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家庭内別居とは? メリットから離婚の理由になるかまで解説

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家庭内別居とは、同居している夫婦が互いに干渉せず生活することです(c)Getty Images
夫婦関係で不安や不満を抱えながらも離婚に踏み出せず「家庭内別居」を選ぶ夫婦は少なくありません。家庭内別居には金銭的な負担の軽減などのメリットがある一方で、子どもへの悪影響や精神的なストレスといったデメリットも存在します。家庭内別居の具体例や家庭内別居から復縁する方法、離婚の際の注意点を弁護士が解説します。
目 次
  • 1. 家庭内別居とはどんな生活?
  • 1-1. 家庭内別居の具体例
  • 1-2. 家庭内別居と仮面夫婦の違い
  • 1-3. 家庭内別居のメリット
  • 1-4. 家庭内別居のデメリット
  • 2. 家庭内別居をする夫と妻の気持ち
  • 3. 家庭内別居のやり方・ルール
  • 3-1. コミュニケーションの範囲
  • 3-2. 夫婦の生活費や家計管理
  • 3-3. 家事の分担
  • 3-4. 食事の時間や冷蔵庫の共有
  • 3-5. 【重要】子どもへの配慮
  • 3-6. 休日の過ごし方
  • 4. 家庭内別居中の生活費は婚姻費用として請求できる
  • 5. 家庭内別居から夫婦関係を再構築するには
  • 5-1. 夫婦で話し合う
  • 5-2. 夫婦カウンセリングを受ける
  • 5-3. 家庭裁判所の円満調停を利用する
  • 6. 家庭内別居から離婚はできる?
  • 6-1. 協議離婚や調停離婚ならできる
  • 6-2. 裁判で離婚する場合は法定離婚事由が必要になる
  • 6-3. 裁判で離婚できる見込みがないなら別居する
  • 7. 家庭内別居に関連して、よくある質問
  • 8. まとめ 家庭内別居は夫婦で話し合って解決することが重要
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1. 家庭内別居とはどんな生活?

家庭内別居とは、夫婦が同じ家に住みながら顔を合わせることもなく、別々に生活している状態を言います。お互いに愛情は冷めているものの、経済的な理由や世間体、子どもへの配慮から離婚は選択せず、家庭内別居に至るというパターンが一般的です。

1-1. 家庭内別居の具体例

法律上の明確な定義はありませんが、一般的には以下のような状況であれば家庭内別居と言えるでしょう。

  • 寝室が別

  • 食事を一緒にとらない

  • 会話がない、あっても最低限の事務連絡のみ

  • 相手のために家事をしない

  • 一緒に出掛けない

  • 互いの行動を把握していない

こうした状態が続くと、夫婦としての関係が形だけになっていると考えられ、家庭内別居と呼ばれることが多いです。

1-2. 家庭内別居と仮面夫婦の違い

家庭内別居と似た言葉に「仮面夫婦」があります。仮面夫婦とは、内心では互いに愛情を感じていないものの、対外的には仲の良い夫婦を演じている夫婦のことを言います。

夫婦関係が悪化し、家庭内での会話がほとんどない点では家庭内別居と共通します。しかし、家庭内別居の場合は、夫婦そろって人前に出ることがないのに対し、仮面夫婦は外では行動を共にし、親戚付き合いなどを何ら変わりなく行います。そのため、他人からは「仲の良い夫婦」と思われているケースが多いでしょう。

1-3. 家庭内別居のメリット

夫婦関係が悪化しているにもかかわらず、離婚ではなく家庭内別居を選択する理由は、以下のメリットがあるからだと考えられます。

【経済的負担が少ない】
離婚をすれば自分で生計を立てなければなりませんが、家庭内別居であれば夫婦で生活費を分担できます。

【世間体を守れる】
家庭内別居であれば夫婦が不仲であることが周囲にはバレず、世間体を保つことができます。

【いつでも子どもと関われる】
離婚をして親権がとれないと、子どもと離れて暮らすことになります。これに対し、家庭内別居であれば子どもと離れずに済み、関わりを持ち続けることができます。

【財産分与など面倒な手続きが不要】
離婚をする場合、養育費や財産分与、慰謝料などのさまざまな離婚条件を決める必要があります。話し合いで決まらなければ、調停、裁判と手続きを行わなければなりませんが、家庭内別居であればこのような面倒な手続きを行う必要がありません。

1-4. 家庭内別居のデメリット

一方で、家庭内別居には以下のようなデメリットがあります。

【同居のストレス】
互いに干渉せず生活しているとはいえ、愛情の冷めた相手と同居していると、生活習慣の違いなどわずかなことが気になり、ストレスも多くなります。

【子どもに悪影響を及ぼす】
両親が不仲な環境で育つと、親に愛されていないという不安や孤独を感じるようになり、子どもの人格形成に悪影響を及ぼすおそれがあります。

【裁判で離婚が認められにくくなる】
同居していると外形的に夫婦関係が破綻しているとは判断されにくいため、裁判で離婚が成立しにくくなります。

2. 家庭内別居をする夫と妻の気持ち

夫婦が不仲となっても、別居や離婚ではなく家庭内別居を選択するのはどのような気持ちからでしょうか。

男性側の理由として、離婚自体にマイナスイメージを持っており、世間体を気にして家庭内別居を選ぶという人は少なくありません。比較的年齢の高い男性や職場での地位が高い男性にその傾向が見られます。

そのほか、別居をすると子どもに会えなくなってしまうという不安から、家庭内別居を選択するケースもあります。子どもの年齢が小さく、親権を争っても妻には勝てそうにないと考える男性は、別居を回避したいと考えるでしょう。

これに対し、女性側の事情としては、一人で生計を立てられないという経済的な不安から別居を踏みとどまるケースが多いようです。同居であれば家賃や光熱費は一軒分で済むため、家計として出費を抑えられるというメリットがあります。

また、女性の心理として、子どもが小さいうちは両親が揃っている方がよいという価値観から家庭内別居を選択することもあります。

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3. 家庭内別居のやり方・ルール

家庭内別居を始める夫婦は、なるべく早いうちに家庭内別居中のルールを決めておくと、ストレスを軽減して生活できるでしょう。家庭内別居中の夫婦がお互い快適に過ごすためのルールの一例をご紹介します。

3-1. コミュニケーションの範囲

家庭内別居をすると、夫婦が顔を合わせる機会が少なくなります。とはいえ、例えば挨拶だけはする、感謝と謝罪は伝えるなど最低限のコミュニケーションの範囲を決めておくと、お互いに気持ちよく過ごせます。

3-2. 夫婦の生活費や家計管理

生活費に関するルールは必ず取り決めましょう。食費や日用品などは各自が負担するとしても、家賃や光熱費は同居している以上は切り離せないものです。これらの生活費に関する負担割合のほか、急な出費や子どもの教育費はどちらがどの程度負担するのかも、あらかじめ決めておけば金銭トラブルを防止できます。

3-3. 家事の分担

家庭内別居中の家事の分担についても、あらかじめ取り決めをしておくのが大切です。家庭内別居中の家事は各自で行う夫婦が多いでしょう。後々もめがちなのは、共用部に関する家事です。洗濯機はそれぞれ何曜日に使うのか、風呂やトイレなどの掃除はどのように分担するかなど、ルールを決めておけば不要なトラブルを回避できます。

3-4. 食事の時間や冷蔵庫の共有

家庭内別居の場合、ほとんどの夫婦は食事を別にとります。キッチンやダイニングの使用時間を決めておくと、食事の時間が重ならずに済みます。食材を別々に購入する場合は、冷蔵庫で各自の私物をどこに置くのか決めておくと後の些細なトラブルを防止できます。

3-5. 【重要】子どもへの配慮

子どもは想像以上に敏感で、夫婦の険悪な雰囲気を感じ取るものです。両親が不仲な環境で育つと、常に不安感がつきまとい、子どもの自己肯定感の低下につながります。たとえ夫婦が家庭内別居をするとしても、子どもにはできる限り悟られないようにしましょう。挨拶や最低限の会話はする、週末だけは家族で出かけるなど子どもへの配慮が大切です。

3-6. 休日の過ごし方

休日となれば二人が家にいる時間が長くなり、顔を合わせる機会も多くなります。出かける場合は行き先を告げるのか、それとも互いに干渉しないのか、事前に方針を決めておくとよいでしょう。ただし、子どもがいる場合は、子どもと過ごす時間を作ることが大切です。また、子どもに何かあった場合に備えて、できる限り行き先を告げる方がお互いに安心できます。

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4. 家庭内別居中の生活費は婚姻費用として請求できる

婚姻関係にある夫婦は、互いに生活保持義務を負っています。生活保持義務とは、相手が自分と同程度の生活を送れるように生活費を支払う義務です。たとえ家庭内別居中であっても婚姻関係が続いている限りは生活保持義務を負うため、相手に婚姻費用を請求できます

婚姻費用の金額は、当事者の話し合いで自由に決められます。ただし、金額に折り合いがつかなかったり、相手がまったく支払わなかったりする場合には、家庭裁判所に婚姻費用分担調停を申し立て、調停委員を交えて話し合いを進めます。

婚姻費用の金額は、通常、家庭裁判所が公表する婚姻費用算定表に基づいて決められます。ただし、この算定表は別居の夫婦を想定して作成されています。家庭内別居の場合、住居費や光熱費が二重にかからないため、算定表の金額が一部調整されます。

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5. 家庭内別居から夫婦関係を再構築するには

夫婦関係が悪化していても家庭内別居にとどまる場合には、再構築できる可能性は十分にあります。そのためには以下の方法が考えられます。

5-1. 夫婦で話し合う

当事者同士でじっくり話し合う必要があります。夫婦関係を再構築したいという自分の気持ちをまずは伝えたうえで、自身の反省点や相手に改善してほしい点を冷静に伝えましょう。

話し合う際は、相手の悪い部分を責めることは避けましょう。夫婦関係が余計に悪化します。たとえ相手に自分の悪いところを指摘されても反発するのではなく、いったん受け止めることが大切です。面と向かって話すのが難しければ、手紙で思いを伝えるのも一つの方法です。

5-2. 夫婦カウンセリングを受ける

当事者同士でうまく話し合いができなければ、夫婦カウンセリングを受けるのもおすすめです。互いの両親や兄弟を交えた話し合いでもよいのですが、どうしても親族だと公平な立場とはいえず、かえって話がこじれることもあります。

この点、夫婦カウンセラーであれば第三者の立場から客観的なアドバイスをしてくれます。ただし、男性側に多い傾向として、他人に夫婦のプライバシーを話すことに抵抗がある人もいます。そのため、夫婦カウンセリングを受ける際は、二人が納得したうえで相談しましょう。

5-3. 家庭裁判所の円満調停を利用する

夫婦で話し合いができないときは、家庭裁判所の円満調停を利用するのも一つの方法です。円満調停とは、同居または別居中の夫婦が、夫婦関係を円満に戻すために、家庭裁判所の調停委員を介して話し合いを行う手続きです。

円満調停では、夫婦がそれぞれ別室で待機し、調停委員と順番に話をします。直接顔を合わせることはなく、公正な第三者が間に入ってくれるので、互いに冷静な話し合いができます。ただし、円満調停に強制力はなく、一方が復縁を望んでも他方に修復の意思がなければ、調停は不成立で終了します。

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6. 家庭内別居から離婚はできる?

家庭内別居から離婚することはできます。ただし、裁判に発展した場合は「法定離婚事由」が必要です。

6-1. 協議離婚や調停離婚ならできる

協議離婚や調停離婚では、双方が合意さえすれば離婚は成立します。その際、離婚の理由は問われないため、家庭内別居を理由として離婚することもできます。

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6-2. 裁判で離婚する場合は法定離婚事由が必要になる

協議や調停で夫婦で離婚の合意が得られず、それでも離婚したい場合は離婚裁判となります。

裁判では家庭内別居のみを理由とする離婚は難しくなります。裁判で離婚するには法定離婚事由が必要であり、家庭内別居だけでは該当しないからです。

この法定離婚事由は民法に定められており、法定離婚事由が認められれば一方が離婚を拒否したとしても、裁判官が離婚を命じることができます。ちなみに実務で一番多い離婚事由は「婚姻を継続し難い重大な事由」です。

通常、家庭内別居だけでは「婚姻を継続し難い重大な事由」があるとは認められません。しかし、家庭内別居に至った理由や状況次第では、夫婦関係が破綻していて修復の可能性がないとして離婚が認められる可能性もあります。例えば、暴力やモラハラがあった場合には、根拠となる写真や診断書などを証拠として提出することで、離婚が認められることもあります。

6-3. 裁判で離婚できる見込みがないなら別居する

同じ家で暮らしていると、どうしても外形的に夫婦関係が破綻していると判断されにくく、離婚のハードルは高くなります。将来的に離婚を強く望むのであれば、別居を選択する方が離婚は認められやすくなります。また、別居して期間を置くことで、離婚に反対していた配偶者も冷静になり、離婚に合意する可能性もあります。

なお、別居をする場合には、別居をすることや理由を相手に伝えましょう。何も伝えずに別居すると、夫婦の同居義務に違反したとして法定離婚事由の「悪意の遺棄」とみなされるリスクがあります。悪意の遺棄となると、離婚原因を作った「有責配偶者」として離婚請求が認められなくなる可能性があるため注意が必要です。

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7. 家庭内別居に関連して、よくある質問

Q. 家庭内別居でも不倫慰謝料は請求できる?

家庭内別居中に配偶者が不倫をした場合、原則として配偶者や不倫相手に対して慰謝料を請求できます。ただし、家庭内別居の状況によっては、すでに夫婦関係が破綻していると判断される可能性もあり、その場合には慰謝料請求は認められません。

Q. 家庭内別居で離婚すべきかどうかの判断基準はある?

経済的な負担のほか、相手への気持ち、子どもへの影響などの観点から、離婚した場合のメリットとデメリットを書き出してみましょう。離婚を今すぐに決めないとしても、将来の離婚に備えて自立する準備を始めておく方がよいでしょう。

Q. 家庭内別居が何年続くと離婚できる?

家庭内別居には、完全別居のような「何年続くと離婚できる」という目安はありません。家庭内別居の程度(家事の協力の程度、会話の有無など)や、家庭内別居に至った理由にもよります。

Q. 家庭内別居から離婚する際、いつからいつまでの共有財産が財産分与の対象になる?

財産分与の対象となるのは、婚姻期間中に夫婦が協力して築いた財産です。通常、家庭内別居が始まると夫婦の協力関係がなくなるので、原則として家庭内別居が始まった日までに築き上げた財産が分与の対象と言えます。もっとも、家庭内別居の開始日が明らかでないことも多く、裁判で争いになることもあります。

8. まとめ 家庭内別居は夫婦で話し合って解決することが重要

家庭内別居は、同居している夫婦が互いに干渉せずに生活することです。同居を続けることで、子どもと一緒に生活でき、経済的な負担を抑えられるなどのメリットがあります。

しかし、家庭内別居は根本的な解決にはなりません。長期間継続すると、子どもの成長に悪影響を及ぼしたり、裁判で離婚が認められにくくなったりする可能性もあります。

そのため、夫婦関係を修復するのか、離婚に踏み出すのか、夫婦で話し合うことが大切です。話し合いが困難な場合は、カウンセラーや弁護士といった専門家の力を借りて解決を目指しましょう。

(記事は2025年11月1日時点の情報に基づいています)

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