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1. 配偶者が同性と不倫した場合、離婚できる?
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1-1. 配偶者との合意があれば離婚は可能
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1-2. 合意がなくても、裁判によって離婚することは可能
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1-3. 同性との不倫は、不貞行為にあたるのか?
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2. 配偶者が同性と不倫した場合、慰謝料請求はできる?
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2-1. 同性との不倫についても、慰謝料請求は可能
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2-2. 同性との不倫について認められる慰謝料額はどのくらい?
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2-3. 配偶者と不倫相手、慰謝料はどちらに請求する?
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3. 同性との不倫に関する慰謝料請求の手続き
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3-1. 【STEP1】証拠の確保
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3-2. 【STEP2】裁判外での交渉(示談交渉)
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3-3. 【STEP3】調停で請求(主に配偶者に対して)
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3-4. 【STEP4】裁判
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4. 同性と不倫した配偶者と離婚する際の注意点
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4-1. 慰謝料について決着をつけておく
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4-2. 離婚条件を漏れなく、適切に決める
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4-3. 離婚公正証書を作成する
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5. 配偶者が同性と不倫したとき、弁護士に相談するメリット
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5-1. 最新の専門的な知識を得ることが可能
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5-2. 裁判も見越した証拠の収集方法についてアドバイスが受けられる
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6. 同性との不倫に関してよくある質問
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7. まとめ 同性不倫の解決には、弁護士の存在が有効
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1. 配偶者が同性と不倫した場合、離婚できる?
配偶者が同性と不倫していたことが発覚した場合、離婚が可能かどうかは、配偶者との間で合意があるかどうかによって異なります。
1-1. 配偶者との合意があれば離婚は可能
夫婦での話し合いによる協議離婚は、合意に至れば理由は問われません。したがって、配偶者が同性と不貞行為を行っていた場合も夫婦双方が合意し、離婚届を提出すれば協議離婚が成立します。
1-2. 合意がなくても、裁判によって離婚することは可能
もし配偶者が夫婦間の話し合いで離婚に応じない場合、調停や裁判を通じて離婚を請求することになります。
この場合、民法770条に定められた法定離婚事由があった場合、離婚が認められます。法定離婚事由としては「配偶者に不貞行為があったとき」、または「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」があります。
1-3. 同性との不倫は、不貞行為にあたるのか?
かつて「不貞行為」は異性間の肉体関係を前提とする考えが一般的でした。そのため、同性の不倫は、法定離婚事由中の不貞行為にはあたらず、代わりに婚姻を継続し難い重大な事由があるとして離婚が認められてきました。
しかし、現代社会では性指向の多様性の広まりから不貞行為の意義も広がっており、不貞行為を異性間での性的関係に限ることは必ずしも一般的な感覚と合致しないと言えます。
実際、不貞行為は異性間の不倫に限らず、同性間の夫婦共同生活を破壊するような性行為と類似する行為についても不貞行為に該当するとして、同性不倫に対して慰謝料の請求を認めた裁判例も現れています(東京地裁令和3年2月16日)。今後は、同性との不倫であっても裁判所が不貞行為があったとして離婚を認めることになると考えられます。
2. 配偶者が同性と不倫した場合、慰謝料請求はできる?
同性との不倫が発覚した場合、慰謝料請求ができるのか、請求できる金額、請求する方法について解説します。
2-1. 同性との不倫についても、慰謝料請求は可能
不貞行為は、異性間の肉体関係に限らず、同性間における性行為やこれに類似する行為も含まれると考えられます。そのため、配偶者が同性と不倫した場合、この精神的苦痛に対する慰謝料を請求することは可能です。
2-2. 同性との不倫について認められる慰謝料額はどのくらい?
一般に、異性間の不倫の慰謝料は50万から300万円が相場とされています。慰謝料の金額を算定するにあたっては、離婚の有無、夫婦間に未成熟子がいるかどうか、不貞行為の回数や期間などの事情を広く総合的に考慮されます。
上で見た2021年(令和3年)の裁判例では、慰謝料が10万円と認定されました。相当控えめな金額に見えますが、この判断にあたっては、夫婦が離婚をしていないこと、原告である夫が、妻と被告女性が性行為を行うことは許容していなかったものの、親しく付き合うこと自体は許容していた、といった事情も考慮されています。この事例の10万円という金額は、同性不倫の慰謝料は低額であると判断されたことを示すとは限りません。
現時点では同性不倫に関する裁判例は数が少なく、慰謝料額の相場は明確に確立されておらず、担当の裁判官によって判断が大きく異なる可能性があります。しかし、近年の性的指向の多様性を認める社会的な傾向に照らせば、同性不倫と異性不倫とで極端な差を設ける必要はないのではないかと考えられます。
2-3. 配偶者と不倫相手、慰謝料はどちらに請求する?
慰謝料は、配偶者にも不倫相手にも請求することが可能です。
ただし、両方に請求しても、支払われる総額が増えるわけではなく二重取りはできません。請求相手を決めるにあたっては、感情的な点のほか、今後の離婚の有無、相手の資力も考慮することが大切です。
不倫発覚後も離婚はせずに、不倫相手に慰謝料請求をし、不倫相手が慰謝料を支払った場合、不倫相手は、不倫関係になった配偶者に対し、その人が本来負担すべき部分(原則として半額)の支払いを求めることができます。これを求償権と言います。求償権を行使されると、いったん入った慰謝料の一部が、不倫相手に戻ってしまうことになるため、不倫相手との間で求償権を放棄する約束をしておくことが重要になります。
3. 同性との不倫に関する慰謝料請求の手続き
同性との不倫について慰謝料を請求する場合、一般的に以下の手順を踏みます。
3-1. 【STEP1】証拠の確保
具体的に慰謝料請求をする前段階で不倫を裏づける証拠を確保しておきます。
確定的な証拠がなくても慰謝料請求をすることは可能ですが、請求したあとに相手が不倫の事実を否定した場合、そのあとで証拠を確保することは難しく、あらかじめ証拠を確保しておくことが好ましいです。
同性の不倫の場合、一見すると不倫関係とわからないことがあるため、両者の関係性を証明することが難しいケースが少なくありません。そのため、次のような直接的な証拠が有効となります。
肉体関係があったことがわかる写真や動画
不倫関係がわかるメールやLINEのやりとり
ラブホテルに2人で出入りする写真や動画
上記のような直接的な証拠を確保することが望ましいですが、確保が難しい場合は、ホテルや旅行の領収証やクレジットカードの明細、あるいは不倫相手と会った日時や場所を記載した日記やメモといった状況証拠を押さえるようにしましょう。直接的な証拠と状況証拠を合わせることで、説得力が増します。
3-2. 【STEP2】裁判外での交渉(示談交渉)
どんな内容の文書を誰から誰宛てに差し出されたかを証明する内容証明郵便などで慰謝料を請求します。効果的な文面を作成することは難しいため、弁護士に請求書面の作成を依頼することを検討するとよいでしょう。
3-3. 【STEP3】調停で請求(主に配偶者に対して)
配偶者に対し慰謝料を請求する場合、調停委員を間に入れた離婚調停のなかで慰謝料の支払いを求めることができます。
調停は、家庭裁判所内で行う話し合いですが、調停委員を介して夫婦が顔を合わせずに話し合いを行うため、冷静に法的な協議を進めることが期待できます。
3-4. 【STEP4】裁判
交渉や調停が合意に至らない場合、裁判で慰謝料の支払いを求めます。裁判では不貞行為の証明が必要となるので、証拠を提出する必要があります。

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4. 同性と不倫した配偶者と離婚する際の注意点
離婚する際の注意点は、基本的に同性と不倫した配偶者と離婚する場合と異なりません。
4-1. 慰謝料について決着をつけておく
同性の不倫であっても慰謝料を請求することは可能ですが、裁判例の数はまだ少なく、慰謝料額の相場が形成されているとは言えません。
慰謝料額は、担当する裁判官によって判断が大きく異なる可能性があり、場合によっては非常に低い金額が認定されてしまうリスクがあります。
そこで、配偶者、不倫相手との間で慰謝料額について折り合いがついているのであれば、離婚の前に合意内容をきっちり書面に残しておき、離婚後に紛争とならないようにしておくことが重要です。
4-2. 離婚条件を漏れなく、適切に決める
協議離婚にあたっては、以下の離婚条件を決めておきましょう。
財産分与
親権者を父母のいずれにするか(子どもがいる場合)
養育費の金額(子どもがいる場合)
面会交流に関する取り決め(子どもがいる場合)
年金分割
親権以外の条件については、一定期間内であれば離婚後に決めることもできます。ただし、離婚後に取り決めをまとめていく労力は大きく、離婚前に合意しておくことをお勧めします。
4-3. 離婚公正証書を作成する
財産分与や養育費について合意をしても、支払いがされなければ新たに審判や裁判を申し立てて、支払いを求めなければなりません。このような事態に備え、高い法的効力を持つ公正証書を作成し、強制執行認諾文言を付けておけば、新たに裁判などをしなくても相手の財産を差し押さえることができます。強制執行認諾文言は、養育費などの支払いが滞った場合にはただちに強制執行を受けてもやむを得ないと認めたものだからです。
公正証書の作成にあたっては、公証人と協議して文案を作成し、証書の作成のために役場に赴く必要があります。一定の時間が必要となるものの、それ以上の効果が見込めるため、可能であれば作成しておくことが好ましいです。
5. 配偶者が同性と不倫したとき、弁護士に相談するメリット
同性不倫の慰謝料請求や離婚は、通常のケースよりも証拠集めが難しく、法律的な解釈も複雑になりがちです。弁護士に相談することで、次のようなメリットがあります。
5-1. 最新の専門的な知識を得ることが可能
同性不倫は注目されてからまだ日が浅く、裁判例も集積していないため、インターネット上の情報も豊富ではありません。
直近の裁判例はインターネット上に掲載されている数が少なく、当事者の年齢、性別、具体的な不貞行為の内容などを含め、どのような事案かを調べるには、有料の判例データベースを利用する必要があります。弁護士に相談することで最新の専門知識を得られ、的確に手続きを進めることが可能となります。
5-2. 裁判も見越した証拠の収集方法についてアドバイスが受けられる
同性間の不倫の証拠が十分かどうかの判断は、最終的に裁判官が行うため、裁判で不十分と判断される証拠は、裁判以前の交渉段階においても効力は限定されます。
裁判で各種証拠がどのような評価をされるかについて、裁判官に次いで把握しているのは弁護士だけであり、裁判所に評価される証拠を選んで、その収集方法をアドバイスすることが可能です。
6. 同性との不倫に関してよくある質問
慰謝料の請求が認められる「不法行為」は、性行為またはこれに類似する行為を意味します。キスは性行為またはこれに類似する行為に該当しないため、原則として慰謝料の請求は認められません。
離婚後であっても、不貞行為の事実及び不貞行為の相手を知ったときから3年以内であれば慰謝料を請求することが可能です。
ただし、不貞行為の事実を知らなかったとしても、不貞行為があったときから20年が経過すると慰謝料は請求できません。
配偶者が同性と不倫していたとしても、離婚せずに慰謝料の請求だけを行うことも可能です。なお、離婚せずに慰謝料請求をした場合、離婚した場合に比べて慰謝料の金額は低くなる傾向にあります。
7. まとめ 同性不倫の解決には、弁護士の存在が有効
同性との不倫も、法的には異性との不倫と同様に扱われるケースが増えています。
離婚や慰謝料請求の場面では、異性との不倫同様に対処することは可能ですが、証拠集めが難しく、裁判所の判断も固まっていないという点で対応には工夫が必要です。
同性不倫で悩んでいる場合は、この分野に精通した弁護士に相談しながら解決をめざすのが望ましいと言えます。
(記事は2025年9月1日時点の情報に基づいています)