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1. 住宅ローンの連帯保証人とは
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1-1. 住宅ローンの連帯保証人は、原則として不要
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1-2. 住宅ローンの連帯保証人が必要となるケース
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2. 配偶者の住宅ローンを連帯保証している場合、離婚するとどうなる?
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2-1. 離婚しても連帯保証債務はそのまま残る
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2-2. 元配偶者が住宅ローン返済を滞納すると、自分が払わなければならない
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2-3. 住宅ローンを払えなければ、家が競売されてしまう
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2-4. 競売代金が完済に足りなければ、自己破産せざるを得ないこともある
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3. 離婚後の連帯保証に関するリスクを回避する方法
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4. 住宅ローンの連帯保証を解除する方法
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4-1. 別の連帯保証人を立てる
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4-2. 不動産などの担保を提供する
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4-3. 保証人なしの住宅ローンに借り換える
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4-4. 家を売却する
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5. 住宅ローンの連帯保証を解除するための手続き
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5-1. 家と住宅ローンの財産分与について、配偶者と話し合う
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5-2. 金融機関に相談する
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5-3. 弁護士に相談する
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6. 離婚と住宅ローンの連帯保証人に関する質問
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7. まとめ 家や住宅ローンの財産分与について不安な人は弁護士に相談を
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1. 住宅ローンの連帯保証人とは
「連帯保証人」とは、主債務者が債務を支払わなかった場合に、債権者に対して代わりに支払う義務を負う人です。住宅ローンに連帯保証人は原則として不要ですが、例外的に必要となるケースもあります。
1-1. 住宅ローンの連帯保証人は、原則として不要
住宅ローンを借り入れる際には、連帯保証人を付さないのが一般的です。住宅ローンの債権は、家の土地と建物に設定された抵当権で担保されています。返済が滞れば、債権者は家の土地と建物を競売して債権を回収できます。また、住宅ローンは保証会社によって保証されるケースも多いです。そのため、住宅ローンに連帯保証を付ける必要性は高くありません。
1-2. 住宅ローンの連帯保証人が必要となるケース
ただし例外的に、以下のようなケースにおいては、住宅ローンに連帯保証人を付す必要があります。
①ペアローンを組むとき
夫婦それぞれが住宅ローンを借り入れて、お互いが相手の債務を連帯保証します。
②夫婦の収入を合算して、連帯保証型の住宅ローンを組むとき
夫婦のうちいずれか一方が主債務者、もう一方が連帯保証人となって1本の住宅ローンを借り入れます。ペアローンと同じく、夫婦の収入を合算して審査してもらいたい場合に利用されます。
2. 配偶者の住宅ローンを連帯保証している場合、離婚するとどうなる?
2-1. 離婚しても連帯保証債務はそのまま残る
配偶者と離婚しても、住宅ローンの連帯保証債務が消えることはありません。債権者である金融機関にとって、債務者が離婚したことは無関係の事柄だからです。したがって、離婚後も住宅ローンの連帯保証債務はそのまま残ります。
2-2. 元配偶者が住宅ローン返済を滞納すると、自分が払わなければならない
連帯保証債務が残っている以上、元配偶者が住宅ローンの返済を滞納すれば、離婚後であっても自分が払わなければなりません。
通常の保証人であれば、債権者から連帯保証人としての支払いを求められた際に、先に主債務者に対して請求を行うべき旨(=催告の抗弁)や、先に主債務者の財産に対して強制執行をすべき旨(=検索の抗弁)を主張できます。
これに対して、連帯保証人には催告の抗弁権や検索の抗弁権が認められていません。債権者から連帯保証債務の履行を請求されれば、直ちに全額支払う必要があります。
2-3. 住宅ローンを払えなければ、家が競売されてしまう
主債務者が住宅ローンの返済を滞納し、連帯保証人も支払わなければ、家の土地と建物が競売されてしまいます。特に離婚後も自分が家に住み続けている場合は、競売によって家を追い出されてしまうので注意が必要です。
2-4. 競売代金が完済に足りなければ、自己破産せざるを得ないこともある
住宅ローンの返済を滞納した後に家が競売された場合、競売代金は住宅ローンの返済に充当され、残額は家の所有者だった人に返還されます。
しかし、住宅ローンを完済できる金額で競売がなされるとは限りません。競売代金が完済に不足するケースもあります。この場合は、残った債務を債権者に対して支払わなければなりません。住宅ローンを完済するための資金を準備できなければ、自己破産に追い込まれてしまうこともあり得るので十分ご注意ください。
3. 離婚後の連帯保証に関するリスクを回避する方法
住宅ローンの連帯保証に関するリスクを回避するためには、離婚時に連帯保証を解除するほかありません。次の項目で紹介する方法を通じて、住宅ローンの連帯保証を解除できるかどうか検討しましょう。
4. 住宅ローンの連帯保証を解除する方法
離婚に伴って住宅ローンの連帯保証を解除する主な方法は、以下のとおりです。
別の連帯保証人を立てる
不動産などの担保を提供する
保証人なしの住宅ローンに借り換える
家を売却する
それぞれ順番に説明します。
4-1. 別の連帯保証人を立てる
自分の代わりに別の連帯保証人を立てれば、元の連帯保証を解除できる可能性があります。連帯保証人を交代するためには、債権者である金融機関の承諾を得なければなりません。金融機関は、新たな連帯保証人について審査を行った上で、交代を認めるかどうかを判断します。少なくとも自分と同程度以上の経済力がある人でなければ、新たな連帯保証人としては認められにくいでしょう。
4-2. 不動産などの担保を提供する
連帯保証人を立てる代わりに、不動産などの担保を提供すること(=物上保証)も考えられます。家の土地と建物に加えて、別の不動産などを追加で担保にとることができれば、金融機関は連帯保証の解除を認める可能性があります。
連帯保証人の交代と同じく、連帯保証から物上保証への変更も、債権者である金融機関の承諾を得なければなりません。追加担保として提供する不動産などは、十分な市場価値を有するものであることが求められます。
4-3. 保証人なしの住宅ローンに借り換える
連帯保証を要しない住宅ローンに借り換える方法も考えられます。ただし、元々ペアローンや連帯保証型のローンを組んでいる場合は、借り入れ当時の収入が不十分であるケースが多いです。借り入れ当時に比べて、債務者となる人の収入が大幅に増えているなどの事情がなければ、保証人なしへの住宅ローンの借り換えは難しいかもしれません。
仮に保証人なしの住宅ローンへ借り換えることができたとしても、金利が上昇するなど条件面の変更が生じることがある点にも注意が必要です。
4-4. 家を売却する
家を売却して住宅ローンを完済すれば、連帯保証のリスクからも解放されます。ただし、家の立地や状態によっては、なかなか買い手が付かないこともあります。その場合、離婚後も連帯保証債務が残ってしまうことになるので要注意です。
また、家を売却できるとしても、売却代金が住宅ローンの完済に不足する場合には、不足額に相当する返済資金を別途準備しなければなりません。返済資金を準備できなければ、家を売却することはできません。
5. 住宅ローンの連帯保証を解除するための手続き
離婚に伴って住宅ローンの連帯保証を解除したい場合には、以下の対応を行いましょう。
5-1. 家と住宅ローンの財産分与について、配偶者と話し合う
まずは、家と住宅ローンをどのように財産分与するかについて、配偶者と話し合いましょう。
財産分与の対象となるのは、婚姻中に夫婦のいずれかが取得した財産から、相続や贈与によって取得した財産などを除いたものです。債務についても、婚姻中に夫婦生活のために負担したものは財産分与の対象になります。
家と住宅ローンだけでなく、預貯金やその他の不動産などの額も合算した上で、どのような割合で財産分与をするか決めます。財産分与の割合は原則として2分の1ずつですが、夫婦間で合意すれば異なる割合で財産分与を行うこともできます。
家を含めた各財産の具体的な配分や処分するかどうかも合意しましょう。特に家については、売却するのか住み続けるのかが大きな選択となります。住み続ける場合には、住宅ローンや連帯保証債務をどうするのかが重要な課題です。
5-2. 金融機関に相談する
金融機関に対して必要なのは、家を売却する場合、完済と抵当権抹消の手続きだけです。これに対して、家を売却せずに連帯保証を解除したい場合には、金融機関に詳細な相談をしなければなりません。
別の連帯保証人を立てる、不動産などの担保を提供する、保証人なしの住宅ローンに借り換えるなどの方法がありますが、どの方法を利用できるのかは収入や資産などの状況によって異なります。金融機関に詳しい事情を説明した上で、連帯保証を解除できる方法がないかを聞いてみましょう。
5-3. 弁護士に相談する
家や住宅ローンの財産分与については、法的にさまざまな論点が存在するので、弁護士に相談することをおすすめします。弁護士に相談すれば、夫婦間で希望をすり合わせることに加えて、金融機関側の事務にも配慮し、スムーズに家と住宅ローンを財産分与できるように尽力してもらえます。連帯保証の解除についても、さまざまな方法を総合的な観点から検討し、依頼者の状況に合った方法を提案してもらえるでしょう。
司法書士と連携している弁護士に相談すれば、不動産登記の手続きもワンストップでサポートを受けられます。また、不動産業者と連携している弁護士に相談すれば、不動産の売却についてもサポートしてもらえます。家と住宅ローンの財産分与や、離婚後の連帯保証に関するリスクに不安がある方は、お早めに弁護士へご相談ください。
6. 離婚と住宅ローンの連帯保証人に関する質問
7. まとめ 家や住宅ローンの財産分与について不安な人は弁護士に相談を
ペアローンなどによって配偶者の住宅ローンを連帯保証している場合、離婚しても連帯保証債務はそのまま残ります。連帯保証債務から解放されるためには、家を売却して住宅ローンを完済するか、または金融機関の同意を得て連帯保証を解除しなければなりません。
連帯保証の問題以外にも、家と住宅ローンの財産分与については、法律上の注意点がたくさん存在します。適切に財産分与の方法を決めないと、離婚後のトラブルのリスクが高まるので注意が必要です。
弁護士に相談すれば、家と住宅ローンの財産分与について、適切な方法を提案してもらえます。財産分与でお悩みの方や、離婚後も住宅ローンの連帯保証債務を負い続けるのは不安だと感じている方は、弁護士へご相談ください。
(記事は2025年4月1日時点の情報に基づいています)