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財産分与に税金はかかる? かかるケースや注意点を解説

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離婚時の財産分与は税金が課される可能性があります(c)Getty Images
離婚時の財産分与は、受ける側および支払う側の双方において税金が課されることがあります。課税の条件や金額の計算方法などを理解した上で、どのような税金が発生するのかをあらかじめ認識しておきましょう。弁護士が、財産分与に関して課される税金について解説します。
目 次
  • 1. 離婚時の財産分与に税金はかかる?
  • 1-1. 財産分与を受けた側|基本的にはかからないが、例外あり
  • 1-2. 財産分与を支払った側|譲渡所得が生じる場合には、税金がかかる
  • 2. 財産分与を受けた側に税金が課されるケース
  • 2-1. 多すぎる財産分与を受けた場合|贈与税
  • 2-2. 不動産の財産分与を受け、登記手続きをした場合|登録免許税
  • 2-3. 慰謝料の代わりとして不動産を譲り受けた場合|不動産取得税や贈与税
  • 3. 財産分与を支払う側が、税金について確認すべきこと
  • 3-1. 譲渡所得税の課税の有無・金額
  • 3-2. 「3,000万円特例」の適用の可否
  • 4. 離婚時の財産分与に課される税金を回避・軽減する方法
  • 4-1. 極端に多額の財産分与を受けない
  • 4-2. 離婚成立前に自宅を配偶者へ譲渡することは避ける
  • 4-3. 各種控除を最大限に利用する
  • 5. 財産分与と税金に関してよくある質問
  • 6. まとめ 財産分与時に税金がかかるかはケースバイケース

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1. 離婚時の財産分与に税金はかかる?

「財産分与」とは、夫婦が離婚する際に共有財産を公平に分ける手続きです(民法768条、771条)。婚姻中に取得した財産は、相続や生前贈与によって取得したものなどを除き、夫婦どちらの名義で所有しているかにかかわらず財産分与の対象となります。

離婚時の財産分与に対しては、財産分与を受ける側および支払う側の双方において、税金が課されることがあります

1-1. 財産分与を受けた側|基本的にはかからないが、例外あり

財産分与を受けた側に対しては、基本的に税金は課されません。贈与を受けた場合は贈与税が課されますが、財産分与は夫婦の共有財産を分ける手続きであり、財産分与を受けた側も本来得るべき財産を確保したに過ぎないため、贈与に当たらないため です。

ただし後述するように多すぎる財産分与を受けた場合や、不動産の財産分与を受けた場合などには、財産分与を受けた側に税金が課されることがあります。

1-2. 財産分与を支払った側|譲渡所得が生じる場合には、税金がかかる

財産分与を支払った側にも、税金は課されないケースが多い です。金銭で財産分与を支払った場合には、税金は課されません。

これに対して、金銭以外の資産を譲り渡す形で財産分与を行った場合には、譲渡所得が生じるか否かによって課税の有無が変わります。譲渡所得が生じない場合は税金も課されませんが、譲渡所得が生じる場合には、原則として所得税および住民税が課されることに注意が必要 です。

2. 財産分与を受けた側に税金が課されるケース

財産分与を受けた側に税金が課されるのは、主に以下の場合です。

  • 多すぎる財産分与を受けた場合

  • 不動産の財産分与を受け、登記手続きをした場合

  • 慰謝料の代わりとして不動産を譲り受けた場合

それぞれについて解説します。

2-1. 多すぎる財産分与を受けた場合|贈与税

受けた財産分与の額が、共有財産の2分の1を大幅に超えている場合には、財産分与の名を借りた贈与であると判断されるおそれ があります。この場合、標準的な財産分与の額を超える部分について、贈与税が課される可能性があるのでご注意ください。

2-2. 不動産の財産分与を受け、登記手続きをした場合|登録免許税

財産分与として不動産を譲り受けた場合には、法務局または地方法務局において所有権移転登記手続きを行う必要があります。登記申請の際には、不動産の種類や固定資産税評価額に応じた額の登録免許税を納付しなければなりません

2-3. 慰謝料の代わりとして不動産を譲り受けた場合|不動産取得税や贈与税

不貞行為などの慰謝料は、夫婦間で合意すれば、金銭ではなく不動産によって代物弁済することも認められます

財産分与として不動産を受け取る場合、不動産取得税は課されません。これに対して、慰謝料として不動産を受け取る場合は、不動産取得税の課税対象となる ことがある点に注意が必要です。また、慰謝料としての適正額に比べてあまりにも高額の不動産を受け取った場合は、慰謝料の名を借りた贈与であると判断されて、贈与税が課される可能性がある点にもご注意ください。

3. 財産分与を支払う側が、税金について確認すべきこと

財産分与を支払う側においては、譲渡所得税が課税されるかどうかを検討しておくべきです。居住用財産(家)を財産分与する際には譲渡所得から3,000万円の特別控除を受けられることがあります。

3-1. 譲渡所得税の課税の有無・金額

首都圏の不動産価格が高騰している昨今、購入時の価格よりも売却価格が上回ることも多々あります。そのような不動産を財産分与のために売却すると、譲渡所得税がかかる恐れがあります。

譲渡所得税は、以下の式によって計算する譲渡所得に対して課されます。

課税譲渡所得金額=収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額

「収入金額」とは原則として、資産の譲渡の対価として買主から受け取る金銭の額などを意味します。ただし、財産分与として資産を譲り渡す場合は、当該資産の分与時における時価が収入金額となります。

「取得費」とは、資産を取得するために要した費用です。具体的には、資産の購入代金や購入手数料、購入後に支出した設備費や改良費などが取得日に含まれます。ただし、減価償却の対象となる資産については、所有期間中の減価償却費相当額が取得日から差し引かれます。

「譲渡費用」とは、資産を譲渡するために直接かかった費用です。不動産を売る際の仲介手数料などが取得費に該当しますが、財産分与の場合は譲渡費用がほとんどかからないケースも多いです。

「特別控除額」とは、一定の要件を満たす場合に受けられる所得控除の金額です。後述するように、居住用財産(家)を財産分与する際には3,000万円の特別控除を受けられることがあります。

上記の計算式を用いて、財産分与を行うに当たって譲渡所得が課されるかどうかを検討し、課税が生じる場合には納税資金を確保しておきましょう。

3-2. 「3,000万円特例」の適用の可否

居住用財産(家)を財産分与した際には、一定の要件を満たす場合に限り、譲渡所得から3,000万円の特別控除を受けることができます

なお、家を譲渡する側と譲り受ける側が夫婦などの特別な関係にある場合には、3,000万円の特別控除を受けることができません。離婚後に財産分与を行う場合は3,000万円特別控除の対象になり得ますが、離婚成立前に配偶者へ家を譲り渡すと、3,000万円特別控除の対象外となってしまう 点にご注意ください。

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4. 離婚時の財産分与に課される税金を回避・軽減する方法

離婚時の財産分与に対して課される税金を回避または軽減するためには、主に以下の方法が考えられます。

4-1. 極端に多額の財産分与を受けない

共有財産の2分の1を大幅に超える財産分与を受けると、財産分与の名を借りた贈与であると税務当局に判断され、多額の贈与税を課されるおそれがあります。申告期限の経過後に贈与税の追徴課税を受けると、過少申告加算税や延滞税などが加算され、税金を余分に納めなければならなくなるかもしれません。

このような事態を避けるためには、極端に多額の財産分与を受けることは避けた方が無難です。弁護士や税理士のアドバイスを受けながら、バランスの取れた内容の財産分与を取り決めましょう。

4-2. 離婚成立前に自宅を配偶者へ譲渡することは避ける

家の財産分与を行うに当たって、譲渡所得が生じる可能性がある場合には、3,000万円特別控除の利用を検討すべきです。

家を譲渡する側と譲り受ける側が夫婦などの特別な関係にある場合には、3,000万円特別控除を利用できません。したがって、財産分与の前渡しなどとして、離婚成立前に家を配偶者へ譲渡することは避けるべきです。財産分与として配偶者に家を渡す場合は、必ず離婚成立後に譲渡の手続きを行いましょう

4-3. 各種控除を最大限に利用する

財産分与に関して課される税金を回避または軽減するためには、利用できる控除を最大限に利用しましょう。贈与税に関しては、毎年110万円までの基礎控除 が設けられています。仮に財産分与を受ける側が贈与税を課されてしまうとしても、基礎控除を適用することにより、納付すべき贈与税額を抑えることができます。

また、家を譲渡する際の3,000万円特別控除(前述)についても、譲渡する側において譲渡所得が生じる場合には、必ず利用を検討しましょう 。3,000万円特別控除の適用を受けるためには、さまざまな要件を満たす必要があるので、税理士のアドバイスを受けることをおすすめします。

5. 財産分与と税金に関してよくある質問

Q. 財産分与の方法や税金について配偶者と揉めています。誰に相談すべき?
財産分与の方法で揉めている場合は、弁護士に相談することをおすすめします。 弁護士には、離婚条件に関する配偶者との交渉や、裁判所における離婚調停および離婚訴訟の対応を一任できます。弁護士に対応を任せれば、法的な観点から適正な落としどころを定めて交渉などを行ってもらえるので、財産分与を含めた離婚条件をスムーズに取り決められる可能性が高まります。 税金の問題は、弁護士に相談できる場合もあるものの、税務の専門家である税理士に相談する方が確実性の高いアドバイスを受けられることが多いです。税理士と連携している弁護士に相談すれば、離婚協議などへの対応に加えて、税金に関する事柄についてもワンストップでサポートしてもらえます。
Q. 財産分与にかかる税金については、申告が必要ですか?
財産分与を受ける側に贈与税が課される場合は、翌年の3月15日(土日祝日の場合は翌平日)までに、納税地の税務署へ贈与税の申告を行わなければなりません。 また、財産分与として財産を譲渡する側に譲渡所得税が課される場合は、翌年の3月15日(土日祝日の場合は翌平日)までに、納税地の税務署へ所得税の確定申告を行わなければなりません。所得税の確定申告は、譲渡所得と他の所得を併せて行いますが、譲渡所得税の金額については、他の所得から譲渡所得を分離した上で計算します(=申告分離課税)。 これに対して、財産分与によって取得した不動産を登記する際にかかる登録免許税については、税務署への申告は必要ありませんが、登記申請を行う際に納付する必要があります。税務申告について分からないことがある場合は、税理士などにご相談ください。

6. まとめ 財産分与時に税金がかかるかはケースバイケース

財産分与に関連して税金が課されるかどうかは、具体的な事情に応じて決まります。

財産分与を受ける側には、原則として税金は課されません。ただし、多すぎる額の財産分与を受けた場合は贈与税 が課されることがあるほか、不動産を取得して登記手続きを行う際には登録免許税 が課されます。また、慰謝料の代わりとして不動産を譲り受けた場合には、不動産取得税 が課されることがあります。

財産分与として財産を譲り渡す側においては、譲渡所得税の課税に注意が必要です。不動産などの資産を財産分与として譲り渡す際に、譲渡所得が発生する場合には、所得税および住民税が課されます 。ただし、居住用資産(家)を財産分与する際には、3,000万円の特別控除を受けることにより、課税を回避または軽減できることがあります。

財産分与に関する税金の取り扱いは、専門的な判断を要する側面があるので、弁護士や税理士のアドバイスを受けましょう。

弁護士には、財産分与を含めた離婚条件の交渉や、裁判所における調停および訴訟などの対応を一任できます。税理士には、財産分与に関する課税や税務申告などについて相談できます。税理士と連携している弁護士に相談すれば、税金の問題も含めて、財産分与などの離婚手続きを総合的にサポートしてもらえる でしょう。

離婚時の財産分与について配偶者と揉めてしまっている方や、財産分与に税金が課されるのではないかと不安に感じている方は、弁護士や税理士などにご相談ください。

(記事は2025年1月1日時点の情報に基づいています)

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