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1. 60代で離婚したいと考える理由
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1-1. 定年で夫婦で過ごす時間が増えてストレス
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1-2. 子どもが自立した
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1-3. 離婚に丁度いいタイミング
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1-4. 元気なうちに新しい人生をスタートさせたい
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1-5. 配偶者や義理の親の介護をしたくない
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2. 60代で離婚するリスク
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2-1. 孤独感・喪失感
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2-2. 生活苦に陥る
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2-3. 介護で頼れる人がいない
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2-4. 配偶者の財産を相続できない
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3. 60代の離婚で生じるリスクを回避する方法
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3-1. 離婚でもらえるお金を確認しておく
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3-2. 離婚後の生活費をシミュレーションする
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3-3. 仕事を探す
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3-4. 生きがいや頼れる人を見つける
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3-5. 人とのつながりを大切にする
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4. 60代の離婚でもらえるお金
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4-1. 財産分与
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4-2. 年金
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4-3. 不法行為があれば慰謝料
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5. 60代の離婚でよくある質問
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6. まとめ 60代の離婚で後悔しないためにも離婚前の事前準備を整えよう
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1. 60代で離婚したいと考える理由
60代は、生活環境や家族の状況の変化に伴い、自身の気持ちが変化する時期でもあります。そのため、以下のような理由で離婚を検討する人も少なくありません。
定年で夫婦で過ごす時間が増えてストレス
子どもが自立した
離婚に丁度いいタイミング
元気なうちに新しい人生をスタートさせたい
配偶者や義理の親の介護をしたくない
以下では、60代で離婚をしたいと考える理由をいくつか紹介します。
1-1. 定年で夫婦で過ごす時間が増えてストレス
夫が定年を迎えると、夫婦で一緒に過ごす時間が増えます。その結果、それまで見過ごしてきた性格や価値観の違いを一層感じるようになり、ストレスを覚えることは少なくありません。夫の仕事が忙しく、夫婦の生活の時間帯が限られていた頃は耐えられていたことも、常に顔を合わせるようになると不満が蓄積し、離婚を考えるきっかけになります。
1-2. 子どもが自立した
60代で離婚を考える理由の一つが、子どもの自立です。子どもが社会人となり親元を離れることで、離婚による子どもへの影響を心配する必要がなくなります。また、子どもにかかる費用も少なくなるため、経済的な負担が軽くなり、離婚を決断しやすくなるケースがあります。
1-3. 離婚に丁度いいタイミング
子どもの自立や定年退職をきっかけに生活が大きく変化する60代は、夫婦のあり方も変化する区切りの時期でもあります。豊かな老後を共に築いていくこともできますが、中には「今がちょうどよいタイミング」だと感じ、離婚を決断することもあります。
子どもの自立や定年を迎えると、生活パターンも変わります。夫婦のあり方が変わり、離婚に丁度良いタイミングだからということで、離婚したいと思うようになる人もいます。
1-4. 元気なうちに新しい人生をスタートさせたい
厚生労働省の「令和2年版厚生労働白書-令和時代の社会保障と働き方を考える-」によると2019年の平均寿命は男性は81歳、女性が87歳でした。人生100年時代とも呼ばれており、60代はまだまだ元気に活動できる年代です。そのため、「残りの人生を自分らしく自由に生きたい」と考え、元気なうちに第二の人生をスタートさせたいと離婚を選択する人もいます。
1-5. 配偶者や義理の親の介護をしたくない
配偶者との関係が良好でない場合、配偶者やその親の介護に直面した際に「介護をしたくない」と考える人もいます。長年の不満に加えて、介護という現実がのしかかることで、離婚を選択することもあるようです。
2. 60代で離婚するリスク
60代は元気に活躍できる年代であるため、離婚して第二の人生をスタートさせたいと思う人もいるでしょう。離婚すれば、配偶者に縛られない自由で気ままな生活が送れます。しかし、その反面、以下のようなリスクもあるため、注意が必要です。
2-1. 孤独感・喪失感
60代で離婚をする大きなデメリットは、長年連れ添った配偶者と離れることで、喪失感や孤独感を覚えることです。子どもが独立して遠方に住んでいる場合は、なかなか会うこともできません。交友関係が狭い場合は、一人で過ごす時間が増えるため、寂しさを強く感じたり、精神的な支えを失ったりすることがあります。
2-2. 生活苦に陥る
老後の年金は、夫婦二人で生活することを前提に設計されているため、60代で離婚をすると、配偶者の年金をあてにはできません。さらに、離婚時の財産分与が少ないと、離婚後に生活苦に陥ることもあります。
財産分与や年金分割だけで十分な生活費を確保できないとなると、働くことも検討せざるを得ません。住まいや医療費など、老後にかかる費用が多いため、経済面の見通しを立てておくことが大切です。
2-3. 介護で頼れる人がいない
60代の離婚で切り離せないのが介護の問題です。万が一体調を崩したり、介護が必要となったりした場合に頼れる人がいないのは大きな不安となります。子どもがいない、あるいは離れて暮らしている場合や、友人などに頼れない場合は、自分で健康管理を行い、介護施設の利用や行政支援を検討する必要があります。
2-4. 配偶者の財産を相続できない
離婚をすると、婚姻関係が解消されるため、配偶者ではなくなり、配偶者の財産を相続する権利も失います。一方で、子どもがいる場合、子どもには相続権があります。
3. 60代の離婚で生じるリスクを回避する方法
60代の離婚で生じるリスクを回避するには、以下のような離婚前の準備や心構えが大切です。
離婚でもらえるお金を確認しておく
離婚後の生活費をシミュレーションする
仕事を探す
生きがいや頼れる人を見つける
人とのつながりを大切にする
こうした離婚前の準備を整えておくことで、離婚後のリスクや不安を軽減できる可能性があります。以下で詳しく解説します。
3-1. 離婚でもらえるお金を確認しておく
60代の離婚で不安なのは、離婚後の生活費です。老後の生活が不安にならないよう、離婚時にもらえるお金はしっかり確認しておくとよいでしょう。財産分与では、夫婦の共有財産をしっかり把握し、漏れなく請求することが重要です。また、婚姻期間が長く財産が多い場合は、夫婦で揉める可能性があるため、弁護士に相談しながら進めると安心です。
3-2. 離婚後の生活費をシミュレーションする
離婚後の生活費を試算しておくことで、金銭的なリスクを回避することにつながります。「令和5年度の家計調査年報」では、65歳以上の単身世帯1カ月の支出は15万7673円でした(税金を含む)。
一方で、「令和5年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」では年金分割の平均年金月額は離婚分割で9万1081円、3号分割で5万3199円(女性)でした。65歳時点の余命を25年として、不足分を貯蓄で補うと3号分割の場合は、約3135万円の貯蓄が必要な計算です。
90歳くらいまで生きるとしてどの程度のお金が必要なのか試算し、現実的な生活設計を立てることが大切です。計算に不安がある場合は、ファイナンシャルプランナーなどに相談することで、具体的な金額の計算や助言を得られます。
3-3. 仕事を探す
離婚後に必要な生活費の試算の結果、毎月の収支が赤字である場合は、貯金を切り崩す前にできる限り働くことも検討するとよいでしょう。
貯金に頼る生活にならざるを得ない場合は、働けるうちは働くことも検討する必要があります。たとえ月に数万円でも収入があれば、貯金の減少を抑えることができます。自分の体力やライフスタイルに合った働き方を探すとよいでしょう。
3-4. 生きがいや頼れる人を見つける
子どもや孫との関係が希薄だと、離婚後に会ったり頼ったりできないことがあります。また、病気や怪我など予期せぬ事態に備えて、日頃から友人や趣味仲間、地域のコミュニティに参加するなどして、つながりを持っておくことが重要です。特に趣味などの生きがいがあれば、離婚後に運動不足で病気がちになったり、孤独に悩んだりすることもなくなるでしょう。
3-5. 人とのつながりを大切にする
離婚後も孤独にならないためには、人とのつながりを大切にすることが重要です。友人との交流や新たなパートナーとの出会いが、心の支えになります。孤立を防ぎ、豊かな老後を送るためにも、定期的な人間関係の維持を意識するとよいでしょう。

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4. 60代の離婚でもらえるお金
60代で離婚する際は、財産分与、年金、不法行為があれば慰謝料を請求できます。離婚後の生活の基盤となるお金ですので、漏れなく請求することが重要です。
4-1. 財産分与
財産分与とは、婚姻期間中に夫婦が共同で築いた財産を、離婚時に分け合うことを指します。婚姻から別居までに形成された財産が対象となり、財産の名義や夫婦の役割に関係なく、財産は半分ずつ分けるのが基本です。
婚姻期間の長さに応じて築いた財産も高額になります。令和5年の司法統計によると、婚姻期間20年以上の夫婦における財産分与額は、2,000万円以下が最多でした。
財産分与を請求するには、夫婦が築いた共有財産をしっかり把握することが重要です。離婚時に相手名義の財産を把握しようとしても難しい場合があるため、日頃から相手の財産状況を確認しておくとよいでしょう。
なお、離婚時に請求しなかった場合でも、離婚後2年以内であれば財産分与を請求できます。また、2024年に民法が改正され、2026年までに財産分与の請求期限が5年に延長されます。いずれにしても早めに請求を行うことが望ましいです。
4-2. 年金
年金は、「年金分割」という制度で分けることができます。年金は年収が高く納付した金額が多いほど、多く支給されます。年金分割を行うことで、年金の多い側の記録を少ない側に公平に分けることができます。対象となるのは厚生年金と共済年金で、国民年金は含まれません。配偶者が会社員や公務員であれば、手続きが可能です。
「令和5年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、合意分割により年金を分けた人の年金額は月額で約3万1000円減少し、受け取った側は約3万3000円増加しています。3号分割では、男性の年金が約7000円減少し、女性の年金が約8000円近く増加したというデータがあります。
4-3. 不法行為があれば慰謝料
配偶者に不法行為がある場合、離婚に伴って慰謝料を請求できます。不法行為には、不倫、DV(家庭内暴力)、モラハラ(精神的虐待)などが該当します。慰謝料の相場はおおよそ250万円から300万円程度です。
ただし、慰謝料が認められるには、不法行為を証明する証拠が必要不可欠です。そのため、証拠の収集方法や訴訟における立証のポイントについては、弁護士に相談するのが望ましいです。
5. 60代の離婚でよくある質問
生活費は個人の状況によって異なります。持ち家か賃貸か、健康状態、趣味や消費傾向などにより大きく差があります。
65歳以上の女性単身世帯の平均支出は月約15万円とされています。これはあくまでも平均であり、実際にはもっと少ない金額で生活している人も多くいます。住居費などの固定費を抑える工夫をすることで、節約しながら生活を維持することも可能です。
年金は「年金分割」により受け取ることができます。ただし、手続きには離婚後2年以内という期限があるため、早めの対応が必要です。
60代貯金なしで離婚をした場合、老後の生活はかなり厳しいものになると予想できます。ただし、財産分与で自宅を取得できれば、住居費を抑えることができます。また、健康であれば働いて収入を得ることも検討した方がよいでしょう。離婚する前は、共有財産を把握して財産分与の見通しを立てることや、離婚後の生活費を試算しておくことも大切です。
離婚は弁護士に無料相談できます。多くの法律事務所では初回無料相談を実施しており、市区町村役場で行われる法律相談も利用できます。一定の条件を満たせば、法テラスを通じて無料で法律相談を受けることも可能です。
6. まとめ 60代の離婚で後悔しないためにも離婚前の事前準備を整えよう
第二の人生をスタートさせるため、60代で離婚を検討する人は少なくありません。しかし、金銭面や健康面などの不安やリスクも伴います。後悔しないためには、離婚後の生活に向けた準備が欠かせません。経済的な自立を目指し、仕事や生きがい、地域コミュニティとのつながりを意識することが大切です。
離婚時や離婚時にもらえるお金に不安がある場合は、弁護士に相談して、適切なアドバイスをもらうとよいでしょう。
(記事は2025年9月1日時点の情報に基づいています)