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1. 家は財産分与の対象になる?
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1-1. 財産分与とは
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1-2. 婚姻中に購入した家は財産分与の対象になる
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1-3. 婚姻前から所有している家は財産分与の対象外
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1-4. 相続した家も財産分与の対象外
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2. 財産分与時に家を売却せず、住み続けるための方法
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2-1. 一方が家を取得して住み、相手にお金を支払う
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2-2. 一方が家を取得して、相手に貸す
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2-3. 家を双方の共有とする
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3. 家を財産分与する際の住宅ローンの取り扱い
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3-1. 住宅ローンも家と併せて財産分与の対象になる
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3-2. 売却する場合|完済した上で残金を分ける
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3-3. 売却しない場合|返済を続け、ローン残高を財産分与に反映する
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4. 財産分与する家の住宅ローンに関する注意点
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4-1. 借り換える場合を除き、債務者変更はできない
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4-2. オーバーローンの場合は売却できないことがある
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4-3. 債務者ではない側が住み続ける場合は、借り換えが必要
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4-4. ペアローンでも、住み続ける場合は借り換えが必要
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5. 家の財産分与に関するよくある質問
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6. まとめ 家の財産分与は弁護士に相談しよう
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1. 家は財産分与の対象になる?
家が離婚時の財産分与の対象になるかどうかは、家を取得したタイミングや原因によって決まります。
1-1. 財産分与とは
「財産分与」とは、離婚する夫婦が共有財産を公平に分ける手続き です(民法768条、771条)。
婚姻中に取得した財産は、夫婦の協力によって得られたものと考えられます。そのため夫婦が離婚する際は、婚姻中に取得した財産を、どちらの名義であるかにかかわらず公平に分け合うことが求められます。財産分与は夫婦間の協議で行うのが原則ですが、協議がまとまらないときは離婚調停や離婚訴訟を通じて財産分与の方法を決めます。
また、離婚後に家庭裁判所の調停や審判を通じて財産分与を請求することもできます。ただし、財産分与に関する調停や審判の申立てが認められるのは、離婚成立の2年後までです(民法768条2項)。
1-2. 婚姻中に購入した家は財産分与の対象になる
婚姻中に購入した家は、夫と妻のどちらが名義人であるかにかかわらず、財産分与の対象となります 。夫婦の協力によって得られた財産であると考えられるためです。
1-3. 婚姻前から所有している家は財産分与の対象外
夫か妻のいずれか一方が婚姻前から所有している家は「特有財産(=夫婦の一方が単独で有する財産)」とされており、財産分与の対象外 となります(民法762条1項)。夫婦の協力とは関係なく、単独で取得した財産であるためです。
ただし、特有財産である家の住宅ローンを夫婦の共有財産によって返済している場合は、返済額を財産分与に反映することが公平と考えられます。
1-4. 相続した家も財産分与の対象外
親などが亡くなった際に相続した家は、婚姻中に取得したものであっても「個人の財産」に当たり、財産分与の対象外となります(民法762条1項)。相続によって取得した財産は、夫婦の協力とは関係なく、個人的な親族関係に基づいて得られたものであるため です。
2. 財産分与時に家を売却せず、住み続けるための方法
家を財産分与する際には、売却して代金を分ける「換価分割」が最も分かりやすい方法ですが、売却せず家に住み続ける選択肢もあります。
財産分与時に家を売却せず住み続ける方法としては、主に以下の例が挙げられます。
一方が家を取得して住み、相手にお金を支払う
一方が家を取得して、相手に貸す
家を双方の共有とする
2-1. 一方が家を取得して住み、相手にお金を支払う
離婚する夫婦のうち、いずれか一方が家を取得して自ら住み、相手方に対してお金(代償金)を支払うことを「代償分割」 といいます。家に住み続けたい側が代償金を用意できる場合には、代償分割が有力な選択肢となるでしょう。
2-2. 一方が家を取得して、相手に貸す
離婚する夫婦のうち、いずれか一方が家を取得した上で、相手方にその家を貸す方法も考えられます (代償分割の派生形)。本来であれば、家を取得した側は相手方に代償金を支払うべきですが、家を無償で貸す代わりに賃料を免除するなどの条件もあり得るでしょう。
ただし、住宅ローンが残っている場合には、後述するように借り換えが必要となる点に注意が必要です。
2-3. 家を双方の共有とする
夫婦が離婚した後も、家を双方の共有とする「共有分割」という選択肢もあります。
ただし、家を共有にしていると、夫婦の合意がなければ売却できないなど、スムーズな物件活用ができないリスク があります。元夫婦間におけるトラブルの原因にもなり得るので、共有分割は基本的におすすめできません。
3. 家を財産分与する際の住宅ローンの取り扱い
住宅ローンも、家と併せて財産分与の対象 となります。住宅ローンを財産分与へどのように反映させるかは、家を売却する場合と売却しない場合で異なります。
3-1. 住宅ローンも家と併せて財産分与の対象になる
財産分与の対象である家について住宅ローンが残っている場合は、住宅ローンも財産分与の額に反映させます。分与されるのは、財産だけでなく、婚姻中に作った借金なども対象となるから です。
ただし後述するように、夫婦間の合意によって住宅ローンの契約者を勝手に変更することはできません。住宅ローンの契約者を変更したい場合には、ローンの借り換えが必要です。借り換えをしない場合には、夫婦間で金銭を授受するなどして、財産分与の内容が公平になるように調整します。
3-2. 売却する場合|完済した上で残金を分ける
財産分与に当たって、住宅ローンが残っている家を売却する際には、住宅ローンを完済する必要があります。
売却代金をもって完済した後に残金が生じる「アンダーローン」の状態であれば、残金を夫婦間で公平に分ける ことになります。たとえば住宅ローンが3000万円残っていて、家が3500万円で売れた場合には、完済後に残った500万円を夫婦間で250万円ずつ分けるのがよいでしょう。
これに対して、売却代金だけでは住宅ローンを完済できない「オーバーローン」の状態であれば、不足額を夫婦の共有財産から補填するなどの対応が必要です。たとえば住宅ローンが3000万円残っていて、家が2500万円で売れた場合には、不足している500万円を夫婦の共有財産から補填します。共有財産が足りない場合は、夫婦それぞれの特有財産から不足額を支出することも検討すべき でしょう。
3-3. 売却しない場合|返済を続け、ローン残高を財産分与に反映する
財産分与に当たって、住宅ローンが残っている家を売却しない場合は、引き続き住宅ローンを返済する必要があります。借り換える場合は、新たに借りたローンを返済していくことになります。
借り換えの有無にかかわらず、家に関するローンの残高は財産分与に反映すべき です。たとえば住宅ローンが3000万円残っていて、家に3500万円の価値があるとします。この場合、家を取得する側は500万円の経済的利益を得るので、その半分の250万円を、相手方に代償金として支払うのが公平と考えられます。
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4. 財産分与する家の住宅ローンに関する注意点
住宅ローンが残っている家を財産分与する際には、以下の各点について十分注意した上で、財産分与の方法を決めましょう。
借り換える場合を除き、債務者変更はできない
オーバーローンの場合は売却できないことがある
債務者ではない側が住み続ける場合は、借り換えが必要
ペアローンでも、住み続ける場合は借り換えが必要
4-1. 借り換える場合を除き、債務者変更はできない
すでに借りている住宅ローンについて、夫婦間の合意により勝手に債務者を変更することはできません。夫婦が離婚することは、債権者である金融機関には関係がない事柄だからです。
住宅ローンの債務者を変更したい場合は、ローンを借り換える必要があります 。ただし借り換えをする場合は、新たな債務者について改めてローン審査が行われる点にご注意ください。
4-2. オーバーローンの場合は売却できないことがある
住宅ローンが残っている家を売却する際には、住宅ローンを完済しなければなりません。家の価値より住宅ローンの残高が上回っている状態を「オーバーローン」といいます。オーバーローンの場合、売却代金全額を充てても住宅ローンを完済できない可能性が高いです。この場合、不足する資金を別途準備する必要があります。
住宅ローンの返済に充てる資金を準備できない場合は、家を売却できないので、代償分割や共有分割など別の方法を検討しなければなりません 。
4-3. 債務者ではない側が住み続ける場合は、借り換えが必要
住宅ローンの契約では、債務者(契約者)が対象物件に住んでいなければならないものとされています。したがって、財産分与によって債務者ではない側が家に住み続けることになる場合は、住宅ローンの借り換えが必要 です。具体的には、住み続ける側の名義で住宅ローンを借り直すか、または住宅ローンを通常の不動産ローンに切り替えることになります。
住み続ける側の名義で住宅ローンを借り直す場合は、ローン審査に通るかどうかが大きな問題となります 。収入が少ない場合、不安定な職業に就いている場合、無職の場合などには、ローン審査に通らず借り換えができないことがあるので注意が必要です。
住宅ローンの債務者側が通常の不動産ローンに切り替える場合は、借り換えによって金利が高くなるケースが多いです。金利の負担増によってローンの返済が難しくならないかどうか、事前に収支のシミュレーションを行いましょう。また、ローン審査もあり必ずしも切り替えられるとは限りません。
4-4. ペアローンでも、住み続ける場合は借り換えが必要
夫婦でペアローンを組んでいる場合に、離婚によってどちらか一方が家を出ていくときは、売却する場合を除いて住宅ローンの借り換えが必要になります。一方が家に住まなくなるため、ローン契約違反の状態が生じてしまう からです。
ペアローンを組む動機は、いずれか一方の収入だけでは審査に通らないからというケースがよくあります。この場合、単独ローンへの切り替えが難しく、売却を余儀なくされることが多い点に十分ご注意ください。
5. 家の財産分与に関するよくある質問
6. まとめ 家の財産分与は弁護士に相談しよう
婚姻中に購入した家は、夫婦どちらの名義であろうと、財産分与の対象となります。財産分与後も家に住み続けるには、いくつかの方法があります。
・離婚後も引き続き住宅ローンを支払うことで住み続ける
・一方が取得した家に、もう一方がお金を払うことで済む
いずれか一方が家を取得する場合には、代償金を準備できるかどうかが大きな問題となります。また、住宅ローンが残っている場合には、家の財産分与に当たってさまざまなポイントに注意しなければなりません。
家の財産分与をトラブルなくスムーズに行うためには、弁護士のサポートを受けることをおすすめします。家をどのように財産分与すべきか分からない方や、配偶者との間で家の財産分与について揉めてしまっている方は、お早めに弁護士へご相談ください。
(記事は2025年1月1日時点の情報に基づいています)