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1. よくある離婚の理由(離婚原因)は?司法統計上のランキングを紹介
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2. 婚姻関係事件を申し立てた動機の1位は、男女ともに「性格の不一致」
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2-1. 「性格の不一致」とは
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2-2. 「性格の不一致」が主張されるケースが多い理由
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2-3. 「性格の不一致」だけでは、裁判離婚は認められない
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3. 慰謝料請求が認められる主な離婚理由
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3-1. 不貞行為
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3-2. DVやモラハラ
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4. その他よくある離婚理由
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4-1. 生活費を渡さない
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4-2. 家庭を捨てて省みない
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4-3. 親族との不和
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4-4. 勤労意欲の欠如、浪費、ギャンブル
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4-5. 長期間の別居、重度の病気、犯罪行為や服役
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5. 離婚理由に関してよくある質問
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6. まとめ|離婚原因に該当するのかの判断は弁護士からの意見が有用
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1. よくある離婚の理由(離婚原因)は?司法統計上のランキングを紹介
下の図表の「婚姻関係事件数―申立ての動機別」は、「令和5年 司法統計年報 3 家事編 第19表 婚姻関係事件数―申立ての動機別 申立人別」をもとに、婚姻関係事件を家庭裁判所に申し立てた動機を男女別のランキングにしたものです。申立ての動機は申立人の言う動機のうち主なものを3個まで挙げる方法で調査され、重複集計されています。なお、男性の「その他」(3242)と女性の「その他」(4974)はランキングから除外しています。
婚姻関係事件数―申立ての動機別
男性(個) | 女性(個) | |
---|---|---|
1位 | 性格が合わない(9103) | 性格が合わない(15835) |
2位 | 精神的に虐待する(3252) | 生活費を渡さない(12040) |
3位 | 異性関係(1817) | 精神的に虐待する(10881) |
4位 | 浪費する(1748) | 暴力を振るう(7711) |
5位 | 家族親族と折り合いが悪い(1668) | 異性関係(5362) |
6位 | 性的不調和(1592) | 浪費する(3550) |
7位 | 同居に応じない(1338) | 性的不調和(2642) |
8位 | 暴力を振るう(1320) | 家庭を捨てて省みない(2537) |
9位 | 生活費を渡さない(738) | 酒を飲みすぎる(2394) |
10位 | 家庭を捨てて省みない(720) | 家族親族と折り合いが悪い(2332) |
11位 | 病気(592) | 病気(672) |
12位 | 酒を飲みすぎる(376) | 同居に応じない(599) |
司法統計年報とは、その年に全国の裁判所が取り扱った全事件についての裁判統計報告を集計整理し、収録したものです。婚姻関係事件とは、離婚事件などの婚姻中の夫婦間の紛争一切を対象とする事件のうち訴訟事件を除くものとされています。なお、家庭裁判所での手続きを使わずに協議離婚をしたケースについては、司法統計年報の数値にカウントされていません。
2. 婚姻関係事件を申し立てた動機の1位は、男女ともに「性格の不一致」
2023年(令和5年)の司法統計年報上、婚姻関係事件を家庭裁判所に申し立てた動機の1位は、男女ともに「性格が合わない」となっています。つまり、男女そろって「性格の不一致」が離婚の最大の理由です。
2023年の司法統計年報には含まれていないものの、家庭裁判所での手続きを使わず、夫婦双方の同意のもとでなされる協議離婚についても、離婚の理由として「性格の不一致」が主張されるケースが多いと考えられます。
2-1. 「性格の不一致」とは
「性格の不一致」は、法律上の用語ではなく、明確な定義があるわけではありません。「夫婦関係や結婚生活に対する双方の考え方がかけ離れていること」といった意味で使われるのが一般的です。
裁判例では、難関国立大学を卒業したあと優秀な成績で大企業に入社し、高い水準の知的生活を希望して平凡な家庭生活には魅力を感じていなかった夫と、知的なものに対するあこがれや欲求の度合いが低く、平凡かつ平和な家庭生活で満足する妻の離婚に関する事案があります。
この事案で、裁判所は、婚姻関係が破綻した最大の原因は、夫と妻の生活観、人生観がかけ離れていること、つまり性格の不一致にあったと述べています。
ただし、この裁判例では、夫婦が長期間別居していた事実も認定されており、性格の不一致のみを理由に婚姻関係の破綻を認めたわけではないと考えられます。
2-2. 「性格の不一致」が主張されるケースが多い理由
「性格の不一致」は、明確な離婚原因がない場合に主張されることがあります。
また、ほかに離婚原因がある場合でも、その根本的な原因が「性格の不一致」にあると考えて、ほかの離婚原因と併せて主張されることも多いと言えます。さらに、真の離婚原因があるものの、体裁を気にするなどしてそれを明らかにしたくない場合に、「性格の不一致」が主張される場合もあると言われています。
これらのことから、離婚の理由として「性格の不一致」が主張されるケースが多いと考えられます。
2-3. 「性格の不一致」だけでは、裁判離婚は認められない
離婚の方法には、協議離婚、調停離婚、裁判離婚があります。
協議離婚と調停離婚は、話し合いのうえ夫婦双方の合意に基づいて離婚するものです。協議離婚と調停離婚については、どのような理由であれ、夫婦双方で離婚の合意ができれば、離婚することが可能です。なお、調停とは裁判所の調停委員を介して話し合いが行われる手続きを指し、原則的には夫婦が顔を合わせる場面はありません。
協議や調停で離婚の合意ができない場合、訴訟を提起し、裁判離婚を求めることになります。裁判離婚が認められるためには、民法の定める離婚原因(民法第770条第1項各号)が認められる必要があります。
「性格の不一致」については、民法の定める離婚原因のうち、「婚姻を継続し難い重大な事由」(民法第770条第1項第5号)に該当するかが問題となります。「婚姻を継続し難い重大な事由」とは、婚姻関係が破綻し、回復の見込みがない状態のことを言います。
「性格の不一致」は原則として、「婚姻を継続し難い重大な事由」には該当しないと考えられています。
夫婦は個人と個人の結び付きである以上、性格が完全に一致しないのは当然のことであり、夫婦には、性格の不一致を解消する努力をする義務があるからです。また、そのような努力をすることによって、婚姻関係の回復が可能なケースが多いと言えます。
したがって、「性格の不一致」のみをもって離婚原因となることはほとんどないと言えるでしょう。ただし、「性格の不一致」だけでなく、別居などのほかの事情も併せて主張することで、民法の定める離婚原因に該当する場合があります。
3. 慰謝料請求が認められる主な離婚理由
婚姻関係を破綻させるおそれのある行為で、配偶者にその責任があるもののことを有責行為と言います。
たとえば、不貞行為や身体に対する暴力などが有責行為に該当します。
配偶者の有責行為によって離婚せざるを得なくなり精神的苦痛を被った場合、不法行為が成立し、配偶者に対して慰謝料を請求することができます(民法第709条、第710条)。
3-1. 不貞行為
一般に、「不貞行為」とは、自由な意思に基づいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶことを言い、民法の定める離婚原因の一つです(民法第770条第1項第1号)。
不貞行為は婚姻関係を破綻させる有責行為に該当します。
したがって、配偶者の不貞行為によって離婚せざるを得なくなり、精神的苦痛を被った場合、配偶者に対して慰謝料を請求することができます。
3-2. DVやモラハラ
DVとは「ドメスティック・バイオレンス」の略称で、配偶者からの暴力を意味します。日本語では「家庭内暴力」と言います。
「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(DV防止法)」によれば、「配偶者からの暴力」とは、「配偶者からの身体に対する暴力又はこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動」とされています。
身体に対する暴力は通常、暴力を振るう配偶者に責任のある有責行為に該当します。
一方、心身に有害な影響を及ぼす言動、いわば精神的暴力については、直ちに有責行為に該当するわけではなく、身体に対する暴力に準じる重大なものが有責行為に該当すると考えられます。
たとえば、長期間にわたる暴言や重大な侮辱は有責行為に該当する可能性があります。いわゆるモラハラ(モラル・ハラスメント)についても、精神的暴力の一つと考えることができます。
したがって、モラハラの程度が身体に対する暴力に準じる重大なものと言える場合には、有責行為に該当します。

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4. その他よくある離婚理由
その他よくある離婚理由としては、「婚姻関係事件数―申立ての動機別」にも入っているとおり、以下のようなものがあります。
4-1. 生活費を渡さない
配偶者に生活費を渡さない場合、民法の定める離婚原因のうち、「悪意の遺棄」(民法第770条第1項第2号)に該当する可能性があります。
「悪意の遺棄」とは、婚姻生活を破綻させる意思をもって、正当な理由なく同居義務、協力義務、扶助義務(民法第752条)という夫婦の義務を履行しないことを言います。
扶助義務の内容として、配偶者に必要な生活費を渡す義務があるため、これに違反すると「悪意の遺棄」に該当する可能性があります。
4-2. 家庭を捨てて省みない
家庭を捨てて省みない場合も、「悪意の遺棄」に該当する可能性があります。たとえば、正当な理由なく、配偶者や子どもを置き去りにして家を出て行ってしまった場合などには「悪意の遺棄」に該当すると考えられます。
4-3. 親族との不和
親族との不和は、民法の定める離婚原因のうち、「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するかが問題となります。
親族と折り合いが悪かったとしても、それだけでは、婚姻関係が破綻し、回復の見込みがない状態にあるとまでは言えず、「婚姻を継続し難い重大な事由」には該当しません。
ただし、配偶者が親族との不和を解消する努力をしなかったり、親族側に過度に肩入れしたりするような場合には、「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する可能性があります。
4-4. 勤労意欲の欠如、浪費、ギャンブル
働かなければいけない経済状態なのに働かなかったり、浪費や多額の借金をしたり、ギャンブルに明け暮れたりすることも、「婚姻を継続し難い重大な事由」として離婚原因になることがあります。
裁判例では、妻が給与を得て生活を支えていたのをよいことに、夫は職を探すこともせず、麻雀にふけって怠惰な生活を送っていたという事案があります。このケースでは、夫に対する妻の愛情の喪失と不信感は決定的であるとして、「婚姻を継続し難い重大な事由」が認められています。
また、妻が夫に無断で、家計に不相応な多額のローンによる借入れやクレジットカードの利用を重ねた事案についての裁判例もあります。このケースでは、裁判所は、妻が自分の力では返済できなくなったにもかかわらず、その後も複数のクレジットカードを使い分け、デパートでの買い物を続けていた事実などを認定して、「婚姻を継続し難い重大な事由」を認めています。
4-5. 長期間の別居、重度の病気、犯罪行為や服役
ほかにもよく主張される離婚原因として、相当期間の別居が挙げられます。
同居義務は夫婦の本質的な義務であり、別居している場合は、客観的に見て夫婦と呼べる関係にはないと言うことができます。
したがって、別居が相当期間に及ぶ場合には、原則として「婚姻を継続し難い重大な事由」が認められると考えられています。なお、相当期間については、3年程度が一つの目安と言われています。
また、配偶者に重度の病気や障害がある場合に、「婚姻を継続し難い重大な事由」が認められるケースもあります。
ただし、夫婦には協力義務と扶助義務があるため、配偶者に病気や障害があるだけでは、「婚姻を継続し難い重大な事由」は認められず、協力義務と扶助義務を果たすことができないような状態に至る必要があります。
裁判例では、妻が脳腫瘍により植物状態になり、回復の見込みがないという事案が扱われたことがあります。このケースにおいては、夫が長年妻のために治療や見舞いなどに誠意を尽くし、治療費の清算を終えている点、妻が植物状態となってから約4年間が経過し婚姻関係の実体を取り戻す見込みがない点、妻の離婚後の生活、療養看護については妻の母との間で合意できている点などから、「婚姻を継続し難い重大な事由」が認められています。
さらには、配偶者の犯罪行為や服役によって、婚姻関係が破綻し、「婚姻を継続し難い重大な事由」が認められる場合もあります。
裁判例では、アメリカ人の夫が、莫大な金額にのぼる詐欺事件を起こし、アメリカで有罪判決を受け服役するに至ったという事案が扱われたことがあります。このケースにおいては、妻は夫と婚姻後わずか数カ月を過ごしたのみで、夫の重大な刑事事件により精神的、社会的に大きな痛手を受けたのみならず、将来長年にわたり別居せざるを得なくなったとして、「婚姻を継続し難い重大な事由」が認められています。
5. 離婚理由に関してよくある質問
協議離婚や調停離婚については、夫婦双方で合意ができれば、理由を問わず離婚することが可能です。したがって、夫婦関係に疲れたというだけでも、合意によって離婚することができます。
一方、判決によって離婚を成立させる手続きである裁判離婚については、夫婦関係に疲れたというだけでは、「婚姻を継続し難い重大な事由」があるとは言えず、離婚は認められません。
離婚の合意ができず、裁判離婚をめざす場合には、ほかの理由を主張する必要があります。
夫婦の性生活は、婚姻の基本となる重要な事項と考えられています。したがって、夫婦の性の不一致(性的不調和)も「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する場合があります。
たとえば、正当な理由がない長期間にわたる性交拒否や異常な性交の強要などは、「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する可能性があります。
裁判例では、夫婦の性交渉が全くない状態であるのに、夫が自慰行為にふけり、そのような態度を改めない事案において、性生活に関する夫の態度は正常な夫婦の性生活からすると異常と言うほかないなどとして、「婚姻を継続し難い重大な事由」を認めたものがあります。
協議離婚と調停離婚については、特に理由がなくても、夫婦双方で合意ができれば、離婚することが可能です。
一方、裁判離婚については、民法の定める離婚原因が必要となるため、特に理由がない場合には、離婚は認められません。
6. まとめ|離婚原因に該当するのかの判断は弁護士からの意見が有用
夫婦双方の合意で離婚する協議離婚と調停離婚については、離婚の理由は問われません。したがって、民法の定める離婚原因がない場合であっても、適切に交渉することで合意に至り、離婚できる可能性があります。
一方、裁判離婚をするためには、離婚原因が認められなければなりません。離婚を希望する理由は人によってさまざまですが、裁判離婚にあたっては、それをやみくもに主張するのではなく、離婚原因として適切なかたちで主張し、立証する必要があります。
自分の離婚したい理由が民法の定める離婚原因に該当するのか判断できない場合もあるでしょう。離婚を検討している場合は、早い段階で弁護士に相談し、アドバイスを受けるとよいでしょう。
(記事は2025年6月1日時点の情報に基づいています)