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婚姻費用分担請求とは? 弁護士なしでもできる? 請求のデメリットも解説

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婚姻費用分担請求にはメリットとデメリットの両面がありますが、基本的にはメリットのほうが大きいと考えられます (c)Getty Images
夫婦が別居している場合、収入が少ない側または子どもと同居する側は、配偶者に対して婚姻費用の分担を請求できることがあります。弁護士のサポートを受けながら、適正額の婚姻費用を請求しましょう。婚姻費用分担請求について、弁護士がわかりやすく解説します。
目 次
  • 1. 婚姻費用分担請求とは
  • 1-1. 婚姻費用とは
  • 1-2. 別居中でも生活費や学費などの分担を請求できる
  • 2. 婚姻費用分担請求のメリットとデメリット
  • 2-1. 婚姻費用分担請求のメリット|生活水準を維持できる・早期離婚が促される
  • 2-2. 婚姻費用分担請求のデメリット|配偶者が気分を害するおそれ
  • 3. 婚姻費用分担請求のやり方(方法)と流れ
  • 3-1. 配偶者と協議する
  • 3-2. 家庭裁判所に婚姻費用の分担請求調停を申し立てる
  • 3-3. 家庭裁判所が審判によって婚姻費用を決定する
  • 4. 婚姻費用分担請求を成功させるためのポイント
  • 4-1. あらかじめ弁護士に相談する
  • 4-2. 相手の収入や資産を正確に把握する
  • 4-3. 早めに請求書を送付する|内容証明郵便を活用
  • 4-4. 合意書を公正証書で作成する
  • 5. 適正な婚姻費用の金額は?
  • 5-1. 婚姻費用算定表や詳しい計算式を用いて計算する
  • 5-2. 婚姻費用の支払い状況の実態
  • 6. 婚姻費用分担請求は、弁護士なしでも自分でできる?
  • 7. 婚姻費用分担請求の弁護士費用の目安
  • 8. 婚姻費用分担請求に関してよくある質問
  • 9. まとめ|婚姻費用分担請求を行う場合は弁護士に相談を

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1. 婚姻費用分担請求とは

「婚姻費用分担請求」とは、夫婦の婚姻生活に必要な費用(=婚姻費用)のうち、自分が負担した金額の一部を配偶者に分担するよう求める請求 です。

1-1. 婚姻費用とは

「婚姻費用」とは、夫婦の婚姻生活に必要な費用です。家賃や水道光熱費、または食費などの生活費のほか、子どもの学費、医療費、合理的な範囲の交際費などが婚姻費用に含まれます。

夫婦は資産や収入などの事情に応じて、互いに婚姻費用を分担する義務を負います(民法760条)。

1-2. 別居中でも生活費や学費などの分担を請求できる

同居している夫婦の間では、生活するなかで自然に婚姻費用を分担するのが一般的です。

これに対して、別居している夫婦は、生活のなかで婚姻費用を分担することがなくなります。そのため、婚姻費用は金銭によって精算します。

別居中の夫婦のいずれか一方が、多く支出した婚姻費用の一部について、配偶者に対して分担(支払い)を求めるのが「婚姻費用分担請求」です。婚姻費用分担請求により、別居中の生活費や子どもの学費などの一部の支払いを求めることができます

2. 婚姻費用分担請求のメリットとデメリット

婚姻費用分担請求にはメリットとデメリットの両面がありますが、基本的にはメリットのほうが大きいと考えられます。配偶者と別居する場合には、早い段階で婚姻費用分担請求を行いましょう。

2-1. 婚姻費用分担請求のメリット|生活水準を維持できる・早期離婚が促される

婚姻費用分担請求の主なメリットは、配偶者と別居中の生活費などの負担が軽くなる点です。

特に配偶者よりも収入が少ない場合は、別居によって生活費が足りなくなってしまうケースがよくあります。また、子どもと同居する場合において、自分で子どもの生活費や学費のすべてを負担しなければならないとすれば、かなり大きな負担となります。

配偶者から婚姻費用の支払いを受ければ、同居中に比べて生活水準を無理なく維持できる でしょう。

また、配偶者との離婚を希望している場合は、婚姻費用分担請求によって早期の離婚成立が促される側面もあります。

婚姻関係が継続している限り、婚姻費用の分担義務は存続します。配偶者が婚姻費用を支払いたくないと考えている場合には、支払いを打ち切るために、早い段階で離婚に応じようという心理がはたらく ことがあります。

2-2. 婚姻費用分担請求のデメリット|配偶者が気分を害するおそれ

婚姻費用分担請求を行うと、同居していないのに生活費などを分担することについて、配偶者が不公平を感じて気分を害することがあります。

しかし、婚姻費用分担請求を行うことは法律上の権利であり、むしろ婚姻費用を適切に分担することが公平です。ためらわずに婚姻費用分担請求を行うべき でしょう。

また、婚姻費用分担請求を弁護士に依頼して行う場合は、弁護士費用の支払いが発生します。まとまった金額の弁護士費用を支払うことは、経済的な負担になってしまうはずです。

しかし、婚姻費用分担請求を弁護士に依頼すれば、適正額の婚姻費用を得られる可能性が高まります。また、複数の弁護士から見積もりを取得して比較すれば、弁護士費用の負担を抑えることも可能です。

3. 婚姻費用分担請求のやり方(方法)と流れ

婚姻費用分担請求は、以下のいずれかの手続きによって行います。

  • 配偶者と協議する

  • 家庭裁判所に婚姻費用の分担請求調停を申し立てる

  • 家庭裁判所が審判によって婚姻費用を決定する

上記のほか、離婚請求と併せて婚姻費用分担請求を行う方法もあります。この場合は、離婚協議、離婚調停、離婚訴訟のなかで婚姻費用分担請求を行います。本記事では、独立して婚姻費用分担請求のみを行うケースを解説します。

3-1. 配偶者と協議する

婚姻費用分担請求は、まず配偶者との協議を通じて行うのが一般的です。協議がまとまれば、円満かつスムーズに婚姻費用の支払いを受けられます。

婚姻費用についての合意が整ったら、合意内容をまとめた書面を作成し、夫婦間で締結しましょう。合意書面を公正証書で作成すれば、婚姻費用の不払いが生じた際に、直ちに強制執行を申し立てることができます。

3-2. 家庭裁判所に婚姻費用の分担請求調停を申し立てる

婚姻費用の分担に関する協議がまとまらないときは、家庭裁判所に婚姻費用の分担請求調停を申し立てましょう。

婚姻費用の分担請求調停では、民間の有識者から選任される調停委員が、婚姻費用に関する夫婦間の話し合いを仲介します。調停委員は、夫婦の資産のほか、収入や支出などの事情を聴き、関連する資料を確認したうえで、婚姻費用の支払いに関する解決案を提示するなどして、夫婦間での合意成立をサポートします。

調停において婚姻費用の内容に夫婦が合意したら、その内容が調停調書に記載されます。調停調書の正本は、婚姻費用の不払いが生じた際に、強制執行の申立てに用いることができます。

3-3. 家庭裁判所が審判によって婚姻費用を決定する

婚姻費用の分担請求調停が不成立となった場合は、家庭裁判所が審判を行って婚姻費用の金額などを決定します。家庭裁判所は、調停において提出された資料や、審判手続きへの移行後に提出された資料を参照し、一切の事情を考慮したうえで婚姻費用に関する判断を行います。

審判の内容は審判書に記載され、正本が夫婦双方に送達されます。婚姻費用の不払いが生じた際には、審判書の正本を強制執行の申立てに用いることができます。

4. 婚姻費用分担請求を成功させるためのポイント

婚姻費用分担請求を成功させるためには、以下のポイントに留意して対応を進めましょう。

  • あらかじめ弁護士に相談する

  • 相手の収入や資産を正確に把握する

  • 早めに請求書を送付する|内容証明郵便を活用

  • 合意書を公正証書で作成する

4-1. あらかじめ弁護士に相談する

婚姻費用分担請求を行うのに先立って、あらかじめ弁護士に相談すれば、請求手続きの流れや見通しを教えてもらえます。

また、婚姻費用分担請求を弁護士に依頼すれば、請求に伴う労力やストレスを大幅に軽減できるほか、適正額の婚姻費用を得られる 可能性が高まります。

婚姻費用分担請求を行う際には、一度弁護士の話を聞いてみることをお勧めします。

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4-2. 相手の収入や資産を正確に把握する

婚姻費用の金額は、夫婦双方の収入バランスなどに応じて決まります。そのため、配偶者の収入を正確に把握することが大切です。

また、配偶者が多額の資産を持っている場合には、婚姻費用の増額を請求しやすくなります。収入と同じく、資産についてもできる限り把握しておきましょう。

4-3. 早めに請求書を送付する|内容証明郵便を活用

別居中の婚姻費用の支払いは、請求時以降の期間に限って認められるのが実務の運用となっています。そのため、できる限り多くの婚姻費用を得るには、早めに婚姻費用分担請求を行うことが大切です。

婚姻費用分担請求を行ったことを記録として残すためには、内容証明郵便で請求書を送付するのがよいでしょう。

4-4. 合意書を公正証書で作成する

夫婦間で婚姻費用に関する合意がまとまったら、その内容をまとめた公正証書の作成をおすすめします。

公正証書の原本は公証役場で保管されるので、紛失や改ざんなどのリスクがなく、婚姻費用に関する合意内容を確実に証明できます。

また、公正証書に強制執行認諾文言が記載されていれば、婚姻費用の不払いが生じた際に、それを用いて直ちに強制執行を申し立てることが可能です。

合意した婚姻費用を確実に回収したいなら、公正証書を作成するのが適切です。

5. 適正な婚姻費用の金額は?

婚姻費用の適正額は、夫婦の収入バランスや子どもの有無や人数、さらに年齢によって決まります。

5-1. 婚姻費用算定表や詳しい計算式を用いて計算する

婚姻費用の適正額を求めるには、裁判所がホームページで公表している「平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について​​」を用いるのが便利です。

子どもの有無や人数、あるいは年齢に応じた表を参照し、義務者(=支払う側)と権利者(=支払いを受ける側)の年収が交差する部分の金額を確認すれば、婚姻費用の大まかな適正額を知ることができます。

また、計算式を用いて1円単位で婚姻費用(年額)を計算する方法もあります。婚姻費用の詳しい計算方法については、以下の記事をご参照ください。

5-2. 婚姻費用の支払い状況の実態

2022年度の司法統計によると、婚姻費用の取り決めが行われた婚姻関係事件において、婚姻費用(月額)は、夫が義務者で、妻が権利者の場合、8万円以下が50%近くを占めます。下記の図版「婚姻費用の月額に関する円グラフ」を参考にしてください。

婚姻費用の月額に関する円グラフ
婚姻費用の月額に関する円グラフ。夫が義務者で、妻が権利者の場合、8万円以下が50%近くを占めます。出典:最高裁判所事務総局による「令和5年 司法統計年報 3 家事編 第26表 婚姻関係事件のうち認容・調停 生活費支払の取決め有りの件数」|最高裁判所事務総局

6. 婚姻費用分担請求は、弁護士なしでも自分でできる?

婚姻費用分担請求を行うにあたって、弁護士への依頼は必須ではありません。自分で婚姻費用分担請求を行うことも可能です。

特に、夫婦間で円満に話し合える場合には、弁護士に依頼する必要性は低いでしょう。お互いが納得したうえで婚姻費用の精算に合意できるのであれば、それに越したことはありません。自分たちだけで話し合えば、弁護士費用も節約できます。

ただし、婚姻費用について夫婦の主張が食い違っている場合には、弁護士に依頼することをお勧めします。

弁護士に依頼すれば、法的根拠に基づいて適正額の婚姻費用を請求できます。配偶者が提案する金額が妥当であるかどうかについても、弁護士のアドバイスをふまえれば適切に判断できる でしょう。

婚姻費用だけでなく、離婚も請求したい場合には、特に弁護士への依頼が推奨されます。さまざまな条件について、法的な取り扱いをふまえつつバランスよく交渉することが求められるからです。

婚姻費用や離婚について、配偶者とのトラブルが想定される場合には、自身だけで対応せず弁護士に相談するのが安心です。

7. 婚姻費用分担請求の弁護士費用の目安

婚姻費用分担請求の弁護士費用は、依頼する弁護士によって異なります。着手金は22万円から33万円程度、報酬金は得られた婚姻費用の11%から22%程度が標準的 です。

複数の弁護士から見積もりを取得すれば、弁護士費用を抑えられる場合があります。人柄や能力なども含めて、納得して依頼できる弁護士を探すことが大切です。

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8. 婚姻費用分担請求に関してよくある質問

Q. 婚姻費用分担請求をしないとどうなる?
婚姻費用分担請求をしないと、収入が少ない側や子どもと同居する側においては、生活費や学費などの負担が大きくなってしまいます。 婚姻費用分担請求は法律上の権利なので、配偶者に対して適正額を請求するようにしてください。
Q. 夫も妻に対して婚姻費用分担請求はできる?
婚姻費用分担請求は、男女を問わず行うことができます。夫のほうが妻よりも収入が少ない場合や、夫が子どもと同居する場合には、夫が妻に対して婚姻費用を請求できる可能性があります。 なお、2022年度の司法統計によると、婚姻費用の月額は、妻が義務者で夫が権利者の場合、半数ほどが4万円以下となっています。
Q. 家賃についても婚姻費用として分担を請求できる?
婚姻費用には、家賃も含まれます。したがって、別居中の家賃についても、配偶者に対して婚姻費用として分担を請求できるのが原則です。 ただし、婚姻費用として分担の対象となる家賃は、標準的な住居費の範囲内に限られます。あまりにも家賃が高すぎる物件を借りている場合は、家賃全額に関する婚姻費用分担請求は認められない可能性が高いので注意してください。
Q. 婚姻費用分担請求が認められないケースは?
別居中であっても、正当な理由なく配偶者に無断で別居を開始した場合や、DV(配偶者による家庭内暴力)やモラハラなどの危害を加えて配偶者を追い出した場合などには、婚姻費用分担請求が認められない可能性があります。このようなケースで婚姻費用分担請求を行うことは、権利濫用(民法1条3項)に当たり得るためです。 また、離婚成立後の期間については、婚姻費用分担請求は認められません。婚姻費用に当たるのは、あくまでも婚姻中に生じる生活費などに限られており、離婚後の生活費などは対象外であるためです。 ただし、子どもの生活費や学費については、親権者が元配偶者に対して養育費を請求できます。

9. まとめ|婚姻費用分担請求を行う場合は弁護士に相談を

配偶者と別居する場合には、婚姻費用分担請求を検討しましょう。

配偶者より収入が少ない場合や、別居中に子どもと同居する場合には、生活費や学費などの婚姻費用を受け取れることがあります。婚姻費用を得られれば、別居中の生活が楽になるはずです。

適正額の婚姻費用を請求したり獲得したりするためには、弁護士のサポートが役立ちます。弁護士に依頼すれば、法的根拠に基づいて婚姻費用分担請求を行うことができます。

また、配偶者との協議に加え、家庭裁判所における調停や審判の対応を弁護士に一任できるため、労力やストレスが軽減される点も大きなメリットです。

別居する配偶者に対して婚姻費用分担請求を行いたい場合は、弁護士に相談してください。

(記事は2025年1月1日時点の情報に基づいています)

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