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モラハラで離婚できる? 手続きの流れや証拠の集め方を解説

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配偶者からの精神的暴力(モラハラ)を理由に離婚しようとする場合、証拠集めをはじめとした事前の準備が必要です(c)Getty Images
人格の否定や尊厳を傷つける行為、配偶者からの精神的な暴力を総称して「モラハラ」と呼びます。モラハラを理由に離婚しようとしても話し合いでは合意に至らない場合、どのような手続きが必要なのでしょうか。モラハラによる離婚手続きや証拠集めのほか、離婚しようとする際の注意点、さらには慰謝料の相場について、弁護士が裁判例を交えてわかりやすく解説します。
目 次
  • 1. モラハラとは
  • 2. モラハラを理由に離婚できるか?
  • 2-1. 夫婦間で合意すれば離婚できる|協議離婚・調停離婚
  • 2-2. 相手が拒否しても離婚原因があれば離婚できる|裁判離婚
  • 2-3. モラハラを理由に離婚するのが難しいケース
  • 3. モラハラを理由に離婚したい場合にとるべき対応
  • 3-1. モラハラの証拠を集める
  • 3-2. 別居する
  • 3-3. 離婚事件を得意とする弁護士に相談する
  • 4. モラハラを理由に離婚したい場合の注意点
  • 4-1. 離婚の切り出し方に注意する
  • 4-2. すぐに離婚できるとは限らない
  • 4-3. 離婚の意思を強く持つ
  • 5. モラハラ配偶者との離婚をめざすにあたっての事前準備
  • 5-1. 住居と生活費のめどを立てる
  • 5-2. 配偶者の収入や財産に関する証拠を確保する
  • 6. モラハラの慰謝料相場|50万~300万円
  • 7. モラハラを理由に離婚を考えている人から、よくある質問
  • 8. まとめ モラハラを理由に離婚したい場合は、弁護士のサポートが有用
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1. モラハラとは

「モラハラ」とは「モラル・ハラスメント」の略称です。日本語で言えば、道徳や倫理から外れた言動や態度による嫌がらせ​​を指します。法律上の明確な定義はありませんが、言葉や態度などによって人格や尊厳を傷つけること を指すケースが多いと言えるでしょう。

また、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(DV防止法)」第1条第1項における「身体に対する暴力に準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動」(精神的暴力)をモラル・ハラスメントと称することもあります。

たとえば、次のような行為がモラハラに該当すると考えられます。

  • 相手を侮辱したり、暴言を浴びせたりすること

  • 相手を長時間無視すること

  • 相手の行動を過度に制限したり、監視したりすること

モラハラは、離婚との関係では、法律上の離婚原因である「婚姻を継続し難い重大な事由」(民法第770条第1項第5号)に該当するかどうかの問題となります。

配偶者以外の人に対して行われたモラハラ的な言動が離婚原因に該当することもあります。

裁判例では、妻が夫の恩師に対して、「私は夫に棄てられた」という虚偽の手紙を送った事案があります。この事案においては、妻がそのような中傷の手紙を送ったことによって婚姻関係が破綻したとして、夫から妻に対する離婚請求と慰謝料請求が認められています。

2. モラハラを理由に離婚できるか?

モラハラを理由として離婚を成立させる手続きは、大きく2つのパターンに分けられます。

2-1. 夫婦間で合意すれば離婚できる|協議離婚・調停離婚

協議離婚とは、夫婦の双方が離婚することに合意し、離婚届を市区町村役場に提出することによって離婚する方法で、裁判所を利用せずに離婚することができます。協議離婚をする場合、離婚に際して取り決めた事項をまとめた離婚協議書を作成することが多いです。

調停離婚とは、家庭裁判所の調停手続きを利用して離婚する方法です。調停手続きでは、1名の裁判官と2名の調停委員から構成される調停委員会に間に入ってもらい、家庭裁判所で離婚について話し合いを行います。調停手続きにおいて離婚の合意ができれば、調停成立となり離婚が認められます。

このように、協議離婚と調停離婚については、夫婦で離婚の合意ができれば、その理由を問わず離婚することが可能 です。

2-2. 相手が拒否しても離婚原因があれば離婚できる|裁判離婚

配偶者が離婚を拒否し、離婚の合意に至らない場合、裁判離婚をめざすことになります。裁判離婚とは、家庭裁判所の判決によって離婚する方法です。裁判手続きを利用することになるため、証拠の有無が特に重要となります。

裁判離婚においては、夫婦の一方が離婚を拒否していても、法律上の離婚原因が認められれば離婚することが可能 です。

民法第770条第1項は5つの離婚原因を定めており、モラハラはそのうちの1つである「婚姻を継続し難い重大な事由」(同項第5号)にあたる可能性があります。「婚姻を継続し難い重大な事由」とは、婚姻関係が破綻し、回復の見込みがない状態のことを言います。

したがって、モラハラが「婚姻を継続し難い重大な事由」にあたるためには、その内容や程度が婚姻関係を破綻させ、回復の見込みがない状態に至らせるような重大なものである必要があると考えられます。

たとえば、配偶者が重大な侮辱行為を行った場合やモラハラが長期間にわたる場合などには、「婚姻を継続し難い重大な事由」にあたる可能性 があるでしょう。

裁判例では、妻が夫に対し、「一緒になって一日として面白い日も、さっぱりした日もない。毎日あんたと一緒なら死んだほうがましだ」と侮辱したり、他人の面前で夫に対する愛情がないことを公言したりしたうえ、裁判所での和解手続きにおいても「あんたの給料では干乾しになる」などと言ってまったく話し合いにならなかったという事案があります。この事案においては、愛情に満ちた夫婦共同生活を回復する見込みはほとんどないとして、「婚姻を継続し難い重大な事由」が認められています。

2-3. モラハラを理由に離婚するのが難しいケース

モラハラの内容や程度が重大とまでは言えない場合、モラハラだけを理由に「婚姻を継続し難い重大な事由」が認められる可能性は低いでしょう。

たとえば、モラハラが一時的なものであったり、ありふれた夫婦喧嘩程度のものであったりする場合には、「婚姻を継続し難い重大な事由」があるとは言えない と考えられます。

裁判例では、妻が夫に対し、夫のモラハラなどにより全般性不安障害に陥り、別居に至ったため、「婚姻を継続し難い重大な事由」があるとして離婚を求めた事案があります。しかし、この事案においては、夫婦が相互理解の努力を真摯に続け、家族のあり方を熟慮することにより、婚姻関係修復の可能性がないとは言えないとして、「婚姻を継続し難い重大な事由」は認められませんでした。

このように、モラハラの内容や程度が重大とまでは言えない場合、婚姻関係は破綻していない、あるいは、回復の見込みがあると判断される可能性が高いと考えられます。

ただし、モラハラの内容や程度が重大とまでは言えない場合であっても、長期間の別居といったモラハラ以外の事情が加わることにより、総合的に見て「婚姻を継続し難い重大な事由」があると判断されるケースもあり得るでしょう。

3. モラハラを理由に離婚したい場合にとるべき対応

モラハラを理由に離婚したいケースでとるべき対応としては、主に以下の3つが挙げられます。

  • モラハラの証拠を集める

  • 別居する

  • 離婚事件を得意とする弁護士に相談する

3-1. モラハラの証拠を集める

モラハラは、相手を侮辱する、無視するといった目に見えない形で行われることが多いため、客観的な証拠が残りにくいという特徴があります。証拠がなければモラハラを立証できないため、特に裁判離婚をめざす場合には証拠を収集することが重要となります。

モラハラの証拠となり得るものとして、配偶者とのメールやLINEなどでのやりとり が考えられます。これらに配偶者のモラハラ的な発言が残されている場合には、消えてしまわないよう保存しておくようにしましょう。

配偶者のモラハラ的な発言を録音 するという方法も考えられます。ただし、録音していることに気づかれて、配偶者が逆上するといったおそれもあるため、慎重に行う必要があります。

モラハラを受けたことを日記などに記載 しておくという方法も考えられます。

ただし、日記は本人が書いたものに過ぎないため、証拠としての価値が低いと判断されるケースが少なくありません。証拠としての価値を高めるために、モラハラを受けたその都度、その内容や日付のほか、場所などを詳細かつ継続的に書き残すことが重要です。

また、モラハラが原因で精神疾患を患った場合、医師の診断書 などが証拠になる可能性があります。医師の診断を受ける際には、配偶者のモラハラの内容を正確に説明するように心がけましょう。

3-2. 別居する

配偶者によるモラハラから自分を守るためには、別居することも選択肢です。特にモラハラの程度が著しい場合には、速やかな別居を検討するべき でしょう。別居することでモラハラの被害を回避できます。

また、別居が相当期間に及べば、「婚姻を継続し難い重大な事由」が認められる可能性が高まります。相当期間の別居については、3年以上が目安 と考えられています。

別居にあたっては、別居先を探したり、その後の手続きで必要となる証拠を確保したりといった準備が必要です。

なお、配偶者に何も伝えずに別居すると、警察に行方不明者届を出される可能性があるため、モラハラを理由に別居する旨の最低限のメッセージを置き手紙、メールやLINEなどの方法で残しておくことが大切です。

3-3. 離婚事件を得意とする弁護士に相談する

モラハラを理由に離婚したい場合、離婚事件を得意とする弁護士に相談するのが望ましいでしょう。離婚事件を得意とする弁護士に相談することで、離婚成立までの手続きや見通しなどについて適格なアドバイスを受けられます。

離婚請求、慰謝料請求、別居期間中の生活費の請求といった手続きを一任することも可能です。

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4. モラハラを理由に離婚したい場合の注意点

配偶者のモラハラを理由として離婚したい場合、以下の点に注意してください。

4-1. 離婚の切り出し方に注意する

モラハラを理由に離婚したい場合、離婚の切り出し方に注意が必要です。お互い感情的になってしまう可能性があり、逆上した配偶者から危害を加えられるおそれがある ためです。感情的にならず、離婚したい理由を冷静に配偶者に伝えるよう心掛ける必要があります。

自分で離婚を切り出すのが難しい場合、弁護士に相談し、離婚の話し合いを代行してもらうことを検討しましょう。

4-2. すぐに離婚できるとは限らない

モラハラを理由に離婚したいと思ったとしても、すぐに離婚できるとは限りません。配偶者が頑なに離婚を拒否する場合、長期戦も覚悟しなければなりません。

弁護士に依頼する場合であっても、弁護士と協力しながら粘り強く対応を続ける必要があります。

4-3. 離婚の意思を強く持つ

モラハラを理由に離婚したい場合、離婚の意思を強く持つことも重要です。配偶者が反省するそぶりを見せたことをきっかけに、離婚を踏みとどまってしまうケースが見られます。

しかし、配偶者の態度が真摯な反省に基づくものとは限らないため、慎重に見極めなければなりません。配偶者が真摯に反省している場合には、もう一度やり直すという選択肢もあり得ますが、そうではない場合には同じことが繰り返される可能性があります。

一時の感情に流されることなく冷静に検討し、そのうえで離婚を決断したならば、離婚の意思を強く持って手続きを進めましょう。

5. モラハラ配偶者との離婚をめざすにあたっての事前準備

5-1. 住居と生活費のめどを立てる

配偶者と別居する場合、別居先を探す必要があります。家賃の安いところを探す、実家のサポートを受けるといったことが必要な場合もあるでしょう。

また、生活費も確保しなくてはなりません。配偶者に対し、別居期間中の生活費として婚姻費用を請求することも考えられますが、配偶者が任意に支払うとは限らず、時間がかかるケースもあります。

仕事を探す、使える公的制度がないか行政に相談するなどして、生活費のめどを立てることが重要です。

5-2. 配偶者の収入や財産に関する証拠を確保する

別居すると、元の家にあった証拠を収集するのが難しくなります。別居する前に、その後の手続きで必要となる証拠を確保しておかなければなりません。

たとえば、別居期間中の生活費として婚姻費用を請求する場合、配偶者の収入に関する資料が必要です。そこで、配偶者の源泉徴収票や給与明細などのコピーを取っておいたり、写真撮影したりしておくことをお勧め します。

また、離婚に際して財産分与を請求する場合、配偶者の財産に関する資料が必要となります。配偶者名義の預金通帳などのコピーを取っておいたり、写真撮影したりしておくとよい でしょう。

なお、預金通帳のコピーなどを取る場合、表紙からすべてのページのコピーなどを取るのが望ましいです。それが難しいときには、少なくとも、金融機関名と支店名、口座番号および口座名義人が記載されているページと別居時点の残高が記載されているページをコピーするなどしてください。

6. モラハラの慰謝料相場|50万~300万円

モラハラの慰謝料相場は、50万円から300万円程度と言われることが多いようです。このように幅があるのは、モラハラ自体に法律上の明確な定義がなくさまざまなケースがあり得るうえ、モラハラ以外の要素が合わせて問題となることもあるからと考えられます。

具体的な慰謝料の額は、婚姻期間の長さ、モラハラの悪質さなどを考慮して、ケースバイケースで判断されます。

7. モラハラを理由に離婚を考えている人から、よくある質問

Q. モラハラ配偶者と顔を合わせずに離婚することはできる?
家庭裁判所の調停手続きでは、夫婦がそれぞれ別々の待合室に待機したうえで、交互に調停室に入り、調停委員と話し合う形で進められるのが通常です。 したがって、調停手続きは、配偶者と直接顔を合わせることなく進められます。 離婚協議や裁判についても、弁護士に依頼すれば、弁護士が手続きを行うため、原則として配偶者と顔を合わせずに進めることが可能です。
Q. 子どもへのモラハラは離婚原因になる?
配偶者以外の人に対するモラハラであっても、「婚姻を継続し難い重大な事由」として離婚原因となる場合があります。 裁判例では、妻が夫に対して侮辱的な言動をしただけでなく、夫の母(妻の義母)に対しても、「ばばあ、早く死んでしまえ」と怒鳴りつけたり、80歳を超える義母が荷物を持って急な坂道を歩いているのを見ても自家用車に乗せなかったりした事案において、「婚姻を継続し難い重大な事由」を認めたものがあります。 子どもを育てることは婚姻の目的の一つと考えられるため、子どもに対するモラハラは、「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する可能性が特に高いと考えられるでしょう。
Q. 義父母からのモラハラは離婚原因になる?
義父母からのモラハラについては、それが直ちに「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するわけではないと考えられます。 ただし、配偶者が義父母によるモラハラを止める努力をしなかったり、モラハラに加担したりした場合には、「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する可能性があります。 裁判例では、夫の母(妻の義母)が妻に対し、些細な行動に必要以上の注意を与えたり、叱りつけたりして、いわゆる「嫁いびり」をしていた事案において、妻が夫に対し、自分と義母の間を取り持ってほしいと頼んでも夫は何ら誠意を見せずに取り合わなかったなどとして、「婚姻を継続し難い重大な事由」を認めたものがあります。

8. まとめ モラハラを理由に離婚したい場合は、弁護士のサポートが有用

モラハラは、法律上の離婚原因である「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する可能性があります。離婚原因が認められれば、配偶者が離婚を拒否していても、裁判離婚することが可能です。

そのためには、十分な証拠を収集し、適切な法律上の主張を行う必要があります。また、モラハラをした配偶者を相手に離婚に関するやりとりを自身で行うのは容易ではないでしょう。

モラハラを理由に離婚したい場合には、早い段階で弁護士のサポートを受けることをお勧めします。

(記事は2024年12月1日時点の情報に基づいています)

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