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財産分与の対象にならないものはどんなもの?  事例や証明方法を解説

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財産分与の対象とならない財産や、それを証明する方法を解説します(c)Getty Images
配偶者と離婚する際には、財産分与の対象となる財産を過不足なく把握した上で、公正な形で財産分与を行うことが大切です。婚姻中に取得した財産は原則として財産分与の対象になりますが、例外的に財産分与の対象にならないものもあるので、注意が必要です。対象外であるはずの財産について財産分与を請求された場合には、法的な根拠に基づいて反論しましょう。財産分与の対象にならないものや、財産分与の手続きおよび注意点などを弁護士が解説します。
目 次
  • 1. 離婚時の財産分与とは
  • 2. 財産分与の対象にならないもの
  • 2-1. 婚姻前から有する財産
  • 2-2. 自分しか使わない家財
  • 2-3. 相続または生前贈与によって取得した財産
  • 2-4. 個人的に負担した借金などの債務
  • 2-5. 法人名義の財産
  • 2-6. 子ども名義の財産
  • 2-7. 夫婦間で財産分与の対象外とすることに合意したもの
  • 3. ケース別|財産分与の対象外であることを主張する際のポイント
  • 3-1. 婚姻前から利用している預貯金口座
  • 3-2. 持ち家の頭金
  • 3-3. 婚姻前から勤務している会社の退職金
  • 4. 財産分与の手続き
  • 4-1. 財産分与の対象となる財産を把握する
  • 4-2. 対象財産の価値を評価する
  • 4-3. 財産分与の方法を協議する
  • 4-4. 法的手続き(調停・訴訟・審判)によって財産分与の方法を決める
  • 4-5. 財産の移転・名義変更を行う
  • 5. 財産分与で損をしないためのポイント
  • 6. 財産分与の対象にならないものに関する質問
  • 7. まとめ 特有財産を把握して正しく財産分与を行おう

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1. 離婚時の財産分与とは

夫婦が離婚する際には「財産分与」を行います(民法768条、771条)。財産分与とは、夫婦の共有財産を公平に分ける手続き です。

婚姻中に取得した財産は、原則として夫婦の協力によって得られたものと考えられるため、財産分与の対象になります。夫婦が共同名義で購入したものはもちろん、夫婦のうちいずれか一方の単独名義で取得した財産も、婚姻中に得たものであれば、原則として財産分与の対象です。

たとえば、婚姻中に夫が得た給与所得や夫名義で購入したマンションは、妻の協力があって得られたものであるため、財産分与の対象となります。

2. 財産分与の対象にならないもの

夫婦のどちらかが所有する財産であっても、以下のものは財産分与の対象になりません。

  • 婚姻前から有する財産

  • 自分しか使わない家財

  • 相続または生前贈与によって取得した財産

  • 個人的に負担した借金などの債務

  • 法人名義の財産

  • 子ども名義の財産

  • 夫婦間で財産分与の対象外とすることに合意したもの

2-1. 婚姻前から有する財産

夫婦のいずれか一方が婚姻前から有する財産は、財産分与の対象外 とされています(民法762条1項)。夫婦の協力によって得られた財産ではないためです。

たとえば、婚姻前に夫婦の一方が購入した不動産や車は、婚姻中に夫婦で使っていたとしても、財産分与の対象になりません。ただし、婚姻前に購入した財産にローンの残債があり、婚姻中に得た収入によって返済していた場合は、その返済額が財産分与の際に考慮されることがあります。

2-2. 自分しか使わない家財

夫婦のいずれか一方が自らのお金で購入し、本人しか使わないことが明らかである家財は、財産分与の対象外になる と考えられます(民法762条1項)。たとえば、日常的に身に付ける衣類やアクセサリー、スマートフォンなどは、単独で使用するものであるため、原則として財産分与の対象外となります。

ただし、高級腕時計、ブランドバック、高価な宝石など、夫婦の協力によって得た資産としての価値を有するものについては、使うのが夫婦のいずれか一方でも財産分与の対象となることがあります

2-3. 相続または生前贈与によって取得した財産

相続によって取得した財産は、財産分与の対象外 となります(民法762条1項)。相続する権利は、本人の親族関係によって生じるものであり、配偶者との協力によって得られるものではないためです。生前贈与によって取得した財産も、相続と同様に、財産分与の対象外です。

2-4. 個人的に負担した借金などの債務

婚姻生活とは関係なく、夫婦のいずれか一方が個人的に負担した債務は、財産分与の対象外 となります(民法762条1項)。たとえばギャンブルのために作った借金や、家族の借金に関する連帯保証債務などは、原則として財産分与の対象外です。

これに対して、住宅ローンや車のローンなど、婚姻生活に必要な費用を得るために負担した債務については、財産分与の対象 となります。

2-5. 法人名義の財産

夫婦の一方が経営している会社の財産など、法人名義の財産は財産分与の対象外 となります。財産分与の対象になるのは、夫婦のうちいずれかが個人名義で所有している財産のみです。

ただし、夫婦のうちいずれかが有する法人の株式や持分については、婚姻中に取得したものであれば財産分与の対象となります。また、法人の株式や持分を婚姻前から有する場合でも、婚姻中に生じた価値の増加が夫婦の協力によるものであると認められるときは、価値増加分が財産分与の対象 となります。

2-6. 子ども名義の財産

夫婦の間にできた子どもが所有している財産は、原則として財産分与の対象外 となります。財産分与の対象は、夫婦のいずれかが自ら所有している財産のみです。ただし、形式上の所有者(名義人)は子どもであっても、実質的には夫婦のいずれかが所有していると認められる財産については、例外的に財産分与の対象となることがあります。たとえば、子ども名義の口座において、夫の収入が原資で完全に夫が管理している預貯金(いわゆる名義預金)は、財産分与の対象です。

2-7. 夫婦間で財産分与の対象外とすることに合意したもの

夫婦間であらかじめ財産分与から除外することに合意した財産は、財産分与の対象外 となります。たとえば、婚前契約において、お互いの収入を財産分与の対象外とすることに合意した場合は、特段の事情がない限り、婚姻中に得た収入であっても財産分与を請求できません。

3. ケース別|財産分与の対象外であることを主張する際のポイント

離婚協議を進める中では、財産分与の対象になるかどうか微妙な財産について、配偶者から財産分与を請求されるケースがあります。これらの財産は、法的なポイントを押さえた上で、財産分与の対象とすべきでない旨(またはその範囲を限定すべき旨)を主張しましょう。

3-1. 婚姻前から利用している預貯金口座

婚姻前から利用している預貯金口座の残高は、婚姻中における収支の内訳や金額を考慮して、財産分与の対象となる範囲を特定する必要があります 。特に、婚姻中の入出金の回数が多い場合は、その履歴を慎重に精査しなければならないため、弁護士への相談をおすすめします。

3-2. 持ち家の頭金

持ち家を購入する際には、頭金を支払うケースがあります。持ち家の頭金を誰が支出したのかによって、財産分与の対象となるかどうかが変わります。

婚姻中に得た収入から支払った頭金は、財産分与の対象 となります。これに対して、夫婦のいずれかが婚姻前から有するお金を頭金に充てた場合や、頭金を支払うために親の援助を受けた場合などには、持ち家の価値のうち頭金相当額が財産分与の対象外 となります。

なお、購入時に比べて離婚時の持ち家の価値が変動している場合は、頭金の価値についてもその割合に応じて変動すると考えた上で、財産分与の方法を決めるのが適切でしょう。たとえば、婚姻中に5,000万円(うち頭金1,000万円)で購入した持ち家の価値が、離婚時に6,000万円になったとします。この場合、財産分与の対象となる頭金相当額は、購入時に支払った頭金に持ち家の価値増加率を掛けた1,200万円となります。

3-3. 婚姻前から勤務している会社の退職金

退職金は、支給済みの場合は財産分与の対象となります。また、未支給であっても、将来受け取れる可能性が高い場合は財産分与の対象となります。

ただし、財産分与の対象となる退職金の範囲は、婚姻中における勤務期間に対応する部分のみ です。

したがって、婚姻前から勤務している会社の退職金は、財産分与の対象となる部分と、そうでない部分に区別する必要があります。

退職金のうち財産分与の対象となる部分の範囲は、勤務先の退職金規程などを踏まえつつ、勤務の実績や給与額の推移などを考慮して決めるのが適切と考えられます。

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4. 財産分与の手続き

離婚時における財産分与の手続きは、以下の手順で進めます。

  1. 財産分与の対象となる財産を把握する

  2. 対象財産の価値を評価する

  3. 財産分与の方法を協議する

  4. 法的手続き(調停・訴訟・審判)によって財産分与の方法を決める

  5. 財産の移転・名義変更を行う

4-1. 財産分与の対象となる財産を把握する

まずは、財産分与の対象となる財産を把握しましょう。婚姻中に取得した財産や、婚姻中に負担した債務は、原則として財産分与の対象となります 。ただし本記事で挙げた例のように、婚姻中に取得した財産(負担した債務)でも財産分与の対象外となるケースがある点に注意が必要です。

配偶者が所有している財産の把握が難しい場合は、弁護士に調査を依頼するのがよいでしょう。

4-2. 対象財産の価値を評価する

不動産や自社株式など、客観的な価値が明確でない財産については、その価値を評価する必要があります。財産評価にあたっては、専門的な知識が必要となるため、弁護士のサポートを受けましょう。

4-3. 財産分与の方法を協議する

財産分与の対象となる財産とその価値を適切に把握できたら、配偶者との間で財産分与の方法を協議 しましょう。離婚成立前に財産分与の協議を行う場合は、その他の離婚条件(慰謝料や子どものことなど)についても併せて話し合います。

財産分与の方法などについて配偶者と合意できたら、その内容をまとめた合意書(離婚協議書など)を作成 しましょう。公正証書で合意書を作成すれば、財産分与が不払いとなった際にも、直ちに強制執行を申し立てることができます。

4-4. 法的手続き(調停・訴訟・審判)によって財産分与の方法を決める

財産分与に関する協議がまとまらないときは、以下の法的手続きによって財産分与の方法を決めます。

【調停】
中立である調停委員が、財産分与の方法などに関する合意形成をサポートします。家庭裁判所で、調停委員と個別に面談をしながら、(元)夫婦間で意見をすり合わせて合意を目指します 。離婚前であれば離婚調停、離婚後であれば財産分与請求調停を行います。

【離婚訴訟】
離婚調停で双方が合意できず不成立に終わった場合は、裁判所に対して離婚訴訟を提起し、強制的に離婚を成立させる判決を求めます。離婚判決を得るためには、不貞行為や悪意の遺棄などの法定離婚事由(民法770条1項)を立証しなければなりません 。離婚判決が言い渡される場合には、主文において財産分与の方法も示されます。

【審判】
財産分与請求調停が不成立に終わった場合は、自動的に審判に移行します。夫婦双方の主張や証拠をもとに、家庭裁判所が財産分与の方法を決定します。

4-5. 財産の移転・名義変更を行う

協議または法的手続きによって確定した財産分与の方法に従い、財産の移転および名義変更を行います。預貯金は所定の金額を振り込むのが一般的ですが、不動産については登記手続き、車については登録手続きが必要 になります。

5. 財産分与で損をしないためのポイント

離婚時の財産分与で損をしないためには、財産分与の対象となる財産を正しく特定し、かつその財産を適切に評価することが大切です。

特に、配偶者よりも多くの財産を有する方は、不当に広範囲または高額の財産分与を請求されることに注意 しなければなりません。財産分与の範囲を適切に限定し、過剰な支出を強いられる事がないようにするためには、弁護士のサポートを受けることをおすすめします。

6. 財産分与の対象にならないものに関する質問

Q. いつ取得したのか分からない財産は、財産分与の対象になる?
仕事の都合による単身赴任など、別居中も夫婦の協力関係が継続している場合には、別居中に取得した財産も財産分与の対象になります。 これに対して、離婚を前提とする別居など、別居によって夫婦の協力関係が途絶えた場合には、別居中に取得した財産は財産分与の対象にならないと考えられます。
Q. 別居中に取得した財産は、財産分与の対象になる?
仕事の都合による単身赴任など、別居中も夫婦の協力関係が継続している場合には、別居中に取得した財産も財産分与の対象になります。 これに対して、離婚を前提とする別居など、別居によって夫婦の協力関係が途絶えた場合には、別居中に取得した財産は財産分与の対象にならないと考えられます。
Q. 特有財産であることを証明できないとどうなる?
特有財産であることを証明できない財産は、夫婦の共有であるものと推定されるため(民法762条2項)、財産分与の対象になる可能性が高いです。
Q. 配偶者に自分の財産を使い込まれたらどうすればいい?
自分の財産を配偶者に使い込まれた場合、不当利得に基づく返還を請求できます(民法703条、704条)。また、使い込まれた金額を考慮して、残りの財産の分与方法を定めることも考えられます。いずれにしても、使い込みの証拠を確保した上で、法的な根拠に基づいて返還や清算を求めることが重要ですので、弁護士に相談することをおすすめします。

7. まとめ 特有財産を把握して正しく財産分与を行おう

離婚する夫婦が所有する財産の中には、財産分与の対象にならないものもあります。例えば、夫婦の片方が得た給料や退職金であっても、婚姻期間中に得たものであれば財産分与の対象 となります。逆に、結婚前から片方が持っていた財産や、婚姻期間中に相続で得た財産などは、財産分与の対象外 になります。

財産分与の対象になるかどうかの判断が難しい場合や、特有財産であることを証明できない場合には、財産分与の対象を正しく特定できず、損をしてしまう可能性があります。特に、配偶者よりも財産を多く所有している方は、財産分与の範囲を適切に限定することが大切です。過剰な財産分与の請求を受けた場合には、速やかに弁護士へ相談してアドバイスを受け、法的な観点から反論しましょう。

(記事は2024年12月1日時点の情報に基づいています)

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