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1. 性格の不一致とは
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2. 性格の不一致を理由に離婚はできる?
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2-1. 協議や調停による離婚であれば可能
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2-2. 裁判だと離婚が認められない可能性がある
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2-3. 性格の不一致による離婚が裁判でも認められる具体例
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3. 「性格の不一致」で離婚する夫婦はどのくらいいる?
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4. 性格の不一致による離婚を成立させるポイント
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4-1. 離婚を決意するまでの経緯をまとめておく
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4-2. 婚姻関係が破綻している証拠を集める
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4-3. 離婚条件を譲歩する
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4-4. 弁護士に相談する
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4-5. 誠実に対応する
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5. 性格の不一致で離婚する場合の養育費・財産分与・慰謝料はどうなる?
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5-1. 財産分与は原則2分の1
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5-2. 養育費も通常どおり請求できる
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5-3. 慰謝料は原則発生しない
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6. 「性格の不一致」による離婚の解決金の相場は?
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7. 性格の不一致で離婚する場合、子どもの親権はどうなる?
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8. 性格の不一致でも夫婦関係を再構築する方法
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8-1. 夫婦のコミュニケーションを増やす
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8-2. 夫婦カウンセリングを受ける
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8-3. 別居して冷却期間を設ける
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9. 性格の不一致による離婚でよくある質問
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10. まとめ 性格の不一致で離婚したい場合は弁護士への相談が有効
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1. 性格の不一致とは
性格の不一致とは、確たる離婚理由がないものの、共同生活はもう限界で続けられないというほど折り合いが悪い状態 のことと考えられます。
私の所属する法律事務所でも、共働きなのに家事育児の負担に偏りがあることや、子どもに対する教育方針の違い、金銭感覚の違いなどで相談を受けることが多いです。一方が自己中心的でモラハラ傾向がある、双方が自分の意見を譲らないため口論が絶えない、といった場合もあります。
2. 性格の不一致を理由に離婚はできる?
2-1. 協議や調停による離婚であれば可能
協議や調停であれば、理由はともあれ、離婚自体に夫婦が合意すれば、離婚が成立 します。夫婦が互いに性格の不一致を実感し、共同生活に耐え難い不満や不快感を覚えているのであれば、法律上の離婚原因がないとしても、離婚自体に合意ができる可能性もあるでしょう。
ただし、離婚に伴う財産面や、親権や面会交流に関する条件も、通常は離婚と同時に取り決めることになるため、話し合いによる調整に努める必要があります。
2-2. 裁判だと離婚が認められない可能性がある
離婚に合意ができず裁判となる場合、原則として性格の不一致だけを理由に裁判で離婚が認められることはありません 。裁判で離婚が認められる原因として、法律では次の5つが規定されています。
①不貞(配偶者以外の異性との肉体関係)
②悪意の遺棄(配偶者への扶助義務を故意に果たさないこと)
③3年以上の生死不分明
④回復の見込みがない強度の精神病(※民法改正に伴い削除の見込み)
⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由
しかし、例えば、激しい暴力や、度重なる犯罪行為、異常な性癖など、誰が見ても「この人とは結婚生活を続けられない」と言える事情があるなら、裁判でも離婚が認められる可能性 があります。
なお、④については、2024年に成立した改正民法により、削除されることが決定しています。早ければ2025年中にも削除される可能性があります。
2-3. 性格の不一致による離婚が裁判でも認められる具体例
実際は、別居して一定期間が経過し、夫婦として同居の実態もないなど婚姻関係が破綻しているとみなされるなら、「婚姻を継続し難い重大な事由」が生じているとして、裁判でも離婚が認められる ようになります。
最近では、婚姻期間が10~20年と比較的長い夫婦でも、別居して3年を過ぎたあたりから、離婚が認められやすい傾向にあります。婚姻期間が短い夫婦であれば、さらに短い別居期間でも離婚が認められることもあります。子どもがいない夫婦や、共働きの夫婦に関しては、離婚による弊害が少ないとして、より離婚が認められやすいでしょう。
いわゆる熟年離婚で、婚姻期間がかなりの長期に達している場合でも、誠実な協議と条件提示に努めてきたときなどは、比較的柔軟に離婚が認められるように感じられます。
熟年離婚では、長年の積もり積もった不満やすれ違いについて証拠があるわけではありません。たとえ不貞や暴力などが過去にあったとしても、証拠を集めていないことがほとんどでしょう。それでも、夫婦の一方が老後の経済的不安や病気の不安などを覚悟のうえで、どうしても離婚したいという必死の決意を示せば、裁判所も何か理由があるのだろうと耳を傾けてくれることも多いです。
当事務所でも、熟年離婚が認められた事例があります。依頼者は80代の心臓病を抱える妻で、疑い深い夫の監視・束縛に耐えられず、離婚を希望していました。夫は一貫して離婚したくないと泣きついており、離婚原因に関する客観的証拠もありません。別居期間も1~2年しか経っておりませんでしたが、裁判の判決では離婚が認められました。
3. 「性格の不一致」で離婚する夫婦はどのくらいいる?
令和5年司法統計年報(3 家事編 第19表)によると、夫婦関係調停申し立ての主な理由を「性格が合わない」としていた割合は夫からの申立てのうち約60%、妻からの申立てのうち約38%と、複数回答式であるもののいずれもトップを占めています。
その他、「酒を飲み過ぎる」「性的不調和」「浪費する」「家族親族と折り合いが悪い」なども性格の不一致に含まれると考えれば、さらに割合は高くなるでしょう。今は若年世代から熟年世代まで、性格の不一致による離婚も珍しくありません。相談を受ける身としては、大半の離婚が性格の不一致が原因であると感じます。
4. 性格の不一致による離婚を成立させるポイント
性格の不一致による離婚は珍しくなく、裁判でも比較的柔軟に離婚が認められる傾向にありますが、やはり協議離婚ができるに越したことはありません。次に挙げる離婚を成立させるポイントを押さえて、裁判に発展した場合も想定して進めましょう。
離婚を決意するまでの経緯をまとめておく
婚姻関係が破綻している証拠を集める
離婚条件を譲歩する
弁護士に相談する
誠実に対応する
それぞれについて解説します。
4-1. 離婚を決意するまでの経緯をまとめておく
協議離婚を成立させるために、事前に離婚を決意するに至った経緯を整理しておくことは有益です。これは、離婚について相手に納得してもらうため、さらには協議では解決ができずに調停や裁判に至る場合に備えておくため です。自分の気持ちを整理したり、本当に離婚すべきかを冷静に考える助けにもなるでしょう。
経緯をまとめるときは、時系列で、できる限り事実を客観的に記載します。例えば、「いつもの暴言が始まった。まったくモラハラ男で嫌になる」といった漠然とした内容ではなく、特に印象に残るエピソードだけでも、いつごろ、どのようなきっかけで、具体的にどのような言動をされたか(言葉ならそのセリフ、行動や態度ならその詳しい描写)などを思い出して記載 してください。
4-2. 婚姻関係が破綻している証拠を集める
経緯をまとめながら、裏付ける証拠も探しましょう。自分が離婚をしたい理由を伝え、証拠を示すことで、相手を説得できる可能性があります。また、こうした証拠は万が一調停や裁判に発展した際にも、婚姻を継続しがたい事由を証明するうえで重要です。例えば、次のような証拠を集めておきましょう。
頻繁に喧嘩(けんか)している録画・録音など
性格の不一致に悩んでいることを親族や友人に、あるいは役所や警察などに相談した履歴
性格の不一致が原因によるうつや不眠について、病院やカウンセリングにかかった履歴
こうした証拠があれば、不一致の度合いが深刻なこと、婚姻関係の継続が困難であることの証明となります。ただし、喧嘩をしている録画や録音などは、主にこちらが攻撃していると判断されるものは逆効果 です。証拠として使えるかどうか、離婚に詳しい弁護士の意見を聞くのがおすすめ です。
単なる性格の不一致にとどまらない事情もあるなら、その証拠も集めてください。
【異性関係の問題がある場合】
不貞の確たる証拠まではないものの、異性関係の問題があるなら、異性との連絡履歴、デートの写真、そのために浪費しているレシートやクレジットカード履歴などが証拠として考えられます。
【配偶者が転職を繰り返し家計が不安定なので離婚したい場合】
転職履歴とその主な原因を示せるとよいでしょう。
【配偶者が家事をしないから離婚したい場合】
配偶者が家事を全くしない、あるいは趣味などに著しい偏りがあるといった場合は、そのために家の中が荒れていたり、趣味の物でいっぱいになっていたりする写真や、趣味に浪費した履歴などが証拠になります。
【ギャンブルや借金の場合】
ギャンブル癖なども、そのために費やしたお金を示す通帳などの履歴や、出掛けた日時を示すETC(車の自動料金支払いシステム)や交通系ICカードの履歴などが証拠となり得る可能性があります。
離婚を検討した段階で弁護士に相談すれば、事案によってどういう証拠を集めるべきなのかアドバイスをもらうことができます。
4-3. 離婚条件を譲歩する
相手が離婚に合意せず、裁判で離婚が認められる可能性も低い場合は、離婚条件の譲歩も検討しましょう。
例えば、裁判をしても別居期間が足りないと判断される事案では、離婚後も一定期間、婚姻費用相当額を支払うといった条件提示が考えられます。自分に非がなく、慰謝料を支払う法的理由はないとしても、相手が慰謝料を求めているのであれば、一定の解決金を支払うことも一つの方法 です。
いずれも、裁判で離婚が認められるまでにかかる時間や費用と比較すれば、妥当な金額を割り出せるでしょう。子どもがいる場合は、親権・面会交流・養育費などについて柔軟な条件を示すことで、相手の納得が得られることもあります。
こうした条件面についても、相手の法外な要求に応じる必要はありません。弁護士に相談して、妥当な金額を確認しておきましょう。
4-4. 弁護士に相談する
性格の不一致で離婚を検討した場合や、条件面で揉めそうな場合は、離婚に詳しい弁護士に相談しておくことが得策です。
自分の場合は裁判でも離婚が認められそうか、今すぐでないなら何年後に認められそうか、何が証拠になるか、どの程度の条件が妥当かなど、見通しを示してもらう ことができます。
協議や調停を依頼するかどうかは別としても、事前に相談しておくことで、交渉の目安をつけたり、重要なポイントを把握したりする助けになる場合があります。弁護士に正式に依頼すれば、協議の代理交渉から調停、あるいは裁判までサポートが得られ、早期に離婚が認められる可能性があります。
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4-5. 誠実に対応する
性格の不一致で離婚をする際に注意すべきポイントは、離婚を決意した後の対応次第で、裁判で離婚が認められるかどうかが大きく変わる可能性があるという点です。性格の不一致で離婚を認めてもらいたいのであれば、誠実な対応をするようにしてください。
時折、相手を騙すような方法で別居をしたり、別居後に生活費を渡さなかったりしたために、離婚が認められにくくなっている事例を見かけます。残念ながら、離婚に詳しくない弁護士が間違ったアドバイスをしたためにそうなっているケースさえあります。
一方で、離婚原因がなくても、相手の気持ちにも配慮しながら離婚したい理由を丁寧に説明したり、別居後も相手に生活費の送金や子育ての協力などを誠実に続けたり、誠意ある離婚条件を提示することによって、早期円満に離婚できたケースを、当事務所ではたくさん見てきました。離婚が成立していない以上は夫婦であるため、配偶者への配慮を忘れずに誠実な対応で解決を試みることが重要 です。
性格の不一致で、相手に対して憎いという気持ちを抱いていることもあるでしょう。しかし、強引な方法で離婚を進めようとすると上手くいきません。相談する際は、離婚に詳しい弁護士に相談して、適切なアドバイスを受ける ようにしてください。
5. 性格の不一致で離婚する場合の養育費・財産分与・慰謝料はどうなる?
5-1. 財産分与は原則2分の1
財産分与は、離婚原因が何か、主な責任がどちらにあるかにかかわらず、原則2分の1 で分けることになります。ただし、お互いが合意すれば、財産分与の割合を変えることも可能です。例えば、一方が離婚を拒否している場合には、「財産分与は少なくていいから離婚したい」と交渉の材料にするケースもあります。
5-2. 養育費も通常どおり請求できる
同様に、養育費も離婚原因とは関係なく、父母の年収を養育費算定表に当てはめた金額が基準 となります。子どもが私立の学校に通っているなどの事情があれば、状況に応じて一定額の加算が認められる可能性があります。
5-3. 慰謝料は原則発生しない
性格の不一致が原因で離婚する場合、原則として、慰謝料はどちらにも発生しません 。時折、離婚を請求した側が請求された側に慰謝料を支払うべき、という誤解があるのですが、法的に慰謝料が発生するのは、不貞や暴力など、離婚に至る責任が明白に一方にあるときに限られます。
6. 「性格の不一致」による離婚の解決金の相場は?
性格の不一致による離婚では法律上、慰謝料は発生しません。しかし、早期円満解決のため、離婚を求める側が財産面の条件をある程度譲歩したり、「解決金」を支払ったりすることがあります。
どの程度の解決金が妥当なのかは、事案によるため一概には言えません。裁判で離婚が認められるまでの期間の目安や、離婚に至る経緯、離婚を急ぐ度合い、夫婦の収入や資産の状況、子どもの年齢・人数、離婚後の生活をサポートしてくれる親族等の存在などを総合的に考慮して決めます。
どの程度の金額とするかや、相手の要求や提案に対し、自分がどの程度譲歩すべきか、あるいは譲歩せず調停や裁判に進んだほうがよいかなど、当事者自身が判断するのは難しいです。離婚に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。
7. 性格の不一致で離婚する場合、子どもの親権はどうなる?
親権も、離婚原因とは別に判断されます。離婚を求めた側が離婚を拒否している側に親権を譲る必要まではない でしょう。現行制度(単独親権)では、主な監護者である側、多くは母親が親権者となることが大半です。
なお、2024年に法律が改正され、2026年5月までに施行が予定されている「共同親権」が、導入後どうなるかは今後の動きを見守る必要があります。基本的に、離婚後も父母としての協力関係が見込まれるかどうかで、共同親権が適切かどうかの一つの分かれ目になるのではないかと考えられます。
共同親権や、共同監護に近い形を望むのであれば、離婚について泥沼化することをできるだけ避けて、子どものためにも、冷静で穏便な話し合いを目指すことが望ましいです。
8. 性格の不一致でも夫婦関係を再構築する方法
相手との折り合いが悪く、夫婦生活が限界に感じられても、離婚が唯一の解決策とは限りません。離婚したとしても、経済面や子育て面などで新たなストレスや課題が生じる可能性もあります。中には関係を修復して、昔みたいに生活できないか模索している人もいるでしょう。夫婦関係を再構築する方法としては、次のような試みが考えられます。
8-1. 夫婦のコミュニケーションを増やす
いつしか夫婦での会話がなくなったり、喧嘩が絶えない状態になっていたりすることもあるでしょう。結婚した当初、相手に惹かれた理由を思い出して、自分のほうから相手の気持ちに寄り添うようなコミュニケーションを心がけてみるのも一つの方法です。
性格が不一致になってしまう原因は、相手だけではなく自分が変化したことも考えられます。どちらかが一方的に悪いのではなく、自分から歩み寄る姿勢を見せることも大切 です。双方で、されたら嫌なことや、してもらったら嬉(うれ)しいことを共有することも考えられるでしょう。
8-2. 夫婦カウンセリングを受ける
夫婦カウンセリングを行う機関も増えていますので、利用してみるのもひとつの手です。もし、夫婦カウンセリングを受けるのであれば、国家資格である公認心理師の資格を有する、実務経験のあるカウンセラーなどに依頼するようにしましょう。
8-3. 別居して冷却期間を設ける
夫婦の関係が悪化しているときは、一時的に距離を置くことでクールダウンでき、お互いの大切さに気付くこともあります。一定期間離れることでストレスから解放されることもあるでしょう。
また、性格の不一致で離婚する場合は、一定期間の別居があれば認められやすくなります。ただし、別居することでさらに気持ちが離れ、双方で別のパートナーを作るような状況に発展することも考えられます。
また、相手と話し合わずに一方的に別居してしまうと、離婚を求める過程が誠実でないとされたり、子連れで強引に別居した場合は監護者として不適格であるとして親権に影響したりする可能性もゼロではありませんので、注意しましょう 。
9. 性格の不一致による離婚でよくある質問
10. まとめ 性格の不一致で離婚したい場合は弁護士への相談が有効
性格の不一致で離婚したいと思っても、相手が承諾しなければ、調停や裁判をすることになります。裁判に発展した場合を考慮して、事前に準備しながら進めることが重要 です。また、相手の反対を押し切って強引に離婚しようとすると、のちに不利になる恐れがあります。
「相手が離婚に応じない」「離婚の際に揉めそう」という人は弁護士に依頼するのがおすすめ です。交渉の段階からあなたの代理人として、相手と交渉してもらうことができ、早期に離婚が成立することも考えられます。性格の不一致で離婚する際は、誠実な対応で慎重に進めましょう。
(記事は2025年1月1日時点の情報に基づいています)