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1. 調停で親権を得るのは父母のどっちが有利?
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1-1. 親権をめぐる調停の統計
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1-2. 親権者の決定で母親が不利になる/父親が有利になるケース
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2. 親権の調停とは?
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3. 調停で親権者が決まる際の判断基準
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3-1. 監護実績
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3-2. 子どもと自身/他方親の関係性
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3-3. 離婚後の生活環境・経済状況
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3-4. 子どもの年齢・意思
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3-5. 親の心身の健康状態
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4. 親権の調停(離婚調停)の流れ
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4-1. 調停の申し立て
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4-2. 期日の進行
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4-3. 調停の成立
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5. 離婚調停にかかる期間
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6. 親権の調停を有利に進めるためのポイント
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6-1. 自分に有利な事情を裏付ける証拠や資料を準備する
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6-2. 裁判所に自分が親権者としてふさわしいことをアピールする
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6-3. 親権を争う相手方の面会交流を認める
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6-4. 親権問題に強い弁護士に依頼する
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7. 親権の調停を弁護士に依頼するとどうなる?
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7-1. 弁護士に依頼するメリット
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7-2. 弁護士に依頼した場合の費用相場
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8. もし親権を取れなかった場合にすべきこと
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9. 2026年4月に導入|共同親権制度や法定養育費制度、先取特権が親権の調停に与える影響は?
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10. 親権の調停に関するよくある質問
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11. まとめ 親権の調停を有利に進めるには弁護士に相談するのがおすすめ
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1. 調停で親権を得るのは父母のどっちが有利?
親権をめぐる争いでは「母親が有利」と言われることもありますが、必ずしもそうとは限りません。近年の家庭裁判所は、親の性別ではなく「どちらが子どもにとって最善か」という観点から、監護実績や生活環境などを総合的に判断する傾向が強くなっています。
1-1. 親権をめぐる調停の統計
実際には、親権を母親が持つケースが圧倒的に多いのが現状です。家庭裁判所で調停が成立したケースや、調停に代わる審判で親権が決まったケースを合わせると、約93.9%のケースで母親が親権者となっています(参照:令和5年司法統計年報3 家事編 43頁)。
数字だけを見ると、父親が親権を得るのは難しいように感じられるかもしれません。
1-2. 親権者の決定で母親が不利になる/父親が有利になるケース
調停で父親が親権を得るには、それなりの理由が必要です。母親側に次のような事情がある場合、父親のほうが有利と判断される可能性があります。
【母親が育児を放棄して家を出た場合】
同居している父親のほうが、子どもとの生活基盤を築いていると評価されやすくなります。
【母親の虐待やネグレクトが疑われる場合】
子どもの安全や精神的安定を重視します。子どもの世話ができない、日常的な監護に支障があると評価された場合は、母の親権獲得が難しくなります。
【子どもが父親と暮らすことを希望している場合】
特に子どもが15歳以上の場合、本人の意思が重視される傾向があります。
2. 親権の調停とは?
調停とは、家庭裁判所に申し立てを行い、裁判官と調停委員が当事者の間に入って話し合いを進める制度です。裁判のように判決で白黒をつけるのではなく、あくまで当事者の合意形成を目指す点が特徴です。合意が成立すると調書が作成され、その内容は判決と同じ効力を持ちます。
親権だけを単独で決める調停は存在しません。未成年の子どもがいる夫婦が離婚する場合は、親権者を決めなければ離婚は成立しないため、親権の問題は離婚調停の中で扱われます。離婚の調停では、親権を含めた離婚条件全般について話し合いが行われます。
また、いったん親権者を決めた後に、事情の変化などを理由に親権者の変更を希望する場合には、改めて「親権者変更の調停」を申し立てる必要があります。夫婦間の合意だけでは親権を変更することはできません。
3. 調停で親権者が決まる際の判断基準
離婚調停で親権を決める際、裁判所が最も重視するのは「子どもの福祉」です。親の性別や職業などの属性や親権取得の希望よりも、「どちらの親と暮らすことが子どもにとって最善か」という視点で判断されます。ここでは、実際の調停でどのように要素を総合的に判断し親権者が決められるかを見ていきましょう。
3-1. 監護実績
誰が日常的に子どもの世話をしてきたのかという「監護実績」は、非常に重視されます。たとえば、食事の用意、送り迎え、病院の付き添い、入浴や寝かしつけといった育児の具体的な内容にどの程度かかわってきたかが判断されます。
離婚後は親権者が単独で子育てを担うため、過去にどれだけ育児に参加したかが将来の監護能力にも直結すると見なされます。
3-2. 子どもと自身/他方親の関係性
「父親と母親いずれが親権者になることが子どもにとって最善か」という視点である以上、裁判所では客観的な行動や態度から判断されます。子どもと過ごす時間の長さ、イベントへの参加、育児記録の有無などが参考にされます。
母親が有利とされやすいのは、実際に育児の中心を担っているケースが多いためであり、父親でも日常的に育児に携わっていれば評価されます。
3-3. 離婚後の生活環境・経済状況
住居の安全性や安定した経済状況も、子どもの福祉を守るうえで重要です。ただし、収入が少ない、専業主婦であるなどの理由で直ちに不利になるわけではありません。
養育費や行政からの支援、親族の協力が見込めるかなども考慮されます。また、家庭裁判所の調査官が実際に住環境を確認するケースもあります。
3-4. 子どもの年齢・意思
子どもの年齢が高くなるほど、本人の意思が重視される傾向があります。とくに15歳以上の子どもがいる場合、裁判所は本人の意見を必ず聞かなければなりません。10歳前後でも、発達段階や家庭環境によっては意思が尊重されることもあり、親の主張と子どもの気持ちが一致しているかが重要です。
3-5. 親の心身の健康状態
心身に疾患があるからといって、直ちに親権者としてふさわしくないという結論にはなりません。心身に疾患があることが親権者争いに不利に働く可能性があるのは、そのために子どもの監護を十分にできないおそれがあると判断される場合です。
したがって、親権を争う前に「定期的な通院加療を行い、子どもとの生活に支障が生じないよう努めている」と評価されるような手当てをしておく必要があります。
4. 親権の調停(離婚調停)の流れ
離婚調停では、夫婦間で親権を含む条件を話し合い、合意できれば離婚が成立します。ここでは、親権の調停がどのような流れで進むのか、申立てから成立までの手順を解説します。
4-1. 調停の申し立て
離婚調停は、夫婦のどちらかが家庭裁判所に申立てることで始まります。申立ては、原則として相手方(配偶者)の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行います。
必要な書類は以下のとおりです。
申立書(裁判所の様式に記入)
戸籍謄本
事情説明書、進行に関する照会回答書などの付属書類
所定額の収入印紙(1,200円分)
郵便切手(各裁判所により金額が異なる)
これらの書類を整えて提出することで、調停の申立てが完了します。書式や手続きについては裁判所の窓口で案内を受けられるため、初めての人でも対応可能です。
なお、調停申立てにかかる費用は、原則として申立人が負担します。弁護士に依頼する場合の費用は、それぞれが自分で負担するのが一般的です。
4-2. 期日の進行
申立てが受理されると、裁判所が第1回の調停期日を設定し、申立人と日程を調整します。決定した期日は、相手方にも通知されます。
調停の1回あたりの所要時間はおおむね2時間程度です。当事者は同席せず、交互に調停委員と面談する形式で進行します。
初回の期日では、申立ての経緯や離婚に至った理由、希望する条件などを確認します。2回目以降も話し合いが継続され、親権の争点がある場合は、家庭裁判所調査官による調査が入るケースもあります。
調査官調査には、以下のような方法があります。
調査官と面談して家庭環境や子どもとの関係性を確認
自宅訪問による生活環境の調査
裁判所で実際に子どもと接する様子を観察する「試行的面会交流」
調停は1~2カ月おきに数回行われることが多く、家庭の状況に応じて柔軟に進められます。
4-3. 調停の成立
調停によって親権を含む離婚条件に合意できた場合、家庭裁判所が「成立調書」を作成します。これは確定判決と同様の効力を持つ正式な書類であり、たとえば具体的な金額を定めた養育費について支払いが滞った場合には、強制執行を申し立てることも可能です。
一方、話し合いがまとまらず調停が不成立となった場合は、離婚訴訟に移行することになります。訴訟では、裁判官が双方の主張や証拠をもとに判断を下します。
5. 離婚調停にかかる期間
離婚調停にかかる期間は、夫婦間の対立状況や話し合いの進み具合によって大きく変わります。早期に不成立となるケースでは、1〜3回程度の期日で終了し、期間としては3〜4カ月で終わることもあります。
一方で、離婚条件について冷静に検討を重ねられる状況であれば、3〜6回程度の期日を経て、半年から1年ほどで合意に至るのが一般的です。
令和6年の司法統計によると、家事調停全体の審理期間は平均7.2カ月であり、85.7%の事件が1年以内に終結しています。
6. 親権の調停を有利に進めるためのポイント
調停で親権を得るには、「自分が親権者としてふさわしい」という根拠を示す準備が欠かせません。ここでは、調停を有利に進めるために意識しておきたいポイントを紹介します。
6-1. 自分に有利な事情を裏付ける証拠や資料を準備する
日常的な育児の実績を示す証拠は、親権の判断において重要な要素になります。たとえば、母子手帳への記録、保育園や学校の連絡帳、自分で書き留めた育児日記などが役立ちます。
また、写真や通院記録、スケジュール帳など、日常的に子どもと関わっていた様子がわかる資料も準備しておくとよいでしょう。
6-2. 裁判所に自分が親権者としてふさわしいことをアピールする
調停には必ず出席し、家庭裁判所調査官による調査が行われる場合は誠実に対応しましょう。自分の育児への姿勢や子どもへの思いが伝わるよう、丁寧に話すことが大切です。
また、子どもを家庭裁判所に同伴することは、特別な事情がない限り避けたほうがよいでしょう。子どもを手続きに巻き込むことが、かえって心証を損なうおそれがあります。
6-3. 親権を争う相手方の面会交流を認める
調停では、子どもにとっての「もう一人の親」との関係を尊重できるかという点も見られます。相手との感情的な対立があっても、面会交流を認める姿勢は重要です。
どうしても面会交流が難しい場合は、その理由を調停委員に丁寧に説明し、理解を得ることが求められます。
6-4. 親権問題に強い弁護士に依頼する
親権に関する調停では、法律や手続きに精通した弁護士の助言が有効です。自分の立場を的確に主張したい、手続きで不利にならないよう備えたいという人は、早めに弁護士に相談するのがおすすめです。
7. 親権の調停を弁護士に依頼するとどうなる?
調停で親権を獲得したいと強く希望する場合や、相手との交渉が難航している場合は、弁護士に依頼することで調停を有利に進めやすくなります。専門家の支援によって、心理的な負担も軽減されるでしょう。
7-1. 弁護士に依頼するメリット
弁護士に依頼すると、調停に向けた方針の検討から書面の準備、期日への同行まで一貫してサポートを受けることができます。調査官調査が入る場合も、対応のポイントについて助言が得られます。
また、相手方や裁判所とのやりとりの窓口を弁護士が担うため、調停を落ち着いて進めやすくなります。調停の場でどのように主張すればよいか不安な人にとって、大きな支えになるはずです。
7-2. 弁護士に依頼した場合の費用相場
費用の内訳は事務所によって異なりますが、一般的には「着手金」「報酬金」「日当」などが設定されています。
たとえば、着手金はおおむね22万円〜33万円、親権を獲得した場合の報酬金は33万円前後、日当は裁判所へ出向くたびに1万1000円から3万3000円程度が相場とされています(いずれも税込)。
弁護士費用はあくまで目安であり、事務所によって金額や支払い方法に違いがあります。依頼前には、見積もりや説明をしっかり受けるようにしましょう。
8. もし親権を取れなかった場合にすべきこと
調停や調査官の調査の結果、自分が親権者とならない見通しとなった場合でも、子どもとの関係を維持する方法はあります。とくに大切なのは、面会交流の内容について具体的に取り決めておくことです。
たとえば、どのくらいの頻度で会うか、宿泊を伴うか、学校行事への参加や日々の連絡手段をどうするかなど、子どもにとって安心できる環境を保つための工夫が求められます。
また、たとえ親権を持たなくても、養育費はきちんと支払う必要があります。面会交流と養育費は別の問題であり、「会わせてもらえないから払わない」「払ってもらえないから会わせない」といった対応は、法律上認められていません。
調停の場では、面会交流と養育費の両方について冷静に話し合い、子どもの健やかな成長を第一に考えた取り決めを目指しましょう。
9. 2026年4月に導入|共同親権制度や法定養育費制度、先取特権が親権の調停に与える影響は?
2026年4月に、共同親権制度が導入される予定です。これにより、離婚後も父母の双方が親権者となる「共同親権」という選択肢が加わります。ただし、子どもが実際に同時に両親と暮らすことは難しいため、どちらか一方と同居する必要があります。この点は、現在の調停で親権者を決める際と大きく変わりません。
一方で、「離婚後も両親であることに変わりはない」という意識が社会に広がることが予想されます。養育費の不払い、面会交流のトラブルといった問題に対しても、意識の変化が生まれる可能性があります。
また、法定養育費制度や先取特権の導入によって、子どもの生活を守るための法的手当ても進められています。これらの制度により、子どもの利益をより重視した調停が行われていくと見られています。
10. 親権の調停に関するよくある質問
うつ病があるからといって、ただちに親権を持てないわけではありません。ただし、適切な通院や治療がなされていないなど、子どもの監護に支障があると判断される場合には、不利になる可能性があります。
収入が多いことは、安定した生活環境を提供できるという点で、有利に働く場合もあります。ただし、収入が少なくても養育費の支払いを受けている、実家の支援がある、手当などの制度を活用しているといった事情があれば、不利に扱われるとは限りません。
調停の回数に明確な上限はありません。平均的には3〜6回程度で解決するケースが多いとされています。ただし、話し合いが長引く場合には、さらに回数を重ねることもあります。
離婚が成立するまでは、法律上は父母が共同で親権を持っている状態です。親権者が一方に決まるのは、離婚が成立した後になります。
調停への出席は任意ですが、欠席が続くと調停は不成立となり、裁判に移行することになります。裁判でも無断で欠席を続けた場合は、相手方の主張がそのまま認められるおそれがあるため注意が必要です。
11. まとめ 親権の調停を有利に進めるには弁護士に相談するのがおすすめ
離婚調停における親権の問題は、感情的にも負担が大きく、冷静な判断が難しい場面もあります。調停では「どちらが親としてふさわしいか」について子どもの視点で丁寧に検討されるため、育児の実績や生活環境、子どもとの関係性などを整理しておくことが大切です。
不安や迷いがあるときは、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。専門家のサポートを受けながら準備を進めれば、納得のいく解決に近づけるでしょう。
(記事は2025年12月1日時点の情報に基づいています)