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財産分与で株や投資信託はどう分ける? 方法や利益、税金の扱いを解説

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離婚時に株式を分けるには主に3つの方法があります (c)Getty Images
離婚をする際、公平​​に財産を分け合う財産分与にあたり、株式や投資信託はどのように扱えばよいでしょうか? 株式や投資信託は財産分与の対象になるのか、対象になる場合の財産分与の流れと株式で得た利益や税金の扱いはどうなるのかについて、弁護士がわかりやすく解説します。
目 次
  • 1. 株式は離婚時の財産分与の対象になる?
  • 1-1. 財産分与の対象になる株式
  • 1-2. 財産分与の対象にならない株式
  • 1-3. 株式の含み益や配当は財産分与の対象になる?
  • 2. 離婚時の株式の財産分与の流れ
  • 2-1. 【STEP1】株式の価値を評価する|評価方法や基準時に注意
  • 2-2. 【STEP2】財産分与の割合や方法を話し合う
  • 2-3. 【STEP3】離婚協議書を作成する
  • 2-4. 【STEP4】株式の名義変更や売却を行う
  • 2-5. 合意が得られなければ、裁判手続きを利用する
  • 3. 上場株式と非上場株式の評価額の決め方
  • 3-1. 上場株式は時価で評価
  • 3-2. 非上場株式の評価は複雑
  • 4. 株式の財産分与に関してよくある質問
  • 5. まとめ 難しい面が多い株式の財産分与は弁護士に相談や依頼を

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1. 株式は離婚時の財産分与の対象になる?

財産分与の対象となるのは、結婚から別居、または離婚までの婚姻期間中に夫婦で協力して築いた「共有財産」です。したがって、婚姻期間中に得た給与で購入した株式は共有財産に該当するため、財産分与の対象になります。

一方、婚姻前に形成した財産や、婚姻後に相続や贈与により取得した株式は「特有財産」となり、原則として財産分与の対象ではありません。

1-1. 財産分与の対象になる株式

給与など婚姻期間中に得たお金で購入した株式は、原則として財産分与の対象 となります。株式は夫もしくは妻の単独名義となることがほとんどですが、婚姻中に形成した財産であれば、どちらの名義であっても財産分与の対象 となります。預貯金や不動産などと同じように、夫婦が婚姻期間中に協力して築いた財産とされるからです。

1-2. 財産分与の対象にならない株式

財産分与の対象にならない株式は以下のとおりです。

  • 婚姻前から所有していた株式

  • 婚姻前に得たお金で購入した株式

  • 親や親族からの贈与、または相続で取得した株式

  • 親や親族からの贈与、または相続で得たお金で購入した株式

  • 夫婦の一方または双方が経営する法人が所有する株式

法人名義の株式は、財産分与の対象とならないのが原則です。法人名義であっても、その一部分を夫婦の協力によって形成された「実質的共有財産」と認定できる場合には、その部分を財産分与の対象財産に含める余地があると考えられています。

なお、夫婦が経営に関与する法人の株式や出資持分を、夫婦いずれかの個人名義で保有する場合は、その株式などを財産分与の対象とする考え方が一般的です。

1-3. 株式の含み益や配当は財産分与の対象になる?

株式の含み益や配当は、元手の株式と同様に扱われます。つまり、元手となる株式が婚姻中に夫婦の協力によって築いたものであれば、含み益や配当も財産分与の対象 となります。

一方、株式が婚姻前に形成した特有財産に該当する場合は、扱いが異なります。婚姻前から所有している株式の投資運用によって婚姻後に利益を得たとしても、財産分与の対象にはなりません

2. 離婚時の株式の財産分与の流れ

株式の財産分与は、以下のフローチャート図のように進みます。

2-1. 【STEP1】株式の価値を評価する|評価方法や基準時に注意

まずは、財産分与の対象となる株式を評価します。

財産分与の対象財産のなかには、株式や不動産のように、評価する時期に応じて価格が変動する財産があります。そのため、直近の価額で決めることが最も公平であると考えられており、離婚時(≒財産分与時)を基準 とするのが通常です。

離婚時までに株式を売却している場合には、一般的に売却時が基準時となります。

2-2. 【STEP2】財産分与の割合や方法を話し合う

株式を含めた分与対象財産をどのように分けるか、当事者間で話し合いをします。通常は夫婦で2分の1ずつ分け合いますが、合意できればどのような割合で分けてもかまいません。

株式を分ける方法は、主に以下の3つがあります。

【現物分割】
現物分割は、株式をお金に換えずにそのままのかたちで分けることです。たとえばA社の株式が2000株あり、財産分与の割合が2分の1の場合に、それぞれが1000株ずつ取得するケースです。非上場株式のうち、会社の規則などが記載された​​定款(ていかん)で株式の譲渡に承認手続きが必要と定められているものは、株式の分与の際に会社の承認手続きが必要です。

【代償分割】
代償分割は、夫婦のどちらかが株式を取得し、取得しない側に株式相当分の財産もしくは現金を渡す方法です。

【換価分割】
換価分割(かんかぶんかつ)は、株式を売却した金銭を夫婦で分ける方法です。譲渡制限のある株式を第三者に売却する場合は、株式を発行する会社に対して譲渡承認を請求しなければなりません。会社が譲渡を承認しない場合は、会社もしくは指定買取人に株式の買い取りを請求できます。

2-3. 【STEP3】離婚協議書を作成する

財産分与の条件など、離婚に関する取り決めについて夫婦間で合意ができたら、離婚協議書を作成しましょう。離婚時に約束した事柄を書面に残しておけば、離婚後のトラブル回避ができます。可能であれば、公務員である公証人が作成し、証拠能力を保証​​する公正証書として残しておくと安心 です。

2-4. 【STEP4】株式の名義変更や売却を行う

夫婦間で合意した内容に基づいて、株式の名義変更や売却を行います。株式を売却した場合は売却で得た現金を分けますが、名義変更のケースでは、下記のとおり、上場株式と非上場株式とで手続きの方法が異なります。

【上場株式の場合】
上場株式の場合は、証券口座を所有し、取引をしている証券会社に名義変更を申請 します。株式の分与を受ける側が証券会社の口座を保有していなければ、新たに口座を開設する必要があります。

必要書類は各社によって異なるため、手続きをスムーズに行えるよう、あらかじめ証券会社に確認しておきましょう。

【非上場株式の場合】
非上場株式の多くは譲渡制限付株式であるため、譲渡について会社の承認を得る必要があります。非上場株式の名義変更は株式会社の定款に従って行われるため、株式を発行している会社に対して名義変更を請求します。財産分与によって名義変更が生じたことと新しい名義人の情報を伝え、指示に従いながら手続きを行います。

2-5. 合意が得られなければ、裁判手続きを利用する

夫婦間で株式の分け方について合意ができなければ、裁判手続きを利用します。離婚前であれば離婚調停や離婚訴訟の附帯処分として、離婚後であれば財産分与請求調停や審判を申し立てることにより請求 できます。

【離婚調停や離婚訴訟】
夫婦間で財産分与について話し合いがまとまらない場合、まずは家庭裁判所に離婚調停を申し立てます。調停とは、裁判官と調停委員が当事者双方の話を交互に聞いて合意をめざす方法です。財産分与だけでなく、慰謝料、婚姻費用負担、養育費といったお金に関する事柄や、親権者や面会交流権といった子どもの問題について話し合えます。

離婚調停でも話し合いがまとまらず、調停不成立により終了となった場合は、離婚訴訟を起こして附帯処分による財産分与の申立てができます。離婚に合意ができたものの財産分与について合意ができなかった場合は、調停全部を不成立とし、訴訟に移行することもできますし、離婚のみ調停を成立させることも可能です。

【財産分与請求調停】
離婚成立から2年以内であれば、家庭裁判所に財産分与請求調停の申立てが可能です。調停では、裁判官と調停委員が当事者双方の話を交互に聞いて合意をめざします。話し合いがまとまらずに調停が不成立となったら自動的に審判が開始され、当事者の言い分を聞いたり、当事者が提出する証拠を調べたりして、裁判官が決定を下します。

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3. 上場株式と非上場株式の評価額の決め方

評価の方法は、財産分与の対象となる株が上場株式か非上場株式かによって異なります。

3-1. 上場株式は時価で評価

上場株式の場合、金融商品取引所が公表する各取引日の終値をもとに財産分与時の市場価格を評価します。具体的には離婚成立日(離婚前に別居していた場合は別居開始日、訴訟中であれば口頭弁論終結日)の終値や、過去3カ月分の平均株価などを参考に評価します。株価の高騰や急落などの事情があった際には、それらを考慮して評価する場合も あります。

3-2. 非上場株式の評価は複雑

非上場株式の場合、市場価格が存在しないため評価方法は3パターンあります。

【純資産価額方式】
純資産価額方式とは、資産から負債を引き株価を算定する方式です。純資産価格方式は、次の2つに分かれます。

・簿価純資産法:貸借対照表上の資産から負債を控除して企業価値を算出する方法
・時価純資産法:資産および負債を時価に換算したうえで、換算後の資産から換算後の負債を差し引いて企業価値を算出する方法

正確に時価を算出する場合は時価純資産法が適していますが、専門知識が必要となり一定の時間がかかります。そのため、早期解決をめざす場合は簿価純資産法で算定するケースが多いです。

【類似業種比準価額方式】
類似業種比準価額方式とは、上場している類似会社などの株価と比較して時価を算出する方法です。ただし、非上場会社と上場会社は規模が違うため、株価のほかに配当、利益、純資産を併せて考慮し算出します。非上場会社によっては、類似会社を見つけられず、正確に比較ができないケースがあります。

【配当還元方式】
配当還元方式とは、対象株式を保有するとどのくらいの配当が得られるかを基準に株価を評価する方法です。計算式は以下の2通りがあります。

配当還元価額 = (1株あたりの年間配当金 ÷ 10%)×(1株あたりの資本金などの額 ÷ 50円)

1株あたりの年間配当金 = (直近2期の配当金総額の合計 ÷ 2)÷(直前期の資本金 ÷ 50円)

どの方法を選択するかによって評価額が異なってくるため、弁護士に相談しながら話し合いを進めるかたちをお勧めします。

4. 株式の財産分与に関してよくある質問

Q. 投資用不動産や会員権も、財産分与の対象になる?
婚姻期間中に得た給与などで購入したのであれば、投資用不動産やゴルフ会員権、リゾート施設会員権なども財産分与の対象となります。投資用不動産は現物分割が難しいため、代償分割もしくは換価分割で分けるケースが多いです。ゴルフ会員権、リゾート施設会員権なども現物分割は難しいため、離婚成立日の時価で評価し、代償分割もしくは換価分割で分けます。
Q. 財産分与の対象となる株式を隠したらどうなる?
財産分与の対象となる株式を隠しても、原則として刑事罰の対象にはならないものの、民法上の不法行為に該当する可能性があります。財産隠しの結果、相手が本来得られたはずの財産を得ることができなくなった場合、不法行為に基づく損害賠償を請求される可能性があります。
Q. NISA枠で運用する株式も、財産分与の対象になる?
婚姻期間中に得た給与などで購入したのであれば、NISA枠で運用する株式も財産分与の対象となります。NISAは、単に非課税の恩恵を受けられる制度にすぎず、財産分与の対象から除外する理由はないからです。 預貯金などほかに分与対象財産がある場合は、代償分割をとるケースが多いでしょう。分与相当額を支払うための資産がほかにない場合は、NISA口座内の株式などを売却して、その代金で財産分与を支払う必要があります。
Q. iDeCoなどの確定拠出年金も、財産分与の対象になる?
iDeCoなどの確定拠出年金が財産分与の対象となるかどうかは、取扱いが確立されていません。確定拠出年金には、企業型と個人型があり、企業型は退職金の前払いのような性質があり、個人型は老後の資産を形成する年金としての性格をもちますが、いずれの場合も原則60歳まで資産の引き出しはできません。 私的年金については、支給確定分のみを財産分与の対象とすべきという考え方がありますが、確定拠出年金を受給していない段階では、そもそも受給額が確定していないことから、評価額の算定が困難です。財産分与の対象となるかどうかの判断は難しい側面があるため、弁護士に相談することをお勧めします。
Q. 株式を財産分与した場合、税金はかかる?
株式を財産分与したことで譲渡所得が生じると、分与した側に譲渡所得税が課税される場合があります。具体的に言うと、分与時の株式の時価が、その株式を取得した時の価額より高くなっていれば、譲渡所得税および住民税が課税されます。分与時の時価がその株式を取得した価額より下がっていれば、所得税は課税されません。 贈与税は原則課せられませんが、株式を含めて分与された財産の額が、婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額や、その他すべての事情を考慮しても多すぎる場合は、課税対象になるケースもあります。

5. まとめ 難しい面が多い株式の財産分与は弁護士に相談や依頼を

昨今では積極的に投資を勧める傾向があり、株式投資や投資信託を行っている家庭が多いように見受けられます。

株式が財産分与になるかどうかは購入した時期や資金などによりケースバイケースですし、財産分与の対象となった場合に、現物分割、代償分割、換価分割の3つからどのように分ければいいのかなど、判断が難しい面が少なくありません。そのため、株式を含む財産分与に関しては、当事者のみでなく、弁護士に相談したり依頼したりしたうえで話し合いを進めたほうがよいでしょう。

(記事は2025年4月1日時点の情報に基づいています)

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