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1. 離婚で家(不動産)の名義変更が必要となる場面は?
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2. 財産分与で取得した家の名義変更をしないリスク
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3. 家が共有名義のまま離婚したらどうなる?
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4. 住宅ローンが残っている家の名義変更をする方法
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4-1. ローンの肩代わりや借り換え
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4-2. ペアローンの一本化
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4-3. 親族などから借りて一括返済する
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5. 住宅ローンなしの家の名義変更をする方法
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6. 家の名義変更をするまでの流れ
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6-1. 【STEP1】離婚の条件を決める
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6-2. 【STEP2】名義変更の手続きをする
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7. 家の名義変更にかかる費用と税金
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7-1. 登記費用
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7-2. 贈与税はかからない
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8. 離婚で家の名義変更をする際の注意点
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8-1. 財産分与の取り決めを書面化する
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8-2. できる限り早く手続きする
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8-3. リスクを解消できないなら売却を検討する
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8-4. 名義変更は離婚後に行う
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9. 離婚で家の財産分与について弁護士に依頼するメリット
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10. 離婚による家の名義変更に関連してよくある質問
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11. まとめ 離婚時の家の名義変更で悩んでいる場合は弁護士に相談を
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1. 離婚で家(不動産)の名義変更が必要となる場面は?
結婚期間中に夫婦が共同で築いた財産を、離婚に際して原則として2分の1ずつ分配する制度を「財産分与」と言います。
財産分与には次の3つの種類があります。
清算的財産分与:夫婦が結婚期間中に築き上げた財産の清算
扶養的財産分与:離婚した配偶者の将来の扶養
慰謝料的財産分与:離婚を余儀なくされたことによる精神的損害に対する慰謝料
財産分与の中心は清算的財産分与であり、扶養的財産分与や慰謝料的財産分与が認められるのは例外的な場合と考えられています。
家や土地などの不動産を財産分与で取得した場合は、名義変更を行うのが一般的です。名義変更とは、登記に記載されている不動産の所有者を変更する作業です。名義変更によって、実際の所有者と登記に記載されている所有者が一致するかたちになります。
たとえば、夫名義の不動産を妻が財産分与で取得した場合には、登記に記載されている所有者を夫から妻に変更する名義変更を行います。また、夫婦共有名義の不動産を妻が財産分与で取得した場合には、登記の記載を夫婦の共同所有から妻の単独所有に変更する名義変更を行います。
名義変更は法務局に登記申請するかたちで行います。
2. 財産分与で取得した家の名義変更をしないリスク
財産分与によって家を取得したにもかかわらず、名義が元配偶者のままになっている場合、元配偶者に家を売却されてしまうといったリスクがあります。登記に記載されている所有者が元配偶者になっている以上、買い手側も「家の所有者は元配偶者である」と認識する可能性があります。
登記の変更をしていない状態で売却されてしまうと、財産分与によって家の所有権を取得したと買い手側に主張しても認められない可能性があります。逆に、買い手側から退去するよう請求されるおそれがあります。
3. 家が共有名義のまま離婚したらどうなる?
離婚しただけでは家の所有権も名義も変わらず、共有名義の場合は家の所有権も名義も共有のままとなります。一方で、財産分与によって夫婦いずれかの単独所有とした場合、家の所有権は共有からその人の単独所有に変わります。
ただし、登記を変更する手続きを行わなければ、登記の記載は共有名義のままとなります。この場合、元配偶者が自分の名義となっている部分を売却してしまうなどのリスクがあります。
4. 住宅ローンが残っている家の名義変更をする方法
住宅ローンの契約上、ローンが残っている家を金融機関に無断で名義変更した場合、ローンの一括返済を求められるおそれがあります。住宅ローンが残っている家の名義変更をしたい場合は、金融機関と事前に話し合って調整する必要があります。
ただちに名義変更するのが難しい場合、住宅ローン完済後に名義変更するよう取り決める方法もあります。この場合、仮登記をつけておけば住宅ローン完済後に名義変更がなされるという約束を公にでき、ローン完済前に家を処分されてしまうリスクに対応できます。
また、住宅ローンの返済については以下に挙げる方法が考えられます。
ローンの肩代わりや借り換え
ペアローンの一本化
親族などから借りて一括返済する
4-1. ローンの肩代わりや借り換え
住宅ローンの債務者、つまりローンの返済義務を負う側が夫で、離婚の際に夫が妻に家を財産分与する事例を考えてみます。この場合、住宅ローンの残額を夫が負担するか、妻が負担するかが問題となります。
住宅ローンの残額を夫が負担する場合、夫が住宅ローンの支払いを続けることになりますが、夫が支払いを怠ると、金融機関によって家が差し押さえられるリスクがあります。
そのようなリスクに備えて、夫が住宅ローンの支払いを怠り、妻が支払いを余儀なくされた場合の求償権について合意しておくなどの工夫がとられることがあります。求償権とは、連帯保証人である妻が住宅ローンを返済した場合に、返済分のお金を夫に請求できる権利です。
一方、住宅ローンの残額を妻が負担する場合、ローンの債務者を夫から妻に変更してもらうよう金融機関に依頼する方法も考えられるでしょう。しかし、金融機関がローンの債務者の変更に応じてくれるケースは少ないと思われます。
そこで、ローンの借り換えという方法が考えられます。妻が自分の名義で新たな住宅ローンを組み、そのお金で現在返済中のローンを一括返済するとともに、新たなローンを返済していくかたちです。この方法をとるためには、妻にローンを組めるだけの信用力(収入、資産などの経済力)が必要となります。
また、住宅ローンの債務者を夫のままとし、現実の支払いを妻が担当する方法も考えられます。この場合、妻と夫の間で、妻が住宅ローンの支払いを引き受ける履行引受(りこうひきうけ)の合意をしておく必要があります。
以上のように、住宅ローンが残っている家の名義変更には難しい問題が含まれています。具体的な状況に応じて適切な方法をとる必要があるため、弁護士や司法書士などの専門家への相談をお勧めします。
4-2. ペアローンの一本化
同一の物件について、夫婦それぞれが住宅ローンを組むことを「ペアローン」と言います。離婚に際して、ペアローンを夫婦のいずれかに一本化したい場合にも、ローンの借り換えなどが必要となります。この場合も、ローンを組めるだけの信用力がなければなりません。
4-3. 親族などから借りて一括返済する
ローンの借り換えが難しい場合、親族などからお金を借りて住宅ローンを一括返済する方法も考えられます。この場合、住宅ローンを残したままにしていると生じるリスクなどを丁寧に説明し、親族などの協力を取りつける必要があります。
5. 住宅ローンなしの家の名義変更をする方法
住宅ローンがない家を財産分与で取得した場合は、金融機関との調整は必要ありません。財産分与の内容に従って名義変更を行います。

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6. 家の名義変更をするまでの流れ
離婚にあたって家の名義を変更するには、以下のような手順を踏んでいきます。
6-1. 【STEP1】離婚の条件を決める
離婚にあたっては、離婚の条件を取り決める必要があります。財産分与も離婚の条件の一つです。どのような財産分与とするのかは、家だけでなく預貯金や株式など対象となるすべての財産を考慮して決定します。住宅ローンが残っている家を財産分与の対象とする場合、ローンの取り扱いについても話し合う必要があり、金融機関との調整が必要となるケースもあります。
なお、財産分与のほか、慰謝料、子どもの親権者、養育費、親子交流(面会交流)などの離婚条件についても取り決めなければなりません。取り決めた内容は、認識の相違が発生しないよう書面に残しておくことが重要です。
6-2. 【STEP2】名義変更の手続きをする
家の名義変更は、家の所在地を管轄する法務局に登記申請する方法で行います。
登記申請は、登記権利者と登記義務者が共同して行うのが原則です。登記権利者は当該登記申請によって権利を取得する人を、登記義務者は当該登記申請によって権利を失う人を指します。財産分与の場合、分与される側が登記権利者となり、分与する側が登記義務者となるため、原則として元夫婦が共同して登記申請をします。
登記申請には次のような書類が必要となりますが、事案に応じて必要書類は異なるため、司法書士などの専門家や法務局に確認しましょう。
登記申請書
登記済証または登記識別情報
登記原因証明情報(財産分与に関する合意書など)
登記権利者の住民票
登記義務者の印鑑証明書
固定資産評価証明書または課税明細書
財産分与の登記申請は、元夫婦が共同して行うのが原則ですが、財産分与に関する確定判決がある場合には、登記権利者が単独で登記申請できます。また、調停調書や審判書は判決に準ずるものとされているため、これらに財産分与の内容が記載されている場合も単独で登記申請できます。ただし、公正証書は判決に準ずるものにはあたらないため、これを提出しても単独での登記申請はできません。
登記申請には専門的な知識を要するため、司法書士などの専門家への相談や依頼も検討しましょう。
7. 家の名義変更にかかる費用と税金
家の名義変更をする際にかかる費用や税金について解説していきます。
7-1. 登記費用
登記申請の際には、法務局に登録免許税を納付する必要があります。財産分与の場合の登録免許税額は、対象となる不動産の固定資産税評価額の2%にあたる金額です。法律上は、財産分与をした人とされた人が連帯して登録免許税を納める義務を負いますが、実際の負担は協議して決めるのが一般的です。
登録免許税のほか、住民票や印鑑証明書を取り寄せる費用なども必要となります。
また、登記申請手続きを司法書士に依頼する場合には、司法書士に報酬を支払うことになります。報酬の額は司法書士ごとに異なるため、依頼を検討している司法書士に問い合わせてみるとよいでしょう。
7-2. 贈与税はかからない
財産分与によって家を取得した場合、原則として贈与税はかかりません。家の取得は財産分与請求権に基づくものであって、贈与を受けたわけではないからです。
ただし、分与された財産の額が結婚期間中の夫婦の協力によって得た財産の額や、その他すべての事情を考慮してもなお多すぎる場合には、贈与税がかかります。たとえば、結婚の期間が短く、夫婦の協力によって得た財産がほとんどないのに、高額な家を財産分与したような場合には、贈与税がかかる可能性があります。この場合、財産分与として多すぎる部分に贈与税がかかります。
また、離婚が贈与税などを免れるために行われたと認められる場合にも贈与税がかかります。この場合、離婚によって取得したすべての財産について贈与税がかかります。なお、離婚前に財産を取得した場合には、財産分与ではなく贈与にあたるため、贈与税がかかります。
8. 離婚で家の名義変更をする際の注意点
離婚に際して家の名義変更をする際には、以下のような注意点があります。
財産分与の取り決めを書面化する
できる限り早く手続きする
リスクを解消できないなら売却を検討する
名義変更は離婚後に行う
8-1. 財産分与の取り決めを書面化する
財産分与の条件を取り決めた場合、その内容を書面にしておくべきです。口約束では、あとで「言った、言わない」のトラブルになるおそれがあるためです。
財産分与に関する書面は、夫婦間で作成してもよいですし、公証役場で公正証書のかたちで作成することもできます。公正証書は、法律の専門家である公証人が作成する公的な文書であり、私的に作成された文書に比べて証拠としての価値が高いとされています。
なお、財産分与に関する公正証書を作成しても、単独での登記申請はできない点に注意が必要です。作成した書面は、登記申請の際に登記原因証明情報として提出できる場合があります。
8-2. できる限り早く手続きする
名義変更の手続きは、できる限り早く行うのがよいでしょう。手続きは元夫婦が共同して行うのが原則ですが、時間が経つと元配偶者の協力が得られなくなるおそれがあります。元配偶者の協力が得られない場合、裁判をする必要が生じるなどして名義変更に時間がかかってしまいます。
また、名義変更をせずに放置しておくと、元配偶者に家を売却されてしまうなどのリスクがあります。
8-3. リスクを解消できないなら売却を検討する
住宅ローンが残っている家の財産分与には、実務上の難しい問題が含まれています。リスクを完全に解消できない可能性もあるため、家を売却したうえで財産分与を行う方法も検討するべきです。
この場合は、売却代金で住宅ローンを返済し、その残額を一定の割合で分与するかたちになります。ローンの繰り上げ返済や抵当権を抹消する手続きが必要となるため、事前に金融機関と話し合いをしましょう。
8-4. 名義変更は離婚後に行う
財産分与の話し合いは離婚前に行えますが、財産分与自体は離婚後でなければできません。つまり、財産分与による名義変更も離婚後に行うかたちになります。
離婚前に財産分与の名目で財産を譲渡した場合は単なる贈与となり、贈与税がかかるおそれがあります。
9. 離婚で家の財産分与について弁護士に依頼するメリット
家を財産分与の対象とする場合、住宅ローンの状況、家の名義や資産価値、その他の財産の状況など、さまざまな事柄を総合的に検討したうえで、事案に応じた適切な方法を選択しなければなりません。特に、住宅ローンが残っている家を財産分与の対象とする場合、ローンの取り扱いや家の名義変更などの悩ましい問題が生じます。
弁護士に依頼すれば配偶者や金融機関との話し合いを一任でき、リスクを抑えつつ最適な方法で手続きを進められます。

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10. 離婚による家の名義変更に関連してよくある質問
家やマンションの名義変更は、法務局に登記申請する方法で行います。ただし、住宅ローンが残っているにもかかわらず、金融機関に無断で名義変更をすると、ローンの一括返済を求められるおそれがあるため注意が必要です。
まず、財産分与を受けた側の税金について解説します。
財産分与によって家を取得した場合、贈与税はかからないのが原則です。また、夫婦が結婚期間中に協力して築き上げた財産を清算する目的での清算的財産分与の場合には、不動産取得税はかからないものとされています。
次に、財産分与を行った側の税金についてです。
家を財産分与した場合、分与時の時価で家を譲渡したものと取り扱われます。したがって、分与時の家の時価が家を取得した時の価額を上回っている場合、分与した側に譲渡所得税や住民税がかかることがあります。
裁判例では、財産分与を行った側に譲渡所得税が課されるとは知らず、高額な課税がなされることを知っていたら財産分与はしなかった、などとして、財産分与の効力が争われた事案があります。
配偶者が税金について誤解しているおそれがある場合には、事前に説明しておく必要があるでしょう。
離婚後も家に住み続けたいが、家の所有権を夫から妻に移転するのは難しいといった場合は、家の所有権を夫に残したまま、契約によって妻に家を使用する権利を与える方法があります。
ただし、この方法をとった場合、離婚後も人間関係が続くというデメリットがあります。そこで、家ではなく金銭の分与を受け、そのお金で別の住居を確保するなどの方法も検討すべきでしょう。
名義変更に期限はありませんが、できる限り早めに行ったほうがよいでしょう。
名義変更のための登記申請は元夫婦が共同して行うのが原則ですが、判決や調停などを経ている場合には、単独での申請が可能です。
自分で手続きすることもできますが、司法書士などの専門家に依頼したほうが確実でしょう。
11. まとめ 離婚時の家の名義変更で悩んでいる場合は弁護士に相談を
家が離婚に伴う財産分与の対象となる場合、家を維持するのか売却するのか、残っているローンをどうするのかなど、さまざまな事柄を検討しなければなりません。
財産分与で家を取得した場合は、名義が元配偶者のままだと相手に家を売却されるなどのリスクがあるため、名義変更を行う必要があります。
住宅ローンが残っている場合には、金融機関に無断で名義変更をすると、ローンの一括返済を求められるおそれがあるなど、難しい問題に直面します。また、名義変更の登記申請には専門的な知識が求められ、必要な書類も事例ごとに異なります。
家に関する財産分与や名義変更で悩んでいる場合は、弁護士に相談や依頼をし、慎重に手続きを進めるのがお勧めです。
(記事は2025年7月1日時点の情報に基づいています)