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1. そもそもモラハラとは?
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2. モラハラ被害の慰謝料の判例|50万~300万円
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2-1. モラハラの慰謝料額を左右する要素
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3. モラハラ離婚・慰謝料請求は難しい?
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3-1. 相手が応じない
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3-2. 裁判上の離婚理由として認められにくい
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4. モラハラ離婚・慰謝料請求を成功させるには、証拠集めが重要
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5. モラハラで慰謝料請求できた事例
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5-1. 「総体としての不法行為」と認定し、慰謝料250万円の支払いを認めた判例
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5-2. モラハラを明確に認定し、慰謝料200万円の支払いを認めた事例
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6. モラハラで慰謝料請求する流れ
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7. モラハラの慰謝料請求を弁護士に相談するメリットと費用
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8. モラハラの慰謝料に関するよくある質問
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9. まとめ モラハラで慰謝料請求するなら裁判を考えよう
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1. そもそもモラハラとは?
「モラハラ」とは「モラル・ハラスメント」の略称です。モラハラ自体に明確な定義は存在していませんが、「継続的な嫌がらせ」かつ「隠ぺいされたもの」を指すことが一般的です。
具体的な行為として挙げられるのは、暴言・無視・人格否定・無理な要求・責任転嫁・経済的虐待などです。いずれも単発ではなく、継続的に繰り返されるものが特にモラハラ行為として問題になります。
2. モラハラ被害の慰謝料の判例|50万~300万円
裁判所が判決で慰謝料の請求を認めるにあたり、抽象的にモラハラがあったことを認定して支払いを命じることはありません。あくまで、モラハラに該当する行為による精神的苦痛に対しての判決となるためです。
精神的苦痛を受けた行為については具体的に、暴言・無視・人格否定・無理な要求責任転嫁・経済的虐待などを理由にした裁判例があります。これらのケースでは、概ね50万〜300万円の範囲内で認めているものが多い印象です。
とはいえ、慰謝料は「その人がどれだけ傷ついたのか」を金銭的に評価したものです。同じ行為でも人によって傷つく度合いは大きく異なるため、相場として算出するのは非常に難しいでしょう。
2-1. モラハラの慰謝料額を左右する要素
モラハラ行為がどのくらい継続的に行われていたのか、またその影響により被害者がどのような状態に陥っていったのか によって慰謝料額は左右されます。
モラハラは暴力行為や不倫のように1回でも事実があれば慰謝料が認められるわけではありません。モラハラの慰謝料が認められやすい対象は、継続的に繰り返されている行為です。
慰謝料額を算出するには、精神的苦痛を受けた行為一つひとつについて、その証拠に基づき事実の有無を認定します。そして、事実であると認定された内容に基づいて、最終的な慰謝料の金額が決定されることになります。
3. モラハラ離婚・慰謝料請求は難しい?
「モラハラを理由に離婚や慰謝料の請求をするのは難しい」とよく耳にします。実際、離婚原因の一つである不倫や暴力と比べると、モラハラを理由に離婚や慰謝料の請求が認められることはとても難しいです。その理由を解説します。
3-1. 相手が応じない
ほとんどのケースにおいてモラハラ加害者は、自身がモラハラ行為を行っているという認識自体がありません 。つまり、悪いことをしたと思っていないため、離婚や慰謝料の話し合いもスムーズには進みません。
暴力であれば犯罪行為となるため、どのような経緯であれ暴力をした事実に争いがなければ、ほとんどの場合は自分が悪いことをした認識があるでしょう。また不倫についても同様で、犯罪行為ではないにせよ、不倫をした事実に争いがなければ、悪いことをしている認識はあるでしょう。
しかしモラハラのうちの、暴言や無視、人格非難などの行為は、1回行われたからといって直ちに犯罪行為や不法行為と評価されるものではありません。夫婦喧嘩の過程で、このような発言や対応をとることもあるでしょう。
また、どういう言葉が暴言なのか、何回言ったらモラハラなのかといった定めもありません。仮に相手が暴言に該当する発言自体を認めたとしても、悪いことをしてしまったという認識をもつことは少ないといえます。
3-2. 裁判上の離婚理由として認められにくい
離婚や慰謝料請求について協議や調停で成立しなかった場合は、裁判で解決を求めることとなります。
しかし、モラハラ離婚が裁判で認められるには、モラハラ行為が長期間にわたり継続的かつ一方的に繰り返されていることの証拠を提示し、民法770条の「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当すると明らかにする必要があります。とはいえ、暴言や無視、人格否定など暴力に至らない程度の行為が継続的に繰り返されており、夫婦関係の破綻を生じさせていることを証明することは容易ではありません。
暴力や不倫が1回でも明らかになれば離婚事由として認められやすいのとは大きな違いです。
4. モラハラ離婚・慰謝料請求を成功させるには、証拠集めが重要
相手がモラハラ行為を認めることは極めてまれなため、離婚や慰謝料の話し合いに相手が応じる可能性はあまり期待できません。最終的には裁判所に判断を委ねることとなります。
裁判所は公平中立的な立場なので、どちらの味方をするわけではなく、証拠に基づき判断します。裁判のルールとして、請求した側が、客観的な証拠を準備・提出する必要があります。それができない場合は、実際に多くのモラハラ行為があったとしても離婚や慰謝料請求は認められません。
証拠として最も有効なのは、暴言が記載されたメールやメッセージのデータ です。特に、モラハラ行為のない部分も含めてそのまま保全してあるものが効果的だといえます。編集や切り抜きをしたデータでは、相手方から改変の疑いをかけられる可能性があるためです。裁判所が公平中立な立場であることを考慮しても、データに手を加えない状態で保全・提出するのが望ましいで しょう。
また、被った精神的損害の度合いを証明する資料としては、病院の通院履歴や診断書 なども証拠となります。ただし、身体的損害のように明確な治療期間や因果期間が明らかになりにくいため、どの程度重視されるかは具体的な事情によって大きく異なります。
一方で、被害を詳細につづった日記は主観が介在する余地の大きいことから、それ単体では証拠としての価値は低くなりがちです。自分の親族や友人による証言は立場が中立ではないと判断される場合があり、証拠としての価値を問題視される可能性があります。ただし、双方と利害関係のない第三者からの証言であれば、重要な証拠とされる場合があります 。
5. モラハラで慰謝料請求できた事例
協議や調停の段階で相手がモラハラを認めることはまれですが、裁判まで行った場合は慰謝料の請求が認められるケースもあります。
下記では、モラハラ行為を理由にした裁判の中から、慰謝料請求が認められた事例を2つ紹介します。いずれもポイントとなるのは、十分な証拠に基づきモラハラ行為の存在が明らかになっていた点です。
5-1. 「総体としての不法行為」と認定し、慰謝料250万円の支払いを認めた判例
夫の妻への態度や言動による精神的苦痛に対する慰謝料として、250万円の支払いが認められた判例があります(東京地方裁判所平成17年3月8日判決)。
この事例では、夫が過換気症候群やストレス性の身体的症状で苦しんでいる妻に対し、「お前は頭がおかしい」「何でそんなに医者ばかりかかるんだ」など心ない発言をしていました。他にも通院の妨害や、家計を委ねると言いながらも少額の生活費しか渡さないといった行為も常態化していました。
これらの行為から、「婚姻が破綻した原因は、夫の配慮に欠けた態度や威圧的かつ粗暴な言動にあったものというべきであるから、夫がこれらの言動を重ねて婚姻を破綻させたことは総体として不法行為を構成し、夫は、妻が被った精神的苦痛を慰謝する責任を負う」との判決を下し、250万円の慰謝料請求を認めています。
不倫や暴力等の決定的な行為は無いものの、夫から妻へ対する対応や発言を丁寧に認定した上で、一つひとつの行為ではなく、これらの継続的かつ一方的な行為について「総体として不法行為を構成」するものとして慰謝料責任を認めた 点に特徴があります。
5-2. モラハラを明確に認定し、慰謝料200万円の支払いを認めた事例
夫の暴言をモラハラと明確に認定し、慰謝料として200万円の支払いを認めた事例があります(東京地方裁判所 令和元年9月10日判決)。
この事例では、争点の1つである「夫によるモラハラ行為などの有無」が真正面から審理の対象になりました。妻側からモラハラの証拠として提出されたのは、メッセンジャーアプリによる夫婦間の会話の録音です。アプリに残されたやり取りの中では、「頭がおかしい」「バカ」「きちがい」「狂ってる」など、妻を罵倒する言葉を連発しているのが残っている状態でした。また、妻が言うことをきかないと、「好きにしろ」「勝手にしろ」「別居する」など、突き放すような言葉を発していたことも認められています。
その結果、「夫は、妻との婚姻後、次第に、妻の人格を否定して夫の価値観を押し付け、夫に従わなければ徹底的に罵倒するような暴言を吐くようになり、その頻度や内容もエスカレートし、社会的に許容されるべき範囲を逸脱するものとなっていたことが認められるところ、これら一連の暴言がいわゆるモラルハラスメント行為に当たり、妻の人格権を侵害するものであることは明らかというべきである」として、慰謝料として200万円の支払いを認めました。
慰謝料額を決めた要素には、モラハラ行為による悪質性の程度のほか、婚姻期間や妻が妊娠中である点なども含まれています。しかしながら、裁判所が判決内において「これら一連の暴言がいわゆるモラルハラスメント行為に当たり」と記載し、モラハラによる慰謝料を認めた明確な事例 となりました。
6. モラハラで慰謝料請求する流れ
慰謝料請求をする際、いきなり調停や裁判を申立てすることはできません。まずは、相手に直接慰謝料を請求し、協議(話し合い)に臨むことになります。ただし、単に金額だけを伝えても相手方が支払いに応じる可能性は皆無です。いつどのようなモラハラ行為により傷ついてきたかなど、具体的に列挙して伝えていく必要があります。
協議で合意が得られない場合は、家庭裁判所の調停で交渉を進めていくことになります。調停委員が介在するため、協議段階よりは多少なりとも進みやすくはなります。とはいえ、モラハラの有無については双方の認識に大きな隔たりがあることも多く、慰謝料を請求していく場合などは調停でも合意に至らないケースが少なくありません。調停が不成立になると、あらためて裁判にてモラハラの慰謝料について請求していくことになります。
このように、慰謝料請求する流れには大きく3段階あります。こちらの主張に相手が一応の理解を示せば、具体的な金額の交渉もスムーズに進みます。一方で、そもそもモラハラ行為の有無自体で争いになってしまった場合は、裁判を見据えて証拠の準備も平行して進めていくことが大切です。
7. モラハラの慰謝料請求を弁護士に相談するメリットと費用
モラハラの慰謝料請求を弁護士に相談するメリットは、相手とのやりとりを全面的に任せられる 点です。モラハラ被害者が、加害者と直接やりとりしなくて済むので、精神的な負担を軽減できるでしょう。協議や調停で合意が得られなくても、最終的には裁判まで一貫して対応してくれるため安心です。
モラハラ加害者は悪いことをしている認識がほとんどありません。そのため、依頼者がモラハラ被害についてどれほど具体的かつ丁寧に伝えても、耳を傾けてくれる可能性は低いでしょう。むしろ、そのような態度を取らせる依頼者自身が悪いのだと責任転嫁をしてくる可能性すらあります。そのような状況下で、慰謝料や自身の権利を適切に行使していくことに困難を感じているのであれば、弁護士に相談すべきだといえるでしょう。モラハラ加害者も弁護士相手には無理な主張は通らないと、あきらめて、こちらの請求を受け入れるケースもあります。
相談する際の弁護士費用は、最初に支払う着手金と、解決後に支払う報酬金とに分かれています。着手金は、協議・調停・訴訟いずれの段階で受任するかによっても異なるものの、概ね20万円から50万円程度 です。離婚事件の報酬金については争点別に設定されていることがほとんどですが、何が争点になるのかは個々のケースによりけりです。一般的には、慰謝料請求のように金銭的価値(経済的利益)を得られた際に、その10%を報酬としていただくことが多い です。
8. モラハラの慰謝料に関するよくある質問
9. まとめ モラハラで慰謝料請求するなら裁判を考えよう
一般的に、モラハラを理由とする離婚や慰謝料請求は難しいといわれています。なぜなら、どのような行為がモラハラに当たるのか特定が難しいこと、証拠による証明が難しいこと、何より相手がモラハラをしている認識がないことなどが要因として挙げられるためです。
とはいえ、確実な証拠を積み重ねることで、モラハラを理由に慰謝料請求を認めた裁判例もでてきました。きちんと準備して対応することで適切な慰謝料請求が認められる場合もあるので、モラハラ被害に悩まれている場合は、諦めずに一度専門家に相談してみましょう。
(記事は2025年3月1日時点の情報に基づいています)