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1. 親権とは
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1-1. 離婚したら親権はどうなる?
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1-2. 離婚後も共同親権になるとどうなる?
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1-3. 親権は子どもが何歳まで続く?
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2. 親権に含まれる権利
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2-1. 身上監護権|子どもと生活して育てる権利
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2-2. 財産管理権|財産を管理する権利
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2-3. 親権と身上監護権は分けることも可能
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3. 離婚時の親権者の決め方
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3-1. 夫婦の話し合い
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3-2. 離婚調停
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3-3. 親権者指定調停・審判
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3-4. 離婚裁判
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4. 離婚後の親権者変更の方法
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4-1. 父母の話し合い
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4-2. 親権者変更調停
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4-3. 親権者変更審判
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5. 親権者が決まる基準
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5-1. 継続性の原則
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5-2. 子どもの意思の尊重
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5-3. きょうだい不分離の原則
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5-4. 面会交流の寛容性
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5-5. その他の要素
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6. 親権争いになると母親と父親どちらが有利?
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6-1. 離婚後の親権者の割合
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6-2. 親権獲得において母親が有利な理由
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6-3. 母親が親権を得られないケース
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6-4. 親権獲得において父親が不利な理由
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6-5. 父親が有利になるケース
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7. 親権を得るためのポイント
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7-1. 親権を得るためにすべきこと
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7-2. 親権を得るために避けるべきこと
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8. 不倫(不貞行為)をしたら親権を取れなくなる?
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9. 離婚時の親権を得たい場合に弁護士に依頼するメリット
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10. 離婚時の親権についてよくある質問
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11. まとめ 親権者は母親になりやすいが、事情によっては父親になることもある
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1. 親権とは
親権とは、子どもを養い育てる権限かつ責任です。親権という名称から、親の権利のように捉えられがちですが、その本質は、子どもに対する義務・責任です。
子どもは1つの大切な個人であり基本的人権を有する一方、まだ社会で独立して生きてはいけません。子どもがすこやかに成長するよう、子どもを愛し、養い、守る責任は第一に親にあります。その責任を果たすために、未成年の子を育てている親が持つ権限が親権です。
1-1. 離婚したら親権はどうなる?
結婚中は、父母の両方が共同で親権を有します。離婚後は、父母のどちらか一方を親権者とする「単独親権制度」が、日本では長く続いてきました。単独親権では、親権者が原則として子どもと暮らし、進学先などの大事な決定を担います。
親権者でなくなった親でも、子どもと交流することは可能です。ただし、親権を持たないため、最終的な決定権などはありません。これが2024年の民法改正により、離婚後も共同親権を選択できるようになります。この離婚後の共同親権制度は、2026年5月までに施行される予定です。
1-2. 離婚後も共同親権になるとどうなる?
離婚後も共同親権となると、子どもとの関係では婚姻中と変わらず、父母双方が権限を持つと同時に責任を負うことになります。共同親権にお互い異論がないなら、離婚時に親権を巡って熾烈(しれつ)な争いを繰り広げることも避けられます。
一方、共同親権下では、進学先などについてどうしても意見が合わないまま入学手続きの期限が迫っている、緊急手術が必要となる、といった場面も想定されます。そうした場面では父母の一方で話を進めることもできるよう、民法で手当がなされています(民法824条の2)。
1-3. 親権は子どもが何歳まで続く?
親権は子どもが成人するまでの概念です。2022年に、20歳から18歳に引き下げられました。
2. 親権に含まれる権利
次に、親権に含まれる権利について説明します。主に、身上監護権と財産管理権の2種類です。
2-1. 身上監護権|子どもと生活して育てる権利
身上監護権は、子どもと一緒に暮らして身の回りの世話をする権限です。民法では、以下の権利・義務が定められています。
監護教育権:子どもの世話をし教育する権利及び義務
居所指定権:子どもの住む場所を決める権限
職業許可権:子どもが職業を営むことを許可する権限
これらの権利を総称して身上監護権と呼びます。
2-2. 財産管理権|財産を管理する権利
財産管理権は、子ども名義の財産を適切に管理する権利及び義務です。
2-3. 親権と身上監護権は分けることも可能
離婚後の単独親権制度の中で、親権(財産管理権)と監護権を分けて持つケースがありました。例えば、父親が親権者、母親が監護権者となり、日常の子どもの世話は母親が行い、進学時などの重要な決定は父親が行うなどの形です。
今後も、共同親権や単独親権に加え、親権と監護権を分け持つ方法や、特定の親を監護権者とする方法が可能です。
3. 離婚時の親権者の決め方
3-1. 夫婦の話し合い
一般的なのは、夫婦間の話し合いで親権を決める方法です。離婚後も親子関係は続くため、父母として協力できる関係を維持するのが望ましいでしょう。ただし、深刻な虐待やDVがある場合は、安全のために話し合いより避難を優先すべきです。
3-2. 離婚調停
夫婦の話し合いで解決できない場合、家庭裁判所に離婚調停を申し立てることができます。調停は家庭裁判所で行う話し合いのことで、公平な第三者である調停委員が仲介してくれます。調停委員の助けを借りることで、当事者だけでは見つからなかった解決策が見つかる可能性もあります。
家庭裁判所には、子どもの心理や状況を専門に調査する調査官が在籍しています。親権や面会交流に関する意見が合わない場合、調査官はさまざまな調査を行い、最終的に裁判所へ意見を提出します。
例えば、父母との面接や家庭訪問、子どもの通学・通園先の確認などの調査結果が「調査報告書」にまとめられます。報告書の内容が最終判断に大きな影響を与えることが多いです。
3-3. 親権者指定調停・審判
離婚自体にはお互い異論がなく、親権その他の条件だけが争点だという場合、改正民法の施行後は、離婚を先行させてから親権者を決めることもできるようになりました。この方法を採りたい場合、親権者指定調停または審判を申し立ててから離婚届を提出することになります。
これまでは、親権者が決まるまでは離婚ができませんでしたが、今後は、離婚と親権を切り離して、離婚を先に進められるようになります。
3-4. 離婚裁判
離婚も親権も合意できず、調停でも折り合いがつかない場合は、離婚訴訟において家庭裁判所に親権者を決めてもらうことになります。ここでも調査官が登場し、意見を出すことがあります。裁判官や調査官の意見を踏まえつつ、離婚と親権その他の条件に合意ができれば、判決ではなく和解によって裁判を終わらせることもできます。

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4. 離婚後の親権者変更の方法
一度決めた親権者を変更する方法を紹介します。とはいえ、親権者の変更は子どもに重大な影響を及ぼすことから、親権者を初めて決めるときとは違った点が考慮されます。
4-1. 父母の話し合い
離婚後の状況の変化により、親権者を変更する必要が生じる場合もありますが、夫婦間の合意だけでは足りません。子どもの成育環境の安定を守るために、家庭裁判所で手続きを行う必要があります。親権者変更には「親権者変更調停」の申し立てが求められます。
4-2. 親権者変更調停
上記の通り、親権者を変更するためには「親権者変更調停」を申し立てる必要があります。また、離婚時に単独親権を選択していた親が、後に共同親権を希望する場合も申し立てが必要です。
調停がまとまらない場合、調査官が関与して調査を行い意見を提出することがあります。最終的に調停が不成立となると、親権者変更審判に進みます。
4-3. 親権者変更審判
親権者変更調停が不成立となった場合、家庭裁判所の裁判官が親権者変更の審判を下します。この審判では、親の事情や子どもの意向、子どもの成育環境などが総合的に考慮されます。最終的に、子どもにとって最も適切な環境を提供できる親を選定することが目的です。
5. 親権者が決まる基準
親権者を決めるに当たり、どのような要素が考慮されるのでしょうか。割り切るのが非常に難しい問題であるため一概には言えませんが、主に以下のような要素が考慮されると言われています。
5-1. 継続性の原則
「継続性の原則」とは、子どもと主に暮らしていた親が別居後も監護を続けることが望ましいという考えです。しかし、監護者が不適切な場合や、子どもが他の親と暮らしたい場合は、そちらが優先されます。
5-2. 子どもの意思の尊重
子どもが自分の意思を持てる段階に達している場合、その意思が尊重されます。15歳以上の子どもには必ず意見を聞くことが法律で定められています。15歳未満でも、概ね10歳前後から本人の意見が尊重される傾向があります。
5-3. きょうだい不分離の原則
きょうだいは、可能な限り一緒に育てることが望ましいという考え方です。離婚によって父母の一方と別れ、さらにきょうだいとも離れることは、子どもにとって二重の喪失感をもたらすことがあります。
しかし、子どもそれぞれの性格や年齢、きょうだい間の関係性、父母の事情を考慮すると、きょうだいを分ける方が適切な場合もあります。
5-4. 面会交流の寛容性
離婚後も子どもが両親から愛されていると感じられる環境を保つことが重要です。よって、子どもと他方の親が交流することに寛容であるかどうかも、親権者としての適格性を示す大切な要素とされています。
5-5. その他の要素
その他、以下の要素も考慮されます。
【監護補助者の存在】
本人以外に、祖父母やおじ・おば、地域の福祉サービスなどのサポートを受けられるかが重要です。親族が近くにいない場合でも、地域の支援体制が整っていることが説明できれば評価されます。
【監護能力等】
親自身が健康か、住環境・自宅周辺に問題がないか、仕事と育児を両立できるかなども重要です。経済力も考慮されますが、養育費や社会保障による支援があるため、必ずしも決定的要素にはなりません。
6. 親権争いになると母親と父親どちらが有利?
6-1. 離婚後の親権者の割合
令和5年司法統計年報によると、家庭裁判所で離婚が成立した事案は合計16,418件です。そのうち、母親が親権者となったのは15,128件(約94%)、父親が親権者となったのは1,290件(約8%)です。これにより、親権を得るのは母親が多いことがわかります。なお、1件につき複数の未成年の子どもがいる場合、きょうだい間で異なる親権者が定められることがあるため、父母それぞれの割合の合計は100%になっていません。
6-2. 親権獲得において母親が有利な理由
母親が親権を得る割合が高い理由は、前述の考慮要素のうち、継続性の原則によるところが大きいでしょう。日本では、共働きのご夫婦が増えているとはいえ、今なお子育ては母親中心になりがちです。子どもも、特に幼いうちは、母親に懐いていることのほうが多いといえます。
6-3. 母親が親権を得られないケース
母親が主たる監護者であっても、その監護が子どもにとって不適切である場合は、父親が親権者として指定されます。例えば、弊所が見聞きしてきた事例の中には、以下のようなものがあります。
子どもや配偶者に暴力を振るう、頻繁に怒鳴る
自殺未遂をする
子どもを置いて深夜に家を留守にする
不貞相手と子どもを会わせたり、不貞の現場を見せたりする
不適切な同居人がいる
通園・通学先で忘れ物や服装の乱れが観察される
子どもが病気になっても適切な医療を受けさせない
母親が子どもを置いて別居して時間が経過した
子どもと母親がどうしても気が合わない
母親が親権者になることが多いのは、その適格性が高いと評価されるためです。しかし、客観的に見て父親の方が適格性が高ければ、親権者は父親になることもあります。
6-4. 親権獲得において父親が不利な理由
母親が有利とされる理由の裏返しですが、日本では一般的に父親の方が外で働く時間が長いため、父親が主たる監護者になるケースはほとんどありません。また、父親が外で働かない家庭でも、母親が仕事と家事を多く担ってきたと認定されることがあります。
6-5. 父親が有利になるケース
父親が健全な社会生活を送り、主たる監護者として適切な場合には、親権者に認められることが多いです。母親に虐待やDVなど不利な事情がある場合も同様です。
また、子どもの年齢が上がると、進学や転校、就職などで、父親と同居することを望むことがあります。自らの意思で母親の元を離れ、父親と暮らすことにした結果、親権者変更が認められることもあります。
7. 親権を得るためのポイント
親権を得るためのポイントを紹介します。くれぐれも強引な手段を取るのはやめてください。
7-1. 親権を得るためにすべきこと
監護を主に担っていたことを証明するための証拠を集めましょう。母子手帳、通園・通学先との連絡帳、通知表などは家庭裁判所に提出する基本的な資料です。配偶者の育児に問題がある場合は、その証拠も確保します。
別居時には、子どもを置いて別居しないように注意が必要です。子どもと離れないことが、監護意欲を示す重要なポイントです。
別居後の生活は、適切な住居や仕事、子どもの通園・通学先を確保することが重要です。行政サービスも有効活用してください。
7-2. 親権を得るために避けるべきこと
強引な連れ去りはやめましょう。親権を得るどころか、面会交流さえ制限されることになります。また、言うまでもありませんが、育児放棄や虐待、配偶者への暴力は避けるべきです。
8. 不倫(不貞行為)をしたら親権を取れなくなる?
不貞が原因で親権を取れなくなることはありません。不貞をしていても、子どもに悪影響を与えていなければ、親権が認められる可能性もあります。一方、以下の行為は親権者として不適格と判断される可能性が高くなるので注意しましょう。
不貞のために頻繁に家を空けて子どもを放置する
不貞相手と子どもを会わせる
子どもの見えるところで不貞行為をする
他には、不貞相手との同居や再婚を望んでいる場合や、不貞相手との間に婚外子がいる場合、これらの要素が子どもに与える影響も考慮されます。
9. 離婚時の親権を得たい場合に弁護士に依頼するメリット
親権に詳しい弁護士に依頼すれば、別居前に集めるべき証拠や、別居の方法、取るべき手続きの種類や順番、面会交流や養育費に関する適切な対応についてアドバイスが得られます。
子どもに関する紛争は、離婚における他の問題よりも特に繊細です。手続きを適切に踏まずに数カ月が経過すると、結論が大きく変わる可能性もあります。自己判断で進めようとすると後悔する可能性があるので、親権問題は弁護士に相談しながら進めるのがおすすめです。

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10. 離婚時の親権についてよくある質問
母親優先というより、母親が主たる監護者であることが多いため、親権者となることが多いといえます。
問題ありません。経済力は、養育費や各種手当によりカバーされるためです。とはいえ、健康で働けるなら、無収入のままでいるつもりではなく、今後働く計画があることを説明できると、よりよいでしょう。
父親が親権を獲得できる確率は、統計上約1割です。厚生労働省の人口動態調査(2022年)によると、夫が全ての子どもの親権を得られる確率は、子どもが1人の場合は12.0%、2人の場合は10.6%、3人以上の場合は9.1%となっています。
また、子どもを夫と妻で分け合って親権を行使する割合は、子どもが2人のときは4.4%、3人以上のときは9.4%です。
もらえます。ただ現実には、父親の収入が母親を大幅に上回ることが多いためか、養育費をもらっていないことが多いようです。
親権者となることを希望しない場合、配偶者が親権者となる方向で話し合うことが考えられます。配偶者も親権を望まない場合は、裁判所が親権者を決めることになるでしょう。あるいは、養子縁組を検討する余地もあるかもしれません。
11. まとめ 親権者は母親になりやすいが、事情によっては父親になることもある
離婚時の親権は、子どもにとって非常に重要な問題です。一般的に母親が親権者になりやすいですが、父親になることもあります。親権には「身上監護権」と「財産管理権」の2種類があります。
2026年5月までの民法改正により、離婚後に共同親権を選択できるようになり、子どもにより良い影響を与えることが期待されています。現在の法律で親権を得るためには、監護実績を示す証拠を集めることが重要です。
(記事は2025年7月1日時点の情報に基づいています)