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1. 円満調停(夫婦関係調整調停)とは
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2. 円満調停と離婚調停の違い
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2-1. 円満調停と離婚調停は同時に申立て可能
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2-2. 円満調停での調停委員の役割
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3. 円満調停のメリット・デメリット
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3-1. メリット
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3-2. デメリット
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4. 円満調停の流れ
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4-1. 申し立て
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4-2. 調停日の決定
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4-3. 調停の開始
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4-4. 調停の終了
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5. 円満調停の効果
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5-1. 円満調停が成立した場合
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5-2. 円満調停が不成立になった場合
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6. 円満調停で聞かれること
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7. 円満調停を成功させるポイント
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7-1. 夫婦にある問題を具体的に整理する
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7-2. 短期間で夫婦関係を修復しようとしない
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7-3. 調停委員の助言を活用する
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7-4. 調停後の夫婦関係も大切にする
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8. 円満調停で弁護士に依頼するメリット
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9. 円満調停にかかる費用
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9-1. 申立て費用
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9-2. 弁護士費用
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10. 円満調停に関するよくある質問
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11. まとめ 夫婦関係改善には円満調停をうまく活用
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1. 円満調停(夫婦関係調整調停)とは
円満調停は、正式には「夫婦関係調整調停」といいます。家庭裁判所で調停委員に間に入ってもらい、夫婦関係を修復する方法について話し合い をするものです。調停手続きでは、調停委員が当事者双方から夫婦関係がうまくいかなくなった経緯を聞き取り、不仲の原因を探り、どうすれば関係を修復できるのかなどについて助言をしながら、当事者が夫婦関係の改善方法を考えていくことになります。
また、生活費の問題や、子どもとの面会などについて話し合うこともできます。円満調停は、離婚するかどうか迷っている場合などにも利用することができ、離婚することで意見が一致した場合は、そのまま離婚条件について話し合うこともできます 。
調停では、夫婦が別室で待機し、順に調停室に呼ばれて調停委員に事情を説明すると調停委員が相手に伝えてくれるので、直接話し合うよりも冷静な話し合いが期待できます。
2. 円満調停と離婚調停の違い
夫婦関係調整調停には、「円満調停」のほか、「離婚調停」があります。どちらも家庭裁判所の調停委員に間に入ってもらって話し合いをする手続きです。円満調停は夫婦としての関係改善を目指して家庭裁判所で話し合うのに対し、離婚調停は離婚するかどうか自体や、離婚条件について話し合う 点が違います。
2-1. 円満調停と離婚調停は同時に申立て可能
相手が離婚調停を申立てて来たけれど自分は離婚したくない、という場合でも円満調停を申立てることができます。逆のケースでも同様です。
その場合は、離婚調停と円満調停の2つの調停が申立てられる ことになりますが、実態としては同じ問題の表裏の関係にあるため、この2つの申立ては裁判所によって併合され、1つの調停手続きとして話し合いが進んでいく ことになるのが通常です。
実際の調停の進め方は、先に申立てた方の調停の申立人が先に事情を聞かれ、次に、あとから申立てた方の申立人(先の調停の相手方)が事情を聞かれます。
2-2. 円満調停での調停委員の役割
円満調停では、調停委員は中立な第三者として当事者双方から順に話を聞き、話を整理して、相手に主張を伝えてくれます。また、お互いの主張を聞いて問題点などを指摘し、改善案を提案したり、お互いの妥協点を探るなどして、夫婦関係改善のための助言をしてくれます。
3. 円満調停のメリット・デメリット
円満調停のメリットとデメリットを紹介します。調停は良くも悪くも話し合いなので、うまくいくこともあれば、いかないこともあります。
3-1. メリット
円満調停のメリットは主に以下の2点です。
【冷静に話し合える】
夫婦が直接話し合うと感情的になってしまいがちですが、円満調停では、調停委員に対して事情を説明し、調停委員が話の内容を整理して、その内容を相手に伝えてくれるため、冷静に話し合いを進めることが期待できます。
【中立な第三者の意見を聞くことができる】
第三者の意見を聞きたいと思っても、夫婦の問題を他人に話すことにためらいを感じる人は多いでしょう。また、第三者といっても、周囲にいる人で見つけるとなると実際にはどちらかの知り合いになるので、中立の存在とは言い切れないのも懸念のひとつです。この点、調停委員は夫婦のどちらにも全く関係のない、完全に中立な第三者
です。また、法律により守秘義務が課せられているため、話が裁判所外に漏れることがなく、安心して相談できます。
3-2. デメリット
円満調停のデメリットは主に以下の3点です。
【必ずしも円満に解決するわけではない】
円満調停を申し立てると、調停委員は夫婦関係を修復できないか模索してくれますが、人と人の話し合いですので、必ず関係が改善できるとは限りません
。場合によっては、当面の間別居するという合意内容になったり、離婚の方向で話が進んでしまったりすることもあります。
【平日昼間に家庭裁判所に行かなければならない】
家庭裁判所は平日の昼間しか開いていないので、調停も平日の昼間に行います。また調停は当事者双方から順番に話を聞くため、1回あたりの調停で2~3時間ほどかかります。
【裁判所から通知が来ること自体が関係を悪化させることもある】
円満調停を申立てると、裁判所から相手に申立書と呼出状が送られます。多くの人にとっては裁判所から呼び出される経験がないので、このこと自体に驚き、不信感を持つこともあります。また、夫婦のことを第三者に話すことに不快感を持つ人もいるので、たとえ裁判所が相手といえど、夫婦の問題を第三者に明らかにしたことで、関係が悪化することもあります。

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4. 円満調停の流れ
円満調停はどのようにしてはじまり、どのようにして終わるのか。円満調停の流れについて説明します。
4-1. 申し立て
調停は、相手の住所地を管轄する裁判所か、双方の合意した家庭裁判所に申立に必要な書類と費用を提出することで始まります。管轄裁判所は、「住所+管轄裁判所」でネット検索すれば裁判所の管轄区域表が出てくるので、そこで確認しましょう。
【必要書類】(下記とは別途、自分の手控えを用意してください)
・申立書 2通(裁判所用・相手方用)
・進行に関する照会回答書 1通
・事情説明書 1通
・子についての事情説明書(子どもがいる場合のみ) 1通
・夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書)1通
【調停申立費用】
・収入印紙 1200円
・郵便切手 1000円程度
4-2. 調停日の決定
申立書類に不備がなければ、申立てから1~2週間程度で裁判所から1回目の調停について、日程調整の連絡があります。1回目の調停は、1、2カ月程度先になります。1回目の日程が決まったら、裁判所から相手方に申立書と呼出状が郵便で送られます。なお、申立書類に不備があっても、訂正や書類の追加を求められるだけですのでご安心ください。
4-3. 調停の開始
調停当日は、指定された時間に裁判所に行き、待合室で待機します。待合室は、夫婦で別室になっています。例えば東京家庭裁判所では、原則として同じ時間に呼び出されるので、裁判所の入り口でばったり会うといったこともありえます。相手と顔をあわせたくなければ、早めに行くなど工夫しましょう。
調停の時間になると申立人が呼び出され、調停手続きについて簡単な説明があったあと、20~30分程度夫婦不仲の原因や、どうしたいのかなどの事情を聞かれます 。申立人からの聞き取りが終わると、次に相手方が呼び出され、申立人と同様に調停手続きの説明を受けた後、20~30分程度事情を聞かれます。
以後、順番に呼び出され、調停委員が当事者双方の主張をすり合わせ ていきます。また、当事者からの聞き取りの合間に、調停委員と裁判官(または調停官)との話合いの時間が設けられることもあります。1回あたりの調停にかかる時間の目安は2時間程度 ですが、調停がまとまりそうな場合などには時間が延長して行われることもあるので、余裕をもって予定をあけておいてください。
4-4. 調停の終了
円満調停は、お互いの考えが一致すると成立 します。円満調停が成立するケースとしては、関係改善のために努力する内容が決められて同居を継続する場合、慰謝料を支払うことでケジメをつけてやり直そうという場合、当面の間別居することで合意する場合、方針転換して離婚の合意をする場合などさまざまです。
これ以上話合いをしても合意できないだろうという場合は、調停は不成立となり終了します。また、調停外で解決した場合や、調停を継続することに意味を見出せない場合には、調停を取り下げることも可能です。
5. 円満調停の効果
円満調停をしたらどうなるのか、調停が成立したらどのような効果があるかについて説明します。
5-1. 円満調停が成立した場合
円満調停が成立すると、裁判官(または調停官)が、合意した内容について間違いがないか、両当事者に直接確認し、間違いがなければ「調停証書」という書面に合意内容が記載されます。調停調書は判決と同様の効果があるので、相手が合意に違反した場合には、その内容が金銭的なものであれば、強制執行によって相手の給与などを差し押さえて取り立てることが可能 です。ただし、日常生活を送る上での努力義務など、相手に強制できないものもあります。
5-2. 円満調停が不成立になった場合
円満調停を行ったけれども合意ができない場合は、調停は不成立となって終わります。不成立の場合は、何も合意していないので「調停調書」のようなものは作られません。不成立になったことを証明する文書がほしい場合は、裁判所に「調停不成立証明書」を請求すれば、もらうことができます。
円満調停が不成立になった場合に考えられる対応は3つあります。
【離婚訴訟(裁判)に移行する】
調停が成立しなければ、通常の裁判に移行
します。離婚訴訟は、調停前置と言って先に調停で話し合いをして決裂した場合でなければ訴訟提起できませんが、調停前置の対象となる調停は、離婚調停だけでなく円満調停も含まれます。
【現状維持】
お互いに離婚するつもりがなく、関係修復の方向でも話がまとまらなかった場合、とりあえずそのままにしておくというのが一番多いのではないかと思います。時間の経過とともにお互いの気持ちが変わった場合には、再度関係修復を試みたり、離婚について話し合ったりすることになります。
【再度の円満調停申立て】
円満調停には回数制限がないので、何度でも申立てることが可能
です。別居して冷却期間を置いてから、再度話し合うと話がうまくまとまることもあります。また、「どうも今回の調停委員とは合わない」という場合は、1回目の調停を取り下げて、すぐに2度目の円満調停をすることも可能です。
6. 円満調停で聞かれること
円満調停で調停員に質問される主な内容は、以下のようなものです。
なぜ夫婦関係が悪化したのか
いつ頃から不仲になったのか
関係が悪化する以前はどうだったのか
相手にどうしてほしいのか
あなたが関係改善のためにできることはあるか
今後どのような関係になることを望むのか
調停委員は、これらを申立人に聞き、相手方に確認し、相手方の回答や要望に応じて臨機応変に対応します。調停の流れによっては、自分の話したいことを調停委員が質問してくれないこともありますので、こちらから積極的に要望を伝えましょう 。話し忘れがないように、簡単なメモを作っておくのも有効です。
7. 円満調停を成功させるポイント
円満調停の本質は、話し合いです。こちらの発言や考えによって結末が変わる可能性は多いにあります。円満調停を成功させるポイントについて解説します。
7-1. 夫婦にある問題を具体的に整理する
円満調停は、調停委員に間を取り持ってもらう制度ですから、調停委員に話を理解してもらえないとうまくいきません。まずは、夫婦関係が悪化していった経緯から現在の状況に至るまでを時系列で整理しましょう 。
次に、どういった点が関係悪化の原因だと考えているのかを自分なりに考えて整理します。相手にも言い分はあるはずなので、あなたが譲れない点、譲れる点について考えておきましょう 。
7-2. 短期間で夫婦関係を修復しようとしない
一度こじれてしまった夫婦関係が、短期間で元に戻ることはあまりありません。多くの場合は、少しずつ信頼関係を回復していくものです。ですので、焦らずに、お互いに関係改善のためにできることをひとつずつ実践 していきましょう。
7-3. 調停委員の助言を活用する
調停委員は、どちらにも利害関係のない第三者として話を聞いて助言をしてくれます。夫婦だけだと思いつかなかった改善案を提案してくれることもあるので、「うまくいくはずがない」と頭から否定せずに、一度は調停委員の提案を実行できないか、実行したらどうなりそうかについて考えてみましょう 。
7-4. 調停後の夫婦関係も大切にする
相手との関係改善を焦るあまり、あるいは調停委員にいい顔をしようとして、無理のある約束をしてしまう人もいます。しかし、それでは一時的にはうまくいっても、最終的にはかえって関係が悪化してしまうことになりかねません。その関係改善案が調停後も長期間にわたって実践可能かも検討し、合意をした場合には、その合意内容を確実に実践しましょう 。
8. 円満調停で弁護士に依頼するメリット
円満調停で弁護士に依頼するメリットは以下の通りです。
【調停手続きを一任できる】
申立書の作成から、必要書類の収集・整理、裁判所への提出など、調停に必要な手続きを一任することができます。ただし、証拠など、自分で集めなければならないものもあります。
【事実関係を整理して伝えてくれる】
自分のことは、客観的に判断しているつもりでも、意外と偏った見方をしているものです。また、相手に事情を説明する時も、自分では論理的に話しているつもりでも、相手には正しく伝わっていないこともあります。弁護士に依頼すれば、事前に事実関係について整理してくれ、調停でも話が横道にそれそうな場合にフォローしてもらえます
。
以上のように弁護士に依頼するメリットを記載しましたが、こちらに弁護士が付くと相手が身構えてしまい、話がスムーズに進まなくなることがあるのも事実なので、その点もよく考えて弁護士に依頼するか検討しましょう。

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9. 円満調停にかかる費用
円満調停にかかる費用は大きくわけて、申立て費用と弁護士費用の2種類です。弁護士費用は必須ではありませんが、申立て費用は必須です。それぞれにかかる費用について説明します。
9-1. 申立て費用
申立て費用は、収入印紙1200円分と、連絡用の郵便切手に1000円程度かかるのみ です。郵便切手代は裁判所によって異なり、郵便切手の組み合わせも指定されているので、申立て予定の裁判所に問い合わせましょう。
9-2. 弁護士費用
弁護士に支払う費用は、大きく相談料、着手金、報酬金、実費に分かれます。以下では一般的な場合の説明をしますが、弁護報酬は、各弁護士によって様々ですので、実際に相談する弁護士にお尋ねください。
【相談料】
依頼前の相談料としてかかる費用です。30分あたり5000円(税込み5500円)の事務所が多いですが、初回相談は無料としている事務所もあります。
【着手金】
契約時に支払う費用です。円満調停の場合は、30万円(税込み33万円)としている事務所が多いようです。
【報酬金】
依頼された案件が解決した場合にいただくお金です。円満調停の場合は、30万円(税込み33万円)としている事務所が多いようです。
【実費】
調停申立て費用や、相手との連絡用の切手代、弁護士の交通費など、その手続きを進めるために必要な実費は、上記の弁護士の報酬とは別途で必要になります。
10. 円満調停に関するよくある質問
11. まとめ 夫婦関係改善には円満調停をうまく活用
円満調停とは、夫婦関係を改善するために行う、裁判所での話し合いのことです。家庭裁判所で調停委員に入ってもらいながら、お互いの主張や希望をすり合わせていきます。本人同士が話し合うのと違い、中立の立場にある調停委員を中間に挟んで話し合いをすることにより、建設的かつ冷静に意見交換ができます。
「夫婦関係を修復したいが、自分たちだけではどうにもならない。相談できるような人もいない 」といった状況であれば、円満調停を考えてみてはいかがでしょうか 。調停後すぐに関係が改善するわけではないにしても、少しずついい方向に向かっていく可能性があります。
(記事は2025年1月1日時点の情報に基づいています)