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1. 離婚したら税金はどうなる?生じ得る影響は?
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1-1. 子どもの扶養の変化により、税金が増減することがある
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1-2. ひとり親または寡婦(かふ)になった場合は、追加で控除を受けられることがある
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1-3. 配偶者控除などを受けていた場合は、税金が増える
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1-4. 転職して収入が変化すれば、税金の額も変わる
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2. 離婚によって税金のメリット・デメリットが生じるケース
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2-1. メリットが生じるケース
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2-2. デメリットが生じるケース
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3. 離婚したら社会保険料はどうなる?
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3-1. 配偶者の扶養に入っていた場合|新規加入が必要
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3-2. 配偶者を扶養していた場合|社保なら保険料は変化なし、国保なら負担減
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3-3. 夫婦間に扶養関係がなかった場合|変化なし
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4. 離婚によって適用の有無が変化し得る控除一覧
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4-1. 扶養控除
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4-2. 配偶者控除・配偶者特別控除
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4-3. 所得金額調整控除
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4-4. ひとり親控除
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4-5. 寡婦控除
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5. 離婚時にもらえるお金に関する税金の取り扱い
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5-1. 慰謝料
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5-2. 財産分与
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5-3. 養育費
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6. 離婚するときにできる税金対策
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7. 離婚に関する税金について、弁護士に相談できる?
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8. 離婚と税金に関するよくある質問
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9. まとめ 離婚後の税金を正しく理解して離婚後の生活に備えよう
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1. 離婚したら税金はどうなる?生じ得る影響は?
離婚をすると、税金に関して以下のような影響が生じることがあります。
1-1. 子どもの扶養の変化により、税金が増減することがある
離婚前に自分が子どもを扶養していた場合、離婚後に元配偶者が扶養することになれば、扶養控除が受けられなくなり、税金が増える可能性があります。
反対に、離婚前は元配偶者が子どもを扶養していたものの、離婚後に自分が扶養することになれば、新たに扶養控除を受けられるため、税金が減ることになります。
また、給与所得が850万円を超える場合、扶養の変化によって所得金額調整控除にも影響が出ることがあります。
1-2. ひとり親または寡婦(かふ)になった場合は、追加で控除を受けられることがある
離婚後にひとり親になった場合は、所得金額などの要件を満たせば年間35万円のひとり親控除を受けられます。
また、ひとり親控除の要件を満たさない場合でも、寡婦控除の要件を満たせば、年間27万円の控除を受けることができます。
1-3. 配偶者控除などを受けていた場合は、税金が増える
婚姻中は、配偶者が無収入または収入が少ない場合に、配偶者控除や配偶者特別控除を受けられることがあります。しかし、離婚するとこれらの控除は受けられなくなるため、課される税金が増えることになります。
1-4. 転職して収入が変化すれば、税金の額も変わる
専業主婦(専業主夫)やパート勤務の人は、離婚に伴い自立するため新たな仕事を探すケースが多いでしょう。就職や転職によって収入が増えれば、それに応じて税金の負担も増えることになります。
2. 離婚によって税金のメリット・デメリットが生じるケース
離婚すると税負担が変わることがあります。以下では、離婚によって税額が変化し、メリットやデメリットが生じる主なケースを紹介します。
2-1. メリットが生じるケース
以下のケースでは、離婚後の税額が軽減される可能性があります。
子どもを扶養する人が、元配偶者から自分に変わった
ひとり親控除または寡婦控除を新たに受けられるようになる
2-2. デメリットが生じるケース
以下のケースでは、離婚後の税額が増える可能性があります。
子どもを扶養している人が、自分から元配偶者に変わった
離婚前に配偶者控除または配偶者特別控除を受けていた
離婚前に所得金額調整控除を受けていたが、離婚後は受けられなくなった
離婚を機に転職や就職をして、収入が増えた
3. 離婚したら社会保険料はどうなる?
離婚すると、税金だけでなく社会保険料にも影響が出ることがあります。状況によっては、加入先の変更が必要になるため注意が必要です。
3-1. 配偶者の扶養に入っていた場合|新規加入が必要
婚姻中は配偶者の社会保険の扶養に入っていた場合、離婚後は国民健康保険または自分の勤務先の健康保険へ新たに加入する必要があります。
国民健康保険は市区町村役場の窓口で、勤務先の健康保険は勤務先の人事担当者などを通じて加入手続きを行いましょう。
3-2. 配偶者を扶養していた場合|社保なら保険料は変化なし、国保なら負担減
婚姻中に配偶者を扶養していた場合、加入している保険の種類によって影響が異なります。
社会保険に加入していた場合は、離婚後も引き続き同じ社会保険に加入したままです。元配偶者は扶養から外れますが、社会保険料の額に影響はありません。
自分と配偶者が国民健康保険に加入していた場合も、加入先は変わりません。ただし、国民健康保険料の納付義務者は世帯主であるため、元配偶者が世帯から外れるとその分の負担は軽減されます。
3-3. 夫婦間に扶養関係がなかった場合|変化なし
夫婦が共働きで、それぞれ収入を得ており扶養関係がなかった場合は、離婚による社会保険の変更や保険料の変化はありません。

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4. 離婚によって適用の有無が変化し得る控除一覧
税金の負担は、各種控除によって軽減できる場合があります。特に以下の所得控除は、離婚によって適用されるかどうかが変化することがあるため、注意が必要です。
4-1. 扶養控除
12月31日現在の年齢が16歳以上の親族(配偶者を除く)を扶養している場合、その年の所得から扶養控除を受けることができます。
離婚によって16歳以上の子どもの扶養者が自分から元配偶者に変わった場合は、扶養控除を受けられなくなるため、税負担が増加する可能性があります。
一方で、離婚後に16歳以上の子どもの扶養者が元配偶者から自分に変わった場合は、新たに扶養控除を受けられるため、税負担が軽減される可能性があります。
なお、子どもの養育費を継続的に支払っている場合、同居していなくても子どもに対して扶養控除を受けられます。ただし、扶養控除を受けられるのは父母のいずれか一方のみです。
4-2. 配偶者控除・配偶者特別控除
自分の合計所得金額が900万円以下で、扶養している配偶者の合計所得金額が48万円以下(給与のみの場合は103万円以下)の場合、配偶者控除を受けられます。
また、自分の合計所得金額が900万円以下で、扶養している配偶者の合計所得金額が48万円超133万円以下(給与のみの場合は103万円超201.6万円以下)の場合は、配偶者特別控除の対象となります。
婚姻中に配偶者控除・配偶者特別控除を受けていた場合は、離婚するとこれらの控除が適用されなくなるため、税負担が増えることがあります。
4-3. 所得金額調整控除
所得金額調整控除とは、給与収入が年間850万円を超え、23歳未満の子どもや特別障害者の配偶者・子どもを扶養している場合に受けられる控除です。離婚によってこれらの人を扶養しなくなると、所得金額調整控除を受けられなくなり、税金が増える可能性があります。
なお、23歳未満または特別障害者の子どもへの養育費を継続的に支払っている場合、同居していなくても所得金額調整控除を受けられます。扶養控除と異なり、所得金額調整控除は父母の双方が適用を受けることが可能です。
4-4. ひとり親控除
離婚後にひとり親(シングルマザー、シングルファザー)となり、合計所得金額が年間500万円以下の人は、その年の所得から35万円の「ひとり親控除」を受けられます。離婚によって新たにひとり親控除を受けられるようになると、税金が減る可能性があります。
4-5. 寡婦控除
ひとり親には該当しないものの、寡婦の条件を満たす場合、その年の所得から27万円の「寡婦控除」を受けられます。寡婦控除を受けられるのは、合計所得金額が年間500万円以下の女性であり、離婚後再婚せず扶養親族がいる人などです。離婚後に新たに寡婦控除を受けられる場合、税負担が軽減される可能性があります。
5. 離婚時にもらえるお金に関する税金の取り扱い
夫婦が離婚する際に精算する金銭には、慰謝料・財産分与・養育費などがあります。それぞれの税金の取り扱いについて解説します。
5-1. 慰謝料
不貞行為などに対して支払われる慰謝料には、原則として税金は課されません。ただし、慰謝料の金額が過度に高額な場合や、慰謝料であることが証明できない場合は、課税対象となることがあるので注意が必要です。
5-2. 財産分与
財産分与も、原則として税金は課されません。ただし、財産分与の割合が極端に偏っており、贈与であると判断されると、贈与税の対象になる可能性があります。
また、不動産の財産分与をする場合、分与時の時価を基準として譲渡所得の有無が判断されます。譲渡所得が生じる場合には、財産分与をする側に所得税と住民税が課されます。
5-3. 養育費
子どもの養育費も、原則として税金は課されません。
ただし、110万円を超える養育費を一括で受け取った場合や、月々の分割受け取りであっても年間の金額が極端に高額な場合などは、贈与税の対象となる可能性があります。
6. 離婚するときにできる税金対策
離婚に伴う予期せぬ課税を避けるためには、慰謝料・財産分与・養育費の金額は適正に決めることが重要です。適正以上の金額を分けると、離婚に乗じた贈与と判断され、贈与税の対象となるリスクがあります。特段の事情がない限り、相場に応じた適正な金額を取り決めましょう。
また、財産分与により不動産を移転する際は、以下の控除や特例が利用できるかどうか事前に確認しておくことをおすすめします。
【マイホームを売ったときの特例】
マイホームを譲渡した場合、譲渡所得税から最高3000万円を控除できる
【軽減税率の特例】
所有期間10年以上のマイホームなどを売却した場合、譲渡所得税のうち6000万円以下の部分に対して、通常より低い税率が適用される
【贈与税の配偶者控除】
婚姻期間20年以上の夫婦間で住居用不動産を贈与した場合に、贈与額から2000万円まで控除できる
7. 離婚に関する税金について、弁護士に相談できる?
弁護士は、所属する弁護士会を通じて国税局長に通知を行うことで、その国税局の管轄区域内において税理士業務を行うことが可能です。国税局長に税理士業務を行う旨の通知を行った弁護士は、国税庁のウェブサイトで確認できます。
ただし、税務に関しては弁護士よりも税理士の方が詳しいことが多いので、離婚に伴う税金の相談は税理士に依頼するのが望ましいです。税理士と連携している弁護士に相談すれば、税金の問題もワンストップで対応できるため、適切なサポートを受けられます。
8. 離婚と税金に関するよくある質問
扶養控除、配偶者控除、配偶者特別控除、所得金額調整控除などが適用されなくなると、税金が増える可能性があります。具体的な増加額は、控除の種類や所得額によって異なるため、一概には言えません。詳細な計算は税理士に相談することをおすすめします。
扶養控除や配偶者控除の適用は、年末(12月31日)時点の状況で判定されます。そのため、離婚届を年内(12月31日まで)に提出するか、年明けに提出するかで税額が変わることがあります。
子どもの扶養控除は、年の途中で離婚しても養育費を継続して支払っていれば受けられます。ただし、自分と元配偶者が重複して扶養控除を受けることはできません。一方で、配偶者控除・配偶者特別控除は、年の途中で離婚した場合、その年の所得について控除を受けられません。
所得控除の適用の可否は、実際の家庭や収入などの状況によって異なるため、一概には言えません。また、税金を気にして別居か離婚かを決めるのは適切ではないため、弁護士や税理士のアドバイスを受け、総合的に判断することが重要です。
離婚届を提出した後も、内縁関係(事実婚)として同居生活を続けることを「ペーパー離婚」と呼びます。ペーパー離婚そのものは違法ではありませんが、脱税目的がある場合は追徴課税や刑事罰の対象になることがあるため、注意が必要です。
9. まとめ 離婚後の税金を正しく理解して離婚後の生活に備えよう
離婚をすると所得控除の適用関係が変わり、離婚前に比べて税金が増えたり減ったりすることがあります。また、離婚に伴う財産分与などでも、内容によっては課税対象となるため、注意が必要です。
離婚手続き全般については弁護士、税金の問題については税理士に相談するのが安心です。税理士と連携している弁護士に相談して、スムーズかつトラブルのない離婚成立を目指しましょう。
(記事は2025年6月1日時点の情報に基づいています)