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1. 不倫慰謝料請求権を手放してもよいのか?
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2. 不倫慰謝料請求をしないほうがよいケース
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2-1. 不倫の証拠がなく、配偶者も不倫相手も不倫を否定している
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2-2. 夫婦関係を続けたい
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2-3. ダブル不倫(W不倫)をしていた
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2-4. 職場における不倫で、離婚しない
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2-5. 配偶者や不倫相手から暴力などを受ける可能性がある
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2-6. 早期に離婚を成立させたい
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3. 不倫慰謝料請求をするかどうか迷った場合に、弁護士に相談や依頼をするメリット
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3-1. 請求したほうがよいのかどうかアドバイスを受けられる
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3-2. 暴力を受けるおそれなどのリスクを回避して、慰謝料請求が可能になる
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4. 不倫慰謝料請求をしない場合にやっておいたほうがよいこと
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4-1. 配偶者に誓約書を書かせる
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4-2. 将来的な請求に備えて、不倫の証拠を確保する
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5. 不倫慰謝料請求に関してよくある質問
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6. まとめ|不倫の慰謝料請求に悩んだら弁護士に相談を
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1. 不倫慰謝料請求権を手放してもよいのか?
不倫によって結婚生活の平和が侵害された場合、不倫をした配偶者とその不倫相手に慰謝料を請求することが可能です。
一方で、場合によっては、慰謝料を請求することによってデメリットが生じることも あります。
ただし、慰謝料請求権を一度放棄してしまうと、原則としてあとから慰謝料を請求することはできなくなります。そのため、一時の感情で慰謝料請求権を放棄してしまうのは望ましくありません。
慰謝料を請求するかどうかは、状況に応じて、メリットとデメリットを慎重に検討する必要があります。
2. 不倫慰謝料請求をしないほうがよいケース
不倫慰謝料請求をしないほうがよいと考えられるケースは主に以下の6つです。
不倫の証拠がなく、配偶者も不倫相手も不倫を否定している
夫婦関係を続けたい
ダブル不倫(W不倫)をしていた
職場における不倫で、離婚しない
配偶者や不倫相手から暴力などを受ける可能性がある
早期に離婚を成立させたい
それぞれの理由を説明していきます。
2-1. 不倫の証拠がなく、配偶者も不倫相手も不倫を否定している
配偶者や不倫相手が不倫したことを否定し、慰謝料の支払いを拒否している場合、最終的には裁判で決着をつけることになります。
裁判では、慰謝料を請求する側に不倫の事実を証明する責任があります。つまり、慰謝料を請求する側が証拠を提出して、裁判官に不倫の事実があったことを認めてもらう必要がある ということです。
不倫の疑惑があっても、裁判官が不倫の事実があったと認めなければ、慰謝料請求は認められません。最終的に慰謝料請求が認められなかった場合、時間や費用、労力を無駄に費やしただけになってしまいます。
したがって、配偶者や不倫相手が不倫したことを否定している場合には、不倫を証明できるだけの証拠があるかどうか慎重に検討する必要があります。証拠が不十分で不倫の事実の証明が難しい場合には、時間や費用、労力を無駄にしないよう慰謝料請求をしない判断も考えられます。
2-2. 夫婦関係を続けたい
不倫が発覚したものの、今後も夫婦関係を継続したい場合、配偶者に対する慰謝料請求はしないほうがよいケースもあります。慰謝料請求をすることによって、夫婦関係がさらに悪化してしまう可能性がある からです。
また、夫婦関係を継続するのであれば、夫婦間で慰謝料のやりとりをしても、夫婦全体のお金(家計)には影響がないため、あまり意味がないともいえます。
一方で、不倫をした配偶者が「けじめ」として自分の意思で慰謝料を支払う場合には、特に否定する必要はありません。また、配偶者に対して慰謝料請求をしないとしても、再発防止のための約束事を記載した誓約書を作成してもらうことは可能です。
なお、不倫相手に対して慰謝料請求をするかどうかは別途検討する必要があります。
2-3. ダブル不倫(W不倫)をしていた
一般的にダブル不倫(W不倫)には2つの意味があり、「①既婚者同士が不倫をしているケース」と「②夫婦がともに不倫をしているケース」があります。
①既婚者同士が不倫をしているケース
「既婚者同士が不倫をしているケース」とは、たとえば、自分の妻が既婚の男性と不倫していた場合、言い換えればA家の妻とB家の夫が不倫していた場合を指します。
この例の場合、A家の夫であるあなたは、妻の不倫相手であるB家の夫に対して慰謝料請求が可能です。一方で、相手側で不倫をされたB家の妻も、夫の不倫相手であるA家の妻に対して慰謝料請求が可能です。また、不倫をされたあなたとB家の妻は、それぞれ自分の配偶者に慰謝料を請求することもできます。
ただし、それぞれの請求で認められる慰謝料の金額は異なることがあります。
なぜなら、慰謝料の金額は、婚姻期間、子どもの有無、それまでの夫婦関係、不倫にいたる経緯などの諸事情を考慮したうえで算定されるからです。
そのため、あなたが配偶者の不倫相手に請求する慰謝料よりも、不倫相手の配偶者があなたの配偶者に請求する慰謝料のほうが高額になることも考えられます 。そうなると、結果的に夫婦全体のお金(家計)としては、マイナスになってしまいます。
このように、既婚者同士が不倫しているケースでは、不倫相手に慰謝料請求をするかどうか慎重に検討し、場合によっては慰謝料請求しないほうがよいこともあります。
また、不倫の両当事者とそれぞれの配偶者の四者で話し合って示談する解決方法もあります。
②夫婦がともに不倫をしているケース
「夫婦がともに不倫をしているケース」とは、あなたの配偶者が不倫している一方で、あなた自身も不倫している場合を指します。
このように配偶者だけでなく自分も不倫をしていた場合、慰謝料請求をしないほうがよいこともあります。
なぜなら、自分が慰謝料請求をしたことがきっかけとなって、配偶者からも慰謝料請求をされる可能性がある からです。お互いの慰謝料請求が認められた場合、配偶者に認められた金額のほうが大きければ、差し引きでマイナスになってしまいます。
また、配偶者はあなたが不倫している十分な証拠を持っている一方、あなた自身は配偶者の不倫について十分な証拠を持っていないといった場合には、配偶者からの慰謝料請求のみが認められる可能性もあります。
自分も不倫をしていた場合には、お互いが相手に対して慰謝料の支払い義務がないことを確認する書面を作成したうえで離婚するといった方法も考えられます。
2-4. 職場における不倫で、離婚しない
不倫相手が配偶者と同じ職場にいる場合にも、慰謝料請求をしないほうがよいケースがあります。このような場合には、不倫相手に慰謝料請求をすることによって不倫の事実が職場に知られ、配偶者に不利益が生じるおそれがあるからです。
裁判例では、妻子ある観光バスの運転手が同僚のバスガイドと会社の指定した旅館で肉体関係を持ったケースで、運転手とバスガイドとの間の不純な情交関係は、職場の秩序を乱すものだとして、運転手に対する懲戒解雇を有効としたものがあります。
このように、職場での不倫によって、職場の秩序が乱されたと判断された場合、懲戒処分の対象となる可能性があります。また、懲戒処分の対象とまでは言えない場合であっても、慰謝料請求がきっかけで不倫の事実が職場に広まり、配偶者が仕事を続けるのが事実上難しくなる可能性もあります。
夫婦関係を継続する場合、配偶者の不利益はそのまま夫婦全体の不利益になってしまいます。職場での不倫が判明しても離婚しない場合には、慰謝料請求をするかどうか慎重な検討が必要 です。
2-5. 配偶者や不倫相手から暴力などを受ける可能性がある
慰謝料請求をすることで、配偶者や不倫相手から暴力や嫌がらせなどを受ける可能性が高い場合、慰謝料請求をしないほうがよいケースもあります。
特に、想定される慰謝料の金額が低かったり、証拠が不十分であったりする場合には、配偶者や不倫相手から攻撃を受けるリスクを回避するために、慰謝料請求をしない選択肢も十分に考えられます。
一方で、別居したりDVシェルターに避難したりして身の安全を確保することができる場合や、自分で請求するのではなく弁護士に請求してもらうといった方法でリスクを回避できる場合には、必ずしも慰謝料請求を断念する必要はありません 。
2-6. 早期に離婚を成立させたい
できる限り早く離婚を成立させたい場合にも、慰謝料請求をしないほうがよいケースがあります。
慰謝料請求をした場合、配偶者が不倫の事実や慰謝料の金額について争うことで、早期に離婚の合意ができないことがあります。このような場合、裁判所に調停を申し立てたり、訴訟を提起したりして最終的な決着を図らなければならないため、早期の離婚が難しくなる可能性があります。
できる限り早く離婚を成立させたい場合には、慰謝料請求をせずに、何よりも離婚の合意を取りつけることを優先する選択もあります。
離婚が成立したあとに、慰謝料請求することも可能です。ただし、離婚の条件などを記した離婚協議書に、当該書面に記載されている以外の権利や義務がないことを確認する清算条項を設けるなど、慰謝料請求権がないことを確認する内容の書面を作成してしまうと、あとで慰謝料請求をすることができなくなるため、注意が必要です。
3. 不倫慰謝料請求をするかどうか迷った場合に、弁護士に相談や依頼をするメリット
3-1. 請求したほうがよいのかどうかアドバイスを受けられる
慰謝料請求をしたほうがよいかどうかは、個々のケースによって異なります。また、その判断にあたっては専門的な知識が必要となることもあります。
弁護士に相談することで、請求した場合のメリットやデメリットなどのアドバイスを受けることができます。
3-2. 暴力を受けるおそれなどのリスクを回避して、慰謝料請求が可能になる
弁護士に慰謝料請求を依頼することで、手続きを代理してもらえます。
たとえば、別居したうえで弁護士に手続きを代理してもらえば、配偶者から暴力を受けるおそれなどを回避することが可能 です。
また、相手と直接やり取りしなくても済むため、精神的な負担や労力の軽減も期待できます。
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4. 不倫慰謝料請求をしない場合にやっておいたほうがよいこと
不倫慰謝料請求をしないからと言って、ほかに何もする必要がないわけではありません。不倫慰謝料請求をしない場合だからこそやっておいたほうがよいことを紹介します。
4-1. 配偶者に誓約書を書かせる
配偶者にも不倫相手にも慰謝料請求をせずに夫婦関係を続けると、配偶者が反省せずに不倫を繰り返すおそれがあります。そこで、不倫について反省を促し、再発を防止するために、誓約書を書いてもらう ことをお勧めします。
誓約書とは、作成者が守るべき約束事を記載した書面のことです。誓約書を作成した人は、約束した内容に拘束されることになります。
誓約書には、それぞれの夫婦の事情に応じて、不倫について反省を促し、再発を防止するために必要な事項を盛り込みます。たとえば、次のような事項です。
不倫を認め、深く謝罪すること
不倫相手と連絡を取ったり、接触したりしないこと
二度と不倫をしないこと
門限などの生活上のルール
約束に違反した場合の違約金
誓約書を作成する場合、作成した日付を記載し、配偶者が署名と捺印をします。
なお、無理やり誓約書を書かせてしまうと、誓約書の効力が否定されるおそれがあるため、あくまで配偶者の意思に基づいて作成する必要があります。
4-2. 将来的な請求に備えて、不倫の証拠を確保する
現時点で慰謝料請求をしないと決断したとしても、将来慰謝料請求をしたいと考える人もいるでしょう。
そんな場合には、将来の慰謝料請求に備え、不倫の証拠を確保しておくのがお勧めです。不倫の証拠として認められる可能性があるものとして、たとえば次のようなものが挙げられます。
写真、動画
メールやLINEなどのやりとり
不倫したことを認める書面、録音データ
ホテルの領収書
クレジットカードの明細書
このような証拠は、時間の経過とともに見つからなくなってしまうおそれがあるため、確保できるうちに確保しておいてください。特にメールやLINEなどのやりと取りは容易に削除できるため、注意が必要です。
ただし、不倫の慰謝料請求には時効があり、時効が成立すると慰謝料を請求する権利が消滅してしまうため注意が必要です。配偶者への慰謝料請求権は、基本的には不倫の事実を知ってから3年で時効になります。また、不倫相手への慰謝料請求権は、基本的には不倫相手を知ってから3年で時効となります。
5. 不倫慰謝料請求に関してよくある質問
6. まとめ|不倫の慰謝料請求に悩んだら弁護士に相談を
不倫の慰謝料請求をすべきかどうかは、不倫の状況やその後の夫婦関係などによってケースバイケースであり、法的な観点から慎重に検討する必要があります。その検討の際には、十分な証拠があるかどうかなども考慮しなければなりません。
また、いったんは慰謝料請求しない選択をしても、将来的に請求する可能性に備えて、誓約書の作成や証拠の確保など、現時点でしておくべきこともあります。
配偶者の不倫で慰謝料請求を検討している場合は、まずは弁護士に相談することで、慰謝料請求をすべきかどうかや、証拠に関するアドバイスを受けることができます。また、慰謝料請求を弁護士に依頼して、代理人として手続きを進めてもらうことも可能です。
不倫の慰謝料請求について悩んでいる場合は、早めに弁護士に相談することをお勧めします。
(記事は2025年1月1日時点の情報に基づいています)