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1. 離婚調停中にやってはいけないことは?
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1-1. 配偶者以外の者と性的関係をもつ
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1-2. 離婚調停を無断欠席する
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1-3. 不適切な発言や態度
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1-4. 相手が拒否しているのに、直接連絡したり会いに行ったりする
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1-5. 相手に嫌がらせをする
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1-6. 無断で別居する
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1-7. 子どもを連れ去る
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1-8. 勝手に財産を処分する
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2. 離婚調停を有利に進めるためのポイント
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2-1. 主張の根拠となる資料を提出する
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2-2. 離婚条件の優先順位をつける
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2-3. 調停委員の質問に対して誠実に回答する
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3. 離婚調停の対応を弁護士に依頼するメリット
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4. 離婚調停中にやってはいけないことに関してよくある質問
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5. まとめ 離婚調停中の行動について判断がつかない場合は弁護士に相談を
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1. 離婚調停中にやってはいけないことは?
離婚調停とは、離婚するかどうかや離婚条件について、家庭裁判所で話し合いを行う手続きのことを言います。1名の裁判官と2名の調停委員から構成される調停委員会に間に入ってもらい、話し合います。
調停手続きによって夫婦が離婚の合意に至れば、取り決めた条件で離婚が成立します。一方、離婚の合意ができなかった場合には、調停不成立となり、離婚訴訟を提起して裁判での離婚をめざすことになります。
離婚調停中にやってはいけない行動は、主に以下の8つです。
配偶者以外の者と性的関係をもつ
離婚調停を無断欠席する
不適切な発言や態度
相手が拒否しているのに、直接連絡したり会いに行ったりする
相手に嫌がらせをする
無断で別居する
子どもを連れ去る
勝手に財産を処分する
1-1. 配偶者以外の者と性的関係をもつ
既婚者が、自由な意思に基づいて、配偶者以外と性的関係を結ぶことを「不貞行為」と言います。離婚調停中であっても、夫婦関係は解消されていないため、配偶者以外と性的関係をもつと不貞行為に該当 します。
不貞行為は、民法の定める離婚原因に該当するため(民法第770条第1項第1号)、離婚したくない場合であっても、不貞行為に及んだことを理由に離婚が認められてしまう可能性があります。
一方、離婚請求をしている側が調停中に不貞行為を行った場合は、逆に離婚が認められなくなる可能性があります。不貞行為を行った者は、夫婦関係の破綻をつくり出した「有責配偶者」と判断されます。有責配偶者からの離婚請求は、原則として認められないと考えられているためです。
このように、配偶者以外と性的関係をもつことによって、離婚請求をしている側、されている側のいずれであっても不利益が発生するリスクがあります。また、不貞行為は、原則として民法上の不法行為に該当するため、配偶者から慰謝料を請求される可能性も あります(民法第709条、第710条)。
なお、夫婦関係が破綻したあとに不貞行為に及んだ場合には、有責配偶者と判断されず、不法行為も成立しないと考えられています。しかし、夫婦関係が破綻したと言えるかどうかは必ずしも明確に判断できるものではありません。
離婚が成立していない間に、配偶者以外と性的関係をもつことは避けたほうがよいでしょう。
1-2. 離婚調停を無断欠席する
離婚調停を無断で欠席すると、裁判官や調停委員に身勝手な人間という印象 を与えてしまいます。それが何度も続くとなおさらです。
仕事の都合や体調不良など正当な理由がある場合には、無断で欠席するのではなく、事前に裁判所に連絡するようにしましょう。
また、家庭裁判所から呼び出しを受けているのに、正当な理由なく欠席すると、法律上は5万円以下の過料に処されると規定されています(家事事件手続法第258条第1項、第51条第3項)。
離婚調停への欠席が続くと、調停不成立とされ、紛争が長期化してしまうデメリットも想定されます。
1-3. 不適切な発言や態度
次のような発言や態度は、調停委員に悪い印象を与えたり、主張に説得力がなくなったりする 可能性があるため、避けたほうがよいでしょう。
相手に対する誹謗中傷
抽象的であいまいな発言
根拠のない発言
矛盾した発言
虚偽の発言
感情的な発言
調停委員の質問に回答しない
調停委員に対する無礼な態度
離婚調停においては、調停委員からの質問に的確に回答する必要があります。嘘をつくことなく、冷静にわかりやすい言葉で話すことを心がけましょう。
1-4. 相手が拒否しているのに、直接連絡したり会いに行ったりする
相手の同意なく、直接連絡したり、会いに行ったりすることも避けたほうがよいでしょう。
離婚調停は、円滑に話し合いを進めるために、調停が行われる日(調停期日)を前もって定め、当事者双方が交互に調停委員と話をするかたちで行われます。当事者同士で直接話し合いをすることは原則としてありません。
それにもかかわらず、調停期日外で相手に直接連絡をしてしまうと、話し合いが円滑に進まなくなるおそれがあるうえ、裁判官や調停委員にルール違反をする人間だという印象 を与えてしまいます。相手に伝えたいことがある場合には、調停期日において調停委員を介して伝えたり、弁護士を代理人として立てている場合には弁護士を通じて伝えたりするようにしましょう。
なお、何らかの理由で定期的に連絡をする必要がある場合などには、調停期日において、あらかじめ連絡方法やルールを取り決めておく方法が考えられます。
1-5. 相手に嫌がらせをする
相手への嫌がらせは、DV(ドメスティック・バイオレンス、家庭内暴力)やモラハラ(モラル・ハラスメント)と捉えられてトラブルの原因になる可能性があるうえ、調停での円滑な話し合いを困難にします。嫌がらせの事実を相手が主張することで、調停で不利な立場になる可能性もあるでしょう。最悪の場合、犯罪に該当し、刑事事件に発展するリスクもあります。
相手への嫌がらせは自分の立場を不利にさせるだけ であり、絶対にしてはいけません。
1-6. 無断で別居する
離婚調停は、同居中の夫婦であっても申し立てることが可能であるため、同居したまま手続きが進められるケースもあります。
同居しながら離婚調停を申し立てたものの、手続きの途中で別居を決意した場合、無断で別居するのではなく、別居したい旨を相手に伝えておいたほうがよい でしょう。
夫婦には同居義務があり(民法第752条)、これに違反すると、離婚原因である「悪意の遺棄」(民法第770条第1項第2号)に該当することがあります。悪意の遺棄とは、正当な理由がないにもかかわらず、同居義務、協力義務、扶助義務という夫婦の義務を果たさないことを指します。
したがって、無断で別居すると、相手から悪意の遺棄であると主張される可能性があります。ただし、DVを受けているなど、別居する緊急性が高い場合には、話し合いをせずに別居することもやむを得ません 。
なお、別居の際に子どもを連れ出すことが許されるかという問題があります。この点については、別居にあたり、子どもを主として監護してきた親が、子どもの監護を続けるために子どもを連れ出したとしても、違法な連れ去りには該当しないと考えられています。
ただし、子どもを連れ出す際に暴力などを用いると、違法な連れ去りと判断されるリスクがあるため注意が必要です。
1-7. 子どもを連れ去る
離婚調停中に、配偶者のもとで生活している子どもを連れ去ると、親権者として不適格であると判断され、親権の獲得にあたって不利になる可能性があります。
また、子どもと面会して交流を図る「面会交流」が認められなくなる可能性もあります。悪質な連れ去りの場合には、親権者であっても、未成年者略取・誘拐罪(刑法第224条)という犯罪が成立するリスク があります。
判例では、離婚訴訟中に妻のもとで平穏に生活していた子どもを夫が連れ去った事案があります。この事案において、裁判所は、保育園から帰宅する途中の子どもを夫が自動車に乗せて連れ去った行為について、未成年者略取罪が成立すると判断しました。
別居中に子どもを監護したい場合には、監護者指定の調停や審判の申立てを検討しましょう。
1-8. 勝手に財産を処分する
離婚に際して、夫婦が協力して築き上げた財産を清算する手続きを「財産分与」と言います。
原則として、結婚してから別居するまでの間に夫婦が協力して取得した財産が財産分与の対象となります。夫婦どちらかの単独名義になっている財産であっても、財産分与の対象となり得る点には注意が必要です。
財産分与の対象となる財産は、実質的には夫婦の共有財産であるため、これを勝手に処分するべきではありません。
なお、配偶者が結婚前から保有していた財産などは財産分与の対象とはなりませんが、配偶者の所有物であるため、当然ながら勝手に処分してはいけません。
2. 離婚調停を有利に進めるためのポイント
自分の主張を認めてもらうためには、次の3点に注意して離婚調停に臨みましょう。
主張の根拠となる資料を提出する
離婚条件の優先順位をつける
調停委員の質問に対して誠実に回答する
2-1. 主張の根拠となる資料を提出する
調停は話し合いの手続きであるため、証拠となる資料は必須ではありません。話し合いで合意ができれば、資料がなくても離婚を成立させたり、離婚条件を定めたりすることが可能です。
しかし、当事者がそれぞれ異なる事実を主張し、合意ができない場合、自分の主張を裏づける資料が必要 です。証拠に基づく主張をする側に、調停委員が味方についてくれる可能性もあります。
たとえば、不貞慰謝料を請求するのであれば、配偶者が不貞相手とホテルに出入りする写真などの証拠があるとよいでしょう。また、財産分与額の算定にあたっては、預金通帳のコピーなど、夫婦の財産に関する資料が必要です。養育費の算定にあたっては、源泉徴収票や給与明細など、夫婦の収入に関する資料が必要です。十分な資料がなければ、適切な離婚条件を取り決めることが難しくなるため、客観的な資料をできる限り収集し、調停手続きにおいて提出することが望ましいと言えます。
離婚調停が不成立となり、裁判手続きに移行した場合にも証拠の有無が重要になるため、早い段階から証拠を収集しておくことが大切です。
2-2. 離婚条件の優先順位をつける
調停は話し合いによって落としどころを見つける手続きであり、すべてが自分の希望どおりになるとは限りません。ときには譲歩することも必要 です。
自分の希望を押し通そうとして、一切譲歩しないとなると、合意することができず紛争が長期化する可能性があります。譲れる離婚条件と譲れない離婚条件をあらかじめ整理し、優先順位をつけておくとよいでしょう。
たとえば、親権については譲歩があり得るが、親権を譲った場合には子どもとの面会交流を認めてもらうといった条件が考えられます。
2-3. 調停委員の質問に対して誠実に回答する
調停委員の質問に対して誠実に回答することで、事実関係を正確に理解してもらえます。また、調停委員を味方につけやすくなるでしょう。
反対に、嘘をつくなど不誠実な対応をしてしまうと、調停委員に不信感を与え、主張を信用してもらえなくなる可能性があります。
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3. 離婚調停の対応を弁護士に依頼するメリット
離婚調停の対応を弁護士に依頼することで、適切な方針のもと手続きを進めることができます。その結果、離婚成立までの見通しが立てやすくなり、離婚調停を有利に進められる 可能性が高まります。
また、離婚調停に必要な書類の収集や作成などの煩雑な手続きを代行してもらうことも可能です。
さらに、弁護士が代理人として調停期日に出席することで、調停委員とのやりとりがスムーズに進むと期待 できます。
自分一人で離婚調停の手続きを進めることは、物理的にも精神的にも負担になります。しかし、弁護士のサポートを受けることでそのような負担も軽減できるでしょう。
離婚調停から離婚訴訟に移行した場合には、同じ弁護士に継続して依頼することで、一貫した対応をしてもらえます。
4. 離婚調停中にやってはいけないことに関してよくある質問
5. まとめ 離婚調停中の行動について判断がつかない場合は弁護士に相談を
離婚調停中の行動によって、自分が不利な立場になってしまうケースがあります。
専門的な知識がなければ、やってはいけないことかどうかの判断が難しい場合もあるでしょう。弁護士に相談すれば、離婚調停中にやってはいけないことについてアドバイスを受けられます。また、やったほうがよいこと、やるべきことのアドバイスも受けられるため、適切に行動できるようになります。
調停期日において調停委員とうまくやりとりができるか不安な場合にも、弁護士を代理人とすることで、代わりに調停委員と話をしてもらえます。
離婚調停中の行動について悩んでいる場合には、弁護士に相談することをお勧めします。
(記事は2024年12月1日時点の情報に基づいています)