、将来的に法的・金銭的トラブルを招くリスクが非常に高いです。
住宅ローンが共有名義のままでは、契約形態が連帯債務や連帯保証である場合、相手が返済できなくなると残債の支払いを求められる可能性があります(逆もしかり)。
残債を返済できなければ、最終的に家の所有権を失い、家から出ていかざるを得ない状況に追い込まれかねません。また、ペアローンや連帯債務型の場合は、家も夫婦の共有名義であるため、将来的に以下のようなトラブルを招くリスクもあります。
相手の同意を得られず、リフォームや増改築、売却などが行えない
固定資産税や維持管理費の支払いについて相手ともめる
相続が発生した場合に新たな共有者が増え、権利関係が複雑になることで、連絡や合意形成がさらに困難になる
このように、離婚して戸籍上の関係は解消されたとしても、家や住宅ローンが共有名義であり続ける限り、相手との関係をきっぱりと断ち切るのは不可能です。
相手の経済状況や意向によって、離婚後の平穏な生活が根底から崩れてしまうリスクがあるため、あくまでこの方法は家の売却や単独名義での借り換えができない場合の最終手段として検討しましょう。
住宅ローンが共有名義のまま住み続ける場合は、離婚後に返済が滞納するリスクに備え、住宅ローンの負担割合や支払い方法、滞納分を肩代わりした場合の求償権、住所や連絡先が変わった場合の通知義務などについて取り決め、公正証書として残しておくことが大切です。
ただし、公正証書はあくまで夫婦間の約束内容を証明するためのものであり、金融機関に対する住宅ローンの返済義務や連帯保証の責任を免除する効力はありません。そのため、金融機関との契約上の返済義務は、離婚後も引き続き当事者双方に残る点には注意してください。
3-4. 任意売却をする(オーバーローンで補塡できる貯蓄もなく、家が売れない場合)
オーバーローンとは、住宅ローンの残債が家の売却価格を上回っている状態を指します。このような家は、売却代金のみで住宅ローンを完済できないため、売却の際には自己資金(貯蓄など)で不足分を補填する必要があります。
自己資金で不足分を補えない場合は、通常の売却が難しくなるため任意売却などの方法を検討することになります。
任意売却とは、オーバーローンの状況において、金融機関からの同意を得たうえで家を売却する方法です。金融機関の同意を得れば、売却代金や自己資金で住宅ローンを完済できなくても、抵当権を抹消してもらえるため、通常の売却が可能となります。
抵当権とは、住宅ローンなどの借入をした際に金融機関が不動産に設定する担保権のことです。住宅ローンを利用して家を購入する場合、金融機関は貸したお金を確実に回収できるよう、土地や建物に抵当権を設定します。
もし住宅ローンの返済が滞った場合、金融機関は抵当権を行使して不動産を競売にかけ、売却代金から貸付金を回収するのです。なお、売却後に残った住宅ローンは、引き続き住宅ローンの名義人が返済義務を負います。
4. 共有名義の住宅ローンが離婚後に返済できなくなった場合はどうなる?
共有名義の住宅ローンを残したまま離婚すると、万が一住宅ローンが返済不能な状態に陥った際、生活基盤や家計に重大な悪影響を及ぼすリスクがあります。ここからは、離婚後に住宅ローンが返済できない場合に生じる具体的なリスクを3つ紹介します。
4-1. 家が競売に出されて強制的に住めなくなる
共有名義の住宅ローンを返済できなくなると、最終的には家が競売に出され、退去せざるを得ない状況に陥ります。住宅ローンの名義人が返済不能になると、まず金融機関は連帯債務者・連帯保証人に対して残債の一括返済を請求します。
この請求に応じられない場合、金融機関は残債を回収するために抵当権を実行し、裁判所へ競売を申し立てる流れです。
家が競売にかけられて売買が成立すると、落札者が代金を納付した時点で家の所有権が正式に落札者へ移転します。この時点で元の所有者は新たな所有者に対して明け渡し義務を負う状態になります。
退去に応じなければ、裁判所による引渡命令が下され、最終的には強制執行によって荷物の搬出や鍵の交換が行われるため、強制的に家から追い出されてしまいます。なお、これらの強制執行にかかる費用は債務者(元の所有者)の負担となります。
4-2. 競売による売却額でも住宅ローンが残る場合は、残額を返済し続ける
競売の売却代金を全額返済に充てても住宅ローンが残る場合、家を失った後も引き続き残額を返済し続けなければなりません。競売後はすでに期限の利益(分割で返済できる権利)を喪失しているため、残額は原則として一括での返済を求められます。
残債の一括返済ができない場合は、金融機関と交渉して分割返済を認めてもらう必要があります。住宅ローンの名義人・連帯債務者・連帯保証人の全員が残額を支払えない場合は、金融機関は強制執行による財産の差し押さえに移行します。
このとき、差し押さえは住宅ローンの名義人の財産だけでなく、連帯債務者や連帯保証人の財産も対象です。
4-3. 最悪の場合、自己破産に至るリスクがある
共有名義の住宅ローンを返済できなければ、最悪自己破産に至るリスクがあります。競売にかけられた後も住宅ローンが残る場合は、夫婦双方に残額の返済義務が課されます。
金融機関との交渉次第では分割返済も可能ですが、残債が多額で完済できる見込みが立たない場合は、最終手段として自己破産を検討せざるを得ません。
自己破産が認められれば、原則として公租公課や養育費などを除いた多くの債務が免責となるため、自己破産後は住宅ローンの返済から解放されます。しかし、自己破産をすると以下のような制限を受けるため、離婚後の生活や仕事などに支障をきたすリスクがあります。
信用情報に傷がつき、一定期間は新たな借入やクレジットカードの作成などが制限される(通常は住宅ローンを滞納した時点ですでに信用情報に傷がついているため、実際には自己破産前から制限がかかっている)
自由財産(99万円以下の現金や生活必需品など)以外の価値のある財産は、原則としてすべて処分しなければならない
自己破産の手続き中は、一部の職業・資格が制限される(士業、会社役員、証券会社の外務員、警備員など)
自己破産の手続き中は、引っ越しや長期間の旅行が制限される(裁判所の許可が必要)
自己破産の手続き中は、破産者宛ての郵便物が破産管財人に転送・確認される(管財事件の場合)
また、自己破産によって免責となるのはあくまで破産者本人の債務のみで、住宅ローンの契約自体は消滅しないため、連帯保証人など破産者以外の債務者の返済義務は引き続き残ります。
夫婦でペアローンや連帯保証型のローンを組んでいる場合、夫が自己破産すると妻は夫のローンについても連帯保証人として支払いを求められる可能性があります。自己破産をしてしまうと、相手も連鎖的に自己破産せざるを得ないという深刻な事態を招く恐れがあります。
相談アリ
得意な弁護士
探せる
5. 離婚時における共有名義の住宅ローンに関するよくある質問
離婚時に共有名義の住宅ローンを完済している場合、共有名義の家は単純な財産分与の対象となります。家の査定額に基づき、どちらか一方が住み続ける場合は家を出ていく側に代償金を支払い、家を売却する場合は手元に入る現金を夫婦で分け合います。
相手に家の売却を反対されている場合は、まず代償分割を検討してみましょう。相手が家を単独名義で取得する代わりに、住宅ローンの残債を差し引いた家の評価額の半額分の代償金を支払ってもらうことで、家を売却せず公平に財産分与できます。
代償分割による解決が難しければ、弁護士に依頼して離婚調停で話し合って解決を図るのが一般的です。
なお、不動産会社に「自分の共有持分のみ」を売却して名義を解消する方法もありますが、住宅ローン(抵当権)が残っている状態での持分売却は、金融機関との契約違反になり残債を一括請求されるリスクがあります。
持分売却を検討する場合は、必ずローン残債の有無や金融機関の規定を確認し、専門の不動産会社に慎重に相談してください。
オーバーローンの場合、不動産自体にプラスの財産価値がないため、一般的には財産分与の対象とならないケースが多いですが、残債の扱いは夫婦の協議や裁判所の判断によって調整されることがあります。
6. まとめ|共有名義の住宅ローンが離婚後も残る場合は早めに行動を
夫婦共有名義の住宅ローンが残っている場合、離婚しても金融機関との契約内容は変わらないため、離婚後も夫婦双方に返済義務が生じます。
離婚後に相手が住宅ローンを滞納してしまうと、相手の滞納分も肩代わりしなければならず、最悪競売による強制売却や自己破産に至る恐れもあります。
そのため、離婚の際は家を売却して住宅ローンを完済するか、どちらか一方の単独名義に借り換え、共有名義を解消するのが最善策です。やむを得ず共有名義を継続する場合は、離婚後に返済が滞るリスクに備え、取り決めた内容は必ず公正証書として残しておきましょう。
共有名義の住宅ローンについて何か不安や疑問があれば、離婚時の不動産の扱いに強い不動産会社に相談したうえで対処することをおすすめします。
(記事は2026年7月1日時点の情報に基づいています)