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1. 「夫婦3組に1組が離婚」の意味
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2. 「離婚率」の正式な定義とは
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2-1. 離婚率=「人口1000人あたりの離婚件数」
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2-2. 2024年の日本の離婚率は約1.6
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2-3. 日本の離婚率の推移|2002年をピークに減少傾向
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3. 日本の離婚率は海外と比べて低い? 高い?
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4. 都道府県ごとの離婚率
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5. 統計データからわかる離婚率の特徴
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5-1. 同居5年未満の離婚が減っている
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5-2. 同居年数が長い夫婦の離婚が増えている
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6. どんな理由が離婚につながっている?
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6-1. 男性の離婚理由
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6-2. 女性の離婚理由
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7. どんな方法で離婚している?
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7-1. 協議離婚(88.3%)
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7-2. 調停離婚(8.3%)
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7-3. 裁判離婚(3.4%)
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8. 離婚率に関して、よくある質問
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9. まとめ 日本の離婚率はそこまで高くない
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1. 「夫婦3組に1組が離婚」の意味
「夫婦3組に1組が離婚する」と聞くと、結婚した人の3割以上が必ず離婚するような印象を受ける人も多いと思います。
たしかに、厚生労働省の人口動態統計(2024年)によると、同年の婚姻件数は48万5063件、離婚件数は18万5895件で、単純に割り算をすると約38.3%、すなわち「約4割」となります。しかし、これは「2024年に結婚した夫婦のうち4割が同年に離婚した」という意味ではありません。実際には、2024年に離婚した夫婦は、さまざまな年に結婚した人たちの集計です。
統計の前提を正しく理解することが、冷静な判断につながります。
2. 「離婚率」の正式な定義とは
政府が統計で使う「離婚率」という言葉は、世間で一般的に使われる意味とは少し異なるので解説します。
2-1. 離婚率=「人口1000人あたりの離婚件数」
正式には、「離婚率」とは離婚の多い・少ないを比較するときに用いられる数値で、人口1000人あたりの離婚件数を指します。
計算式で表すと、「離婚率 = 年間離婚届出件数 ÷ 総人口 × 1000」となります。
注意したいのは、「率」という言葉がついていますが、これはパーセント(%)ではない点です。
たとえば離婚率が「1.00」であれば、人口1000人のうち1人が離婚したという意味になります。このように、離婚率は社会全体でどの程度離婚が発生しているかを示す、いわば“社会の温度計”のような数値です。
2-2. 2024年の日本の離婚率は約1.6
厚生労働省の人口動態統計(2024年)によると、日本の離婚率は1.55です。これは、人口1000人あたり約1.55人が1年間に離婚しているという計算になります。この数値を聞くと「意外と少ない」と感じる人もいれば、「思ったより多い」と感じる人もいるでしょう。
離婚件数そのものは年によって上下しつつも、長期的には緩やかに減少傾向にあります。
離婚件数を人口全体で割るこの指標は、社会全体の動きを俯瞰(ふかん)するためのものですが、個々の夫婦の実情とは必ずしも一致しません。
弁護士の実感としても、統計上の離婚率が下がっても相談件数が減るわけではなく、むしろ内容が複雑化している印象を受けます。
2-3. 日本の離婚率の推移|2002年をピークに減少傾向
離婚率の推移をみると、2002年(平成14年)の2.3がピークであり、その後は減少を続けています。
当時は年間約28万9000件の離婚がありましたが、2024年には18万5895件にまで減少しました。この20年間でおよそ10万件も減ったことになります。
背景には、結婚そのものの減少や、夫婦関係の維持に関する社会的意識の変化などが挙げられます。ただし、離婚率の低下が必ずしも「家庭の安定化」を意味するとは限りません。
実際の相談も、「離婚するか迷っている」「別居を続けながら様子を見たい」と悩んでいる人が増えています。離婚に踏み切る人が減る一方で、「葛藤を抱えながら関係を続ける夫婦」が増えている印象です。統計の背後には、そうした夫婦のリアルな姿があります。
3. 日本の離婚率は海外と比べて低い? 高い?
日本の離婚率は、人口1000人あたり約1.55件です。この数値を聞いても多いのか少ないのかピンとこない人も多いと思いますが、海外と比較すると、日本の離婚率は世界的に見て中位〜やや低めの水準です。
厚生労働省がまとめた「人口動態総覧(率)の国際比較」によると、離婚率が最も高い国はチリで、人口1000人あたり約3.63件。これに対し日本は約1.5件で、比較対象40カ国中26位でした。
離婚率の高い国には、アメリカやデンマークなど、個人の自由やジェンダー平等の意識が高い国が多く見られます。 一方で、宗教や文化の影響が強い国(イタリア、スペイン、中東諸国など)は、離婚に対する社会的ハードルが高いため、離婚率は低めにとどまっています。
また、日本は上位国の半分ほどの水準ですが、これは「離婚しにくい社会」であることを意味するわけではありません。日本では再婚や同棲といった選択肢が広がり、そもそも結婚件数自体が減っていることも、離婚率の低下に影響しています。
4. 都道府県ごとの離婚率
厚生労働省の人口動態統計(2024年)によると、都道府県別の離婚率(人口1000人あたりの離婚件数)には明確な地域差があります。
都道府県 | 離婚率(人口千対、令和2年) |
|---|---|
沖縄 | 2.1 |
福岡 | 1.8 |
大阪 | 1.7 |
北海道 | 1.6 |
埼玉 | 1.6 |
千葉 | 1.6 |
愛知 | 1.6 |
東京 | 1.6 |
神奈川 | 1.6 |
青森 | 1.5 |
宮城 | 1.5 |
茨城 | 1.5 |
静岡 | 1.5 |
兵庫 | 1.5 |
広島 | 1.5 |
熊本 | 1.5 |
鹿児島 | 1.5 |
福島 | 1.4 |
高知 | 1.4 |
群馬 | 1.4 |
三重 | 1.4 |
山口 | 1.4 |
愛媛 | 1.4 |
長崎 | 1.4 |
大分 | 1.4 |
宮崎 | 1.4 |
栃木 | 1.3 |
岩手 | 1.3 |
新潟 | 1.3 |
石川 | 1.3 |
長野 | 1.3 |
岐阜 | 1.3 |
岡山 | 1.3 |
徳島 | 1.3 |
香川 | 1.3 |
佐賀 | 1.3 |
山形 | 1.3 |
京都 | 1.3 |
奈良 | 1.3 |
富山 | 1.2 |
山梨 | 1.2 |
秋田 | 1.2 |
福井 | 1.2 |
滋賀 | 1.2 |
和歌山 | 1.2 |
島根 | 1.2 |
鳥取 | 1.1 |
最も離婚率が高いのは沖縄(2.1)で、続いて福岡(1.8)・大阪(1.7)などが上位に並びます。
一方、最も低いのは鳥取(1.1)で、島根・和歌山・滋賀など日本海側を中心に低水準です(グラフにメモリがないため推定値とする)。
南西・北日本では離婚率が高く、北日本・日本海側で低い傾向が見られるのは、地域の人口構成や結婚年齢、転出入の多さなどが影響していると考えられます。
私の感覚でも、都市部では「再出発」を前向きに捉える傾向が強い一方、地方では「離婚後の生活基盤」への不安が大きく、決断をためらうケースが多いと感じます。同じ日本でも、離婚に対する意識には地域性が色濃く表れています。
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5. 統計データからわかる離婚率の特徴
統計データの数値を見ていくと、離婚しやすい夫婦の特徴などが浮かび上がってくるので、解説します。
5-1. 同居5年未満の離婚が減っている
厚生労働省の人口動態統計(2024年)によると、同居5年未満での離婚件数は減少傾向にあります。
1985年には約5.6万件、2005年には約9万件まで増加しましたが、その後は減少し、2024年には約5.1万件となりました。
直近1年間(2024)でも前年度比1,154件減(▲2.2%)となっており、若年層や結婚直後の離婚が確実に減っていることがわかります。
背景には、晩婚化の進行と、結婚前に同棲期間を設けるカップルの増加があります。交際段階で価値観のすり合わせを行うことで、「勢いで結婚→すぐ離婚」というケースが減っていると考えられます。弁護士としての実感でも、「熟考のうえでの離婚」が増えている印象があります。
つまり、離婚件数の減少は“若年層の安定化”を反映している側面があるといえるでしょう。
5-2. 同居年数が長い夫婦の離婚が増えている
一方で、同居年数が長い夫婦の離婚は増加傾向にあります。1985年には「同居20年以上」の離婚が約2.0万件、2005年には約3.9万件、2024年には約4.0万件と、約40年間で倍増しています。直近のデータでも前年比876件増(+2.2%)と増加が続き、特に「30〜35年」「35年以上」の層ではそれぞれ+3.3%、+5.4%の伸びを示しました。
こうした“熟年離婚”の増加は、子どもの独立を機に離婚を決断するケースが増えていることを示しています。弁護士としても、50代・60代の女性から「これからの人生を自分のために生きたい」と相談を受けることが増えています。
かつては我慢を美徳とする風潮がありましたが、今は「人生の後半をどう生きるか」を自ら選択する時代になりつつあります。離婚率全体は減少しても、内訳を見れば“熟年層の離婚増加”という新しい傾向が浮かび上がります。
6. どんな理由が離婚につながっている?
離婚に繋がる原因で特に多いものを、裁判所への申し立て動機から読み解きます。
6-1. 男性の離婚理由
2024年の司法統計(第19表)によると、男性が離婚を申し立てた主な理由は以下の通りです。
1位 性格が合わない
2位 異性関係
3位 浪費する
4位 性的不調和
男性側では「性格の不一致」が圧倒的に多く、全体の6割近くを占めています。弁護士としての実感でも、「相手の考え方が理解できない」「話し合ってもすれ違う」といった精神的な行き詰まりが離婚の主因となるケースが多く見られます。
また、「異性関係」が2位に入っている点は注目すべきです。夫婦間の親密さが失われると関係が冷え込み、それが不貞行為などにつながりやすいためです。近年ではこれを理由に離婚を決断する男性が増えています。
経済的理由よりも、精神的・身体的な相互理解の欠如が離婚に直結していることがうかがえます。
6-2. 女性の離婚理由
女性の申立理由は以下の通りです。
1位 性格が合わない
2位 暴力を振るう
3位 異性関係
4位 浪費する
女性の場合も「性格の不一致」が最多ですが、それに次いで「暴力」や「異性関係」などの具体的な被害型理由が目立ちます。暴力の申立件数は男性の約5倍に上り、家庭内暴力が離婚の大きな原因であることを示しています。
また、「浪費」「生活費を渡さない」といった経済的問題も深刻です。弁護士として相談を受ける中でも、「長年耐えてきたが子どもが独立したのを機に離婚したい」という声が多く、我慢の限界を超えた熟年層の申立が増加しています。
男性が「不調和」を理由に離婚するのに対し、女性は「被害」や「経済的不安」を背景に離婚を決断する傾向が強いといえます。
7. どんな方法で離婚している?
離婚方法にはいくつか種類がありますが、どの方法が多いのか解説します。
7-1. 協議離婚(88.3%)
日本の離婚のうち、約9割が協議離婚によって成立しています。厚生労働省の統計(令和2年)によれば、協議離婚は全体の88.3%を占めています。
協議離婚は、家庭裁判所を通さず、当事者同士の話し合いで離婚を成立させる制度です。日本では戸籍法上、当事者の署名押印と証人2名の記載があれば離婚届を提出できるため、世界的にも非常に簡易な手続きといえます。
ただし、手続きが容易な分、財産分与や養育費、面会交流の取り決めが不十分なまま離婚に至るケースも少なくありません。弁護士としても、「話し合いだけで済ませた結果、後でトラブルになった」という相談を多く受けます。そのため、離婚協議書や公正証書を作成しておくことが大切です。
7-2. 調停離婚(8.3%)
次に多いのが調停離婚で、2020年の統計では全体の8.3%です。調停離婚は、家庭裁判所で調停委員を交えて話し合いを行い、合意に至った場合に成立する離婚です。協議がまとまらない、相手が話し合いに応じないといった場合に利用されます。
家庭裁判所の調停は、一般的に数カ月から半年ほどで終結し、当事者の心理的負担を軽減しつつ合意形成を目指す制度です。弁護士としても、「感情的に話が進まない夫婦が、第三者を交えることで冷静に解決できた」という事例を多く経験しています。
調停離婚は、協議離婚の次に多い現実的な解決手段といえるでしょう。
7-3. 裁判離婚(3.4%)
最も少ないのが裁判離婚で、全体の3.4%にとどまります。内訳は、審判離婚1.2%、和解離婚1.3%、判決離婚0.9%です。つまり、離婚に至るケースのうち、最終的に裁判まで発展するのはごく一部に過ぎません。
裁判離婚では、不貞行為や悪意の遺棄、暴力など、民法770条に定められた法定離婚事由が必要になります。実際には、訴訟の途中で和解に至るケースが多く、最終判決まで争うのは少数派です。
日本の離婚制度は、まず話し合い(協議)、次に調停、それでもまとまらなければ裁判という「段階的な仕組み」になっており、この構造が「協議離婚が圧倒的に多い」という現状を支えています。
8. 離婚率に関して、よくある質問
厚生労働省の人口動態統計(2024年)によると、同居5年未満の離婚が最も多く、次いで同居20年以上の熟年離婚が増えています。若年層の離婚率は近年減少していますが、20年以上の結婚生活を経て離婚に至るケースがじわじわ増加しているのが特徴です。
家庭事情は千差万別であるため、一概には言えませんが、子どもが小学校高学年から中学生くらいの時期に離婚する夫婦が多い印象です。進学や思春期をきっかけに家庭内の不和が表面化しやすいのかもしれません。
逆に、未就学児のうちは離婚を先送りにする夫婦も多く見られます。
統計(厚生労働省「人口動態統計」2024年)では、離婚率の高い都道府県は①沖縄 ②福岡 ③大阪 ④北海道 ⑤埼玉、千葉その他です。南西・北日本で高く、北陸地方では低い傾向が見られます。これは人口構成や再婚率、地域の家族観の違いなどが影響していると考えられます。
9. まとめ 日本の離婚率はそこまで高くない
日本では「3組に1組が離婚する」と言われますが、実際の離婚率は人口1000人あたり約1.55件で、世界的に見ると中位からやや低めの水準です。2002年をピークに離婚件数は減少しており、若年層の離婚は確実に減っています。一方で、同居期間の長い夫婦の離婚は増加傾向にあり、特に熟年層の離婚が目立ちます。
また、離婚の約9割は協議離婚で成立しているため、財産分与や養育費、面会交流などの条件は書面で明確にしておくことが重要です。
離婚を迷っている場合や話し合いが進まない場合は、早めに弁護士へ相談することで、最適な方法を一緒に考えることができます。
(記事は2025年11月1日時点の情報に基づいています)