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養育費を払わない男の心理とは? 払われない場合の対処法を弁護士が解説

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養育費を払わない男性の心理にはさまざまなものがあります(c)Getty Images
厚生労働省の「令和3年度全国ひとり親世帯等調査」によると、母子世帯で離婚した父親から現在も養育費の支払いを受けていると答えた割合は3割弱にとどまる一方、養育費を受けたことがないと答えた割合は過半数に上るなど、養育費の不払いは社会的な問題ともなっています。どのような心理で父親が子どもの養育費を払わないのか、気になる人も多いのではないでしょうか。養育費を払わない男性の心理や養育費を払ってもらう方法を弁護士が解説します。
目 次
  • 1. 養育費とは
  • 2. 養育費を払わない男の心理とは?
  • 2-1. 親権を取れず納得がいかない
  • 2-2. 子どもはもう自分には無関係
  • 2-3. 元妻が再婚したので養育費は不要
  • 2-4. 面会させてもらえないので払わない
  • 2-5. 自分の収入が下がったので払えない
  • 2-6. 自分の扶養対象者が増えたので払えない
  • 2-7. ローンが厳しくて払えない
  • 2-8. 元妻から関わらないでほしいと言われた
  • 2-9. 養育費が正しく使われているか不信感がある
  • 2-10. 自分の生活水準を下げたくないので払わない
  • 2-11. 養育費を盾に元妻を支配下に置きたい
  • 3. 養育費を支払ってもらうためにすべきこと
  • 3-1. 子の成長に関してこまめに報告する
  • 3-2. 面会交流を実施する
  • 3-3. 支払いに対する感謝を伝える
  • 4. 養育費が支払われない場合の対処法
  • 4-1. 相手に直接催促する・話し合う
  • 4-2. 一時的な猶予や減額を認める
  • 4-3. 養育費請求調停を申し立てる
  • 5. 養育費が支払われない場合は弁護士に相談を
  • 6. 養育費を支払わない男性の心理に関するよくある質問
  • 7. まとめ 養育費を払わない男性の心理を理解して状況に応じた対応が重要

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1. 養育費とは

養育費とは、離婚して子どもと離れて暮らす親から、親権を持ち子どもと一緒に暮らす親に支払われるものです。社会的・経済的に自立していない未成熟子の監護・教育のために必要な費用で、その中には衣食住の費用や教育費、医療費などが含まれます。

通常、養育費は離婚の際に取り決められますが、金額に決まりはなく、父母の話し合いにより自由に決定できます。裁判所が養育費に関する標準算定表を作成しており、実際にはこの算定表に基づき決定されるケースが多いでしょう。

離婚し親権がなくなっても子の親である以上、養育費を支払う義務を負っています。しかし、実際には、養育費の取り決めをしたにもかかわらず、養育費を支払わない親も少なからず存在します。

この記事では、養育費の支払い義務者を男性側と仮定し、一定の理由により養育費を支払わない父親の心理について考察します。

2. 養育費を払わない男の心理とは?

養育費を払わない男性の心理として、次のものが考えられます。

  • 親権を取れず納得がいかない

  • 子どもはもう自分には無関係

  • 元妻が再婚したので養育費は不要

  • 面会させてもらえないので払わない

  • 自分の収入が下がったので払えない

  • 自分の扶養対象者が増えたので払えない

  • ローンが厳しくて払えない

  • 元妻と関わりたくないから払わない

  • 養育費が正しく使われているか不信感がある

  • 自分の生活水準を下げたくないので払わない

  • 養育費を盾に元妻を支配下に置きたい

それぞれについて解説します。

2-1. 親権を取れず納得がいかない

離婚の際、自身も親権を取りたかったのに取れず、その不満から養育費の支払いが滞ることがあります。特に元妻が子どもを連れて家を出たような事案では、「連れ去り」であるとして父親の被害感情も強く、離婚後もしこりが残ることがあります。このようなケースでは、養育費を支払わないことで、元妻に対する反発や抵抗を示しているともいえます。

2-2. 子どもはもう自分には無関係

子どもと離れて暮らしているうちに、子どもを育てなければならないという責任感が薄れてしまい、支払いが滞ることがあります。子どもを育てるのは親権を持つ元妻の役割であり、自分は特に何もしなくてよいと考える父親は一定数存在します 。このような父親は、同居中も育児に非協力的で、子どもへの関心が薄い傾向があります。離婚後に面会交流を実施していないと、よりその傾向は強くなるようです。

2-3. 元妻が再婚したので養育費は不要

元妻が再婚したため、元妻と子どもを支えるのは再婚相手の役割であり、自分は養育費を支払う必要はないだろうと考えることもあります。たしかに、元妻の再婚相手と子どもが養子縁組をすると、子どもの一次的な養育の責任は再婚相手が負うことになります。しかし、元妻が再婚したというだけで、ただちに養育費の支払い義務が消滅するわけではありません

なお、子どもが再婚相手と養子縁組をしながらそれを実父(元夫)に隠していた場合や、養育費をもらうためにあえて養子縁組をしなかった場合には紛争に発展しやすいため注意が必要です。

2-4. 面会させてもらえないので払わない

離婚時の取り決めどおりに面会交流が実施されていないため、「元妻が子どもに会わせてくれないなら養育費も支払わない」と決めつけるケースもあります。本来、養育費と面会交流は対価関係にはなく、法律上も全く別の制度ですので、上記の主張は認められません。しかし、このように考える父親が非常に多く存在するのは事実であり、この点は後ほど詳しく述べます。

2-5. 自分の収入が下がったので払えない

病気などにより大きく減収や休職したなどの事情がある場合は、当初合意した養育費が支払えないということは現実的にあり得ます。このようなやむを得ないケースとは別に、父親が自営業の場合、「自分の収入に余裕があるときだけ養育費を支払えばよい」と考えるパターンもあります。

しかし、養育費とは子どものために一定額を支払う義務を負うものであり、いくら自営業者で収入の浮き沈みがあっても、相手の合意なしに勝手に金額を変えることは認められません 。病気やケガなどのやむを得ない理由により減額を希望する場合には、裁判所に養育費減額調停の申し立てができます。

2-6. 自分の扶養対象者が増えたので払えない

父親が再婚して新しく子どもが産まれるなど扶養対象者が増えたため、支払いが厳しくなるというパターンもあります。自身が再婚しても、元妻との子どもの養育費の支払い義務がなくなるわけではありません 。ただし、扶養対象者が増えたことで、元妻に支払える金額は現実的に低くなるでしょう。そのため、裁判所に養育費の減額調停を申し立てれば、減額は認められることになります。

2-7. ローンが厳しくて払えない

元妻との婚姻中に購入した自宅の住宅ローンを離婚後も一人で払っており、ローンの支払いで生活が厳しいため養育費を支払えないというパターンもあります。しかし、ローンは父親の資産形成という側面があり、本来、資産形成よりも子どもの養育が優先されるべき です。そのため、ローンが厳しいから養育費を支払えないという論理は成り立ちません。ローンが厳しいのであれば、自宅を売却してローン負担を軽減すべきでしょう。

2-8. 元妻から関わらないでほしいと言われた

離婚時に妻から「養育費も要らないから、今後一切関わらないでほしい」と言われ、払っていないケースもあります。厚生労働省の「令和3年度全国ひとり親世帯調査」によると、母子家庭の母が養育費の取り決めをしていない理由(複数回答)のうち、最も多かった回答は「相手と関わりたくない」で、過半数の人(50.8%)が挙げました(推計値)。

このような母親の意向を受け、「元妻がそう言うなら養育費も支払わなくてよいだろう」と考える男性もいれば、「子どもにも会いたいし養育費を支払う気持ちはあるが、元妻が関わり合いを拒むので諦めざるを得ない」という男性もいるようです。

2-9. 養育費が正しく使われているか不信感がある

養育費は子どものための費用ですが、実際には、子どもの親権者である元妻に支払いをします。そのため、本当に子どものために使われているのか不信感を持ち、支払いをやめるパターンがあります。

心理的な問題にすぎませんが、このような父親に対しては、元妻名義の口座ではなく、子ども名義の口座に振り込んでもらう、というのも一つの方法です。

2-10. 自分の生活水準を下げたくないので払わない

自身の趣味や娯楽に浪費し、生活水準を下げてまで養育費を支払いたくないという自分勝手な理由で養育費を渋る父親は一定数存在します。このような父親は、同居中も「自分で稼いだお金は自分のもの」と考える傾向があります。

2-11. 養育費を盾に元妻を支配下に置きたい

養育費を盾に元妻にあれこれ要求をしたり、嫌がらせ目的で養育費を支払わなかったりするケースもあります。このような父親は、「養育費を現金で渡すから面会しろ」などと養育費を盾に自分の要求を通そうとします。モラハラ傾向のある父親に多く、離婚した後でも元妻を支配下に置きたいという心理なのでしょう。

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3. 養育費を支払ってもらうためにすべきこと

3-1. 子の成長に関してこまめに報告する

養育費を支払ってもらうポイントは「自分の子を養育している」という意識をいかに父親に持たせ続けるか です。そのためには、子どもの成長や近況について、父親にこまめに連絡することが重要です。例えば、子どもの入園・入学や運動会、七五三などのイベントごとに写真付きのメールやLINEを送るとよいでしょう。

支払いが止まってからの交渉では、話がこじれたり、父親が応じなかったりする可能性もあります。支払いが順調なうちから近況をこまめに連絡しあい、例えば再婚や子の進学など、双方の事情に変化があったタイミングで随時支払い額などを確認しておくようにしましょう。

3-2. 面会交流を実施する

法律上は認められない主張ですが、「子どもに会わせてくれないなら養育費は支払わない」と言い出す父親は多くいます。父親に対する嫌悪感や不信感から、面会交流の実施自体、消極的な母親も少なくありません。

もちろん、父親も最低限のルールを守る必要はありますが、面会交流は取り決め通りに実施しておく方が、こじれる要素は減ります 。子どもの体調や習い事などで日程変更が必要な場合には、出来る限り柔軟に対応し、面会交流を実施するようにしましょう。

面会交流自体は、子どもが父親にも愛されていると実感するために必要なことです。父親がDVや虐待をするなどの事情がなければ、実施するのが望ましいです。面会交流に抵抗があるのであれば、直接会う以外の手紙や写真、プレゼントの交換などで実施する方法や、家庭裁判所の調査官や支援団体立ち合いのもとで行う方法 もあります。

3-3. 支払いに対する感謝を伝える

養育費の支払いは父親の義務とはいえ、母親が「支払われて当然」という態度では、支払う側も気分はよくないはずです。入金を確認したら、形式的でも感謝を伝えるようにしましょう。

その際、「ランドセルを買った」「林間学校に行ってきた」など、子どもの写真を添付して近況報告もすれば、なおよいでしょう。養育費が子どもの成長に役立っていると分かれば、これからも支払いを続けようという気になるもの です。

特に離婚原因が父親側にある場合、なかなか感謝を伝えるのは難しいですが、ここはご自身の気持ちと切り離し、「最低限の事務連絡」と割り切りましょう。

4. 養育費が支払われない場合の対処法

近年、養育費の未払いが社会問題となっている中、どのように工夫すれば継続して養育費を支払ってもらえるのでしょうか。具体的には次の方法があります。

4-1. 相手に直接催促する・話し合う

支払いが遅れる、支払いが難しいなどの連絡が来たら、まずは当事者同士で話し合いをしましょう。支払いできない理由が理解できる内容であれば、いったんは減額や免除に応じるのも手です。

結婚当時、相手からDVを受けていたり、関係が悪化していたりするなど当事者同士での話し合いが難しい場合には、弁護士に相談するとよいでしょう。

4-2. 一時的な猶予や減額を認める

病気やケガなどやむを得ない事情で支払いが困難な場合には、一時的な猶予や減額を認めるという選択肢もあります。養育費は、原則として20歳までと長期にわたり続くものです。

揉めて相手に支払う気がなくなってしまうより、話し合いの上、今支払える上限で払い続けてもらう方が、長期的に見ればこちらにメリットがあるといえるでしょう

4-3. 養育費請求調停を申し立てる

父親が養育費の支払いもせず、交渉にも応じない場合、離婚時に公正証書を作成していれば、裁判所に強制執行(差し押さえ)を申し立てられます。給与の差し押えができれば、将来にわたり養育費を確保することも可能となります。

離婚時に公正証書を作成していない場合でも、裁判所に養育費の調停を申し立てることで、最終的に強制執行の申し立てができるようになります。

養育費の調停とは、裁判所で養育費の金額などについて話し合いを行い、合意を目指す手続き です。話し合いがまとまらない場合や、相手が出頭しない場合、調停は自動的に審判に移行し、裁判官が金額などを決めます。調停、審判いずれも金額が決まれば調書が作成され、それに基づき給与などの差し押さえが可能です。

5. 養育費が支払われない場合は弁護士に相談を

父親が養育費を支払わなくなる理由は実にさまざまです。父親から養育費の減額や免除を主張されたときに、それは法律上受け入れざるを得ないのか、一般の方には判断がつかないことも多いでしょう。

この点、弁護士に相談すれば、専門的知識や経験に基づき、適切なアドバイスを受けられます 。また、元夫との間にトラブルがあった場合には、交渉を弁護士に一任することで、あなたの精神的負担を大きく軽減できます。養育費が支払われず悩みを抱えている場合には、まずは弁護士に相談することをおすすめします。

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6. 養育費を支払わない男性の心理に関するよくある質問

Q. 共同親権や法定養育費制度が養育費の支払いに関して男性の心理に与える影響は?
民法が改正され、日本でも2026年5月までに共同親権が導入されることになりました。もっとも、共同親権があるといっても事実上子どもを監護するのは父母のどちらかであり、他方が養育費の支払い義務を負うことには変わりありません。 なお、共同親権の導入に伴い、新たに「法定養育費」や「先取特権」といった制度も始まります。法定養育費は養育費を取り決めずに協議離婚した場合にも、子どもと同居する親から離れて暮らす親に対して最低限の養育費を請求できるようにする制度で、実務に際してはこれから動向をみる必要があります。先取特権の付与は養育費の支払いが滞った場合、支払い義務がある親の財産を他の債権者に優先して差し押さえられるようになるもので、養育費の不払いに対して一定の効果が見込まれるでしょう。
Q. 養育費を支払わない男性への罰則は?
養育費を支払わないことで、直ちに何らかの刑事罰が科されることはありません。しかし、公正証書や調停調書などを作成したにもかかわらず養育費を支払わないと、強制執行を受けることがあります。 この強制執行の場面で、債権者(母親)は、債務者(父親)の財産を把握するために、裁判所に「財産開示手続」を申し立てることができます。この財産開示手続に債務者が理由なく出頭しなかったり、虚偽の申告をしたりすると、「6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金」が科される可能性があります。

7. まとめ 養育費を払わない男性の心理を理解して状況に応じた対応が重要

養育費を払わない男性の心理として、さまざまなものがあります。養育費は子どものための費用であり、子どもと同居して監護していない側の親に支払い義務が生じます。

金銭的な理由以外で養育費を支払わないのであれば、「自分の子を養育している」という意識を持たせることが重要 です。

それでも養育費を支払わないのであれば、一時的な減額や調停の申し立て、強制執行、弁護士への相談などを検討しましょう。

(記事は2025年1月1日時点の情報に基づいています)

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