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DV加害者の特徴とは? どこからがDV? 暴力から逃れる方法

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DV加害者の特徴についての図解
DV加害者はパートナー下位者として扱い、支配して搾取するようになります
DV(ドメスティックバイオレンス)とは、親密な関係にある人から振るわれる暴力のことです。あなたが配偶者からのDVに悩んでいるのであれば、DVとは何であるかを知ることで自身の置かれた状況を理解でき、その後どう対応すべきかも見えてきます。 DVとは何か、DV被害を受けている人はどう対応すべきかを弁護士が解説します。
目 次
  • 1. DV加害者の特徴 どこからがDV?
  • 1-1. DVと夫婦喧嘩の違い
  • 1-2. 内閣府の調査では4人に1人がDV被害に
  • 2. DVで用いられる暴力の種類
  • 2-1. 身体的暴力
  • 2-2. 精神的暴力
  • 2-3. 性的暴力
  • 2-4. 経済的暴力
  • 2-5. 社会的暴力
  • 2-6. 子どもを利用した暴力
  • 3. DV加害者の特徴 よく見られる行動8選
  • 3-1. 外面がよい
  • 3-2. 相手によって立場をかえる
  • 3-3. 差別的な言動が多い
  • 3-4. 被害者から反抗されると激怒する
  • 3-5. 口が達者であるかのように見える
  • 3-6. 真顔で嘘をつく
  • 3-7. 過剰に優しい・過剰に甘える
  • 3-8. 被害者が逃げられなくなってから暴力を振るい始める
  • 4. DV加害者の心理とDVをする原因
  • 5. DV加害者が配偶者や子どもにおよぼす影響
  • 6. 配偶者から暴力を受けたら……逃れるための8つの対処法
  • 6-1. 別居と離婚をする決意を固める
  • 6-2. 可能な範囲で証拠を確保する
  • 6-3. 仕事をしてお金を稼ぐ
  • 6-4. 婚姻費用を請求する
  • 6-5. 不倫をするのは絶対ダメ
  • 6-6. 警察に相談する
  • 6-7. 必要に応じて保護命令や支援措置を活用する
  • 6-8. 弁護士に相談・依頼をする
  • 7. DVについて無料相談できる窓口一覧
  • 8. DVの特徴に関してよくある質問
  • 9. まとめ DVは怖いが逃げられる
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1. DV加害者の特徴 どこからがDV?

DVとは実は社会学から生まれた用語であるため、法律上の厳格な定義はありません。ただし、一般的には現在・過去に限らず夫婦や交際相手といった親密な関係にある人の間で、パートナーをさまざまな力を用いて支配することを意味します。

暴力を振るうこと自体がDVなのではなく、暴力という手段を用いて相手を支配し、搾取し、そしてそれ自体に優越感・万能感を感じることこそがDVの本質です。

1-1. DVと夫婦喧嘩の違い

「対等にお互いの気持ちを言い合っているうちに夫婦喧嘩になった」「それまでは夫婦円満だった相手の不貞が発覚し、つい手が出てしまった」「配偶者が子どもに不適切な行動をとっていたので思わず大きな声を出し注意した」といったケースは、支配に向けて使われる暴力でもなければ上下関係も存在しないため、DVとは言い難いです。

もっとも、支配に向けられていなくとも暴力はやはり良くないので、DVに該当しない暴力であっても、離婚や慰謝料の原因になるケースはあります。

1-2. 内閣府の調査では4人に1人がDV被害に

内閣府の調査では、女性の約4人に1人、男性の約5人に1人は、配偶者から暴力を受けたことがあり、女性の約10人に1人、男性の約25人に1人は何度も被害を受けているとしています。

もっとも、内閣府の調査では「支配や搾取があったかどうか」には着目していないようなので、この調査ではDVに該当しない暴力が含まれていたり、反対にこの調査からは漏れているDVがあったりする可能性もあります。

とはいえ、少なくない人が配偶者から暴力を受けていること、何度も暴力を受けているのは男性より女性の方が多いということなどが、内閣府の調査から見て取れます。

2. DVで用いられる暴力の種類

パートナーを支配するためのさまざまな暴力は、6つのパターンに分けられます。それぞれの特徴を知ることで、自身がパートナーにされている暴力的行為はDVに該当するのではないかと気付けるかもしれません。

2-1. 身体的暴力

殴る、蹴る、髪の毛を引っ張る、物を投げつけるといった、直接的な暴行を用いてパートナーを支配しようとするのは、身体的暴力によるDVです。パートナーを支配するために身体的暴力を用いることがDVに該当するというのは非常にわかりやすいでしょう。

少し前まではDVと言えば身体的暴力と考えられており、反対に身体的暴力でなければDVではないのだと誤解している人も少なくありませんでした。しかし、身体的暴力以外もさまざまな暴力がDVには用いられます。

2-2. 精神的暴力

怒鳴る、ののしる、人格否定をする、執拗に言葉で責め立てる、物に当たる、ことさら大きな物音を立てる、睨みつける、ヒステリックに騒ぎ立てるなど、直接的な暴行は用いないものの心理的に威圧をしてパートナーを支配しようとするのは、精神的暴力によるDVです。

わざと泣いたり自虐をしたり、自殺をほのめかしたりして罪悪感をあおってパートナーをコントロールしようとするのも、精神的暴力の一種といってよいでしょう。

精神的暴力による支配はDVの中でも本質的な行為であるといえます。身体的暴力や経済的暴力を伴わないDVはあっても、精神的暴力を伴わないDVは存在しません。身体的暴力を振るう場合は当然に精神的暴力を伴います。また、経済的暴力や社会的暴力もいきなり始めるのではなく、精神的暴力で抵抗しにくくしてから支配をより強めるために行われるからです。

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2-3. 性的暴力

嫌がっているのに性行為を強要する、避妊を求められても拒否するなどといったことを性的暴力といいます。性的暴力はパートナーを支配するために使われるというよりは、他の暴力でパートナーを支配した後の搾取として使われる場合が多いです。

また、身体的暴力や精神的暴力でパートナーを痛めつけた後で、仲直りのつもりで性行為を要求し、被害者は拒否する気力すらなくなっているということも珍しくありません。

2-4. 経済的暴力

生活費を渡さない、働いてお金を稼ぐことを許さない、働いて稼いだお金を取り上げるといった形でパートナーの経済的自立を妨げて支配を強めたり、家庭の財産をすべて搾取したりするのは、経済的暴力によるDVです。事細かに家計支出を報告させて自分が必要と認めた支出でなければ生活費は渡さないとし、支出にさまざまな難癖をつけて客観的に必要な支出も認めないというパターンもあります。

離婚に向けて動くためには何かとお金が必要なので、お金を使わせないということはパートナーを支配する手段として強力です。また、自分が家庭内のすべてのお金を搾取することはDV加害者にとって大きな利益です。

経済的暴力は、配偶者への支配と搾取を同時に可能にする、加害者にとって一石二鳥のDVです。

2-5. 社会的暴力

親や親族または友人や職場の同僚との連絡や交流を禁止する、メールやSNSの中身をチェックする、GPSをつけて行動を監視するなど、外部とのつながりを絶って社会的に孤立させることは、社会的暴力によるDVです。

社会的暴力は巧妙で強力なDVです。社会的に孤立すると、DV被害を相談する先がなくなるのはもちろんのこと、加害者の主張する勝手な理屈が正しく自身の考えが間違っているかのように洗脳されていきます。

2-6. 子どもを利用した暴力

子どもを取り上げると脅(おど)す、子どもにパートナーの悪口を吹き込む、別居後に面会交流を利用して生活に干渉してくるなど、子どもを利用した暴力によるDVもあります。

子どもを利用した暴力には、加害者自身が本当に子どもに執着しているケースや、配偶者を支配するための手段として子どもを利用しているケース、またその両方のケースなどがあります。

なお、子連れ別居はDVであると主張する人がまれにいます。もっとも、通常の子連れ別居は、配偶者を支配するのではなく距離を取る行為であるため、DVと評価するのは無理があるでしょう。ただし、最終的に離婚をするつもりはなく、配偶者に精神的苦痛を与えて支配につなげることを目的とした子連れ別居は、子どもを利用した暴力によるDVと評価できます

3. DV加害者の特徴 よく見られる行動8選

DV加害者の考え方には以下のような特徴があります。

3-1. 外面がよい

DV加害者は、家庭の外では人格者であるように振舞っていることが多い傾向があります。

DV加害者による暴力は、相手を支配し搾取するための合理的な手段として選択されます。家庭内の密室において暴力は支配と搾取をするために有効ですが、家庭の外で暴力的に振舞うことは社会的にマイナスになると知っているためです。

3-2. 相手によって立場をかえる

DV加害者は人間関係を対等なものと考えず、上下関係で考えます。そのため、職場の上司や社会的地位の高い人など、自身より立場が上と考えた相手に対してはへりくだって接することが多いです。一方、職場の部下、社会的地位が低い人、飲食店の店員など、自分の方が立場が上だと考えた相手に対しては高圧的な態度で接することが多いです。

3-3. 差別的な言動が多い

DV加害者は上下関係でものを考えるせいか、差別的な言動が多いです。男女差別、外国人差別、職業差別、性的マイノリティへの差別など、個人的な価値観のもと差別的な言動をするようになります。

また、男女差別には反対するけれども性的マイノリティへの差別はする、外国人差別には反対するけれども職業差別はするといった具合に、ある分野の差別には反対しているために、本当は差別的な人間であるにもかかわらず、自己評価では差別に厳しいと思っている人も少なくありません。

3-4. 被害者から反抗されると激怒する

DV加害者は被害者であるパートナーを支配することで全能感を得ています。そのためなのか、パートナーの反抗により全能感を阻害されると激怒し、まるで自分が被害者であるかのように振る舞います。加害者と被害者が逆転したかのようなDV加害者の言動にパートナーは混乱させられ、自分が悪かったのかと錯覚してしまいます。

3-5. 口が達者であるかのように見える

DV加害者の多くは一見すると口が達者です。もっとも、冷静にDV加害者の言っていることを整理してまとめると、整合性がまったく取れておらず無茶苦茶な場合が多いです。DV加害者は、瞬発的に被害者を責める発言をまくしたてることで、被害者を怯ませてやり込めるのが得意です。このような雰囲気の中では被害者は冷静に考えることができず、よくよく考えれば無茶苦茶なことを言われていても、その場でやり込められてしまいます。

そのため、弁護士に相談に訪れたDV被害者はよく「夫(妻)は頭がよく口が達者なのですが大丈夫でしょうか」と心配を口にします。しかし、弁護士による交渉や調停・訴訟では、DV加害者の矢継ぎ早な屁理屈はまったく通用しません

3-6. 真顔で嘘をつく

DV加害者の多くは平然と嘘をつきます。そもそも嘘をつくことに抵抗感がないうえ、嘘をついているうちに記憶が変容して、自分のついていた嘘を本気で信じ込むようになります。

DV加害者が真顔で堂々と事実と異なることを言うため、記憶とまったく違うことを言われたパートナーは、自分の頭がおかしくなってしまったのではないかと混乱してしまいます。

また、DV加害者は自分の依頼している弁護士に対しても堂々と嘘をつくため、後に被害者側が調停や裁判で提出する客観的証拠とまったく整合せず、DV加害者の依頼を受けた弁護士が苦労をするということもよくあります。

3-7. 過剰に優しい・過剰に甘える

DV加害者はパートナーを支配し搾取するために暴力を振るいます。ですが、暴力を振るうだけではパートナーが逃げ出してしまいます。そのため、パートナーに対して暴力を振るうだけではなく、暴力を振るった後に過剰に優しく接して、パートナーが逃げにくくします。暴力が鞭なら優しさは飴です。女性のDV加害者の場合、過剰に甘えることでパートナーが逃げにくくなるように仕向ける人も多いです。

3-8. 被害者が逃げられなくなってから暴力を振るい始める

DV加害者はパートナーを支配し搾取するために暴力を振るいます。ですが、まだ深い関係になっていない状態で暴力を振るうと、支配をする前に逃げられてしまいます。そのため、多くのDV加害者はパートナーと深い関係になるまでは暴力は振るわず、むしろ過剰な優しさや過剰な甘えで関係を強化します

関係が深まり、同棲や結婚、妊娠出産、出産や育児のための退職または短時間労働への転職などを経て、そう簡単には別れられなくなってから暴力を振るい始めるDV加害者は少なくありません。

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4. DV加害者の心理とDVをする原因

DVは遺伝でもなければ病原体や有害物質による疾患でもなく、考え方の問題です。生まれ育った家庭、学校、部活動、職場など、人格を形成していく過程のどこかで人と人を対等な関係ではなく上下関係で考える習慣が身についてしまった人がDVを行うようになります

DV加害者は人間関係を上下関係によって捉え、上位者は下位者に対して何をしても良く、下位者は上位者から何をされても耐えなければならないと考えます。そして、最も身近な存在であるパートナーを自分の下位者として扱い、支配して搾取するようになります。

人を支配し搾取しようとする行為は無意識であることも多いのですが、合理的な選択として行っているので、パートナー以外の人には暴力を振るわず外面が良いこともしばしばあります。ましてや、職場の上司などの自分よりも上位にあると認識している人に対しては、絶対に暴力的な態度を示すことはありません。

そして、下位者に対して特権意識を持っているため、下位者とみなした相手には平然と嘘をつき、整合性の取れないことも平気で言います。下位者とみなした相手が自分に反抗すると屈辱を感じ、今まで自分がどれだけ相手に対して加害していたかを棚に上げて、あたかも自分が被害者であるような感情を強く持つようになります。

5. DV加害者が配偶者や子どもにおよぼす影響

DV加害者から暴力を受け続けると、配偶者は加害者のことを恐れ、顔色を伺ったりちょっとした言動で動悸がするようになったりします。そして、もともとは気の強い人であったとしても、日々執拗な暴力を受け続けると、次第に抵抗するのは無駄だと考えるようになってしまう、いわゆる学習的無気力の状態に陥ってしまいます

DV加害者の支配から抜け出すのは大きな決断であり、決断のためにはエネルギーが必要です。決断のためのエネルギーがないと、ますます支配から抜け出せなくなります。場合によっては重度のうつ状態に陥ったりPTSDを発症したりして、回復が難しくなってしまいます

そして、子どもの面前でDVが行われた場合、暴力が直接子どもに向いていなくとも子どもの心が深く傷つけられ、PTSDを発症することがあります。

また、DVは考え方の問題なので、DV加害者の親を見て育った子どもは、支配・被支配の関係を夫婦のロールモデルであると考えるようになってしまう危険性があります。DV加害者のように暴力的に振舞ったり、反対にDV被害者のように暴力を振るう相手には従わないといけないと考えるようになったり、DV加害者の資質を持つ異性に惹かれるようになったりする可能性があります。

6. 配偶者から暴力を受けたら……逃れるための8つの対処法

DVは被害者にとっても子どもにとっても深刻な影響を与えるため、何とかして加害者から逃れるべきです。しかし多くの人は、本当に加害者から逃れることができるのか、逃れようとすると加害者が逆上してより恐ろしい目にあうのではないか、などと不安になってしまうでしょう。ここでは、DV加害者から逃げるための具体的な方法を紹介します。

6-1. 別居と離婚をする決意を固める

DV加害者と同居しながら話し合いで離婚を進めるのは、かなり難しいといえます。被害者がDV加害者からの支配を逃れるべく離婚をしようとすると、DV加害者は激怒して被害者を徹底的に責め立てたり、子どもだけ残して被害者を家から追い出そうとしたりします。そこまでいかなくとも、何かと難癖をつけて離婚を拒否することがほとんどです。そして、同居しながら離婚調停や離婚訴訟を進めようとすると、裁判外で圧力をかけて離婚を諦めさせようとしてきます。

そのため、離婚を考えるならばまずは別居を選択しましょう。別居をして調停や訴訟で離婚を求めていけば、たとえ時間がかかっても3~4年の別居期間の経過により婚姻の破綻が認定され、離婚が成立する可能性が極めて高いです。

民法第752条は夫婦の同居義務を定めていますが、これに基づいて同居の強制をすることはできないという判例が戦前に大審院(今でいう最高裁判所のような存在)で出ており、その判例は今でも有効です。つまり、別居をしたときに法律によって無理矢理同居を再開させられる危険はないわけです。

なお、別居をする際にDV加害者の承諾なく子どもを連れて行ってよいか、DV加害者から子の引渡し審判を申し立てられても勝てるかという問題ですが、子どもが小学校高学年以上の場合は、本人の意思が尊重されます。低学年以下の場合は、今まで主に子どもの世話をしていた側が子連れ別居をするのは許容され、そうではない側が子連れ別居すると子どもを相手のもとに戻すよう求める審判が出るケースが多くあります。

また、DV加害者に対して別居を宣言したり、目の前で家を出ようとしたりすると、激しい攻撃を受けたり、幼い子どもを残して家から追い出そうとしてきたりする危険があります。DV加害者に知られないように別居の準備をし、留守中に家を出るのが一番です。

別居したうえで法的手続きを用いて離婚を成立させるには、勇気も時間もお金も必要です。それらを費やすことになろうと、何としてでも今の状況から脱出するという強い決意を持つことが、何よりも必要です。

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6-2. 可能な範囲で証拠を確保する

DV加害者との離婚において、証拠は必須ではありませんがあった方が望ましいです。可能な範囲で証拠を確保しましょう。

DVは家庭内の密室で行われるものであり、そもそも証拠を確保することが難しいです。精神的暴力は細かな出来事の積み重ねであることが多く、決定的な証拠は揃えにくいでしょう。証拠を確保している事実がDV加害者にばれたら、どのような報復を受けるかわかりません。また、性的暴力の証拠を取ったり、それを第三者に見せたりするわけにはなかなかいかないでしょう。

しかし、離婚を進めていくうえでは、まったく証拠がないよりは少しでも証拠があった方が気持ちも楽になるものです。最近では録音機器が小型化しているので、DV加害者の暴言を録音しやすいこともあるでしょう。身体的暴力を振るわれた場合は、けがを負った部分をスマートフォンのカメラで写真を撮っておくのもよいですし、医療機関で受診をすれば後に診断書を発行してもらうこともできます。LINEなどのメッセージアプリに暴言などが記録されている場合は、それを消してしまわずに残しておきましょう

また、DV加害者が不貞をしている場合は、本当の離婚理由はDVであっても不貞を理由として離婚を請求した方がスムーズに進みます。DV加害者が不貞をしている場合は、不貞の証拠の確保に努めましょう。

6-3. 仕事をしてお金を稼ぐ

DV加害者と離婚するうえでもっとも重要なのは、絶対に離婚をするという強い決意を持つことです。そして、その決意を支えるのが経済力です。

しかし、自身に経済力がなく生活をDV加害者の稼ぎに依存していると、別居をして離婚するという決断がなかなかできません。そのため、自分自身が仕事をして経済的に自立することが極めて重要です。

現在仕事をしている人は、なるべく仕事を辞めないようにしてください。女性で出産や育児のために今までのように仕事ができなくなった人も、仕事を辞めるのではなく産前産後休業や育児休業を使ったり時短勤務をしたりして、可能な限り今の職場とのつながりを持ち続けてください。すでに仕事を辞めている人は新しい仕事を始めるようにしましょう。

経済的DV・社会的DVを受けて仕事ができない人は、別居後に仕事を始める準備をしましょう。専業主婦・主夫の期間が長くすぐに良い仕事が見つからないという人は、あまり条件ばかりに縛られず、まずは仕事を始めてからステップアップをしていきましょう。

6-4. 婚姻費用を請求する

すでに別居している、または家庭内別居の状態である場合、DV加害者の方が被害者よりも高収入であれば、婚姻費用を請求することが有効です。

離婚してDVから逃れたいのであり、お金なんかいらないと思う被害者も少なくないでしょう。

しかし、「婚姻費用の支払い義務は離婚をしない限りずっと発生し続ける」という性質を利用することで、離婚しない限りは婚姻費用の負担がかかり続けるので早く離婚に応じたらどうかと加害者に促すことが可能となります。また、離婚を成立させる手段とは別に、DV絡みの離婚を戦い続けていくうえで、経済的な下支えとしても婚姻費用の請求は有効です。

もっとも、DV加害者よりも被害者の方が高収入で、被害者が婚姻費用を支払わなければならない場合は、DV加害者による離婚拒否はより強固なものとなるでしょう。この場合は婚姻費用を支払いながら離婚を求めていくことになるでしょう。

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6-5. 不倫をするのは絶対ダメ

DV加害者からの暴力に苦しむ被害者が一時的な癒しを求めて不倫に走ってしまうことがしばしばあります。

しかし、不倫をしていると有責配偶者として扱われ、離婚請求のハードルが大幅に上がってしまいます。最高裁判例によると、相当長期(だいたい7年以上)の別居があり、かつ相手方に監護養育している未成年の子どもがいるなら、その子が成人するまでは離婚できません。また、婚姻費用についても、子どもを監護している場合は子どもの扶養部分(養育費相当額)のみしか請求できず、監護していないのであればまったく請求できなくなってしまいます。

DV被害者が不倫をしてそれが加害者に発覚すると、離婚を進めることが非常に困難になります。今現在、好意を抱いている異性がいたとしても、離婚が成立するまでは深い関係になるのは控えましょう。また、性風俗店の利用も裁判上は不倫と同視される場合が多いため控えてください。

すでに不倫をしてしまい、かつそれがDV加害者に発覚してしまっている場合は、離婚のための道のりが相当困難になることを覚悟してください。

6-6. 警察に相談する

別居をしてもDV加害者が転居先に押し掛けてくる危険がある場合は、事前に転居先を管轄する警察署の生活安全課に相談しておきましょう。

特に危険性が高い場合は「110番緊急通報登録システム」を活用すると、通報時に詳しい事情の説明がなくともすぐに警察が駆けつけてくれるようになります。

DV加害者が過去に身体的暴力を振るっていた場合や、別居後も加害行為におよぶ危険がある場合は、あらかじめ警察に相談しましょう。

6-7. 必要に応じて保護命令や支援措置を活用する

DV加害者からの身体的暴力や財産または名誉への加害行為が過去にあり、別居後もそれらが継続する危険がある場合は、DV防止法に基づいて接近禁止命令や退去命令といった保護命令の発令を申し立てることで、安全を確保できます。

なお、2024年4月1日に改正DV保護法が施行され保護命令の対象となる暴力が少し拡大したのですが、対象となったのはあくまで財産や名誉に関する加害に対する保護命令です。大声を出して怒鳴ったり執拗に責め立てたりするといった精神的暴力が保護命令の対象になったわけではない点は注意が必要です。

また、DV加害者に転居先を知られたくない場合は、住民票を移動する際に役所に支援措置を申し出て、住民票上の住所を知られないようにするとよいでしょう。

6-8. 弁護士に相談・依頼をする

DVや離婚問題に悩んでいる場合は、少なくとも一度は弁護士に相談するのがよいでしょう。

離婚に向けてなかなか踏み出せない理由の一つに、いざ離婚に向けて動き出したときにどのように進んでいくのか先行きがわからず、不安になるということが挙げられます。その点については、弁護士に相談することで、自分が離婚を求めるとどのように進んでいくかの見通しがある程度はわかるようになります

そして、DV加害者は自分勝手な理屈を主張するので、話し合いだけでの解決が困難です。調停や裁判の場に立たせ、いざというときは法律に基づいてこちらの権利を強制的に実現できるという状況を作り上げることで、ようやく対等な話し合いができます。自身で調停を申し立てると、ある程度の話し合いはできますが、決裂したときにどうすればよいか困ってしまう可能性があります。

また、別居をして調停を申し立てても、DV加害者が直接押しかけてきたり電話をかけてきたりして話をしろと言ってくるかもしれません。婚姻関係が続いている間はさまざまな事務連絡をDV加害者と取る必要があります。そのような場合も弁護士に依頼をすると、対応窓口としても引き受けてくれるので、安心できるでしょう

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7. DVについて無料相談できる窓口一覧

DVについて無料相談できる窓口がいくつかあります。

  • 全国各地の弁護士会

  • 法テラス

  • 配偶者暴力相談支援センター

  • 女性相談支援センター

  • 男女共同参画センター

  • DV相談+

  • 警察

なお、配偶者暴力相談支援センターや男女共同参画センターは、都道府県などにより名称が異なる場合があるので、居住地の自治体で確認しましょう。

8. DVの特徴に関してよくある質問

Q. DVは治せる?

DVは考え方の問題なので、考え方を変えることでDVは治るといえば治ります。もっとも、長い年月をかけて形成された人格を変えるというのはそう簡単ではありません。

たとえ精神科医の治療プログラムやカウンセリングを受けるよう促したところで、本人が変わろうと思って真摯な気持ちで受けなければ、まったく意味はありません。配偶者や第三者に求められて嫌々治療プログラムやカウンセリングを受けたDV加害者が、その内容を否定したり、曲解して自分のやっていたことはDVに該当しないんだと開き直ったり、むしろ自分こそがDV被害者なんだと思い込んだりすることも珍しくありません。

最近ではSNSにより被害者から逃げられたDV加害者同士がつながって同調し合うエコーチェンバー現象が起きることで、よりDV的な思考を強めていく傾向にあります。

DV加害者本人が今のままではいけないと真剣に考え直さない限り、DVは治りません。そして、被害者や第三者がDV加害者本人の考えを無理矢理変えることはできないのです。

Q. 大声で怒鳴るのはDV?

大声で怒鳴ることは精神的暴力に該当する場合があります。ただ、配偶者を支配するための手段として日々大声を出して怒鳴っているのか、それとも日頃は配偶者を支配しようとしているわけではなく、どうしても納得できないときについ大きな声が出てしまったことが過去に1~2度あっただけなのかで、意味がまったく変わってきます。

DVは行為ではなく関係性です。1回の言動がDVに該当するか否かを判断することに意味はなく、日々続く婚姻生活の中でどのような言動をしているのか、どのような関係性が構築されているかの方がずっと重要です。

9. まとめ DVは怖いが逃げられる

DV加害者に支配され搾取される生活は非常に苦しいものであり、本人にとっても子どもにとっても悪影響が大きいでしょう。しかし、DVから絶対に逃げ出すという強い決意を持って正しい行動を選択すれば、いつかは必ずDV加害者と離婚できます

DV加害者と離婚するという強い決意を持ち、その決意を持ち続けるための経済的安定を確保し、正しい法的知識と経験を持つ専門家とつながり、勇気をもって一歩を踏み出してください。

(記事は2025年6月1日時点の情報に基づいています)

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