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1. 法的に離婚が求められる離婚の条件=法定離婚事由
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2. 離婚の5つの条件(法定離婚事由)の内容
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2-1. 不貞行為
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2-2. 悪意の遺棄
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2-3. 3年以上の生死不明
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2-4. 回復の見込みのない強度の精神病
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2-5. その他婚姻を継続しがたい重大な事由
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3. DV、モラハラ、セックスレス、性格の不一致は「離婚の条件」にならないのか?
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4. 離婚の条件を満たすのに必要な証拠
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5. 「離婚の条件」にあてはまる行為を行っている側のリスク
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5-1. 自分から離婚ができない
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5-2. 相手に慰謝料を請求される
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5-3. 子どもの親権争いで不利になるおそれ
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5-4. 社会的信用をなくすおそれ
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6. 離婚時に決めなければいけないこと(離婚条件)
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6-1. 財産分与
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6-2. 慰謝料
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6-3. 養育費
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6-4. 親権・監護権
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6-5. 面会交流
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6-6. 年金分割
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6-7. 氏(名字)の扱い
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6-8. 【重要】公正証書を作成すると安心
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7. 離婚で不利な条件で合意しないためのポイント
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7-1. まず納得できない条件に同意しないこと
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7-2. 弁護士に相談すること
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7-3. 離婚調停を行うこと
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7-4. 最終手段は離婚裁判
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8. 離婚の条件に関するよくある質問
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9. まとめ 「離婚の条件」とは「法定離婚事由」のこと
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1. 法的に離婚が求められる離婚の条件=法定離婚事由
離婚協議や離婚調停では、相手の同意がなければ離婚できません。しかし、裁判では夫婦の同意がなくても、法律で定めてある理由(民法770条)があれば、離婚が認められます。この法律上の理由は「法定離婚事由」と呼ばれ、次の5つがあります。
不貞行為
悪意の遺棄
3年以上の生死不明
回復の見込みのない強度の精神病
その他婚姻を継続しがたい重大な事由
離婚裁判では、離婚を求める側が「法定離婚事由に当たる行為があった」ことを証拠を使って主張・立証していくことになります。
2. 離婚の5つの条件(法定離婚事由)の内容
ここでは、法定離婚事由に該当する5つの行為を紹介します。
2-1. 不貞行為
既婚者が配偶者以外と肉体関係を持つことを不貞行為といいます。裁判で不貞を理由に離婚を求める場合には、「本当に肉体関係があったと認められるか」が重要になります。しかし、当事者が自白しない限り、肉体関係そのものを直接証明するのは難しいため、通常は状況証拠の積み重ねによって立証していきます。
なお、不貞行為を行った側からの離婚請求は原則認められません。
2-2. 悪意の遺棄
悪意の遺棄とは、正当な理由なく夫婦の同居・協力扶助義務(民法752条)に違反する行為のことをいいます。具体的には、配偶者の生活費を負担できるだけの収入や資力があるにもかかわらず一切生活費を負担しない、配偶者の住む家にも全く帰宅しないといった行為が該当します。
不貞行為の場合と同様、悪意の遺棄を行った側からの離婚請求は原則認められません。
2-3. 3年以上の生死不明
配偶者がどこにいるのか、生きているのか亡くなっているのかさえ分からない状態が3年以上続いている場合は、法定離婚事由に当たります。相手が行方不明なのに、法律上だけ「夫婦を続けなければならない」状態を強いるのは不当と考えられるため、離婚が認められる仕組みになっています。
2-4. 回復の見込みのない強度の精神病
配偶者が「回復の見込みのない強度の精神病」にかかっている場合も、法定離婚事由の一つとされています。重い精神疾患がある場合、夫婦としての同居・協力義務を果たすことができないと考えられるからです。
ただし、このレベルの精神病は夫婦関係だけでなく、日常生活自体も難しくなるケースが多いものです。そのため、離婚を認めてしまうと病気の配偶者を保護できなくなり、人道的に問題が生じることがあります。こうした事情から、実務ではこの理由だけで離婚が認められるケースはまれです。
この実情を踏まえ、2026年4月施行の民法改正では、この規定自体が削除される予定です。
2-5. その他婚姻を継続しがたい重大な事由
「婚姻を継続しがたい重大な事由」とは、夫婦関係がすでに深刻に破綻しており、元の状態に戻して婚姻生活を続けることが非常に難しいと判断される場合のことです。この判断は、周囲から見ても破綻が明らかな「客観的な事情」と、当事者がどれだけ関係を続けられないと思っているかという「主観的な事情」の両方から総合的に行われます。
もっとも代表的な例は、夫婦が完全に別居しており、その期間が長期間にわたっているケースです。長期間の別居は、夫婦関係が回復困難なレベルで壊れていることを示す事実として扱われます。
3. DV、モラハラ、セックスレス、性格の不一致は「離婚の条件」にならないのか?
DV(家庭内暴力)、特に身体的な暴力がある場合は、その内容や程度によって、「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当するため、離婚理由として認められることがあります。
一方で、モラハラ(精神的暴力)、セックスレス、性格の不一致といった問題は、当事者にとっては深刻でも、裁判所という第三者から見ると「離婚を認めるべきほど深刻」と判断されないケースも少なくありません。そのため、これらの事情だけでは離婚理由として扱われにくいのが実情です。
4. 離婚の条件を満たすのに必要な証拠
離婚裁判では、離婚を求める側が「法定離婚事由に当たる行為があった」ことを証明する必要があります。以下は、法定離婚事由ごとの代表的な証拠の例です。
【不貞行為の場合】
肉体関係を直接証明することは難しいため、複数の状況証拠を組み合わせて立証します。LINEやメールなどの証拠を集める際は、相手の端末画面を直接撮影するなど、不正アクセスと疑われない方法をとることが望ましいです。
・探偵の調査報告書
・LINE・メールのやり取り
・ホテルの出入り、同じ部屋に宿泊したことが分かる領収書・予約履歴
【悪意の遺棄・3年以上の生死不明の場合】
生活費を支払ってくれない、全く帰宅しないなどを証明することは簡単ではありません。「存在しないこと」は証明が難しいため、主張する側の言い分の信用性が重視されます。
・一切帰宅していない期間を示す資料
・生活費が支払われていないことが分かる家計簿や通帳
・周囲の証言や経緯をまとめた陳述書
【回復の見込みのない強度の精神病の場合】
単に病気であるだけではなく、離婚後に本人が生活できる見通しまで求められます。
・医師の診断書
・離婚後の生活が破綻しないことを示す資料
・離婚を求める側がどれだけ配慮できるかを示す資料
「離婚後の生活が破綻しないことを示す資料」とは、家族・支援者のサポート体制、福祉サービスの利用見込みなどを指します。
【婚姻を継続しがたい重大な事由の場合】
夫婦関係の破綻を総合的に判断するため、多様な証拠が使われます。
・日記、家計簿など、日常生活の状況が分かる記録
・暴言・トラブルを録音・撮影したデータ
・警察への通報記録や相談履歴
・長期間の別居を示す住民票や転居記録
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5. 「離婚の条件」にあてはまる行為を行っている側のリスク
法定離婚事由に該当する行為を行った側(有責配偶者)には、離婚手続きやその後の生活でさまざまな不利益が生じる可能性があります。主なリスクを整理しておきましょう。
5-1. 自分から離婚ができない
法定離婚事由がある場合でも、その原因を作った側から離婚を請求することは原則できません。もしこれを認めると、責任のない相手が、望まない離婚を強いられてしまうためです。離婚原因を作った側は「有責配偶者」とされ、離婚請求そのものが厳しく制限されます。
5-2. 相手に慰謝料を請求される
不貞行為や悪意の遺棄など、違法性のある行為に当たる場合は、相手から慰謝料を請求されるおそれがあります。相手が被った精神的苦痛や損害については、加害行為をした側が賠償すべきと法律で考えられているためです。
5-3. 子どもの親権争いで不利になるおそれ
どちらの親が離婚後に親権者になるか争いが生じた際、有責配偶者は不利になる場合があります。ただし、問題になるのは「離婚原因となった行為そのもの」よりも、「その行為が育児能力にどのような影響を与えているか」です。
たとえば、不貞行為をしていたとしても、それだけでは親権に直結しません。しかし、不貞相手に夢中で子どもの世話を放棄していた場合は「親としての適性が低い」と判断され、親権獲得に不利になる可能性が高くなります。
5-4. 社会的信用をなくすおそれ
不貞行為や生活費を入れないなどの行為は、相手や家族を傷つける行為です。たとえその場で問題が表面化しなくても、後から周囲に知られれば職場や友人関係などで信用を失うリスクがあります。行為そのものだけでなく、トラブルの経緯が広がることで、長期的な影響につながることもあるでしょう。
6. 離婚時に決めなければいけないこと(離婚条件)
離婚は「離婚届にサインして終わり」ではありません。離婚後の生活に直結する重要な取り決めがいくつもあり、これらをあいまいにしたまま離婚すると、後から大きなトラブルにつながる可能性があります。ここでは、離婚時に必ず話し合っておくべき主要な項目を整理します。
6-1. 財産分与
夫婦は婚姻期間中に協力して財産を築いていくと考えられており、それを離婚時に清算するのが「財産分与」(民法768条)です。貢献度は夫婦で同程度とみなされるため、婚姻中に取得した財産は原則折半します。
対象となるのは、不動産・自動車・株式・預貯金・生命保険・退職金(婚姻期間分)など、「夫婦の協力で形成された財産」です。
6-2. 慰謝料
不貞行為などの違法性のある行為が原因で離婚に至った場合は、その精神的苦痛に対して慰謝料を請求できます。慰謝料が発生するのは、あくまで「相手が違法行為をしたケース」に限られます。
6-3. 養育費
未成年の子どもの親権者になった側は、相手方に養育費を請求できます。金額は、家庭裁判所が作成した「養育費の標準算定表」を用いて、双方の年収・子どもの年齢・人数から算出するのが一般的です。
なお、離婚時に養育費について取り決めをしていなかったとしても、子ども1人あたり月額2万円までの養育費を請求できる「法定養育費」制度が、2026年4月よりスタートします。
6-4. 親権・監護権
未成年の子どもがいる場合、離婚にあたって必ず親権者を決める必要があります。争いになった場合は、裁判所が「子どもにとって何が最善か」という基準で判断します。考慮されるのは、具体的に以下の点です。
どれだけ育児をしてきたか
育児環境が整っているか
子どもとの関係性
他方の親との面会を尊重できるか
なお、2026年4月より、離婚後も夫婦共同で親権を行使する「共同親権」制度が開始されます。制度開始後は、単独親権と共同親権のどちらも選択できるようになります。
6-5. 面会交流
離れて暮らす親と定期的に会うことは、子どもの健全な成長にとって重要とされています。そのため、面会の頻度・方法(対面/オンライン)・引き渡しのやり方など、具体的なルールを取り決めておくことが望まれます。
6-6. 年金分割
年金分割とは、婚姻中の厚生年金の保険料納付実績を夫婦で分け合う制度です。法律上、請求された側が拒否することはほぼできません。離婚後の老後資金に直結するため、重要なポイントです。
6-7. 氏(名字)の扱い
離婚すると、婚姻によって氏を改めた側は基本的に婚姻前の氏に戻ることになります。婚姻後の氏を離婚後も使い続けたい場合は、別途お住まいの市区町村の役所や役場で手続きを行う必要があります。
6-8. 【重要】公正証書を作成すると安心
財産分与・慰謝料・養育費の支払いなどは、口約束のままでは後のトラブルの原因になります。公正証書にしておけば、約束が守られなかった際に強制執行(差し押さえ)をすることも可能になり安心です。
公正証書は「公証人」が「公証役場」で作成します。離婚条件を確実に守ってもらうためにも、可能であれば作成しておくことをおすすめします。
7. 離婚で不利な条件で合意しないためのポイント
離婚は、大きなお金や子どもの生活に関わる取り決めが多いため、焦って合意してしまうと後悔につながりやすい場面です。相手のペースに流されず、自分にとって不利な条件で合意しないために知っておきたいポイントをまとめます。
7-1. まず納得できない条件に同意しないこと
内容に納得できないときはもちろん、相手が強く出てきてプレッシャーを感じるときでも、安易に合意書・協議書に署名や押印してはいけません。文書にサインする行為は法的に非常に重く扱われ、後から「やっぱり気が変わった」と撤回することは困難です。少しでも不安がある場合は、その場で署名しないことが重要です。
7-2. 弁護士に相談すること
弁護士は、証拠集めから離婚交渉、公正証書の作成まで一貫してサポートできます。不利な条件を避けるための交渉術や、法的にどこまで主張できるかの判断も任せられるため、納得いく条件を引き出しやすくなります。
また、離婚を求められた側であっても、慰謝料の減額や条件の調整など、弁護士が介入することで大きく状況が改善することがあります。
7-3. 離婚調停を行うこと
夫婦の話し合いだけではどうしても意見がまとまらない場合は、裁判所で行う「離婚調停」を利用するのが有効です。調停では、調停委員という第三者が中立の立場で間に入り、双方の意見を調整しながら話し合いを進めてくれます。相手が一方的に主張してきたり、感情的になったりして話が進まない場面でも、調停委員が状況を整理してくれるため、冷静に検討できる環境が整います。
また、調停では裁判になった場合に自分の希望がどこまで認められるのか、法的に自分の主張は妥当なのかといった点についても客観的に考えるきっかけが得られます。そのため、当事者同士では平行線だった話し合いでも、調停に進んだことで合意に至るケースは多くあります。
7-4. 最終手段は離婚裁判
調停でも合意ができなかった場合、最終手段が離婚訴訟です。双方が証拠と主張を出し合ったうえで、裁判官が「離婚の可否」や「慰謝料・財産分与・親権・養育費・面会交流」などについて判決を下します。
裁判は時間も労力もかかりますが、公平な結論を得られる方法として位置づけられています。
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8. 離婚の条件に関するよくある質問
言い出しただけでは不利にはなりません。ただし、不貞行為など離婚の原因が自分にあるにもかかわらず離婚を切り出した場合、条件面で不利になる可能性があります。
当事者双方が離婚に合意して離婚届に必要事項を記入すれば、すぐに離婚できます。しかし、相手が離婚に合意しない場合や、離婚にあたって条件を取り決めることを希望する場合は、離婚まで長引いてしまう可能性は否定できません。
調停や訴訟といった法的手続きを利用することで離婚を進めることはできます。しかし、法定離婚事由がない場合は、いきなり調停や訴訟に進んでも、望む結果が得られない可能性があります。
まずは相手の気持ちや事情を確認しながら、話し合いで納得してもらうための働きかけが必要になります。それでも話し合いが難航するようであれば、弁護士に相談して適切な進め方をアドバイスしてもらいましょう。
9. まとめ 「離婚の条件」とは「法定離婚事由」のこと
離婚は相手の同意がなければ成立せず、裁判で離婚を認めてもらうには「法定離婚事由」に当たる事情が必要です。不貞行為や悪意の遺棄、長期間の別居といった代表的な理由に該当するかどうかは、証拠によって判断されます。
また、離婚時には財産分与・養育費・親権など、多くの取り決めが必要で、焦ってサインすると不利な条件を受け入れてしまうおそれがあります。状況に応じて弁護士に相談し、調停や裁判も視野に入れながら、自分にとって納得できる形で離婚を進めることが大切です。
(記事は2025年12月1日時点の情報に基づいています)