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1. 面会交流とは
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2. 面会交流について決めるべきルールの項目例
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2-1. 面会交流の頻度
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2-2. 面会交流の時間
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2-3. 面会交流の場所
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2-4. 元夫婦の連絡方法
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2-5. 子どもの受け渡し場所や方法
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2-6. 都合が悪い場合の対応
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2-7. 宿泊や旅行
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2-8. 学校行事への参加
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2-9. 直接交流以外の交流
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3. 面会交流の方法を決める手続き
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3-1. 【離婚前】離婚協議、離婚調停、離婚訴訟
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3-2. 【離婚後】面会交流調停
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4. 面会交流のルールを破るとどうなる?
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5. 面会交流を拒否された場合の対応
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5-1. 調停などの法的手続きを利用する
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5-2. 間接強制を申し立てる
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5-3. 損害賠償(慰謝料)を請求する
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6. 面会交流をしないほうがよいケース
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7. 離婚後の面会交流について弁護士に相談するメリット
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8. 導入が決まった共同親権|面会交流に与える影響は?
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9. 面会交流に関してよくある質問
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10. まとめ|面会交流のトラブル回避や解消には弁護士のサポートが重要
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1. 面会交流とは
面会交流とは、離婚や婚姻中の別居の際、別居している親(以下、非監護親)が自分の子どもと交流することです。直接会っての交流を直接交流、電話や手紙、メールなどを用いての交流を間接交流と呼びます。
「面会交流が親の権利として認められるものか」という点についてはさまざまな議論があるものの、面会交流などについて定めた民法766条1項に「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」と明記されているとおり、子どもの利益を考慮して行われるべきものです。つまり、子どもが親とは別の個人であることを理解し、子どものために何が必要なのかを考えつつ、話し合いをすることが必要になります。なお、面会交流が問題となる事案では、両親の感情的な対立が激しいことが多くみられます。
面会交流の対象となるのは18歳未満の未成年者であり、子どもが成人したあと、自分の意思で別居している親と面会や交流をすることは問題ありません。
2. 面会交流について決めるべきルールの項目例
面会交流を行う場合には、面会交流の頻度や時間などについて決める必要があります。以下のような項目について定めることが考えられますが、すべての項目について決める必要はありません。
面会交流の頻度
面会交流の時間
面会交流の場所
元夫婦の連絡方法
子どもの受け渡し場所や方法
都合が悪い場合の対応
宿泊や旅行
学校行事への参加
直接交流以外の方法での交流について
なお、面会交流の協議を開始した時点では、子どもと同居している親(以下、監護親)と非監護親の信頼関係が構築されていない場合が多いです。そのため、最初から高頻度の面会交流や宿泊を伴う面会交流を求めても、監護親から拒否されるケースが少なくありません。
まずは毎月1回程度の面会について取り決めを行い、スムーズに行うことができたら面会交流の頻度や時間を増やす、宿泊を伴う面会交流や学校行事への参加を行うなど、段階を踏むほうがよい場合もあります。
2-1. 面会交流の頻度
家庭裁判所を介する調停や裁判所が結論を出す審判になった場合には、毎月1回程度となることが多く、当事者間の協議による場合も、毎月1回程度とすることが多いです。
そのほか、事情に応じて毎月2回と定めたり、隔週日曜日と曜日を固定したり、毎年3月、6月、9月、12月としたりと、さまざまな決め方があります。また、最初は2カ月に1回程度と定めておき、一定期間経過後に面会交流の頻度についてあらためて協議する、などの決め方もあります。
2-2. 面会交流の時間
1時間程度と時間のみを定める場合、午前10時~午後5時までのように面会交流の開始時刻と終了時刻を決める方法など、こちらも事案に応じてさまざまな決め方があります。
2-3. 面会交流の場所
非監護親の自宅近くの公園、非監護親の自宅など具体的な場所を決める場合もある一方、都度協議とするケースも多いです。
2-4. 元夫婦の連絡方法
電話、メール、LINEで連絡をとるなど、連絡手段を定めておくとスムーズです。
2-5. 子どもの受け渡し場所や方法
特段の定めを置かず、都度調整する方法、〇〇駅改札口で引き渡すなど、特定の場所を決めておく方法が考えられます。
2-6. 都合が悪い場合の対応
子どもや監護親、あるいは非監護親が急に体調を崩したり、子どもの学校行事があったりして面会交流の日程を変更する場合には、理由とともに日程変更を速やかに所定の連絡手段で打診し、代わりの日程を協議する、といった内容を定めることが多いです。
2-7. 宿泊や旅行
夏休みや冬休みなどの長期休暇のときに〇泊までの宿泊を伴う面会交流を行う、具体的な日時、場所、方法などについては監護親と非監護親が協議して決める、という内容を定めることもあります。
2-8. 学校行事への参加
非監護親の学校行事への参加を認める場合には、入学式、学校公開、卒業式などの子どもの学校行事への参加を認めること、非監護親が学校行事に参加する場合には監護親に必ず連絡すること、監護親が学校行事の予定を通知することなどを定めることが考えられます。また、子どもには声をかけないなど、非監護親が学校行事に参加する場合の条件がある場合には、その旨も明記しておくほうが後日のトラブルを避けられます。
2-9. 直接交流以外の交流
直接交流が難しい場合には、毎月1回程度、監護親が非監護親に対し子どもの写真や動画を送るといった間接交流の方法を決めるケースもあります。そのほか、子どもの誕生日やクリスマスにプレゼントを贈ること、子どもと直接メールやLINEなどで連絡をとることを認める旨を定めることも考えられます。
なお、プレゼントを贈る場合、監護親が高額すぎるプレゼントは避けたいと考えていたり、監護親が用意していたプレゼントと重複したりすることもあるため、価格の目安を定めるなど、監護親とある程度すり合わせをすることが望ましいと言えます。
面会交流の項目とルールの例
項目 | ルールの例 |
---|---|
面会交流の頻度 | 毎月1回や隔週日曜日 など |
面会交流の時間 | 1回1時間や、午前10時~午後5時までと 時間の目安や幅を定める |
面会交流の場所 | 非監護親の自宅近くの公園 など |
元夫婦の連絡方法 | 連絡手段を決めておく |
子どもの 受け渡し場所や方法 | 都度調整したり、 特定の場所を決めたりする |
都合が悪い場合の対応 | 代わりの日程を協議する |
宿泊や旅行 | 具体的な日時、場所、方法などについては 協議して定める |
学校行事への参加 | 非監護親が参加する場合には 監護親に必ず連絡する など |
直接交流以外の交流 | 子どもの写真や動画を送る など |
3. 面会交流の方法を決める手続き
面会交流については、離婚前と離婚後のどちらでも行うことができます。
3-1. 【離婚前】離婚協議、離婚調停、離婚訴訟
離婚前であっても、非監護親は子どもとの面会交流を求めることができます。別居中に当面の面会交流について裁判手続き外で協議をしたり、裁判手続き外での離婚協議の際に、面会交流について協議することも可能です。なお、裁判手続き外で協議をして合意ができた場合、その内容を明確にして履行を確保するため、合意内容を書面化しておくほうがよいです。話し合いがスムーズにできたとしても、合意後に一方の親の事情の変化により面会交流が拒否される場合も考えられます。
また、離婚前に面会交流調停を申し立てることもできますし(面会交流調停の詳細については後記「3-2. 【離婚後】面会交流調停」をご参照ください)、離婚調停を申し立てた場合に、離婚調停の手続内で面会交流について取り決めをすることもできます。
離婚調停が不調となり、離婚訴訟を提起した場合、子どもの監護に関する附帯処分を一緒に申し立て、面会交流について一緒に判断をしてもらう方法もあります。
3-2. 【離婚後】面会交流調停
離婚後に監護親と非監護親が話し合いをして面会交流の条件について定めることも可能です。合意ができた場合に書面化をしておいたほうがよいという点は、離婚前の協議の場合と同様です。
また、話し合いをしたものの、面会交流の条件について合意ができない場合には、家庭裁判所に面会交流調停の申し立てを行います。面会交流調停では、2名の調停委員が当事者から交互に話を聞き、面会交流の当否、条件について話し合いを行います。
調停で面会交流の条件について合意ができないときは、自動的に審判手続に移行し、裁判所が面会交流の可否や条件などについて判断することになります。
4. 面会交流のルールを破るとどうなる?
面会交流のルール違反には監護親の違反と非監護親の違反の両方があり得ますが、面会交流のルール違反は双方の信頼関係を破壊し、スムーズな面会交流を妨げるものです。そのため、前提としてルールは遵守すべきである点は認識しておきましょう。
監護親の違反は主に面会交流の拒否です。非監護親が講じるその対応法については、続く「5. 面会交流を拒否された場合の対応」で詳しく解説します。
非監護親の違反としては、毎月1回の面会とされているのに、勝手に下校途中の子どもに会いに行くなどの態様が考えられます。このような違反をし、面会交流のルールを守るよう求められたにもかかわらず、ルール違反を繰り返した場合、監護親から面会交流の条件変更(取りやめなど)を求める調停が申し立てられることもあります。調停で定められた条件を守らなかった場合に、裁判所が面会交流を禁止する審判を出した例もあります。
5. 面会交流を拒否された場合の対応
非監護親が監護親に面会交流を拒否された場合の対応としては、主に3つの方法があります。
5-1. 調停などの法的手続きを利用する
調停や審判などで面会交流が定められている場合、非監護親は裁判所に対し履行勧告の申出を行うことができます。申出を受けた裁判所は調査を行い、監護親に対して非監護親に面会交流を許可するよう勧告しますが、履行勧告に強制力はありません。
また、訴訟手続外で面会交流について定めたものの履行されない場合や、調停や審判などで面会交流について定められたのに履行されない場合には、非監護親が再度調停を申し立てて面会交流について話し合いをすることが可能です。
5-2. 間接強制を申し立てる
調停や審判などで面会交流について定められている場合、非監護親が強制的に面会交流を実現する方法として、強制執行の申立てをすることも考えられます。
面会交流は性質上、強制的に金銭を取り立てるなど、調停や審判などで決まった内容を直接実現する「直接強制」を講じることはできません。
ただし、調停や審判などで決まった内容に従わない場合には、「不履行1回につき金〇円を支払うように」と裁判所が命令し、間接的に定められた内容を実現する「間接強制」が可能な場合があります。間接強制が認められる場合、間接強制金は面会交流の不履行1回あたり3万円~5万円程度となることが多いようですが、不履行1回につき30万円とした事例もあります。
間接強制が認められるためには、面会交流の日時または頻度、各回の面会交流時間の長さ、子どもの引き渡しの方法といった内容が具体的に定められているなど、監護親が行うべき内容の特定ができる必要があります。
しかし、調停条項の場合、面会交流を柔軟に行えるように概括的な内容とし、詳細は面会交流を行う際に協議して決める、となっているケースが一般的なため、非監護親は間接強制ができない場合も多いです。また、間接強制が可能な調停や審判であったとしても、常に間接強制が認められるとは限りません。子どもが面会交流を明確に拒否しているような場合には、間接強制が認められないこともあります。
なお、監護親が面会交流を拒否している場合に非監護親が間接強制の申立てをすると、感情的な対立がさらに激しくなり、より面会交流が困難になる場合もあります。強制執行の申立てを行うかどうかかは、弁護士などに相談しながら慎重に検討すべきです。
5-3. 損害賠償(慰謝料)を請求する
監護親が面会交流を拒否する場合、非監護親は面会交流をする権利が侵害されたとして損害賠償(慰謝料)を請求することも可能です。
ただし、監護親と非監護親との間で訴訟を提起した場合、感情的な対立が激しくなり、面会交流の実施が困難になる可能性が高いため、間接交流の申立てと同様、訴訟を提起するかは慎重に検討する必要があります。
6. 面会交流をしないほうがよいケース
子ども自身が面会交流を拒否している場合、年齢や拒否の理由などの事情によって、監護親は面会交流を拒否できる場合があります。中学生以上など、年齢が高い子が明確に面会交流を拒否している場合には、比較的面会交流の拒否が認められやすいと思います。
また、非監護親によって子どもが連れ去られるおそれがある場合、非監護親が過去に監護親を虐待していた場合、非監護親が子どもを虐待していた、または虐待するおそれがある場合も、面会交流を拒否できる事由にあたります。
他方、監護親が再婚した場合などに、再婚相手と子どもの関係を考慮して面会交流を控えたいといった要望が出されることがありますが、再婚した事実のみをもって面会交流が拒否できるわけではありません。面会交流の実施について折り合いがつかず、審判となった場合には、子どもの年齢や従前の交流状況、再婚相手と子どもの関係などを考慮して面会交流の可否が判断されます。
7. 離婚後の面会交流について弁護士に相談するメリット
面会交流の協議は、当事者のみで行うことも可能です。
しかし、面会交流の条件について交渉する必要があるのは、夫婦関係が悪化し別居や離婚が問題になっている場合です。このような場合に当事者間で協議を行うのは、精神的に大きな負担となりますし、感情的な対立が激しく、話し合いがうまく進まないケースもよくあります。
また、当事者のみで協議をすると、面会交流が認められるのか、認められるとしてどのような条件にするべきか、という判断をするのが難しいと言えます。
面会交流の協議を弁護士に委任するメリットは、当事者の負担を軽減し、適切な面会交流の条件を定めることができるという点にあります。

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8. 導入が決まった共同親権|面会交流に与える影響は?
2024年(令和6年)5月24日、共同親権の導入を含む改正民法が公布されました(施行は公布後2年以内)。
これまでは、離婚時の親子間の交流についての規定しかありませんでしたが、この改正民法では、婚姻中に別居した場合の親子間の交流についても、父母の協議で定めることが明記されました。また、婚姻中の別居や離婚の場合の父母以外の親族との交流に関する規定、子どもの監護に関する処分の調停などが申し立てられている場合の親子交流の試行的実施制度も導入されました。
とはいえ、親子の交流に関する事項、親以外の親族と子どもの交流に関する事項はどちらも親同士の協議で定めるのが原則とされており、双方の話し合いが重要である点に変わりはありません。
また、父母以外の親族との交流について双方の協議で決めることができない場合、家庭裁判所が判断する流れになりますが、「子の利益のために特に必要があると認められるときに限り」父母以外の親族との交流を実施するとされるなど、限定的なものとなっています。
9. 面会交流に関してよくある質問
面会交流と養育費の支払いは対価関係にありません。したがって、監護親から面会交流と引き換えに養育費の増額を求められても、非監護親に応じる義務はありません。面会交流の実施について話し合いを行い、当事者同士の話し合いで面会交流の実施ができないのであれば、調停や審判などの手続きを利用すべきです。
当事者が合意すれば面会交流のルールを変更することは可能です。監護親が面会交流に消極的な場合、短時間の面会交流から開始し、ある程度スムーズな面会交流ができたら、長時間の面会交流に向けて協議を行うことも考えられます。 また、子どもが成長するにつれて生活リズムも変わってきたり、面会交流について自分自身の意向を示したりする場合もありますので、面会交流のルールについては、子どもの成長に合わせて適切な話し合いを行うことが必要です。 面会交流のルール変更について合意できない場合には、調停や審判の申立てを行い、その手続きで解決することになります。
10. まとめ|面会交流のトラブル回避や解消には弁護士のサポートが重要
離婚や婚姻中の別居の際、別居している非監護親が自分の子どもと交流する場合は、子どもと同居している監護親との話し合いをまとめる必要があります。面会交流の実現にあたっては面会交流や時間、あるいは場所のほか、元夫婦の連絡方法、子どもの受け渡し場所や方法など決めるべき事柄が多くトラブルになりやすい一方、当事者のみでの話し合いでは解決が難しいところが多くあります。
面会交流についてトラブルを避けたい場合、またはトラブルを解消したい場合には、法律の専門家として問題解決を得意とする弁護士への相談をお勧めします。
(記事は2025年5月1日時点の情報に基づいています)