-
1. 母親が親権争いに負ける場合(理由)は?
-
1-1. 父親が中心となって育児を行っている
-
1-2. 母親による虐待やネグレクトが懸念される
-
1-3. 母親が深刻な精神疾患や障害などを負っている
-
1-4. 離婚時に子どもが父親と一緒に暮らしている
-
1-5. 子どもが父親と一緒に暮らすことを希望している
-
2. 母親が親権争いで必ずしも負けるとは限らないケース
-
2-1. 母親の収入が父親よりも少ない場合
-
2-2. 母親が不貞行為をした場合
-
3. 家庭裁判所が親権者を決める際に重視するポイントは?
-
3-1. 養育の実績
-
3-2. 現在の子どもの状況
-
3-3. きょうだいの状況
-
3-4. 子どもの意思・年齢
-
3-5. 面会交流の寛容性
-
3-6. 育児のサポート体制
-
3-7. 心理的な結びつき
-
4. 2026年4月に導入|離婚後の共同親権制度・法定養育費制度・先取特権が親権争いに与える影響は?
-
4-1. 共同親権制度
-
4-2. 法定養育費制度
-
4-3. 先取特権
-
5. 母親が親権争いを有利に進めるためのポイントは?
-
5-1. 自分が親権者としてふさわしいことを示す証拠を確保する
-
5-2. 調停委員の質問に対して誠実に答える
-
5-3. 子どものためになることを常に考えて行動する
-
5-4. 親権問題に詳しい弁護士に相談する
-
6. 親権獲得を希望していても、子どもを連れ去るのはNG
-
7. 離婚後も子どもの親権者でいたい人が弁護士に相談するメリット
-
8. 親権争いで母親が負ける場合についてよくある質問
-
9. まとめ 親権で母親が負けるのは限定的だが有利に進めたいなら弁護士に相談して
無料相談OK 事務所も!
離婚問題に強い弁護士を探す
1. 母親が親権争いに負ける場合(理由)は?
母親が親権者になると当然のように考えられがちですが、統計上は父親が親権者となって離婚する夫婦が約11%います。
離婚の際に親権争いとなった場合、裁判所の手続きで親権者が指定されることになりますが、母親が親権者に指定されないケースには以下のような事情があります。
1-1. 父親が中心となって育児を行っている
母親が父親に育児をまかせきりの場合、父親が親権者として指定されることがあります。親権争いとなる場合、裁判所の手続きでは「両親のどちらが主に子どもの監護をしているか」が重視されます。そのため、母親に育児実績がない場合や日常監護を主に父親がしている事情がある場合には、父親が有利になる可能性があります。
1-2. 母親による虐待やネグレクトが懸念される
母親による子どもに対する虐待や育児放棄が懸念される場合には、親権を獲得するのが難しくなります。子どもの保護が最優先となるためです。虐待や育児放棄が懸念される具体例は、以下のとおりです。
殴る蹴るなどの身体的虐待
暴言や無視などの精神的虐待
食事を用意しない
不衛生な環境に置いたままにする
このような行為が確認され、かつ父親の方が問題なく監護できる状況であると認められる場合には、父親が親権者と指定される可能性が大きくなります。
1-3. 母親が深刻な精神疾患や障害などを負っている
母親がうつ病などの精神疾患を患っていたり、障害があったりするなどの事情がある場合は、親権を獲得するのが難しいでしょう。子どもを継続的に安定して監護養育することが困難と判断されるほか、日常的な生活にも差し障りがあると判断される可能性があるためです。
1-4. 離婚時に子どもが父親と一緒に暮らしている
同居中は母親が主に監護を担っていた場合でも、夫婦の別居後に父親が子どもと同居して単独で監護している場合は、母親が親権を獲得するのは難しくなります。これは、環境を変えることが子どもにとって負担になると判断されるためです。
たとえ子どもが乳幼児でも、母親がその子を置いて家を出てしまったような事情がある場合には、現在の監護状況を重視して父親が親権者と指定される傾向があります。
1-5. 子どもが父親と一緒に暮らすことを希望している
子どもが15歳以上の場合、裁判所の手続きでは「子どもの意思を確認すること」と定められています。子どもが父親との生活を希望しているのであれば、その意思が尊重され、父親が親権者と指定されることも考えられます。
また、15歳に達していない場合でも、10歳頃からは自分の意思を示せると考えられ、子どもの意思が尊重されることがあります。
実際に母親のもとで生活していた小学校高学年の子どもが父親のもとに家出してきたというケースでは、離婚訴訟で親権が争われた結果、母親との生活を拒否して父親との生活を強く希望する意思を重くみて父親が親権者として指定されました。
2. 母親が親権争いで必ずしも負けるとは限らないケース
父親側から、「母親の経済力のなさ」や「不貞行為」などを理由に親権者としての適格性を欠くと主張されることがあります。しかし、調停や訴訟など裁判所での手続きにおいて、これらの主張が必ずしも認められるわけではありません。
2-1. 母親の収入が父親よりも少ない場合
母親に収入がなかったり借金があったりする場合でも、親権が認められない決定的な理由にはなりません。母親の経済力については、父親から支払われる養育費も加味して考えられるためです。
なお、父親から「自分の経済力が安定している」ことを根拠に、親権を強く主張されることがあります。ただし、「自分が親権者なら希望通りの教育費を支払う。そうでなければ最低限しか支払わない」という内容である場合は、裁判所の手続きにおいてあまり真剣に取り合われないことがほとんどです。
2-2. 母親が不貞行為をした場合
母親に不貞相手がいる場合や親密な異性がいる場合でも、親権を獲得できない決定的な理由になるとはいえません。不貞行為が子どもに与えた影響や交際の実態などの事情にもよりますが、子どもの生活に直接的な悪影響を及ぼしていないのであれば、親権の判断にさほど響かないと考えられています。
実際に、母親の不貞を理由に婚姻関係が破綻した事情があっても、別居後に母親が問題なく子どもを単独で監護養育している場合は、親権者として認められるケースが少なくありません。
3. 家庭裁判所が親権者を決める際に重視するポイントは?
家庭裁判所が親権者を指定する場合、子どもの福祉の観点から「どちらと一緒に暮らす方が子どもにとって幸せか」という点が重視されます。ほかにも、裁判所の手続きのなかでは、以下のような事情が重視されるといわれています。
3-1. 養育の実績
現在までの監護・養育の実績や、監護の継続性などが重視されます。具体的には、子どもの送迎や食事の支度といった日常的な監護養育に関する実績のほか、親の健康状態など「育児をしていく能力などに著しく欠けているものがないか」が判断材料とされます。
3-2. 現在の子どもの状況
子どもの生活環境をむやみに変更することで情緒が不安定になり、人格形成に影響が出ると懸念されることから「監護の継続性」も重視されます。
子どもと別居しながら離婚手続きを行っている場合、同居している親との生活に著しい問題がなければ「離婚後も継続して同居親が監護すべきと判断される」ことが圧倒的に多いといえます。
3-3. きょうだいの状況
子どもが複数いる場合は原則として、きょうだいが引き離されず一緒に暮らしていくべきだとする「きょうだい不分離の原則」という考え方があります。そのため、親権者は母親か父親のどちらかになるケースが多いです。
もちろん、子どもの福祉を考えて例外となるケースはあります。しかし、離婚手続き中にきょうだいが一緒に暮らしている場合、子どもたちをあえて分離させるような親権の定め方をすることは、ほとんどありません。
3-4. 子どもの意思・年齢
家事事件手続法では「15歳以上の場合は子どもの意見を聞くこと」と義務付けられています。ただし15歳未満であっても、10歳頃から子どもの気持ちを聞き、本人の意思を裁判や調整に反映させることがあります。
裁判所の手続きにおいては、子どもの心理の専門知識を持った家庭裁判所調査官が調査を行います。そのなかで、父親と母親のどちらと一緒に生活したいかを確認することがあります。
3-5. 面会交流の寛容性
子どもと一緒に暮らす親が、別居親との面会交流に寛容であることも重視されます。子どもの「親に会いたい」という気持ちを尊重できるかどうかが、親権者としての適格性を判断するポイントと考えられているためです。
実際に親権を争う調停や訴訟では、親権を持てない側の親にも納得してもらうため、親権を得る側の親に対して「面会交流をより充実させること」を促すケースが少なくありません。
3-6. 育児のサポート体制
ひとり親になったあと、近くに祖父母や親戚が住んでいるなど育児を手伝ってもらえる環境があると「監護の安定性」が認められやすくなります。支援体制が整っているとみなされ、親権争いにおいてプラスに判断されるでしょう。
3-7. 心理的な結びつき
子どもと心理的な結びつきの強い親を、親権者として優先すべきとする考えです。以前は、特に乳幼児について「母親優先の法則」が重視されていました。しかし近年では、より子どもとの心理的な結びつきが強い親を親権者とすべきという考えが重視されています。
相談アリ
得意な弁護士
探せる
4. 2026年4月に導入|離婚後の共同親権制度・法定養育費制度・先取特権が親権争いに与える影響は?
2024年5月17日に民法等の一部を改正する法律が成立し、2026年4月1日に施行されることが決まっています。
4-1. 共同親権制度
法改正により、離婚後は共同親権・単独親権のいずれかを定めるようになります。虐待やDVの恐れがあると認められるときや、事情により父母が共同して親権を持つことが困難であると認められるとき、家庭裁判所は単独親権を定めるとされています。
一方、このような事情がない場合や父母の協議が整わない場合、裁判離婚の場合などでは、家庭裁判所が子どもの利益の観点から「父母と子どもの関係」「夫婦関係」などさまざまな事情を考慮したうえで、いずれかを定めることとなります。
共同親権が選択肢に含まれるようになることから、特段の法定事由が認められないケースで単独親権を希望する場合は、具体的な事情や合理的な根拠を持って、説得力のある主張をしていくことになると考えられます。
4-2. 法定養育費制度
親権を持たない親が養育費を払わないとき、これまでは父母の同意や家庭裁判所の手続きにより養育費の金額を定めなければ、養育費を請求できませんでした。
今回の法改正により、離婚時に養育費の取り決めをしていなかったとしても、引き続き子どもの監護を主として行う親は、もう一方の親に対して、子ども1人につき2万円の「法定養育費」を請求できるようになります。
養育費の金額については争いになりやすく、元配偶者と関わりたくないために手続きをためらう人も多くいます。法定養育費制度が施行されれば、そのような状況にある人が、より請求しやすくなると期待できます。
ただし、私立学校や大学などの教育費については、別途協議や養育費調停・審判等が必要になるケースもあると考えられます。事情が複雑な場合は、弁護士に相談して手続きを進めることも検討すべきでしょう。
4-3. 先取特権
今回の法改正により、養育費が先取特権(さきどりとっけん)となりました。これにより、債務名義(公正証書や裁判所の調書など)がなくても、強制執行の手続きがとれるようになります。
養育費の支払いがストップした場合、これまでは養育費に相当する財産を差し押さえるために「裁判所による審判」や「公正証書」が必要でした。しかし、改正法の施行後は、合意書など養育費を継続的に支払うことの証拠があれば、その段階を飛び越えて手続きに移れることになります。これまでと比べれば債権回収の手続きがしやすくなるといえます。
5. 母親が親権争いを有利に進めるためのポイントは?
離婚時に親権でもめた場合、訴訟も見据えて準備を進める必要があります。手続きをより有利に進めるためのポイントとして、以下のようなことが考えられます。
5-1. 自分が親権者としてふさわしいことを示す証拠を確保する
食事の準備や保育園・幼稚園の送迎、小中学校の対応といった日頃の監護実績を立証し、主に監護を担っていることや親権者としての適格性を示す証拠を集める必要があります。
単独親権を定める場合「父母のいずれが親権者となった場合に、より子の福祉にかなうか」が判断基準になるため、相手が親権者としてふさわしくない事実があれば、これを立証できる証拠を集めることも必要です。
もしも、子どもへの虐待がある場合には、家庭支援センターや児童相談所に相談しておくと証拠として有利に働きます。
5-2. 調停委員の質問に対して誠実に答える
調停委員は親権を判断する立場にはありませんが、味方になってもらえるような方向性に努める必要があります。調停の席には裁判官は原則として同席せず、調停委員からの報告によって進行を決めることが多いためです。
重要なのは、あまり感情的になりすぎたり相手の悪口や人格をおとしめたりするような発言を避け、離婚を考えるようになった事情を冷静に話すことです。質問に対して誠実に答える姿勢を見せることで、調停委員にもきちんと受け止めてもらいやすくなります。
5-3. 子どものためになることを常に考えて行動する
裁判所は「父母のどちらが親権者としてふさわしいか」という観点で判断するため、子どもの考えや意見を尊重しているかなど、常日頃から子ども視点で行動しているかどうかもポイントになりえます。
父母間が感情的に葛藤を抱えていても、親子関係に差し障りがない場合は、配偶者と子どもの交流を妨げるような言動は控えるべきと考えられます。
5-4. 親権問題に詳しい弁護士に相談する
親権について争いがある場合、離婚問題に詳しい弁護士に相談してアドバイスをもらうことをおすすめします。親権を獲得するには、裁判所実務の取り扱いを熟知していることや、裁判所との信頼関係の構築などが重要です。どのような場合にどのような証拠が必要かなど詳しく相談しながら準備すれば、手続きを有利に進められるでしょう。
6. 親権獲得を希望していても、子どもを連れ去るのはNG
親権が争いになっているにもかかわらず、離婚協議中に子どもを連れて別居することは避けるべきです。
やむを得ず別居した場合は、親権獲得が有利になるように子どもを利用することは避けましょう。面会交流を求められた場合などに合理的な理由なく拒否すると、親権獲得に関してかえってマイナスに働くことがあります。
実際に、親権や監護権を裁判所の手続きで争っている間に、片方の親が子どもを連れて別居してしまったケースで、手続き中の子連れ別居が不利に働き、親権を獲得できなかったという事例もあります。
7. 離婚後も子どもの親権者でいたい人が弁護士に相談するメリット
親権は「夫婦を取り巻く状況」「現在に至るまでの事情」「子どもの年齢」など、それぞれのケースに応じた個別具体的な事情を総合的に考慮して判断されます。
親権争いがある場合は裁判所の手続きに移行することが多いため、離婚協議中から裁判所実務の考え方を踏まえた手続きを進めていく必要があるといえます。そのため、離婚問題に詳しい専門家へ相談し、助言を得て対応していくのがおすすめです。
親権争いが複雑化する場合は、特に慎重に手続きを進めていくべきです。親権獲得に有利と思われる内容だけではなく、不利な内容も含めてより具体的な情報を整理しておく必要があるため、早い段階で弁護士に相談・依頼するのがよいでしょう。
相談アリ
得意な弁護士
探せる
8. 親権争いで母親が負ける場合についてよくある質問
収入の有無だけで親権が判断されることはまずないため、母親が親権者と指定される可能性があります。借金がある場合でも、計画的に返済しており生活に支障がないのであれば、親権の判断に大きな影響は及ぼさない可能性が高いでしょう。
原則として、配偶者の同意なしに子どもを連れて別居することは避けるべきです。ただし、父母が対立する環境に子どもが巻き込まれて心身症状が出ている場合、配偶者と子ども間の関係が悪い場合、配偶者が単独で子どもを監護養育できない場合など、やむを得ない場合はこの限りではありません。
また、DV被害や子どもへの虐待がある場合には、行政機関と相談しながら子どもと一緒に別居する段取りを行うのが望ましいでしょう。その後に弁護士が介入して、離婚協議や婚姻費用請求などの手続きを進めていくことも検討しておくべきといえます。
裁判所は離婚時に定めた親権者を容易に変更しません。状況が変わらない限り「相手から親権を奪う」ことは現実的には厳しいといえます。
ただし、子どもが成長に合わせて非親権者との生活を希望したり、実際に一緒に生活を始めたりするなどの事情から親権者変更の必要がある場合には、親権者変更の申し立てが認められる可能性があります。
調停や裁判で決まった面会交流を正当な理由なく拒否する場合は、義務違反とみなされる可能性があります。この場合、状況によりますが、面会交流を履行しないことで損害賠償請求されるケースが考えられます。
また、金銭の支払いを警告することで心理的な圧迫を加え、自発的な面会を促す「間接強制」が認められることも考えられます。
程度の問題といえますが、母親がうつ病である場合は親権争いに影響するケースがあると考えられます。母親自身が「自分の生活もままならない」「子どもを監護・養育することに支障がある」という場合は、父親を親権者とすることが適当と考えられることもあります。
親権が認められるかどうかと、当人の人格はまったく別問題です。父親が単独親権を獲得したとしても、母子の親子関係がなくなるわけではありません。虐待など別の問題がある場合を除いて、離婚後も非親権者が子どもに関わることはむしろ裁判所実務では推奨されていると考えられます。
親権者になるかどうかは、離婚した父母間での役割分担に過ぎません。もし親権争いが希望の結果にならなかったとしても、どのように子どもと関わっていくことが「子どもの福祉にかなうのか」を考えて行動することが肝要です。
9. まとめ 親権で母親が負けるのは限定的だが有利に進めたいなら弁護士に相談して
親権争いで母親が負けてしまうのは「父親が中心となって育児している」「母親が精神疾患を抱えている」ケースなどが考えられます。離婚後も子どもと一緒に生活できるかどうかに大きく関わるため、親権争いとなる場合には獲得に向けて慎重に準備を進めていくべきです。
ただし、親権争いによって離婚事件が長期化することで、親子関係まで悪化してしまうケースも実際には珍しくありません。「本当に子どものためになるのか」といった観点から、親権や離婚後の監護についての主張を考えるべき場合もあります。
共同親権制度の導入後も「子どもの福祉」を重視するのは変わりありません。離婚後の親権について、より有利に手続きを進めたい希望がある場合には、裁判所の動向や実務の取り扱いをよく知っている弁護士に相談・依頼することを検討しましょう。
(記事は2026年3月1日時点の情報に基づいています)