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1. 不倫(浮気や不貞行為)の慰謝料請求権には時効がある
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1-1. 不倫慰謝料の消滅時効期間|3年または20年
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1-2. 不倫慰謝料の時効の起算点
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2. 不倫慰謝料の時効完成を阻止する主な方法
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2-1. 内容証明郵便で慰謝料の請求書を送付する
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2-2. 仮差押えを申し立てる
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2-3. 調停を申し立てる
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2-4. 訴訟を起こす
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2-5. 強制執行を申し立てる
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2-6. 相手方に慰謝料請求権を承認させる
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3. 時効が完成すると、過去の不倫の慰謝料は一切請求できない?
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4. 不倫慰謝料の金額の決め方|金額相場や影響する要素
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5. 不倫慰謝料の請求を成功させるためのポイント
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5-1. 早い段階で弁護士に相談する
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5-2. 不倫の客観的な証拠を確保する
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5-3. 過去の裁判例などに照らして、適正額の慰謝料を請求する
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5-4. ほかの離婚条件と併せてバランスよく交渉する
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6. 時効完成の迫った不倫慰謝料請求を弁護士に依頼するメリット
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7. 不倫慰謝料の時効に関してよくある質問
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8. まとめ|不倫慰謝料の時効が完成する前に、弁護士に相談を
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1. 不倫(浮気や不貞行為)の慰謝料請求権には時効がある
「不倫」は法律用語ではありませんが、「配偶者以外の者と自由な意思にもとづいて性的関係を持つこと」を意味する「不貞行為」と同義で使われるのが一般的です。
配偶者の不倫が発覚した場合、被害者は配偶者または不倫相手に対して慰謝料を請求できます。ただし、慰謝料請求権の消滅時効が完成すると、慰謝料を請求できなくなってしまうので注意が必要です。
1-1. 不倫慰謝料の消滅時効期間|3年または20年
不倫に関する慰謝料請求権は、以下のいずれかの期間が経過すると時効により消滅します(民法724条)。
損害および加害者を知ったときから3年
不法行為のときから20年
ただし、配偶者に対する慰謝料請求権については、婚姻中および婚姻解消のときから6カ月を経過するまでの間は、時効が完成しません(民法159条)。
1-2. 不倫慰謝料の時効の起算点
不倫慰謝料の「3年」の時効期間は、「損害および加害者を知ったとき」から進行します。「損害および加害者を知ったとき」は、慰謝料の請求先と請求対象によって異なります。
不倫そのものに関する慰謝料の時効期間は、配偶者への請求については「不倫の事実を知ったときから3年」、不倫相手への請求については「不倫の事実と不倫相手を知ったときから3年」です。
また、不倫が原因で離婚が成立した場合に請求できる離婚慰謝料の時効は、「離婚が成立したときから3年」です。離婚慰謝料は、配偶者に対してのみ請求できます。
不倫慰謝料の時効「3年」の起算点の違い
配偶者に対する請求 | 不倫相手に対する請求 | |
---|---|---|
不倫そのものに関する 慰謝料 | 不倫の事実を知ったとき | 不倫の事実と不倫相手を知ったとき |
離婚に関する 慰謝料 | 離婚が成立したとき | - 不倫そのものに関する慰謝料のみ |
たとえば、5年前の不倫が原因で離婚した場合の慰謝料は、元配偶者に対しては離婚後3年以内であれば請求できます。これに対して、不倫相手に対する慰謝料は、不倫の事実と不倫相手を知ったときから3年が経過すると請求できなくなります。
一方、不倫慰謝料の「20年」の時効期間は、「不法行為のとき」から進行します。
不倫慰謝料の場合、「不法行為のとき」とは不倫(=不倫相手との性交渉)が行われたときです。不倫された側(以下、被害者)が立証した不倫のうち、最後に行われた行為の時点が「20年」の時効期間の起算点となります。
2. 不倫慰謝料の時効完成を阻止する主な方法
不倫に関する慰謝料請求権の時効完成を阻止する(=時効を止める)方法としては、主に以下の例が挙げられます。
内容証明郵便で慰謝料の請求書を送付する
仮差押えを申し立てる
調停を申し立てる
訴訟を起こす
強制執行を申し立てる
相手方に慰謝料請求権を承認させる
2-1. 内容証明郵便で慰謝料の請求書を送付する
被害者が配偶者または不倫相手に対して慰謝料の支払いを「催告(さいこく)」すると、慰謝料請求権の消滅時効の完成が6カ月間猶予されます(民法150条1項)。
「催告」とは、債権者が債務者に対して、債務の履行を請求する意思を通知することを言います。
催告はその日時を証明できるように、内容証明郵便で請求書等を送付して行うのが一般的です。内容証明郵便で慰謝料の請求書を送付すれば、相手方に到達した時点から6カ月間は消滅時効の完成が猶予されるので、その間に訴訟提起の準備などを整えることができます。
なお、催告による時効の完成猶予は1回に限られており、2回目以降の催告では消滅時効の完成が猶予されません(同条2項)。
2-2. 仮差押えを申し立てる
相手方が慰謝料の支払いを拒んでいる場合は、最終的に強制執行により支払いを履行させることができます。
強制執行に支障を来すおそれがあるときは、裁判所に「仮差押え」を申し立てることが可能です(民事保全法20条1項)。仮差押えは民事保全処分の一つで、将来的に請求が認められた際に、強制執行の対象とする財産の流出を避けるためものです。
不倫に関する慰謝料請求権について、裁判所によって仮差押命令が発せられた場合、仮差押命令が失効してから6カ月を経過するまでは、消滅時効の完成が猶予されます(民法149条1号)。
2-3. 調停を申し立てる
不倫に関する慰謝料の請求は、民事調停または家事調停を通じて行う方法も考えられます。
調停は、中立である調停委員が当事者の話し合いを仲介し、紛争解決に関する合意形成をサポートする法的手続きです。調停では当事者同士が対面して話をすることはありません。
不倫に関する慰謝料請求権について、調停手続きが裁判所に係属した場合には、調停の係属中および不成立または取下げによって調停が終了したときから6カ月が経過するまでは、消滅時効の完成が猶予されます(民法147条1項3号)。
また、慰謝料請求権について調停が成立した場合には、時効が更新(=リセット)されます(同条2項)。
2-4. 訴訟を起こす
相手方が不倫慰謝料の支払いを拒む場合は、離婚訴訟または慰謝料請求訴訟を通じて請求しましょう。
訴訟において、被害者が不倫の事実などを立証できれば、裁判所は配偶者または不倫相手に対して慰謝料の支払いを命じる判決を言い渡します。
不倫に関する慰謝料請求権について、訴訟手続きが裁判所に係属した場合、訴訟の係属中および取下げなどによって訴訟が終了したときから6カ月が経過するまでは、消滅時効の完成が猶予されます(民法147条1項1号)。
また、訴訟における確定判決や和解、請求の認諾によって慰謝料請求権が確定した場合は、時効が更新されます(同条2項)。
2-5. 強制執行を申し立てる
以下のような場合には、裁判所に債務名義などを提出して、慰謝料に関する強制執行を申し立てることができます(民事執行法22条)。
慰謝料の支払いを命じる判決が確定した場合
慰謝料を支払う旨の裁判上の和解が成立した場合
訴訟において、相手方が慰謝料請求を認諾した場合
慰謝料を支払う旨の調停が成立した場合
このほか、慰謝料の支払いを怠った場合には直ちに強制執行に服する旨が記載された公正証書(=執行証書)を作成したにもかかわらず、相手方が慰謝料を支払わなかった際にも、強制執行の申立てが可能です。
強制執行の手続きが開始すると、手続き中および取下げなどによって強制執行が終了したときから6カ月が経過するまでは、消滅時効の完成が猶予されます(民法148条1項1号)。
また、強制執行の手続きが適法に終了した場合には、時効が更新されます(同条2項)。
2-6. 相手方に慰謝料請求権を承認させる
請求の相手方である配偶者または不倫相手が、不倫に関する慰謝料請求権の存在を認めた場合は、時効が更新されます(民法152条1項)。これは「権利の承認」と言います。
ほかにも、慰謝料の支払いを待ってほしいとお願いされた場合や、慰謝料の一部として金銭の支払いを受けた場合などにも、権利の承認による時効更新の効果が発生すると解されています。
3. 時効が完成すると、過去の不倫の慰謝料は一切請求できない?
不倫に関する慰謝料請求権の消滅時効が完成しても、配偶者または不倫相手が、被害者に対して自身の判断に基づいて慰謝料を支払うことに問題はありません。
ただし、時効により請求権が消滅したと主張すれば、相手方は慰謝料の支払い義務を免れます。この場合、相手方が自身の意思で慰謝料を支払うことは通常期待できないでしょう。
弁護士と協力しながら早めに準備を進め、内容証明郵便による請求や訴訟の提起などを通じて、慰謝料請求権の時効完成を阻止しましょう。

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4. 不倫慰謝料の金額の決め方|金額相場や影響する要素
不倫慰謝料の金額は、離婚しない場合で数十万円~200万円程度、離婚する場合で150万円~300万円程度が標準的です。
訴訟などで不倫慰謝料の金額を決める際には、以下のような要素が金額に影響します。
不貞行為の回数と頻度、期間
不倫相手に対する経済的支援の有無と金額
隠し子の有無
不貞行為発覚後の相手の態度
婚姻期間
未成熟の子の有無
なお、相手方と合意すれば、不倫慰謝料の金額はいくらでも構いません。
特に、配偶者との離婚協議で慰謝料の交渉をする場合は、ほかの離婚条件とのバランスなどが影響して、相場を上回る慰謝料の支払いについて合意できるケースもあります。
高額の慰謝料を獲得することに重きを置く場合には、弁護士に相談して交渉の方針を検討しましょう。
5. 不倫慰謝料の請求を成功させるためのポイント
配偶者や不倫相手に対する慰謝料請求を成功させるためには、以下のポイントに留意して対応しましょう。
5-1. 早い段階で弁護士に相談する
配偶者の不倫が発覚したら、早い段階で弁護士に相談しましょう。初期段階から弁護士のアドバイスを受けて対応すれば、不倫の有力な証拠を確保できる可能性が高くなります。
また、弁護士には、慰謝料請求に関する対応全般を任せられます。交渉や調停、訴訟などの法的手続きへ適切に対応してもらえるほか、労力や精神的負担が軽減される点も、弁護士に依頼するメリットです。
5-2. 不倫の客観的な証拠を確保する
配偶者や不倫相手に不倫の事実を認めさせるには、その客観的な証拠を提示することが大切です。
また、訴訟において慰謝料請求を認めてもらうには、不倫の事実を立証し得る十分な証拠を提出する必要があります。
たとえば、以下のような資料は、不倫の客観的な証拠として用いることができます。
性交渉の場面を撮影した写真や動画
自宅やホテルに出入りする場面を撮影した写真や動画
性交渉をうかがわせる内容のメールやLINE、SNSなどのメッセージ
探偵の調査報告書
もし配偶者や不倫相手が不倫の事実を自白したら、その旨を文書に書かせて提出させるか、または自白する場面を録画などで記録しておきましょう。あとで自白を撤回されても、一度自白した事実は被害者にとって有利に働きます。
5-3. 過去の裁判例などに照らして、適正額の慰謝料を請求する
不倫慰謝料には、過去の裁判例や具体的な事情に照らした適正な金額があります。
高すぎる額を請求すると交渉がまとまりませんし、低すぎる額を請求すると損をしてしまいます。弁護士のアドバイスをふまえて、適正額の慰謝料を請求しましょう。
5-4. ほかの離婚条件と併せてバランスよく交渉する
離婚協議では、慰謝料以外にもさまざまな離婚条件について交渉します。
具体的には、財産分与や年金分割、婚姻費用などの金銭的条件のほか、親権や養育費、面会交流などの子どもに関する条件が対象です。
不倫慰謝料についても、ほかの離婚条件と併せてバランスよく交渉すれば、有利な条件で離婚を成立させられます。弁護士と相談しながら、各離婚条件の優先順位をつけ、明確な方針をもって離婚協議に臨みましょう。
6. 時効完成の迫った不倫慰謝料請求を弁護士に依頼するメリット
不倫に関する慰謝料請求権の時効完成が迫っている場合は、速やかに弁護士へ相談しましょう。
時効期間が1日でも過ぎると、慰謝料請求は認められなくなってしまいます。弁護士に依頼すれば、時効期間をすばやく正確に把握したうえで、確実に時効完成を阻止できる方法で対応してもらえます。
また、慰謝料請求権の時効完成を阻止したあとの対応も、全面的に任せることができます。労力やストレスを軽減しつつ、慰謝料請求の成功確率を高めたい場合は、弁護士への依頼を検討しましょう。
7. 不倫慰謝料の時効に関してよくある質問
5年前の不倫についても、知ったのが最近であれば、配偶者と不倫相手のいずれに対しても慰謝料を請求できます。
配偶者に対する慰謝料請求権は、婚姻中および婚姻解消のときから6カ月が経過するまでは、時効が完成しません。
不倫相手に対する慰謝料請求権は、不倫の事実および不倫相手を知ったときから3年の時効期間が進行するので、不倫を知ったのが最近であれば時効は完成しません。
10年前の不倫についても、前述の5年前の不倫と同様に、配偶者と不倫相手のいずれに対しても慰謝料を請求可能です。
不倫の疑いを持っていても、その事実を知っていなければ、不倫相手との関係でも時効期間は進行しないと考えられます。
離婚成立後でも、不倫に関する慰謝料を請求できます。ただし、時効が完成すると慰謝料を請求できなくなるので、早めに弁護士へ相談しましょう。
8. まとめ|不倫慰謝料の時効が完成する前に、弁護士に相談を
不倫に関する慰謝料は、時効が完成すると請求できなくなってしまいます。
時効期間は3年または20年ですが、起算点などについて判断が難しい部分もあるので、弁護士へ相談することをお勧めします。
弁護士には、不倫慰謝料請求に関する対応全般を任せられます。弁護士に依頼することで慰謝料請求の成功確率が上がるほか、労力とストレスが軽減されるはずです。
配偶者の不倫が発覚したら、慰謝料請求について早めに弁護士へ相談してください。
(記事は2025年6月1日時点の情報に基づいています)