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1. 養育費請求に関する弁護士費用の内訳
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1-1. 相談料
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1-2. 着手金
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1-3. 報酬金
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1-4. 日当
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1-5. 実費
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2. 手続き別|養育費に関する弁護士費用の相場
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2-1. 離婚協議、離婚調停、離婚訴訟
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2-2. 養育費の取り決め
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2-3. 離婚後の養育費減額(増額)請求
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2-4. 当事者間の合意書や公正証書の作成
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2-5. 未払い養育費の回収と強制執行
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3. パターン別|養育費に関する弁護士費用の計算例
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3-1. 離婚については合意していて、養育費のみ交渉してもらう場合
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3-2. 離婚手続き全体を依頼した場合
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3-3. 離婚後に養育費の減額(増額)を請求する場合
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3-4. 未払い養育費の回収を依頼する場合
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4. 養育費について弁護士に依頼するメリット
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4-1. トラブルを適切に解決できる
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4-2. 相手との交渉や裁判手続きを代行してもらえる
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4-3. トラブルを未然に防げる
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5. 養育費に関する弁護士費用を抑える方法
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5-1. 無料相談を活用する
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5-2. 複数の事務所に相談する
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5-3. 自宅に近い事務所に依頼する
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5-4. 早めに依頼する
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5-5. 将来を見越して未払い対策をしておく
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5-6. 面会交流を実施する
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5-7. 自分で裁判所の調停や養育費ADRを利用する
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5-8. 自治体の養育費保証サービスや助成金を利用する
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6. 養育費に関する弁護士費用を払えないときはどうすべき?
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6-1. 法テラスに相談する
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6-2. 着手金ではなく報酬金のみの報酬体系になっている弁護士を探す
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7. 養育費と弁護士費用に関してよくある質問
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8. まとめ 養育費請求に関する弁護士費用について不安がある場合は弁護士に相談を
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1. 養育費請求に関する弁護士費用の内訳
弁護士費用にはどのような種類があるのかについて、支払いが発生するタイミングも含めて具体的に解説します。なお、本文中の金額には消費税を含みません。
【弁護士費用の内訳と支払いのタイミングおよび相場】
項目 | 支払いのタイミング | 費用の相場 |
|---|---|---|
法律相談料 | 正式な依頼前 (相談段階) | 0~1万円/30分 |
着手金 | 弁護士との契約時 | 10万円~30万円 |
報酬金 | 依頼業務が達成された時点 | 固定報酬+経済的利益の10%~20%など(算出方式によって異なる) |
日当 | 都度、または終了時 | 事案によって異なる |
実費 | 都度、またはあらかじめ一定額を預ける | 事案によって異なる |
1-1. 相談料
相談料とは、弁護士に正式に依頼する前、つまり弁護士に相談した段階で発生する費用です。弁護士によって費用の設定は異なりますが、30分間で5000円から1万円程度が一般的です。
最近では、初回の相談料は無料という事務所も多く見られます。
1-2. 着手金
着手金は、弁護士に依頼した際に活動費として支払うお金です。支払いのタイミングは通常、弁護士との契約の時点です。報酬金と異なり、弁護士が業務を行うための費用であることから、弁護士の業務の成果とは関係なく支払いが発生します。
養育費請求を依頼した場合の着手金は10万円から30万円ほどになるケースが多いようです。もっとも、なかには着手金を設定せず、その代わりに弁護士の成果に応じて支払う報酬金の金額を高めに設定する料金体系を採用している事務所もあります。
1-3. 報酬金
弁護士に依頼した結果、獲得した成果に応じて発生する成果報酬です。たとえば、離婚を希望して弁護士に依頼した場合は、離婚成立が成果となるため、報酬が発生します。依頼した成果が達成できなかった場合は、報酬金は発生しません。支払いのタイミングは、依頼した業務が達成できた時点です。
報酬金の算出方法には、成果の有無にかかわらず固定金額を支払う「固定報酬制」と、成果に応じた割合で報酬金額が変動する「変動報酬制」があります。依頼内容に応じてその両方が設定されている場合もあります。
たとえば、離婚交渉とあわせて養育費の交渉を依頼した場合に、離婚が成立したときはその成果に対する固定報酬として20万円から50万円、養育費については変動報酬として取り決め金額の総額(養育費の2年分とすることが多い)の10%から20%が報酬として発生します。
また、養育費を請求する側ではなく、支払う側から養育費の減額交渉を依頼した場合は、相手から請求された金額に対して最終的に減額された金額を成果として変動報酬が発生する算定方法をとることがあります。
1-4. 日当
裁判に出席したり、現地調査や打ち合わせなどで遠方に出張したりする場合など、業務のために弁護士が外出する必要が生じた場合には、日当が発生することがあります。
たとえば、離婚や養育費の取り決めのための調停(裁判手続き)に出席する場合、1回あたり3万円から5万円の日当が発生するのが一般的です。
支払いのタイミングは、弁護士ごとに異なります。日当が発生した時点で個別に支払いが必要になる場合、最後にまとめて精算する場合などがあります。
1-5. 実費
実費とは、弁護士が業務を行うにあたって支出した費用です。たとえば、書類を作って送る際の郵送料、業務のために裁判所などに行く際の交通費、業務に必要な書類を取り寄せるための手数料など、弁護士業務に伴って発生する費用全般を指します。
実費を支払うタイミングは、弁護士ごと、または法律事務所ごとに異なります。たとえば、実費が発生した場合にその都度支払いが必要になる場合や、3万円など、実費の支払いのためにあらかじめ一定金額を弁護士に預けておき、実費が発生した場合に都度使用する場合などがあります。
2. 手続き別|養育費に関する弁護士費用の相場
養育費に関する弁護士費用の一般的な相場について説明します。ただし、報酬額は弁護士や事務所によって異なるため、ここで示す金額はあくまで目安です。実際の費用が必ずしも記載の範囲内に収まるとは限らない点にご注意ください。
2-1. 離婚協議、離婚調停、離婚訴訟
離婚は、「協議(交渉)→調停→裁判(訴訟)」というステップで進みます。それぞれの段階で弁護士費用が異なり、手続きが進むにつれて費用が高くなるのが一般的です。
手続きの段階によって異なりますが、以下のような金額になることが一般的です。養育費だけではなく離婚に関する手続きも含むため、養育費請求のみを依頼した場合と比べて費用は高くなります。
・着手金:20万円~50万円
・報酬金:離婚成立に対する固定報酬(30万円~50万円)+獲得した金額の10%~20%の変動報酬
変動報酬は、離婚に伴う財産分与や慰謝料として獲得した金額を総計したものです。また、これ以外に、裁判に出席するためなどの弁護士の日当や実費も発生します。
2-2. 養育費の取り決め
離婚の手続きを弁護士に依頼して、養育費も一緒に取り決める場合、着手金には養育費の分も含まれているのが通常です。ただし、その場合でも養育費の部分に対して報酬金が発生します。
離婚成立に伴う固定報酬に加えて、養育費(1年分や2年分)の総額の10%から20%の変動報酬となるのが一般的です。たとえば、養育費が月額5万円と取り決められた場合は、「月額5万円×2年分(24カ月)×10%=12万円」といったかたちです。
一方、離婚時に養育費を取り決めていないケースで、離婚後に養育費の取り決めのみを弁護士に依頼する場合は10万円から30万円ほどの着手金が発生します。その場合も養育費(1年分や2年分)の取り決めがされた場合はその総額に対して10%から20%の変動報酬が発生します。
2-3. 離婚後の養育費減額(増額)請求
離婚時に取り決めた金額をあとから変更するための交渉を弁護士に任せたい場合は、あらためて弁護士と契約して費用を支払う必要があります。
一般的に増額を請求するのは養育費を請求する側で、減額を請求するのが養育費を支払う側ですが、それぞれ以下のような費用の設定になっていることが多いと考えられます。
【養育費の増額】
・着手金:10万円~30万円
・報酬金:養育費が増額できた分(月額)の1年分または2年分の金額に対して10%から20%の変動報酬
(例:養育費月額3万円増額の場合の報酬金は、3万円×24カ月×10%=7万2000円)
【養育費の減額】
・着手金:10万円~30万円
・報酬金:養育費が減額できた分(月額)の1年分または2年分の金額に対して10%から20%の変動報酬
(例:養育費月額2万円減額の場合の報酬金は、2万円×24カ月×20%=9万6000円)
なお、養育費の増額や減額の場合、話し合いで決着がつかない場合は、調停や審判といった裁判手続きを行わなければなりません。その場合、手続きが進むにつれて追加の着手金が発生したり、裁判出席のための弁護士の日当が発生したりする可能性があります。
2-4. 当事者間の合意書や公正証書の作成
すでに夫婦間あるいは元夫婦間で養育費の金額について合意ができているのであれば、弁護士に合意書や公正証書の案文の作成のみを依頼する方法もあります。
公正証書は、公証役場という機関で作成しますが、内容は基本的に当事者が決める必要があります。その際、内容の「案」を弁護士に作成してもらうと、自分たちが約束しておきたい事項を正確に盛り込めるため、公正証書の作成がスムーズになります。
あくまで書面案の作成のみを依頼するため弁護士は内容に関して相手と交渉することはありませんが、その分費用は10万円から20万円と低めに設定されることが多いです。
2-5. 未払い養育費の回収と強制執行
養育費の取り決め後、相手が養育費を支払わずに未払いとなっているケースでは、その回収を弁護士に依頼する場合があります。
その場合の弁護士費用は、着手金が10万円から30万円、報酬金が回収額の10%から20%と設定されることが多いです。交渉のみで回収が可能であれば費用が抑えられますが、強制執行という裁判手続きを使って強制的に相手の給与や預貯金を差し押さえて回収する場合は、その分弁護士費用が高くなります。
3. パターン別|養育費に関する弁護士費用の計算例
具体的な例をもとに、必要な弁護士費用をシミュレーションしてみましょう。ただし、これらはあくまでも前述の相場を参考にした一例です。また、裁判手続きに伴う裁判所への手数料やそのほかの実費などは事案によって異なるため、記載していません。
3-1. 離婚については合意していて、養育費のみ交渉してもらう場合
養育費の交渉のみを依頼し、結果として交渉で養育費月額8万円で決着したケースの弁護士費用は次のとおりです。報酬金の基準は「養育費(月額)2年分の10%」としています。
着手金:20万円
報酬金:月額8万円×24カ月×10%=19万2000円
合計:39万2000円
3-2. 離婚手続き全体を依頼した場合
離婚手続き全体を弁護士に依頼し、裁判所の手続きである離婚調停での話し合いの結果、以下の条件で決着したケースの弁護士費用は次のとおりです。日当の発生基準は「調停回数×3万円」、報酬金の基準は「固定報酬30万円+獲得できた金額の10%」としています。
【離婚条件】
・離婚成立
・調停で期日(裁判所で話し合いを行う日)が合計10回開かれた
・財産分与として300万円の支払いを受けた
・子ども1名の養育費として、月額5万円を満20歳まで
【弁護士費用】
着手金:30万円
弁護士日当:10回×3万円=30万円
報酬金:30万円+(財産分与300万円+養育費120万円[5×24カ月])×10%=72万円
合計:132万円
3-3. 離婚後に養育費の減額(増額)を請求する場合
離婚の際に取り決めた月額5万円の養育費からの増額を求め、合計6回の養育費調停を経て、月額7万円に増額することで決着したケースでの弁護士費用は次のとおりです。日当の発生基準は「調停回数×3万円」、報酬金の基準は「増額できた養育費(月額)の2年分に対して10%」とします。
着手金:20万円
弁護士日当:調停回数6回×3万円=18万円
報酬金:2万円×24カ月×10%=4万8000円
合計:42万8000円
次に、離婚の際に取り決めた月額10万円の養育費からの減額を求め、調停および審判(合計10回)を経て月額5万円に減額したケースでの弁護士費用は次のとおりです。日当の発生基準は「調停回数×3万円」、報酬金の基準は「減額できた養育費(月額)の2年分に対して20%」とします。
着手金:20万円
弁護士日当:調停・審判回数10回×3万円=30万円
報酬金:5万円×24カ月×20%=24万円
合計:74万円
3-4. 未払い養育費の回収を依頼する場合
離婚時に離婚調停で取り決めた月額5万円の養育費が、子どもが5歳の時から未払いとなったため、裁判手続きである強制執行による給与差押によって月々の養育費を将来にわたって支払いを確保したケースの弁護士費用は次のとおりです。報酬金の基準は「養育費月額の5年分に対して10%の変動報酬」としています。
着手金:20万円
報酬金:5万円×60カ月×10%=30万円
合計 :50万円
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4. 養育費について弁護士に依頼するメリット
養育費請求に関する交渉を当事者自身で行うのは簡単ではありません。交渉を弁護士に依頼することで、次のようなメリットが得られます。
トラブルを適切に解決できる
相手との交渉や裁判手続きを代行してもらえる
トラブルを未然に防げる
4-1. トラブルを適切に解決できる
養育費の金額には裁判所が定めている基準があるため、金額についての見通しは比較的立ちやすいです。それでも、具体的な事情を考慮して養育費が増減することがあり、個別のケースごとに適切な金額を検討して導き出す必要があります。
養育費は子どもが20歳になるまでなど、長期にわたって支払いが続きます。つまり、月額では1、2万円の差であったとしても、長期的に見れば大きな差になるため、適切な金額を決定することが重要な意味を持ちます。
経験豊富な弁護士に依頼することで、さまざまな経験や過去の事例などをもとに、個別のケースで適切な金額を見極めたうえで、相手方との交渉や裁判手続きを進められます。
4-2. 相手との交渉や裁判手続きを代行してもらえる
弁護士としての筆者の経験では、離婚に向けて話を進めている夫婦間や、離婚後の元夫婦間で、相手と養育費に関する話し合いなどをすること自体が精神的なストレスになるという声を非常に多く聞きます。
しかし、弁護士に依頼した場合、弁護士が交渉や手続きの窓口となります。そのため、「相手との交渉などを自分でやらなくてよくなり、精神的に楽になった」「ストレスが解消された」という人も少なくありません。
弁護士への依頼は、弁護士が法的な観点から適切な解決に導いてくれるメリットもありますが、それと同等かそれ以上に、弁護士に相手との交渉や裁判手続きを任せられるという点で、大きなメリットがあります。
4-3. トラブルを未然に防げる
離婚後、養育費が必要になった場合や、口頭で約束していた養育費が支払われなくなった場合に、養育費を相手に請求しようと考えた結果、トラブルになるケースがあります。反対に、養育費を支払う側の人が、口頭で約束していたはずの金額を超えて請求されてトラブルになるケースもあります。
こうしたトラブルを未然に防ぐためには、離婚の際に弁護士に依頼して養育費についての取り決めをしっかり書面で残しておく必要があります。
また、養育費を支払ってもらう側から見て、将来相手が養育費を払わなくなることが想定される場合は、養育費の取り決めを行う時点で、公正証書の作成や裁判所の手続きを利用して取り決めをしておくのが望ましいです。これにより、将来養育費が未払いとなったときに、相手の財産や給与の差し押さえなどをスムーズに実行できます。
5. 養育費に関する弁護士費用を抑える方法
弁護士費用を抑える方法として、次のようなものが考えられます。
無料相談を活用する
複数の事務所に相談する
自宅に近い事務所に依頼する
早めに依頼する
将来を見越して未払い対策をしておく
面会交流を実施する
自分で裁判所の調停や養育費ADRを利用する
自治体の養育費補償サービスや助成金を利用する
5-1. 無料相談を活用する
まずは無料相談を利用しましょう。各自治体が実施している無料相談や、弁護士会の無料相談、法テラスの無料相談、各法律事務所が実施している無料相談などがあります。
無料相談は、養育費の取り決めなどに関して考えるきっかけになり、相手とどのように話し合いを進めていけばよいかについて見通しを立てることにもつながります。
ただし、相談したい弁護士や法律事務所が決まっていて、その事務所が有料相談のみを実施している場合は、相談したい弁護士への相談を優先してもよいでしょう。
5-2. 複数の事務所に相談する
弁護士への依頼前には、無料相談などを利用して、できれば複数の弁護士に相談しましょう。
筆者の個人的な考えですが、依頼する弁護士を決めるときには、「相性の合う弁護士」を選ぶことが大切です。相性を判断する要素はさまざまですが、たとえば、「話しやすい」「質問しやすい」「質問したことに丁寧に答えてくれる」「説明がわかりやすい」「連絡や報告をしっかりしてくれる」「報酬体系が明確」など、自身にとって重要なポイントや条件を洗い出し、なるべくその条件に合う弁護士を探すとよいでしょう。
一人の弁護士に相談するだけでは相談した弁護士が自分に相性が合っているのかどうかの判断ができません。複数の弁護士に相談して、比較してみるのがお勧めです。
5-3. 自宅に近い事務所に依頼する
離婚や養育費で裁判手続きを行う場合、夫婦(元夫婦)の自宅の最寄りの裁判所で手続きを行う必要があります。
裁判手続きを弁護士に依頼する場合、弁護士日当は、弁護士の事務所からの距離に応じて料金が設定されます。そのため、弁護士が遠方の裁判所に出張する必要が生じるとその分費用が高額になってしまいます。さらに、その際の交通費や宿泊などの実費も依頼者の負担になります。
また、養育費の請求をするために裁判手続き(調停)を利用する場合、基本的に相手(別居の配偶者や元配偶者)の居住先の最寄りの裁判所での手続きが必要となります。
もっとも、近年は、対面による面談だけではなく、電話やオンラインで相談や依頼後の打ち合わせなどができる法律事務所も増えてきています。裁判手続きも電話やオンラインなどを通じて、裁判所に出向かずに手続きが可能になりつつあります。
こうした事情を考慮して、自宅近くの弁護士を探すのか、相手が居住している地域の弁護士を探すのか、あるいはそのほかの点を重視して場所にこだわらずに弁護士を探すのかを検討するとよいでしょう。
5-4. 早めに依頼する
弁護士への依頼に慎重になることはとても大事です。しかし、早めに弁護士に依頼し、相手との交渉を弁護士に任せることで早期に決着するケースもあります。
早期に決着することで、あとでトラブルが大きくなってから依頼するよりも、結果的に費用を抑えられる可能性もあります。まずは一度、早期に弁護士に相談してみることをお勧めします。
5-5. 将来を見越して未払い対策をしておく
離婚時に養育費の支払いに関してきちんと約束をしておかなかったために、あとでトラブルになるケースもあります。また、離婚時には相手も養育費を払うと言ってくれていたものの、離婚後何年か経って支払いがストップするケースも少なくありません。
離婚時に養育費を取り決める際には、将来的に未払いになる可能性も考慮することが大切です。養育費の支払いが滞った場合には強制執行を受けると認める「強制執行認諾文言付きの公正証書」を作成する、あるいは裁判手続きで養育費の取り決めを行うなどの対策をとっておきましょう。
それにより、いざ未払いになった際に調停や審判などの手続きを経ずに、スムーズに給与差押などの養育費の回収のための手続きに移れます。その結果、費用を抑えられることにもつながります。
5-6. 面会交流を実施する
離婚時に、養育費の取り決めとともに、養育費の支払い者と子どもとの間の面会交流の取り決めをした場合でも、子どもを相手に会わせたくないという気持ちから面会を停止してしまうケースがあります。
子どもと一緒に暮らしていない側の立場からすると、子どもと面会を継続していることで、親としての責任感が継続します。その責任感が子どものための費用である養育費の支払いを続ける動機になるという側面があります。
しかし、面会を停止してしまった場合、養育費を支払う側からすると、子どもの成長を定期的に見ることができる機会を奪われたと感じ、養育費の支払いを停止してしまう可能性があります。
結果として、養育費が未払いとなり、回収のために弁護士費用などが発生するため、このような側面を考えると、面会交流はやむを得ない事情がない限り継続することが望ましいでしょう。
5-7. 自分で裁判所の調停や養育費ADRを利用する
弁護士に交渉を依頼するのではなく、相手との話し合いの間に第三者が入ってくれる制度やサービスを利用する方法も考えられます。
たとえば、自分で裁判所の調停手続きを行えれば、裁判所が相手との間に入って話し合いを進めてくれるため、弁護士費用を抑えることも可能です。
また、弁護士会などが実施している養育費ADR(裁判外紛争解決手続)という制度を利用する方法も考えられます。
この制度は、弁護士が中立的立場として間に入り、話し合いを進めてくれるものです。自分自身で弁護士を依頼した場合と異なり弁護士が自身の一方的な味方ではなくなりますが、その分、自分で弁護士に依頼するよりも、費用が抑えられるのが一般的です。
5-8. 自治体の養育費保証サービスや助成金を利用する
自治体のなかには、養育費の保証サービスを導入しているところがあります。こうした自治体のサービスを利用すれば、養育費の未払いが続いている状態でも、養育費を回収できる場合があります。
ただし、自治体によって制度の有無や内容に差がある点、利用条件が設定されていたり、保証の範囲に上限があったりと、必ずしも養育費の全額を回収できる制度ではない点に注意が必要です。
また、自治体によっては、養育費を取り決めるために必要な弁護士費用やADRの費用に関して、一部助成金を出しているところもあります。こうした自治体の制度を利用することで費用を抑える方法も検討しましょう。
6. 養育費に関する弁護士費用を払えないときはどうすべき?
弁護士費用をすぐに払えないときは、次の方法を検討しましょう。
6-1. 法テラスに相談する
「日本司法支援センター法テラス」には、弁護士費用が捻出できない場合に、弁護士費用を立て替えてもらったうえで、比較的低額の分割払いで後々法テラスに返済していく「民事法律扶助制度」があります。弁護士の依頼のためにまとまった金額を用意できない場合は、こうした法テラスの制度を利用することを検討してみるとよいでしょう。
ただし、法テラスの利用にあたっては、収入や資産が一定基準以下であるなどの条件があるため、自分が法テラスを利用できるかについて事前の確認が必要です。
6-2. 着手金ではなく報酬金のみの報酬体系になっている弁護士を探す
弁護士費用は弁護士や事務所によって設定が異なります。そのため、着手金が設定されておらず、回収できた養育費の金額の中から成功報酬として報酬金のみが発生するかたちになっている場合もあります。このような報酬体系は「完全成功報酬型」と呼ばれます。
依頼当初に弁護士に支払う着手金を準備できない場合は、こうした完全成功報酬型の弁護士への依頼を検討する選択肢も考えられます。しかし、着手金が発生しない分、報酬金の金額が大きくなっていると推測されるため、費用に関しては事前にしっかりと確認したうえで依頼を決めるとよいでしょう。
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7. 養育費と弁護士費用に関してよくある質問
養育費は、子どもの成長に伴って長期的に支払わなければならないものです。そのため、短期的には弁護士費用の支払いによりマイナスになったと感じたとしても、弁護士に依頼することで養育費の支払金額を適切な金額に抑えられ、長期的に見ればプラスになっているというケースもあります。したがって、少なくともまずは弁護士に相談して、アドバイスをもらうことをお勧めします。
相談できます。ただし、未婚で出産した子どもの父親に養育費を請求する場合は、先に父親から子どもへの認知が必要になります。もし、まだ認知されていない場合は、認知を求める手続きのための弁護士費用が追加で発生する点に注意が必要です。
養育費についてのトラブルに関する弁護士費用は相手に請求できず、自己負担になります。
弁護士によって対応が異なります。たとえば、養育費の回収業務を依頼した場合に、一定期間は相手からの養育費を回収して管理することに対応している弁護士もいます。必要であれば、そうした事務所への依頼を検討するとよいでしょう。
ただし、たとえば「子どもが20歳になるまで」など、養育費の支払い完了まで継続して管理をしてくれる事務所は多くはない印象です。また、継続して管理してくれる場合であっても、手数料がかかることも考えられます。手数料の有無や金額などについても事前に確認しましょう。
たとえば「初回相談は無料」などのように、無料相談を実施している弁護士であれば無料相談で確認できます。有料相談の場合は、相談料は30分あたり5000円から1万円と設定しているところが多い印象です。
8. まとめ 養育費請求に関する弁護士費用について不安がある場合は弁護士に相談を
養育費に関しては、インターネットで調べると多くの情報が出てきたり、養育費の基準について裁判所の基準が決まっていたりするため、弁護士に依頼せずに、自分で相手と交渉をして決めることも可能だと思うかもしれません。
ただし、実際には養育費の決定の際にはさまざまな事情を考慮して適切な金額を決める必要があるほか、増額や減額をする際にも一定の条件を考慮しなければならないなど、実はそれほど単純な問題ではありません。
養育費請求に関する交渉を弁護士に依頼するには弁護士費用がかかります。しかし、適正な額の養育費を取り決められたり、相手との交渉を一任できるため当事者本人のストレスを軽減できたりと、メリットも多くあります。弁護士費用の支払いが難しい場合には、自治体の無料相談や法テラスを活用するなどの選択肢も検討しましょう。
養育費請求に関して悩んでいる場合は、一度弁護士に相談することをお勧めします。相談の際には、実際に依頼した場合にどのくらいの費用がかかるのかについて弁護士にしっかりと確認しましょう。
(記事は2025年12月1日時点の情報に基づいています)