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1. 離婚は「先に言った方が負け」と言われる理由
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2. 離婚を先に言ったほうが負けないためのポイント
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2-1. 離婚の手続きを理解しておく
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2-2. 法定離婚事由があるか確認する
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2-3. 法定離婚事由の証拠を集めておく
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2-4. 離婚条件について優先順位を決めておく
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2-5. 離婚後の生活の準備を整えておく
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2-6. 弁護士に相談しておく
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3. 離婚で不利にならないために避けるべきこと
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3-1. 配偶者以外の人と交際する
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3-2. 子どもを連れ去る
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3-3. 一方的に別居をする
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3-4. 条件を話し合わずに離婚を進める
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3-5. 脅迫や暴力行為をする
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4. 離婚を切り出した後の流れ
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5. 勢いで「離婚したい」と言ってしまったが離婚しない方法はある?
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5-1. 配偶者に謝罪をする
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5-2. 離婚には決して応じないようにする
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5-3. 離婚届不受理申出を提出しておく
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5-4. 別居された場合は夫婦同居調停を申し立てる
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6. 「離婚は先に言った方が負け」に関連して、よくある質問
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7. まとめ 離婚交渉で不利になりたくないなら、弁護士に相談を
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1. 離婚は「先に言った方が負け」と言われる理由
基本的に、「離婚を先に切り出した方が負け」ということはありません。しかし、夫婦の一方が離婚を拒否した場合、最終的には裁判で離婚の可否を求める必要があります。裁判で離婚が認められるには、不貞行為などの「法定離婚事由」が必要です。そのため、法定離婚事由がない場合、相手が同意しない限り、離婚することはできません。
このような背景から、法定離婚事由がない、あるいはそれを証明する十分な証拠がない状態で先に離婚を口にしてしまうと、交渉の主導権を相手に握られる可能性があります。例えば、相手が内心では離婚に応じる気があっても、「法定離婚事由もないのに離婚に応じてあげるのだから、条件を有利にしてほしい。それが嫌なら離婚を拒否する」などと言われる可能性があります。
また、このような状況では、不倫などの証拠を隠されてしまい、慰謝料請求が難しくなることもあります。
2. 離婚を先に言ったほうが負けないためのポイント
事前準備をせずに離婚を切り出すと不利になる可能性があります。ここでは、離婚を先に言ったほうが負けないためのポイントを紹介します。
2-1. 離婚の手続きを理解しておく
まず、離婚が成立するまでの道のりを把握しましょう。離婚には、協議離婚、調停離婚、裁判離婚の3つの方法があります。最も一般的なのは、夫婦の話し合いによって成立する協議離婚です。
もし協議離婚が成立しない場合、相手の居住地を管轄する家庭裁判所に離婚調停を申し立てます。離婚調停では、調停委員が間に入り、双方の意見を聞いた上で解決方法を提案します。しかし調停離婚も、あくまで双方の協議によるため、最終的に双方の合意がなければ離婚は成立しません。相手が離婚を拒否すれば、調停は不成立となり終了します。
調停でも解決に至らない場合、最終的には訴訟(裁判)を起こし、裁判官が離婚の成否を決定します。裁判では、裁判官が客観的な事実や証拠に基づいて、離婚を認めるべきかどうかを判断します。
離婚の手続きに関する知識がなく「相手が合意してくれるまで離婚はできない」などの思い込みをしていると、離婚が遠のいてしまうので注意しましょう。
2-2. 法定離婚事由があるか確認する
離婚について検討する場合、民法770条1項で定められている法定離婚事由(不貞行為、悪意の遺棄、その他婚姻を継続し難い重大な事由)があるかどうかを確認することが重要です。法定離婚事由は、下記の通りです。
配偶者に不貞な行為があったとき(1号)
配偶者から悪意で遺棄されたとき(2号)
配偶者の生死が3年以上明らかでないとき(3号)
配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき(4号)(2026年5月までに施行される改正民法によって削除される予定)
その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき(5号)
1号は肉体関係を伴う不倫、2号は「理由もなく別居したり、生活費を払わないなどして、夫婦の義務を守らない行為」などを指します。5号は、上記に含まれないDVやモラハラ、長期間の別居による夫婦関係の破たんなどが挙げられます。仮に裁判になった場合、これらの行為があったことを証明できれば、裁判所は離婚を認めてくれる可能性が高くなります。
2-3. 法定離婚事由の証拠を集めておく
法定離婚事由があっても、その証拠がなければ、最終的に離婚請求が認められないため、証拠を確保することは重要です。以下、典型的な離婚原因ごとに、どのような証拠が必要なのかを説明します。
【不倫(民法770条1項1号)】
不倫相手と一緒にホテルに入る瞬間の写真、ラブホテルの領収書、不倫相手とのメールやLINEのやり取り、不倫相手との性行為を撮影した動画など
【暴力(民法770条1項5号)】
診断書、警察署の事件記録、暴力を受けた箇所を撮影した写真
【モラハラ(民法770条1項5号)】
相手の声の録音データ、相手の発言を記録した日記など
【相手の病気が回復の見込みがない(民法770条1項4号)】
病院で発行された診断書
証拠があれば、離婚条件でも強気に交渉することができるため、慰謝料を獲得できる可能性もあります。
2-4. 離婚条件について優先順位を決めておく
財産分与、養育費、親権、慰謝料など離婚条件の優先順位を決めることで、譲歩できるポイントとできないポイントを整理することができます。離婚自体を優先させて、それ以外の条件は譲歩するのか、養育費さえもらえれば、財産分与は2分の1以下で妥協するのかなど、自分なりの優先順位を決めることが重要です。
離婚を進めるうえですべて自分の希望通りとなることはないので、優先順位の低いものは譲歩することが早期に離婚を成立させるためのポイントです。
2-5. 離婚後の生活の準備を整えておく
離婚後の生活に向けて、事前に準備を進めておくことが重要です。例えば、離婚後の住まいや引越しの有無、仕事について考える必要があります。住まいについては、実家に頼るという選択肢もあります。また、離婚の原因が相手にある場合、相手に自宅から出ていってもらうよう交渉するのも一つの方法です。
パート勤務の人や専業主婦の人は、離婚前に正社員への転職や就職先を探しておくことが望ましいでしょう。ブランクがあって正社員としての就職が難しい場合でも、正社員登用を前提とした紹介予定派遣という方法があるので、粘り強く就職活動を行うことが大切です。
さらに、一人親を対象にした公的支援制度もあるため、どのような制度が利用できるか事前に調べておきましょう。離婚後の生活の見通しが立っていれば、相手との交渉でも心が揺らぐことなく進められるはずです。
2-6. 弁護士に相談しておく
相手に離婚を切り出す前に弁護士に相談して、離婚に関する疑問や悩みを解消しておくことも有益です。証拠の集め方や話し合いを進めるうえでのポイントについてもアドバイスしてもらいましょう。初回相談は無料の弁護士事務所も多いので、離婚を検討した段階で、一度足を運んでみるのがおすすめです。

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3. 離婚で不利にならないために避けるべきこと
場合によっては、自分の行動によって離婚交渉が不利になったり、離婚が遠のいたりする可能性があります。ここでは、離婚で不利にならないためにも、してはいけない行動を紹介します。
3-1. 配偶者以外の人と交際する
相手が不倫をしているからといって、自分も不倫をしていいということにはなりません。不倫をすると、逆に相手から慰謝料請求を受けたり、離婚請求を受けたりするリスクもあります。また、有責配偶者として自らの離婚請求が認められなくなる可能性もあるので、不倫することは絶対にやめてください。
有責配偶者とは、離婚原因を自ら作り出した配偶者のことで、有責配偶者からの離婚請求は原則として認められません。
3-2. 子どもを連れ去る
親権が欲しいからといって、子どもを連れ去るのはやめましょう。日常的に子どもの監護をしてこなかった側が、相手の承諾なく子どもを連れて別居してしまうと、場合によっては、未成年者略取罪に該当するおそれがあります。
別居中の親権者による連れ去りの事案ですが、自らの子を保育園の送迎の際に連れ去ったケースにおいて、夫を未成年者略取罪で有罪とした裁判例(最高裁平成17年12月6日判決)もあります。未成年者略取罪に問われるか問われないかは別にしても、一方の親から子どもを引き離すという行為は、無用なトラブルを生むことになり、なによりも子どもに悪影響を及ぼすので、そのような手段には出ないことが大事だと考えます。
3-3. 一方的に別居をする
一方的に別居してしまうと、同居義務違反となる可能性もあり、場合によっては、悪意の遺棄に該当し、離婚において不利になるおそれがあるので、一方的な別居は控えた方がいいでしょう。ただし、DVを受けている場合には、迷わず別居を選択してください。この場合は、たとえ一方的であったとしても、離婚交渉で不利になる心配はありません。
3-4. 条件を話し合わずに離婚を進める
離婚条件を取り決めずに離婚を進めると、後々条件を巡ってトラブルになることがあります。私の事務所でも、離婚を急ぐあまり条件を話し合う前に離婚してしまい、離婚後に財産分与や慰謝料、養育費で揉めた人がいました。
離婚を急ぐ気持ちは理解できますが、将来のことを考えると、きちんと話し合いをしてから離婚する方がいいでしょう。
3-5. 脅迫や暴力行為をする
「離婚しないなら痛い目に合わせるぞ」などと相手を脅迫したり、暴力行為に及んだりすると、有責配偶者となり、ますます離婚が遠ざかることになります。さらにいえば刑事責任を負う可能性もあるので、そのような行為は絶対に控えてください。
4. 離婚を切り出した後の流れ
基本的に離婚手続きは「協議、調停、裁判」の順に進みます。協議に応じない相手には、調停を申し立てることも可能です。ただし、調停を経ずに裁判を起こすことはできません。
法定離婚事由がない場合、協議や調停で相手の合意が必要です。相手が拒否する場合は、条件の譲歩が求められることもあります。話し合いが長引くときは、別居してみるのも一つの手です。
別居は生活を見直す機会となります。また、別居が5年程度続けば、婚姻関係の破たんとして離婚が認められる可能性が高まります。
5. 勢いで「離婚したい」と言ってしまったが離婚しない方法はある?
5-1. 配偶者に謝罪をする
本気で離婚したいわけではなかったのに、喧嘩の勢いで離婚を口にした結果、相手が承諾してしまい、思わぬ形で離婚の合意が得られることがあります。そのような場合には、自分が冷静さを欠いていたことを認めて相手に謝罪し、関係修復に努めることが大切です。また、今後は同じ過ちをしないと約束することも重要です。
5-2. 離婚には決して応じないようにする
自分から離婚を切り出したものの、やはり離婚はしたくないと思ったら、相手に対してはその旨を伝えたうえで、離婚には応じないでください。離婚届に署名捺印して相手に渡してはいけません。万が一、相手に離婚届を渡してしまった場合には、相手から取り戻すか、速やかに、後述の離婚届不受理の申出をしておくことが必要です。
そして今後、婚姻関係を円満にするためにはお互いにどうしたらよいのかについて相手と話し合ってください。
5-3. 離婚届不受理申出を提出しておく
相手が離婚届を無断で提出するおそれがある場合、「離婚届不受理申出」を行うことが有益です。離婚届不受理申出とは、仮に、相手が勝手に離婚届を提出したとしても、離婚届を受理しないよう、事前に役所に申し出る制度です。具体的には、本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード等)と印鑑を持参して、本籍地の市区町村役場(遠方に居住している場合は、居住地などの任意の市区町村役場でも可)に書類を提出するだけで足ります。
なお、相手が配偶者の書面を偽造して離婚届を提出することは犯罪なのですが、役所は偽造かどうかが判断できないので、離婚届はそのまま受理され、戸籍上は離婚が認められてしまいます。そのような離婚は法律上無効ですが、無効であることを確定するためには、最終的には裁判を起こしたうえで、判決をもらう必要があるので、かなりの手間と時間がかかります。
5-4. 別居された場合は夫婦同居調停を申し立てる
もし相手が怒って別居を開始してしまった場合には、夫婦関係円満調停を利用する方法もあります。夫婦関係円満調停とは、離婚調停とは異なり、婚姻関係を継続することを前提に、やり直しをするための条件等について、調停委員の意見を聞きながら、進めていく手続となります。
なお、前述したように、別居期間が相当程度長期間になると、それだけで離婚が認められる可能性があるので、離婚したくないのであれば、相手が別居するような事態に陥ることは極力回避することが重要です。
6. 「離婚は先に言った方が負け」に関連して、よくある質問
「お金はいらないから早く離婚して」などの発言は、相手の有利な離婚条件で離婚が成立してしまうおそれがあります。後々トラブルになる可能性もあるため、離婚条件はしっかり確認して話し合った上で決めることが重要です。
また、「好きな人がいる」など不倫を連想させる言葉も、相手の態度を硬直化させ、離婚が遠のく可能性があるので、控えた方がいいでしょう。実際に肉体関係を伴う不倫に発展しており、その証拠を配偶者が得れば、慰謝料を請求されるリスクもあります。また、有責配偶者となるため、離婚請求ができなくなる恐れもあります。
そのほか、配偶者を不快にさせる言葉は、離婚がこじれる可能性があるため、冷静に話し合うことが重要です。
どっちが出ないといけないという決まりはありません。別居する際には、事前に相手の同意を得るようにしましょう。また、相手の承諾なく子どもを勝手に連れ出さないことも重要です。
モラハラやセックスレスもその内容や程度によっては、「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」になり得るので、離婚を切り出したほうが不利になるということはありません。ただし法定離婚事由を主張するのであれば、証拠を得て、事前に十分な準備をしてから離婚を切り出すべきです。
7. まとめ 離婚交渉で不利になりたくないなら、弁護士に相談を
離婚を成立させるには、「夫婦の合意」か「相手に法定離婚事由があることの証明」のどちらかが必要です。法定離婚事由には、浮気やDVなどが含まれますが、これらの行為がない場合、夫婦間での合意を目指すしかありません。
合意を目指す際に、こちらから離婚を切り出すと、離婚条件で不利になる可能性があります。たとえば、「慰謝料を〇万円払ってくれたら離婚する」などの条件を提示されることがあるからです。相手に法定離婚事由がない場合、こちらの都合での離婚となるため、お金を払ったり条件で譲歩したりするのは避けられないかもしれません。
納得できない場合や、少しでもいい条件で離婚したい場合には弁護士に相談してください。離婚のための法的なアドバイスや、離婚交渉の代理などをしてくれます。
(記事は2025年5月1日時点の情報に基づいています)