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1. 不貞行為なし(肉体関係なし)でも、精神的苦痛の慰謝料請求はできる?
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2. 不貞行為なしでも精神的苦痛の慰謝料請求ができるケース
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2-1. 不貞行為に準じた性的な行為
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2-2. 離婚・再婚を前提とした交際
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2-3. 高額なプレゼント・生活費の援助
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2-4. 長期間の旅行
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2-5. 恋愛関係以外の不法行為|DV・モラハラなど
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3. 不貞行為なしの精神的苦痛に関する慰謝料相場
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4. 不貞行為なしの精神的苦痛に関する慰謝料が認められた裁判例
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4-1. 結婚を前提として交際していた事例|慰謝料70万円
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4-2. プレゼントや数日間の旅行をしていた事例|慰謝料10万円
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5. 不貞行為なしの精神的苦痛に関する慰謝料請求の手続き
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5-1. 示談交渉
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5-2. 調停
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5-3. 訴訟
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6. 不貞行為なしの精神的苦痛に関する慰謝料請求を成功させるためのポイント
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6-1. 精神的苦痛に繋がる事実の証拠を確保する
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6-2. できる限り話し合いで慰謝料を認めさせる
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6-3. 弁護士に相談して対応の方針を練る
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7. 慰謝料請求権の消滅時効に要注意
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8. 不貞行為なしの精神的苦痛に関する慰謝料請求のQ&A
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9. まとめ 不貞行為なしでの慰謝料請求が弁護士に相談を
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1. 不貞行為なし(肉体関係なし)でも、精神的苦痛の慰謝料請求はできる?
不倫を理由に慰謝料を請求するためには、配偶者や不倫相手の行為が「不法行為」と認められる必要があります。不法行為とは、故意または過失によって他人の権利・利益を侵害し、違法に損害を与える行為をいいます(民法709条)。
不倫のケースでは、主に性的関係(=性交または性交類似行為)があった場合、すなわち「不貞行為」が立証できた場合に不法行為責任が認められることが多いです。
しかし、性的関係を立証できなかったとしても、配偶者や不倫相手が自分の権利や利益(=夫婦生活の平穏など)を侵害したと言える場合には、不法行為に基づく慰謝料請求が認められる余地があります 。
2. 不貞行為なしでも精神的苦痛の慰謝料請求ができるケース
不貞行為(性的関係)を立証できないとしても、既婚者としての社会常識を外れた不適切な交際があったと証明できれば、慰謝料を請求できます。以下の例が挙げられます。
不貞行為に準じた性的な行為
離婚・再婚を前提とした交際
高額なプレゼント・生活費の援助
長期間の旅行
また、DVなど恋愛関係以外の不法行為が立証できた場合でも、慰謝料を請求できます。
2-1. 不貞行為に準じた性的な行為
不貞行為に当たるのは、性交および性交類似行為(肛門性交・口腔性交など)に限られます。しかし、不貞行為に至らない場合でも、配偶者以外の者と性的な行為をすることは、夫婦関係の平穏を害するものとして不法行為に当たると判断される可能性があります。
例えば、お互いの身体を触り合う行為やキスをする行為などは、その程度や頻度によっては不法行為に当たり、精神的苦痛の慰謝料を請求する余地がある と考えられます。
2-2. 離婚・再婚を前提とした交際
自分は婚姻関係を続けようとしているのに、配偶者が離婚および再婚を前提として真剣に不倫相手と交際している場合、大きな精神的苦痛が生じます。この場合は、仮に配偶者と不倫相手の不貞行為が認められなくても、不法行為に基づく慰謝料を請求できる可能性が高いです。
2-3. 高額なプレゼント・生活費の援助
既婚者であっても、配偶者以外の異性にプレゼントをすることは、社会常識の範囲内であれば問題ありません。例えば、バレンタインデーやホワイトデーの贈り物、結婚祝い、出産祝いなどです。
しかし、異性に対して高額なプレゼントを頻繁に贈ることは、社会常識の範囲を超えており、夫婦生活の平穏を害するものとして、不法行為に該当する可能性があります。また、配偶者以外の異性に対して生活費を援助すること(例:パパ活など)は、やはり夫婦生活の平穏を害するものとして不法行為に該当し、慰謝料請求の対象となる可能性が高いです。
2-4. 長期間の旅行
既婚者が配偶者以外の異性と長期間旅行に行くことは、社会常識の範囲を超えた交際と言わざるを得ないでしょう。この場合、配偶者や旅行に行った相手に対して、精神的苦痛の慰謝料を請求できる可能性があります。
2-5. 恋愛関係以外の不法行為|DV・モラハラなど
不貞行為などの恋愛関係による行為以外にも、DVやモラハラなどは不法行為に当たります。もし配偶者からDVやモラハラなどの被害を受けている場合、たとえ不貞行為を立証できなくても、配偶者に対して精神的苦痛の慰謝料を請求できます。
3. 不貞行為なしの精神的苦痛に関する慰謝料相場
不貞行為を立証できない状態で精神的苦痛の慰謝料を請求する場合、慰謝料の金額は低く抑えられるケースが多いです。不貞行為なしの慰謝料請求では、請求が認められたとしても10万円から100万円程度の金額にとどまる可能性が高い でしょう。
これに対して、不貞行為が立証できる場合には、離婚しないケースでも50万円から200万円程度、離婚するケースでは150万円から300万円程度の慰謝料が認められる傾向にあります。不貞行為の証拠がない場合は、弁護士や探偵に相談して証拠を確保することをおすすめします。

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4. 不貞行為なしの精神的苦痛に関する慰謝料が認められた裁判例
不貞行為が認定されていないにもかかわらず、配偶者の不倫相手に対する慰謝料請求が認められた裁判例を2つ紹介します。
4-1. 結婚を前提として交際していた事例|慰謝料70万円
東京地裁平成17年11月15日判決の事案では、夫が妻の不倫相手に対して慰謝料を請求しました。
東京地裁は、妻が不倫相手と結婚を前提に交際しており、その結果として妻は夫と別居して離婚に至ったことを認定 しました。妻と不倫相手の性的関係までは認定されなかったものの、東京地裁は上記の経緯を重視して、不倫相手に対して70万円の慰謝料の支払いを命じました。
4-2. プレゼントや数日間の旅行をしていた事例|慰謝料10万円
東京簡裁平成15年3月25日判決の事案では、妻が夫の不倫相手に対して慰謝料を請求しました。
夫は不倫相手に対して数万円程度のプレゼントを繰り返し贈っていたほか、不倫相手と一緒に数日間旅行に出かけたことがありました。妻はこれらの夫の行動によって精神的苦痛を感じ、精神安定剤を服用していました。
東京簡裁は、夫と不倫相手の交際関係が夫婦生活の平穏を害したことを認定 し、不倫相手に対して10万円の慰謝料の支払いを命じました。
5. 不貞行為なしの精神的苦痛に関する慰謝料請求の手続き
不貞行為以外の精神的苦痛に関する慰謝料を請求する際の手続きは、主に「示談交渉」「調停」「訴訟」の3つです。
5-1. 示談交渉
示談交渉は、裁判所を通さずに当事者同士で慰謝料の精算について話し合う手続き です。話し合いを通じて合意が得られたら、その内容をまとめた示談書を締結し、慰謝料の支払いを受けます。
示談交渉をスムーズにまとめることができれば、少ない手間で早期に慰謝料の支払いを受けることが可能です。自分で交渉するのが不安な方は、弁護士に代理交渉を依頼することもできます。
5-2. 調停
調停は、裁判所で行われる話し合いの手続き です。離婚請求を伴わない慰謝料請求については、簡易裁判所に民事調停を申し立てることができます。
調停では、調停委員が当事者双方の主張を公平に聴き取り、歩み寄りを促すなどして和解をサポートします。当事者間の合意が得られたら、その内容をまとめた調停調書が作成され、慰謝料の支払いを受けることができます。これに対して、合意が得られない場合は調停が不成立となって終了します。
5-3. 訴訟
配偶者や不倫相手との合意が得られない場合は、裁判所に訴訟を提起して慰謝料を請求することも考えられます。訴訟は、裁判所の公開法廷で行われる紛争解決手続き です。
訴訟を通じて慰謝料を請求する場合は、配偶者や不倫相手の不法行為を立証しなければなりません。どのような行為が自分の権利・利益を侵害したのか、どの程度の精神的苦痛を受けたのかなどを、証拠に基づいて立証できるかどうかがポイント です。
6. 不貞行為なしの精神的苦痛に関する慰謝料請求を成功させるためのポイント
不貞行為以外の理由による慰謝料請求を成功させるためには、以下のポイントに留意して対応しましょう。
精神的苦痛につながる事実の証拠を確保する
できる限り話し合いで慰謝料を認めさせる
弁護士に相談して対応の方針を練る
6-1. 精神的苦痛に繋がる事実の証拠を確保する
たとえ不貞行為(肉体関係)を証明できなかったとしても、身体を触り合う・キスなどの性的な行為、離婚や再婚を前提とした真剣な交際、高額のプレゼントや生活費の援助、長期間の旅行など、自分に対して不当に精神的苦痛を与えるような行為の証拠を確保 できれば、慰謝料請求が認められる可能性が高くなります。
自力で証拠を確保することが難しい場合は、探偵への依頼なども検討しましょう。探偵による尾行調査の結果、上記のような事情のほか、不貞行為の証拠も確保できるかもしれません。
6-2. できる限り話し合いで慰謝料を認めさせる
不貞行為以外の理由による慰謝料請求は、訴訟では認められない可能性が高い と考えられます。そのため、できる限り話し合いで慰謝料を認めさせるように努めましょう。不適切な行為の証拠を示しつつ、合理的な金額で慰謝料を請求すれば、相手が支払いに応じる可能性が高まります。
6-3. 弁護士に相談して対応の方針を練る
不貞行為の立証が難しい状況での慰謝料請求に当たっては、工夫した準備が求められます。配偶者の行為によって精神的苦痛を感じている方は、早い段階で弁護士に相談して、慰謝料請求に関する対応方針を検討しましょう。

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7. 慰謝料請求権の消滅時効に要注意
慰謝料請求権は、以下のいずれかの期間が経過すると時効により消滅します(民法724条)。
不法行為および加害者を知った時から3年
不法行為の時から20年
配偶者の行為によって精神的苦痛を受けていても、長期間にわたって慰謝料を請求せずにいると、時効完成によって慰謝料を請求できなくなることがあるので注意が必要 です。
慰謝料請求権の時効完成を阻止するためには、上記の期間が経過する前に、内容証明郵便の送付や調停の申立て、訴訟の提起などを行う必要があります。
8. 不貞行為なしの精神的苦痛に関する慰謝料請求のQ&A
9. まとめ 不貞行為なしでの慰謝料請求が弁護士に相談を
不貞行為を立証できなくても、配偶者が既婚者としての社会常識から外れた不適切な交際をしている場合は、配偶者や不倫相手に対して慰謝料を請求できる可能性があります。
ただし、不貞行為なしでの慰謝料請求には難しい対応が求められます。慰謝料請求の成功率を高めるためには、弁護士に相談してサポートを受けましょう。
(記事は2025年1月1日時点の情報に基づいています)