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1. DVとは?どのような行為がDVに当たる?
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2. DVは警察に相談できる?家庭内暴力への警察介入は可能?
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2-1. 警察はDVの相談を受け付けている
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2-2. 警察に対するDVの相談件数は?
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3. DV被害を警察に相談したらどうなる?
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3-1. 警察にDV相談をする際の流れ
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3-2. 警察にDV相談をする際の注意点
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4. DV防止法に基づく接近禁止命令等について
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4-1. DV防止法とは
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4-2. DV防止法に基づく被害者保護の措置|接近禁止命令等
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4-3. 接近禁止命令等の申立て方法
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5. DV被害から逃れるためのポイント
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5-1. すぐに警察などへ相談し、身の安全を確保する
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5-2. DVの証拠を確保する
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5-3. 配偶者と離れて生活する段取りを考える
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6. 警察以外に利用できるDV被害の相談先
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6-1. 配偶者暴力相談支援センター
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6-2. DV相談ナビ
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6-3. 弁護士
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7. 警察へのDV相談に関するよくある質問
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8. まとめ DV被害に遭ったら警察や弁護士に相談を
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1. DVとは?どのような行為がDVに当たる?
DV(ドメスティック・バイオレンス)とは、一般的に配偶者や恋人など親密な関係にある、またはあった人から振るわれる暴力という意味で使用されています。ここでいう「暴力」にはいろいろな形態があり、大きく分けると次の4つの類型があります。
身体に対する暴力 殴る、蹴る、髪を引っ張る、物を投げつける、刃物で脅すなど
精神的暴力 無視する、馬鹿にする、ののしる、人格を否定するような暴言を吐く、子どもに危害を加えると言って脅す、SNSで誹謗中傷する、交友関係や行動を細かく監視し自由を与えないなど
性的暴力(性的強要) 無理やり性的な行為におよぶ、希望していないのにポルノビデオやポルノ雑誌を見せる、避妊に協力しない、中絶を強要するなど
経済的暴力 生活費を渡さない、子どもにかかる費用を負担しない、お金を借りたまま返さない、パートナーに無理やり物を買わせるなど
これらの暴力が何種類か重なって起こることもあります。
2. DVは警察に相談できる?家庭内暴力への警察介入は可能?
DVが家庭内での出来事であることから、警察への相談や介入を求めてもよいか疑問に思う人もいるでしょう。DVに悩んでいる場合は、警察に相談したり、安全確保のために介入してもらったりすることは可能です。
2-1. 警察はDVの相談を受け付けている
「警察は民事不介入(警察が当事者間の法的な権利関係を裁定したり権利の実現に助力したりすることはできない)」といわれ、家庭内のことには立ち入らないイメージを持つ人もいます。しかし、DV被害は警察に相談できます。
配偶者の行為が暴行罪や傷害罪などの刑法に定められた罪に該当することもありますし、DV防止法(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律)には、警察が配偶者の暴力の制止、被害者の保護、その他の配偶者からの暴力による被害の発生を防止するために必要な措置を講ずるよう努めなければならないことが定められています。そのため警察はDV被害の相談を受けつけていますし、場合によっては介入して問題が再発しないように注意してくれることもあります。
2-2. 警察に対するDVの相談件数は?
警察庁が2024年3月に公表したデータによると、配偶者からの暴力事案の相談などの件数は、2023年で88,619件でした。前年度比で4,123件と増加傾向にあり、2001年のDV防止法施行後で最多となりました。
参考:令和5年におけるストーカー事案、配偶者からの暴力事案等、児童虐待事案等への対応状況について|警察庁
3. DV被害を警察に相談したらどうなる?
DV被害を警察に相談した場合、まずは被害者の心身の安全確保が必要と考えられるケースでは、シェルターや母子生活支援施設(母子寮)などの保護施設の紹介や、加害者の逮捕などの対応をしてもらえる可能性があります。
また、DV防止法に基づく保護命令(接近禁止命令・退去命令など)という手続きがあることや、その手続きについて弁護士に相談するよう促されることもあります。
警察からは各事案の状況や被害者の希望に応じて望ましいと考えられる選択肢が示されるようです。ただ、被害届を提出した場合には、通常の刑事事件として手続きが進んでいき加害者が逮捕されることもあるため、手続きに関して被害者の意見を確認することもあります。
これは、加害者の収入で家族が生活している家庭の場合は、逮捕により経済的な打撃を受ける可能性があり、被害者がそのような状況に陥ることを避けたいという希望を持っていることもあるためと考えられます。
3-1. 警察にDV相談をする際の流れ
警察にDV相談をする際の流れは、おおむね次のとおりです。
①警察署・交番などに相談
まずはDVに悩んでいることを最寄りの警察署や交番に足を運んで伝えます。簡単な聞き取りの後、署内のDV相談窓口を紹介してもらえるでしょう。
②警察のDV相談窓口で詳細を聞き取り
録音や録画などの証拠がある場合は、このときに見てもらうとよいでしょう。被害者の供述だけではなく客観的な証拠を見てもらうことで、被害の状況を正確に判断してもらえます。
③被害者の状況や希望を踏まえて措置を検討
被害者の身の安全を確保しなければならない場合や、子どもに対する暴力がある場合には、自治体の家庭相談・女性相談や児童相談所など、他の行政機関が関わることもあります。
3-2. 警察にDV相談をする際の注意点
警察に相談する際に注意すべきは、その後の生活を考えておくことです。配偶者が逮捕された場合の生活について、可能な限り事前に検討して対応を決めておくことが望ましいといえます。警察に相談することで刑事事件として取り扱われると、配偶者が逮捕される場合があります。これによって収入面で影響を受ける可能性もあるでしょう。
また、刑事事件に発展することで、配偶者に恨まれたり、報復的な嫌がらせをされたりすることもあります。そのため、遅くとも配偶者の身柄が解放されたときには、安全な距離をとれるような対策が必要です。
なお、警察に介入してもらうことで暴力が止むこともありますが、警察が関わったことをきっかけに夫婦関係が悪化して破綻が決定的になることも少なくありません。そのため、別居や離婚の問題に発展していくことも可能性として考えておく必要があります。
4. DV防止法に基づく接近禁止命令等について
DV防止法は配偶者などによる暴力の防止と、被害者の保護を目的とした法律です。2024年4月から改正法が施行され、直接的な暴力だけではなく、重篤な精神的被害なども接近禁止命令等の対象になりました。
4-1. DV防止法とは
DV防止法では、配偶者からの暴力に関する通報、相談、保護や被害者の方の自立支援の体制などが定められています。また、配偶者暴力相談支援センター(DV被害者支援のための拠点)や保護命令などについても定められています。なお、婚姻の届出をしている相手だけに限定されず、事実婚や同棲の相手も含まれます。
4-2. DV防止法に基づく被害者保護の措置|接近禁止命令等
保護命令は、被害者から裁判所に対して、被害者の身辺へのつきまといなど一定の行為を禁止する命令を求める手続きです。保護命令には接近禁止命令や退去命令など6つの類型があります。
被害者への | 被害者へのつきまとい、住居・勤務先付近の徘徊を禁止する命令 |
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被害者への | 面会の要求や行動監視の告知、著しく粗野乱暴な言動、無言電話、 |
被害者の同居の子への | 被害者と同居する未成年の子どもへのつきまといや、学校付近などの |
被害者の同居の子への | 行動監視の告知、著しく粗野乱暴な言動、無言電話、緊急時以外の |
被害者の親族等への | 被害者の親族などへのつきまといや、住居付近の徘徊を禁止する命令 |
退去等命令 | 被害者と共に生活の本拠としている住居からの退去および住居付近の 徘徊の禁止を命ずる命令 |
接近禁止命令等の要件と退去等命令の要件は以下のとおりです。
【接近禁止命令等の要件】
接近禁止命令等の要件は「配偶者からの身体的暴力または、自由や名誉、財産に対して害を加える旨を告知する脅迫を受けた人が、さらなる暴力により身体または精神に重大な危害を受ける恐れが大きいこと」と定められています。
自由に対する脅迫の例として、加害者の要求を受け入れるまで家から出さないと告げる、仕事を辞めさせると告げるなどがあります。また、名誉に対する脅迫の例として、性的な画像を無関係の第三者に流出させると告げる、悪評をSNSなどに記載して広く流布させると告げるなどがあります。
財産に対する脅迫の例としては、銀行のキャッシュカードや通帳を取り上げると告げる、生活費の支払いに必須のクレジットカードを止めると告げるなどの行為が挙げられます。精神的に重大な危害としては、うつ病、心的外傷後ストレス(PTSD)、適応障害などが考えられます。これらの症状が出ている場合は医師による診断書の提出を求められます。
【退去等命令の要件】
退去等命令の要件は「配偶者と同居している場合に身体に対する暴力や、生命に対する脅迫を受けた被害者が、さらなる暴力を受けることにより、身体や生命に重大な危害を受ける恐れが大きいとき」に認められます。
なお2025年6月以降、保護命令に違反した場合は2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金に処せられます。実際に違反した場合には逮捕勾留起訴される可能性があるため、心理的な強制力もあります。
4-3. 接近禁止命令等の申立て方法
接近禁止命令等の保護命令の申立ては、管轄の地方裁判所に申立書を提出して行います。
管轄裁判所とは申し立てられた事件を取り扱う裁判所で「相手方の住所・居所」「申立人の住所・居所」「暴力などが行われた地」のいずれかを管轄する地方裁判所、またはその支部を指します。
申立書には、発令してほしい保護命令の内容や相手方から受けた身体に対する暴力などの状況、さらなる暴力または脅迫によって身体や生命に重大な危害を受ける恐れが大きいと考える理由、警察への相談の事実などを記載します。なお、申立書の作成にあたっては配偶者暴力相談支援センターで援助を受けるほか、弁護士に依頼して作成してもらうこともできます。

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5. DV被害から逃れるためのポイント
DV被害を受けた(または受けている)場合には、できるだけ早期に安全な場所に身を置くことを検討すべきです。
5-1. すぐに警察などへ相談し、身の安全を確保する
DVの被害に遭ったら、一刻も早く自分の身を守ることが大切です。暴力は繰り返されることが少なくありません。被害を最小限にするためにも、迷うことなく市区町村の窓口や警察などへ相談すべきといえます。
身体に対する暴力やそれに類する心理的な攻撃は、それらを受けた本人の心身に重大な影響をおよぼします。暴力によって身体に傷や障害が残る場合もありますし、配偶者と距離を置いて安全な生活を確保してからも暴力を受けていたときの恐怖が忘れられず、情緒不安定になったり、PTSDを発症したりするなど、精神の健康を害する場合もあります。
また、子どもがいる家庭の場合には、親の暴力行為が心理的虐待に該当することがあります。また、配偶者からの暴力が子どもに向く可能性もあり、子ども自身の安全な生活を損ない、成長発達にも悪影響をおよぼすと考えられます。
5-2. DVの証拠を確保する
保護命令の申立てや離婚請求を行う際には、DVの証拠を確保しておくと役に立ちます。供述だけではなく客観的な資料がある方が、事実をより正確に理解でき必要な対応をしてもらいやすくなります。
証拠の例として、次のようなものがあります。
暴力を受けた際の録音や録画、写真など
医師の診断書
加害者からのメールやSNSのメッセージなど
(メッセージ自体がDVに当たる場合のほか、加害者がDVの事実を認めているものも含む)警察や女性相談など行政機関への相談の履歴
日記
DVの証拠は、その事実ができる限り客観的にわかるものだと保護命令や離婚手続きの際に有用な証拠となります。しかし、証拠の収集が難しい場合もあるため、行政機関への相談や日記などの形で供述や認識を記録しておくことが望ましいといえます。
5-3. 配偶者と離れて生活する段取りを考える
DVの被害から逃れたいと思っていても行動に移すのが難しい原因の一つに、DV被害を訴えた後の生活への不安が考えられます。そのような場合には、自治体の相談窓口にて配偶者と離れて生活する場合の具体的な援助について相談したり、婚姻費用について弁護士に相談したりすることで、DV被害から逃れるための目途がつく可能性があります。
6. 警察以外に利用できるDV被害の相談先
警察以外の相談先として、配偶者暴力相談支援センター、DV相談ナビ、弁護士などが考えられます。
6-1. 配偶者暴力相談支援センター
DV防止法で定められた配偶者暴力相談支援センターでは、配偶者による暴力の防止や被害者の保護などを目的に、次のことを行っています。
相談や相談機関の紹介
カウンセリング
被害者および同伴者の緊急時における安全の確保・一時保護
自立して生活することを促進するための情報提供・その他の援助
被害者を居住させ保護する施設の利用についての情報提供・その他の援助
保護命令制度の利用についての情報提供・その他の援助
男女共同参画局では、各都道府県の相談機関一覧を公開しています。相談する際は、該当の施設に問い合わせてください。
6-2. DV相談ナビ
DVに悩んでいるがどこに相談したらよいかわからないときは、DV相談ナビに電話をかけると、最寄りの相談機関(配偶者暴力相談支援センター)につながります。電話番号は「#8008」で全国共通です。
相談する際は「相談可能な時間が転送先となる相談窓口の相談受付時間内に限られる」「利用には通話料がかかる」「一部のIP電話などからは利用できない」など、いくつか注意点があります。一方、匿名で利用できる特徴もあるため、いきなり警察に相談するのは難しいという場合の相談先におすすめです。
6-3. 弁護士
DVを理由とした離婚を視野に入れている場合は、弁護士に相談・委任して今後の進行を考えながら対応していくのが望ましいです。
近年DVについての理解が広まりましたが、今でもDV被害者のなかには自身が受けている暴力がDVに当たるかどうかわからず、警察や弁護士に相談してもよいのか悩んでいる人も少なくありません。
弁護士に相談することで、家庭内で起こっている問題がDVなのかどうか確認できますし、今後取りうる手続きについて知ることができます。
また、離婚事件だけではなく、保護命令の申し立てについてもサポートを受けられるので、配偶者との問題を解決したいが何から始めればよいかわからないというときには、弁護士に法律相談をしてみるのがよいでしょう。
7. 警察へのDV相談に関するよくある質問
交番でもDVについて相談できます。危険が迫っている場合には心身の安全を確保することを最優先にして、早めに警察に相談するのがよいでしょう。
実際に、配偶者の言動に危機を感じていることを最寄りの交番に相談しに行ったことを契機に、自治体の配偶者暴力相談支援センターにつながり、シェルター入居をはじめとした保護につながったケースがあります。
悪質なモラハラは、配偶者からの身体に対する暴力に準ずる「心身に有害な影響をおよぼす言動」としてDV防止法による保護の対象になり得ます。そのため、警察への相談も可能です。たとえ身体に対する直接の暴力がなかったとしても、心身に重大な影響がおよんでいる場合には、一度警察に相談することをおすすめします。
また、警察の対応が難しい場合や、警察が十分に対応してくれていないと思われる場合には、弁護士に相談してみるのもよいでしょう。他の対応を検討することで解決につながる可能性もあります。
DVの証拠がない場合は、弁護士に相談して、証拠収集の具体的な方法や証拠収集が難しい場合の手続きについてアドバイスをもらう方法があります。家庭内で不意に起こる暴力については、証拠を収集することが難しいでしょう。そのため、客観的な証拠の収集が難しいことを前提に、手続きの選択や進行を検討せざるを得ないこともあります。
また、自身では証拠がないと思っている場合でも、DVの事実を証明できる資料が実は存在していることもあります。いずれにしても、まずは相談してみるのがよいでしょう。
加害者に対して処罰を求めているのに警察が対応してくれない場合には、弁護士に相談して見解や対応策について助言を得る方法もあります。
接近禁止や自宅からの配偶者の退去などを希望している場合には、保護命令など他の手続きで実現することもあります。
8. まとめ DV被害に遭ったら警察や弁護士に相談を
DV被害に遭った場合には、速やかに心身の安全を確保することが望ましいです。ただし、すぐに対応を求めない場合にも、今後何かあった際に取りうる方法や具体的な流れを知り、対応策を検討しておくことが大切です。再び問題が起きた場合や看過できなくなった場合に、躊躇せず動けるようになります。
DV被害に遭ったとき、DVではないかと悩んでいるときには、警察に相談して即時の対応を求めたり、弁護士に相談して今後取りうる法的手段について助言を得たりしておくことをおすすめします。
(記事は2025年9月1日時点の情報に基づいています)