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1. 叩かれたんだから、DVで離婚できますよね!
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2. DVは離婚理由として認められる
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3. DVの証拠となるもの
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4. モラハラで慰謝料は多くなりますよね!
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5. モラハラの定義とは?
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6. モラハラで慰謝料を増額できるケース
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7. DVは専門家に相談することが重要
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1. 叩かれたんだから、DVで離婚できますよね!
「浮気したでしょ!」
夫の浮気現場を目撃した梨沙(りさ・34歳)さんは、夫の草太(そうた・32歳)さんを問い詰めます。
ところが、草太さんを追及するうちに、梨沙さんは思わず手を出してしまいます。
草太さんは「DVだ!」と主張。「DVを受けたんだから、離婚できますよね?」と、ポン弁護士に相談します。
草太さんの主張は認められるのでしょうか?
2. DVは離婚理由として認められる
少しおさらいです。本連載の第1回では、裁判で離婚が認められるためには「法定離婚事由」が必要だというお話をしました。
法定離婚事由の内容は以下の通りです。
①配偶者に不貞行為(いわゆる不倫)があったとき
②配偶者が悪意をもって同居をしなかったり、生活費を渡さなかったりしたとき(悪意の遺棄)
③配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
④配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき(2026年5月までに施行される改正民法によって削除予定)
⑤その他、婚姻を継続し難い重大な事由があったとき
DVは⑤の「その他、婚姻を継続し難い重大な事由」にあたります。
長年にわたる暴力や支配、心理的圧迫が続いていれば「重大な事由」と判断され、DVは離婚理由として認められます。
なお、暴力はたとえ1回であっても、悪質であったり重大なケガを伴う場合はDVにあたります。
ただし、離婚を裁判で認めてもらうためには、「DVがあった」ことを主張し、それを裁判所に認めてもらわなくてはなりません。
つまり、裁判官という第三者が「DVがあった」と客観的に判断できる証拠が必要となるのです。
3. DVの証拠となるもの
では、実際にどのようなものが「DVの証拠」になるのでしょうか?
次のようなものが証拠としてあげられます。
けがの内容を証明できる医師の診断書・診療記録
けがの跡や壊された物の写真
暴力の様子がわかる音声や動画
被害にあった日付や内容がわかる日記や記録
家族や友人、相談機関、弁護士など第三者の証言・相談記録
暴力によって壊された物
「婚姻を継続し難い重大な事由があった」ことを証明するためには、DVが一時的なものではなく、継続的に行われていたことがわかる証拠が必要になります。
そのため、一定の期間にわたって証拠を集めておくことが大切です。
また、日記やけがの診断書、音声や動画など複数の証拠を集めることで、被害の経緯や医学的な裏付け、当時の状況が明らかになり、より事実に近く客観性の高い証拠になります。
今回のケースにおける梨沙さんの暴力は、軽度かつ一度限りの行為であり、証拠も存在しません。
草太さんが裁判所に離婚を認めてもらうのは難しいでしょう。
4. モラハラで慰謝料は多くなりますよね!
「DVを受けた」と主張する草太さんですが、実はその話し合いの中で、草太さんも梨沙さんにモラハラ(モラル・ハラスメント/精神的暴力)をしていました。
そこで梨沙さんは「浮気だけでなくモラハラもあった」として、慰謝料の増加を求めます。
5. モラハラの定義とは?
まずはモラハラの定義からみていきましょう。
モラハラとは、言葉や態度で相手を傷つけたり追い詰め、精神的にダメージを与える行為のことです。
具体的には、次のような行為が該当します。
相手を侮辱したり、暴言を浴びせたりする
相手を長時間無視する
相手の行動を過度に制限したり、監視したりする
裁判でモラハラを認定してもらうためには、身体的DVの場合と同様に「モラハラがあったこと」を証明しなければなりません。そのためには証拠が必要です。
モラハラの証拠となるもの
モラハラが原因で精神科や心療内科を受診した診断書・診療記録
暴言の録音や録画
暴言が送られたメールやLINEなどのメッセージアプリの履歴
家族や友人、相談機関、弁護士など第三者の証言・相談記録
暴力によって壊された物
こちらも複数の証拠を一定期間にわたって集めることで、客観性の高い証拠と認められる可能性が高まります。

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6. モラハラで慰謝料を増額できるケース
では、モラハラによって慰謝料は増額できるのでしょうか?
そもそも慰謝料とは、「配偶者の行為によって心を傷つけられた人が、その精神的苦痛に対して配偶者や相手方に請求できるお金」のことです。
つまり、精神的苦痛が大きいほど、慰謝料の金額も高くなります。
では、どのような事情が「精神的苦痛が大きい」と判断されるのでしょうか?
慰謝料の金額が増える要因には、次のようなケースがあります。
モラハラが原因で医療機関を受診している場合
モラハラの頻度が高く、期間が長い場合
モラハラが悪質(人格否定・脅迫など)な場合
モラハラなどの精神的DVによる慰謝料の目安は、およそ20万円から200万円と言われています。
金額に大きな差が生じるのは、行為の程度や期間、回数に加え、精神疾患に至っているかどうかなど、結果の重大性や離婚原因としての重要性が考慮されるためです。
慰謝料の増額を期待している梨沙さんですが、草太さんからのモラハラについては、今後さらに証拠を集める必要がありそうです。
ただし、モラハラはそれだけで慰謝料の対象とならなくても、不貞行為など他の問題とあわせて「精神的なダメージが大きい」と判断されれば、慰謝料が増額されることがあります。
今回のケースでは、草太さんが既に不貞行為を認めているため、モラハラと合わせて精神的苦痛を強調することができ、慰謝料の増額や認定につながる可能性が高いと言えるでしょう。
7. DVは専門家に相談することが重要
ここまで、DVやモラハラがあったことを証明するためには証拠が必要だと説明してきました。
しかし、証拠を集めようとして無理をすると、身の危険が及ぶ場合があります。
特に暴力やモラハラがエスカレートしているときは、まず自分の安全を守ることが何よりも大切です。
また、言い争いが毎日のように続くこともあります。
言い争いのたびに暴力や精神的苦痛を伴うモラハラ発言が繰り返されるなど、DVがさらに悪化するケースも少なくありません。
そうした場合は、別居を検討することも重要です。住宅の確保が難しい場合は、配偶者暴力支援センターに相談することができます。
今回、草太さんによる暴言も梨沙さんによる暴力も、回数や期間を含めて深刻とは言えず、また証拠もないため、裁判になっても夫婦ゲンカとみなされる可能性が高いでしょう。「離婚の成立」や「慰謝料の増加」を求めるのは難しそうです。
とはいえ、DVは一人で抱え込む問題ではありません。少しでも身の危険や精神的な苦痛を感じたら、弁護士などの専門家に相談し、必要な支援を受けましょう。
(記事は2025年7月1日時点の情報に基づいています)