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夫婦関係(婚姻関係)の破綻とは? 認められる条件・事例 証明方法を解説

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婚姻生活の継続が著しく困難な状態であれば、夫婦関係が破綻していると判断される可能性があります(c)Getty Images
話し合いで離婚が成立しない場合、最終的には裁判所に判断を委ねることになります。「夫婦関係が破綻している」といえる事情があれば、裁判で離婚が認められる可能性があります。夫婦関係の破綻が認められる条件やどこから夫婦関係の破綻と判断されるのか、夫婦関係の破綻について離婚をする方法などを弁護士が解説します。
目 次
  • 1. 「夫婦関係の破綻」の定義
  • 2. 夫婦関係(婚姻関係)は離婚の原因になる
  • 3. 夫婦関係の破綻が認められる条件
  • 3-1. ①主観的要素とは
  • 3-2. ②客観的要素とは
  • 4. どこから「夫婦関係の破綻」になる?
  • 4-1. 長期間別居をしている
  • 4-2. 関係を修復する意思がない
  • 4-3. 相手に不法行為がある
  • 4-4. 勤労意欲の欠如、過度のギャンブルや浪費等
  • 4-5. 性格や価値観の不一致
  • 4-6. その他
  • 5. 夫婦関係の破綻を証明する証拠とは
  • 6. 夫婦関係が破綻しているのに相手が離婚しないときの対処法
  • 7. 夫婦関係は破綻していないけれども離婚したいときの対処法
  • 8. 夫婦関係の破綻でよくある質問
  • 9. まとめ 夫婦関係の破綻で離婚をする場合は弁護士に相談を
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1. 「夫婦関係の破綻」の定義

夫婦関係の破綻とは、夫婦が婚姻を継続する意思がなく、夫婦として生活が継続できないなど関係が悪化して、修復が困難な状態 になっていることと考えられます。このように「夫婦関係が破綻している」という言葉を耳にしたことがある人も多いと思います。しかし、「夫婦関係の破綻」という言葉は、直接法律に定められているわけではありません。

2. 夫婦関係(婚姻関係)は離婚の原因になる

夫婦のどちらかが離婚をしたいと思っている場合には、基本的にお互いで話し合い、離婚に同意できれば、理由に関係なく離婚届を提出するだけで離婚は成立します。しかし、話し合いをしても離婚に同意しない場合には、家庭裁判所の離婚調停で話し合いを行い、それでも解決できない場合には、裁判で離婚を判断してもらうことになります。

裁判で離婚が認められるためには、民法770条で定められている離婚事由が必要です。大きくは5つあります。

①配偶者に不貞な行為があったとき(相手の浮気・不倫)
②配偶者から悪意で遺棄されたとき(同居を望んでいるのに相手が勝手に家を出た、生活費を渡さない、虐待して追い出したり家を出ないように仕向けたりするなど)
③配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
④配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき(統合失調症、躁うつ病、頭部外傷やその他の疾患による精神病で、これによって夫婦としての共同生活が行えない状態が継続している)※
⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
※2026年5月までに施行される改正民法により、④は法定離婚事由から削除される予定

①~④が具体的離婚原因、⑤が抽象的離婚原因と言われています。「夫婦関係の破綻」は、この⑤に関連して離婚の原因となりえます。「婚姻を継続し難い重大な事由」とは、一般に婚姻関係が破綻し、回復の見込みがない状態 をいいます。

3. 夫婦関係の破綻が認められる条件

それでは、どのような場合に婚姻関係が破綻し、回復の見込みがない状態と認められるのでしょうか。

この点については、主観的な要素と客観的な要素 があります。離婚が認められるためには必ず両方が必要と言うわけではなく、いずれか一方が認められれば、婚姻関係が破綻していると判断される傾向にあります

3-1. ①主観的要素とは

主観的な要素というのは、夫婦の双方に婚姻を継続する意思がないということです。例えば、夫婦がお互いに離婚を希望している場合には、夫婦関係が破綻していると認められる可能性が高いでしょう。

3-2. ②客観的要素とは

これに対して、客観的な要素というのは、別居が長期化するなど夫婦としての共同生活の実体を欠いていて、これを修復して婚姻生活を継続させることが著しく困難な状態 にあるということです。

通常、夫婦は同居してお互いに愛情を持って協力・扶助しながら、性的関係を伴いつつ、夫婦の共同生活を営みます。しかし、夫婦としての共同生活の実態を欠くようになり、その回復の見込みが全くない状態であれば、客観的に夫婦関係が破綻しているといえるでしょう。

4. どこから「夫婦関係の破綻」になる?

もし夫婦の片方が離婚をしたいと思っている場合には、客観的な要素から婚姻生活の継続が著しく困難であるかどうか確認をした上で、離婚の成否が判断されることになります。

「夫婦関係の破綻」だと判断される傾向にある下記のケースをそれぞれ解説します。

  • 長期間別居をしている

  • 関係を修復する意思がない

  • 相手に不法行為がある

  • 勤労意欲の欠如、過度のギャンブルや浪費等

  • 性格や価値観の不一致

  • その他

4-1. 長期間別居をしている

民法752条では、「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」と定められています。そのため、別居していることは、夫婦の共同生活の実体がかけていることを示す最も客観的な事情の一つになり、別居が長期間にわたっているようなケース では、夫婦関係が破綻していると認定される傾向にあります。

どの程度の期間が必要かという点については、具体的なケースによって異なります。例えば、別居期間が婚姻期間に比してどのくらいかということも、一つの判断要素となります。何年別居が続いていれば、夫婦関係の破綻が認められるかということについては、一概には言えません。しかし、一般的には別居期間が5年以上続いているようなケースでは、夫婦関係の破綻と認められ、離婚が成立する可能性が高まる と言われています。

なお、ここでいう別居とは、離婚が前提の別居や、不仲になっての別居であることが原則です。いくら別居期間が続いていても、単に単身赴任をしていて別居期間が長くなっているという場合には、それだけでは夫婦関係の破綻とは認められません。

4-2. 関係を修復する意思がない

お互いが離婚したいと望んでいるケースでは、夫婦関係が破綻していると認められる可能性が高いです。お互いが離婚を望んでいても、親権や財産分与などの問題について合意ができない場合には、裁判で解決することになります。

4-3. 相手に不法行為がある

不法行為とは、他人の権利や利益を違法に侵害する行為のことです。この不法行為に該当する具体例として、DVが挙げられます。

暴行や虐待については、配偶者に対するものだけではなく、子に対するものの場合も、婚姻を継続し難い重大な事由として離婚が認められる可能性 があります。

また、配偶者に対する重大な侮辱的言動やモラルハラスメント も、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律では、暴力に準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動とされ得るもので、破綻を認定する一要素となります。本人に対して直接行った場合だけでなく、第三者に対して配偶者を中傷する行為などについても、同様です。

4-4. 勤労意欲の欠如、過度のギャンブルや浪費等

健康体で働けるにもかかわらず、勤労意欲がなく働かなかったり、ギャンブル癖や借金癖があって浪費をしたりするなど、夫婦の共同生活を維持・継続することが困難な場合 には、破綻が肯定され離婚が認められる可能性があります。

ただし、実際に働いていない場合であっても、病気のために働けないという場合にはこの限りではありません。

4-5. 性格や価値観の不一致

性格や価値観の不一致は、離婚したい理由としてあげられることが多いものの一つです。実際に当事務所で相談を受ける中でも、ほとんどの方が、性格の不一致や価値観の不一致を主張します。

しかし、性格の不一致というだけでは、破綻原因があると認められる可能性は低い です。性格や価値観の不一致も破綻を認定する一つの要素にはなりますが、夫婦はそれぞれ違う人間であり、多少の性格の不一致があるのは当然だからです。

ただし、性格や価値観の不一致についても他の事情と相まって破綻が認められることはあります。

4-6. その他

その他、下記に当てはまり、結婚生活に困難をもたらしているような場合なども、婚姻を継続し難い重大な事由として、離婚が認められる可能性があります。

  • 家族を顧みないほどの過度な宗教活動

  • 結婚生活に支障をきたすほどの配偶者の親・親族との不和

  • 長年セックスレスが続いている

  • 犯罪行為や服役していて結婚生活が困難

また、直接の不貞行為には該当しないような行為であっても、異性との過度に親密な交際などについては、婚姻を継続しがたい重大な事由にあたると判断される場合があります。

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5. 夫婦関係の破綻を証明する証拠とは

夫婦関係の破綻を理由に離婚を求める場合は、離婚請求をする側が、主張立証する必要 があります。そのため、離婚したいと考えている場合には、夫婦関係が破綻していると認められるような、客観的な証拠があるかという点も意識しておきましょう。

例えば、長期の別居や暴力で夫婦関係の破綻を主張する場合は、下記の証拠を残しておくとよいでしょう。

【長期の別居】
証拠として別居時のやりとりや引っ越し業者の領収書など、別居した日が分かる記録を残す。単身赴任中に不仲になって離婚請求したいという場合には、どこからが離婚前提の別居かを明らかにするために、メールなど客観的に日付が分かる形で、相手に離婚したいと伝えたことなどを残しておく。

【暴力】
病院で診断書をもらう。室内の様子や怪我の状況などを写真で残しておく。配偶者からの暴力によって、生命又は身体に重大な危害を受ける恐れがある場合には、警察に相談した上で、裁判所に保護命令を申立てるなども検討する。

記憶が曖昧になってしまうこともあるので、日記やメモなどに、言われたことやその時々の状況を記録として残しておくことも重要 です。

6. 夫婦関係が破綻しているのに相手が離婚しないときの対処法

話し合いで相手が離婚に応じてくれない場合には、弁護士に依頼して交渉したり、家庭裁判所の離婚調停を利用したりして話し合いを行います。それでも相手が離婚に応じてくれない場合には、最終的には裁判で離婚を求める ということになります。離婚裁判では、例え相手が離婚したくないと主張していたとしても、夫婦関係が破綻していると判断されれば、離婚が認められる可能性が高いです。

相手と直接交渉することが難しいと感じたら、早めに弁護士に相談 することをおすすめします。

7. 夫婦関係は破綻していないけれども離婚したいときの対処法

民法で定める離婚原因はないけれども、離婚したいという場合には、裁判をしても離婚が認められる可能性は低いので、まずは話し合いで解決する道を探りましょう 。当事者間の話し合いで解決できない場合には、弁護士に依頼して交渉するか、家庭裁判所の離婚調停を申し立てて話し合うという選択肢もあります。

それでも解決できない場合には、別居期間をおいて、長期間の別居を理由に離婚を求めるというケースが多い です。また、生活費が支払われていないというケースでは、婚姻費用の請求を行うこともできます。

8. 夫婦関係の破綻でよくある質問

Q. 家庭内別居で夫婦関係の破綻は認められる?
物理的に別居している場合と異なり、一緒の家で生活している家庭内別居の場合は、「別居」とは認められないケースがほとんどだと考えられます。どれだけ家庭内別居を続けても「長期間の別居」と認められる可能性は低いです。 ただし、長期間セックスレスになっていたり、全く会話をしていないなど、その他の具体的な事情によっては、婚姻関係が破綻していると認められる可能性はあります。
Q. 夫婦関係が破綻していれば恋愛や浮気が自由にできる?
夫婦関係が既に破綻している場合には、その後に不貞行為をおこなったとしても、慰謝料は発生しないと考えられています。 法律相談などで、このようなご相談をお受けすることもありますが、弁護士の立場からは、離婚が成立するまでは、控えた方がいいと回答しています。なぜならば、それぞれのケースで、実際に夫婦関係が破綻していると判断されるかどうかは、ケースバイケースであり、裁判にならないとどのように判断されるか分からないことが多いからです。 仮に夫婦関係が破綻していないと判断されてしまうと、浮気をしたことによって有責配偶者になってしまうため、離婚が認められにくくなるというデメリットがあります。
Q. 夫婦関係が破綻していると慰謝料は請求できない?
配偶者が不倫をしていた場合でも、夫婦関係が破綻していた状況であれば、相手に慰謝料請求はできません。不倫が不法行為となるのは、婚姻共同生活の平和の維持という権利または法的保護に値する利益を侵害する行為だと判断された場合です。 不倫により夫婦が不仲となれば、「平和な結婚生活を維持する配偶者の権利」が侵害されたといえます。すでに夫婦関係が破綻していた場合には、平和な結婚生活という保護の対象となる利益がないため、不法行為になるとはいえないと考えられるでしょう。

9. まとめ 夫婦関係の破綻で離婚をする場合は弁護士に相談を

話し合いで離婚に合意できない場合は、最終的に裁判で離婚の成否が判断 されます。その際に重要となるのが、法律上離婚が認められる理由(法定離婚事由) です。「相手の不倫や暴力などの離婚原因がない」「性格の不一致で離婚したい」という場合は、夫婦関係が破綻している証拠を集めて立証する必要があります。「離婚が成立するまで時間がかかりそう…」という場合には、専門家である弁護士に相談して、助言を受けるのがおすすめです。

(記事は2025年1月1日時点の情報に基づいています)

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