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1. 不貞行為の定義は?どこからが不貞行為になるの?
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2. 不貞行為と不倫・浮気との違い
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3. 不貞行為はどこから?
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3-1. 不貞行為に該当しやすいケース
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3-2. 不貞行為に該当しないケース
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4. 不貞行為の慰謝料は誰に請求する?相場は?
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5. 不貞行為をされた場合の離婚と慰謝料請求の進め方
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5-1. 協議離婚
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5-2. 調停離婚
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5-3. 裁判離婚
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6. 不貞行為をしても離婚や慰謝料請求が難しいケース
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6-1. 不貞行為の証拠がない
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6-2. 時効が成立している
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6-3. 夫婦関係が破綻していた
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6-4. 不倫相手に独身と嘘をついていた
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7. 配偶者の不貞行為が発覚したときの相談先
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7-1. 友人・両親
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7-2. 男女問題に強い弁護士
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7-3. 探偵・興信所
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8. 不貞行為に関するよくある質問
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9. まとめ 配偶者の不貞行為は弁護士に相談しよう
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1. 不貞行為の定義は?どこからが不貞行為になるの?
不貞行為(ふていこうい)とは、「既婚者が、夫または妻以外の者と自由な意思のもとに性的関係(肉体関係)を結ぶこと」を指す法律用語です。
夫婦には相互に貞操義務があるため、一方がこれを侵害すれば「不貞行為」となり、婚姻関係を破壊させる行為として、慰謝料請求や離婚請求が認められることになります。
不貞行為に該当するには、自らの意思により性的関係を持つことが必要です。そのため、不同意性交(刑法177条)の被害者になったなど自らの意思に基づかず性的関係を持ってしまった場合には「自由な意思」ではないので、不貞行為には該当しません。
2. 不貞行為と不倫・浮気との違い
不貞行為と同じような意味を持つ用語として、不倫や浮気があります。ただし、不倫や浮気は、法律用語ではありません。一般的に、「不倫」は既婚者が配偶者以外の人と交際関係にあることを指し、「浮気」は、既婚・未婚を問わずパートナー以外の人と交際関係にあることを指します。これらに対して、「不貞」は、既婚者がその自由な意思で配偶者以外と性的関係を持つことを指します。
3. 不貞行為はどこから?
浮気に関しては、どこからが浮気なのか人によって基準が異なるでしょう。一方で、法律上の不貞行為については、どこから該当するのか明確です。以下で解説します。
3-1. 不貞行為に該当しやすいケース
単にデートをしていただけでは不貞行為に該当するとは言えません。不貞行為に該当するのは性行為(男性器を女性器に挿入する行為)をした場合です。性交類似行為(オーラルセックスなど)も含まれます。
相手と同棲していたり、ラブホテルに長時間滞在していたり、宿泊を伴う旅行をしているのであれば、仮に、不貞行為を否定していたとしても、不貞行為を推認させる行為として、裁判上認定される可能性が高いです。
私が過去に担当したケースでも、相手は不貞行為を否定していましたが、不貞相手の自宅に宿泊している事実を主張し、立証した結果、最終的に、裁判所には不貞行為の存在を認めてもらうことができ、慰謝料請求も認められました。
3-2. 不貞行為に該当しないケース
性行為を伴わないいわゆるプラトニックラブの関係、相手に好意を伝える頻繁なメッセージのやり取り、二人で出かける、相手と手をつなぐ、相手とキスをするといった行為は、性行為や性交類似行為にも該当しないため、不貞行為とは認められないでしょう。
ただし、上記の行為が原因で夫婦関係が悪化し、離婚にまで至れば、不貞行為に基づく慰謝料ではなく、離婚慰謝料が認められる可能性があります。
4. 不貞行為の慰謝料は誰に請求する?相場は?
不貞行為の慰謝料は、配偶者のみならず、不貞相手に対しても請求することができます。相場は、数十万円から300万円程度です。
一般的には、不貞行為が原因で離婚する場合の慰謝料の相場は、200万円から300万円程度、離婚しない場合の慰謝料の相場は、数十万円から150万円程度です。
不貞行為の慰謝料は、以下のような様々な事情が考慮されたうえで、慰謝料の金額が決められます。
婚姻期間の長さ、不貞期間の長さ
不貞行為の回数、不貞行為の悪質性
子どもの存在
不貞行為前の夫婦関係の破綻の程度
不貞行為による破綻の程度など
婚姻期間や不貞期間が長ければ長いほど慰謝料の金額が高くなります。
また、配偶者だけに慰謝料を請求する場合と、配偶者と不貞相手に慰謝料を請求する場合とでは、配偶者のみを相手にした方が認定される慰謝料の金額が低くなる傾向にあります。私が過去に担当した裁判では、婚姻期間が約10年、不貞期間が約2年、未成年者の子どもが一人いて、不貞行為が原因で離婚して配偶者にだけ慰謝料を請求したというケースにおいて、250円の慰謝料が認められました。
5. 不貞行為をされた場合の離婚と慰謝料請求の進め方
5-1. 協議離婚
夫婦間の協議により、離婚及び離婚条件について合意する手続きが協議離婚です。日本の離婚において一番多い離婚方法で、慰謝料を含むその他の離婚条件(親権者、養育費、面会交流、財産分与等)を決めるのが一般的です。
【メリット】
他の手続き(調停離婚、裁判離婚)とは異なり、費用が安く、比較的早期に解決できます。
【デメリット】
一方的に不利な条件で離婚条件を呑まされてしまう可能性があります。そのため、協議段階から弁護士に依頼するというのも有力な選択肢の一つです。
なお、弁護士に依頼できるのは調停や裁判からと勘違いしている人が多い印象です。私の事務所に相談に来られる方にも、協議離婚は弁護士に依頼できないと思っている人は意外と多いです。弁護士は法律事務全般について委任を受けることが可能なので、協議離婚の段階から、当事者の代理人となって相手と交渉できます。
協議内容について公正証書を作成する方法も有益です。公正証書を作成しておけば、相手が慰謝料や養育費の支払いを怠った場合、裁判を経ることなく、相手の財産や給与に対して強制執行することができます。
5-2. 調停離婚
調停離婚とは、家庭裁判所において、調停委員に間に入ってもらい、離婚や離婚条件について協議を行う手続きです。裁判所で行う手続きではありますが、最終的には、当事者の合意がない限り、調停は成立しないので、協議離婚と基本的には変わりません。当事者双方が内容に合意すれば調停が成立し、調停調書が作成されることになります。
【メリット】
調停委員に間に入ってもらうことで、相手と直接やり取りをしなくても済みます。調停調書には判決と同様の効力があるので、相手がお金を支払わない場合には相手の財産に対して強制執行することができます。
【デメリット】
解決までにある程度の時間がかかります。各地の家庭裁判所によっても異なりますが、調停期日は1カ月〜1カ月半に1回のペースで開催されるため、争点がたくさんあると何度も調停期日が開かれることになり、解決まで1年程度の期間を要することもあります。過去に私が担当した調停離婚のケースにおける平均的な解決期間は、半年程度です。
5-3. 裁判離婚
調停でも離婚が成立しなければ、最終的には離婚裁判を起こすことになります。なお、調停を経ずにいきなり離婚裁判を起こすことはできません。離婚裁判の前に、必ず調停手続きを経る必要があります。これを「調停前置制度」と言います。
裁判離婚とは、民法770条1項各号の離婚事由が存在することを主張・立証して、裁判所に判決で離婚を認めてもらう手続きです。
【メリット】
協議離婚や調停離婚とは異なり、離婚事由さえ認められれば、相手が応じなくても、離婚が認められます。
ただし、離婚事由や慰謝料の支払いが認められるためには、客観的証拠の有無が必要です。例えば、不貞行為を理由とする離婚請求であれば、不貞相手とラブホテルに滞在していたところを撮影した写真、不貞相手とのメッセージのやり取りなどが客観的な証拠となります。
【デメリット】
調停を経た上での手続きとなるため、解決までに相当な時間がかかることです。一審判決で負けた場合には控訴することもできるので、さらに時間がかかるでしょう。私が担当したケースでは、一審でこちらが勝訴し、それに対して相手が控訴し、控訴審でもこちらが勝訴しましたが、相手がさらに上告(上告は棄却)までしてきたために、裁判開始時時から上告が棄却されるまで、2年近くかかりました。調停の期間も含めると、トータルで2年半近くかかりました。
6. 不貞行為をしても離婚や慰謝料請求が難しいケース
相手が交渉に応じれば、慰謝料の支払いや離婚に合意してもらうことができます。一方で、裁判で慰謝料の請求や離婚を求めるとなると、難しいケースがあります。
6-1. 不貞行為の証拠がない
裁判では、不貞行為の証拠がないと、離婚請求や慰謝料請求は認められません。不貞行為の証拠とは、不貞相手とラブホテルに入る写真、不貞相手との性行為を撮影した写真や動画(いわゆるハメ撮り)、不貞相手とのLINEのやり取りなどです。不貞相手と肉体関係を持ったことを認めている発言を記録した録音データや不貞行為を認める旨を記した誓約書なども立証する証拠となり得ます。
ただし、不貞行為の証拠がなくても、相手が応じれば、離婚も慰謝料請求も認められることになります。
6-2. 時効が成立している
慰謝料の請求権が時効にかかっていると、慰謝料請求は認められません。慰謝料を請求する側が、不貞行為があったことと不貞相手を知ってから3年以上経過すると、慰謝料請求権は時効にかかるため、不貞相手から時効を援用されると、慰謝料請求は認められません。時効の援用とは、不貞相手が時効だから慰謝料は払わないと宣言することです。
ただし、不貞行為が原因で離婚に至った場合では、不貞行為から3年以上経過していたとしても、配偶者に対しては離婚慰謝料を請求することが可能です。
6-3. 夫婦関係が破綻していた
不貞行為当時、すでに夫婦関係が破たんしていたときも、慰謝料請求は認められません。夫婦関係が破たんしている状態とは、別居が相当長期間(5年以上)にわたっていたり、不貞行為の前から夫婦が離婚に合意していたりしたケースなどです。
なお、実際には別居はしていなくても、家庭内別居状態が長期間にわたっていれば、夫婦関係が破たんしていると評価されることもあります。
6-4. 不倫相手に独身と嘘をついていた
不貞相手に対して独身と偽り交際を行い、不貞相手が過失なくそれを信じていた場合は、不貞相手に対する慰謝料の請求は難しいです。ただし、配偶者に対しては慰謝料請求が可能です。
なお、独身と偽っていた配偶者は、不貞相手から、貞操権侵害に基づく慰謝料請求を受ける可能性があります。貞操権の侵害とは、自由意思で性行為をするかどうか決める権利です。相手に独身と偽って性行為をすれば、この権利を侵害したと判断されることが考えられます。
7. 配偶者の不貞行為が発覚したときの相談先
7-1. 友人・両親
配偶者の不貞行為が発覚した場合は、友人や両親に相談することも考えられます。友人や両親へ相談すれば、メンタル面でサポートしてくれるでしょう。
ただし、法的な助言については、専門家ではないため、過信せずに参考程度に考えるようにした方が良いでしょう。誤ったアドバイスを実践すれば、不利な状況に追い込まれる恐れもあります。離婚条件など法律的な問題は法律の専門家である弁護士に相談してください。
7-2. 男女問題に強い弁護士
離婚や慰謝料請求は、弁護士に相談しましょう。離婚や慰謝料請求をする際のメリットやデメリット、解決方法の選択肢などのアドバイスをしてもらうことができます。離婚や慰謝料請求を決意してからでも良いですし、まだ迷っている段階でも弁護士に相談することは有益です。弁護士に相談や依頼をする際には、離婚や男女問題に強い弁護士を選んだ方が良いでしょう。
7-3. 探偵・興信所
相手に疑わしい行動はあるが、不貞の決定的な証拠まではつかめていないときは、探偵や興信所に相談する方法があります。相手の素行調査を依頼して、証拠を集めてもらうことができます。調査費用は安くはありませんが、不貞相手と密会する日時や場所が明確に分かっていれば、ピンポイントで依頼して費用を安く抑えることも可能です。
また弁護士に相談した際に、提携する興信所を紹介してもらえることもあります。
8. 不貞行為に関するよくある質問
9. まとめ 配偶者の不貞行為は弁護士に相談しよう
不貞行為は法律用語であり、既婚者が配偶者以外の者と、自分の意思で性的関係を持つことです。もし配偶者が不貞行為をしているのであれば、慰謝料を請求する前に弁護士に相談するのがおすすめです。
事前に弁護士に相談をしておけば、今ある証拠が有効か、慰謝料が増額や減額する要因があるか、相手がどう反論してくるのかなどを踏まえてアドバイスがもらえるでしょう。
(記事は2025年5月1日時点の情報に基づいています)