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1. 調停委員とは|中立的な立会人
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1-1. 調停委員の役割や職務
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1-2. 調停委員になる人・選ばれ方
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2. 離婚調停で調停委員に聞かれる内容
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2-1. 申し立てた側(離婚の意思がある側)
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2-2. 申し立てられた側
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3. 調停委員に当たり外れはある?
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3-1. 調停委員と合わないケースはある
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3-2. 調停委員は原則変更できない
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3-3. 調停委員の言動に問題がある場合は相談する
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4. 調停委員を味方につけるためのポイント
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4-1. 調停委員に良い心証を与えるように心がける
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4-2. 自分の主張をわかりやすく、根拠をもって伝える
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4-3. 相手側の主張に反論しすぎない
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4-4. 調停委員の価値観を把握して話す
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5. 離婚調停を弁護士に依頼するメリット
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5-1. 離婚調停の見通しが立てやすく争点を整理しやすい
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5-2. 書類の作成から調停委員へのフォローなどすべてを任せられる
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5-3. 調停以外の時間で意見交換を進められる
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6. 調停委員についてよくある質問
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7. まとめ 離婚調停では調停委員を味方につけることが重要
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1. 調停委員とは|中立的な立会人
調停委員とは、家庭裁判所で行われる調停において、当事者双方の意見を聞き紛争解決に向けた協議を進める裁判所の非常勤職員のことです。調停委員の役割や選ばれ方について解説します。
1-1. 調停委員の役割や職務
調停委員は、調停を申し立てた側(申立人)と申し立てられた側(相手方)の意見を聞いて、解決をサポートする役割を担っています。非常勤の公務員という位置付けになり、中立かつ公平な立場で意見を聞きます。調停内容を外部に漏らしたり、個人的な利益を得たりすることはありません。
1-2. 調停委員になる人・選ばれ方
調停委員は、調停を利用する一般市民の感覚を反映させるために、法的な知識のある弁護士や民事・家事に専門的な知識を持つ人、そして、社会生活の知識や経験が豊富である40歳から70歳未満の人の中から選ばれます(民事調停委員及び家事調停委員規則第1条)。
「公益財団法人日本調停協会連合会の統計」によると、家事調停委員の職業の内訳は以下の通りです(令和6年4月1日時点)。
公認会計士・税理士・不動産鑑定士・土地家屋調査士など:21.9%
弁護士 :14.4%
会社・団体の役員・理事 :8.3%
会社員・団体の職員 :6.3%
調停委員は、自薦・他薦によって書面や面接審査を経て選出されます。法律の専門家であるとは限りませんが、裁判所での業務に必要な最低限の法的知識を有しています。
任期は2年とされていますが、定年までに再任も可能です(民事調停委員及び家事調停委員規則第3条)。手当や旅費などの支給はありますが、金額は多額ではありません(家事事件手続法249条)。
東京などの都市部の裁判所では、弁護士その他の士業の調停委員は遺産分割など相続関係の調停を扱うことが多い傾向にあります。離婚調停では、男女各1名の調停委員が担当することが一般的です。
2. 離婚調停で調停委員に聞かれる内容
離婚調停では、夫婦が別々の控室に待機し、交代で調停室に入って調停委員と話をします。下記は離婚調停のイメージ図なので、参考にして下さい。
離婚調停では、調停委員からさまざまな質問がなされます。申し立てた側と申し立てられた側で、具体的にどのような質問がされるのか解説します。
2-1. 申し立てた側(離婚の意思がある側)
離婚調停を申し立てた側は、以下の点を質問されることがあります。
離婚を希望する理由
調停を申し立てた理由(調停に先立つ協議の経過)
調停で合意できない場合の対応(裁判を視野に入れているか)
別居中であれば、別居の開始時期とその経緯、婚姻費用の支払い状況
未成年の子どもがいる場合の親権、養育費に関する希望
別居している子どもとの面会交流の状況
財産分与、慰謝料、年金分割に関する希望
住居や仕事の状況、健康状態
申立人は行動を起こした側であるため、「なぜ申し立てたか」「今後どうするつもりか」といったことが聞かれやすいです。譲歩できる点とできない点を整理し、要点を簡潔に伝えられるよう準備しておきましょう。例えば、「親権は譲れないが、面会交流は柔軟に対応する」といった姿勢が考えられます。
2-2. 申し立てられた側
離婚調停を申し立てられた側も、以下の点を質問されることがあります。
離婚に関する意向とその理由
離婚に応じる意向があり、子どもがいる場合の、親権や養育費に関する希望
離婚に応じる意向がある場合の財産分与、慰謝料、年金分割に関する希望
別居している場合、別居の開始時期や経緯、婚姻費用の支払い状況
別居している子どもとの面会交流の状況
住居や仕事の状況、健康状態
申し立てられた側は、申立人の要望に対する考えを質問されると同時に真意も探られます。例えば、「離婚したくない」との主張に対して、配偶者との復縁を望んでいるのか、親権を失いたくないのか、金銭面の負担を避けたいのか、など具体的な考えが探られます。
離婚調停では相手の意向もあるため、希望がすべて叶うとは限りません。どちらの立場であっても、自分が何を重視するのか、優先順位を明確にしておきましょう。裁判に発展した場合、法律や判例に照らしてどの程度認められるかについて、離婚に詳しい弁護士に相談しておくと、現実的な優先順位をつけやすくなるでしょう。
3. 調停委員に当たり外れはある?
調停委員は中立な立場ですが、「当たり外れがある」という話もあり、不安を感じる人も多いでしょう。調停委員と合わないケースがあるのか、調停委員の変更は可能なのかについて解説します。
3-1. 調停委員と合わないケースはある
調停委員との相性は、人間同士である以上、個性や価値観、世代のギャップなどから合わないこともあります。また、調停委員は必ずしも法律の専門家ではないため、法的な観点について誤解をしていることも時に見受けられます。
3-2. 調停委員は原則変更できない
調停委員と相性が合わないと感じても、調停委員の変更を求める制度はありません。どうしても調停の継続が難しい場合、申立人側であれば一度調停を取り下げ、再度申し立てを行うことも考えられます。
ただし、調停は司法手続の一種であり、担当裁判官もいます。議題は、調停委員の個人的な見解ではなく、法的な基準に沿って進められます。相性の合わない調停委員がいても、冷静に対応することで適切な結果を得られることが多いでしょう。
3-3. 調停委員の言動に問題がある場合は相談する
万が一にも、調停委員の言動に男尊女卑や暴力を容認するなどの相性以上の問題がある場合は、担当書記官などに相談するのも一つの方法です。

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4. 調停委員を味方につけるためのポイント
調停委員は双方の言い分を公平に聞く姿勢を持っていますが、主張に根拠があったり、共感できたりする点があれば、調停委員も納得しやすくなります。以下のポイントを意識し、調停委員を味方につけることで、相手を説得してもらえる可能性があります。
調停委員に良い心証を与えるように心がける
自分の主張をわかりやすく、根拠をもって伝える
相手側の主張に反論しすぎない
調停委員の価値観を把握して話す
4-1. 調停委員に良い心証を与えるように心がける
調停委員を味方につけるには、よい心証を与えるように心がけることが大切です。時折、「調停委員が相手の肩ばかり持つ」と感じて怒り出す人がいます。その気持ちは理解できますが、調停委員に不満をぶつけても得るものはありません。冷静な態度を保ち、大人の対応を心がけましょう。
4-2. 自分の主張をわかりやすく、根拠をもって伝える
調停委員の質問に対して、簡潔に根拠を示して回答しましょう。調停は、申立人と相手方が20分から30分ずつ交互に調停室に入室し、1回の調停は約2時間で行われるのが一般的です。そのため、一人で長時間話し続けることはよい印象を与えません。自分の主張を簡潔に伝えるために、以下の点を工夫しましょう。
口頭で伝える場合は、要点を絞って話す
可能なら、主張を簡潔な書面にまとめて提出しておく
書面の内容は、コンパクトでわかりやすい内容にする
主張に法的根拠を示す、証拠を提出する
調停委員から、次回の課題を示した書面の提出を指示されることもあります。調停委員は多忙なため、内容が簡潔な書面を提出することで、主張をスムーズに理解してもらえます。また、財産分与や養育費など金銭的な争点がある場合は、自分の財産や収入の資料を提出することで、根拠を示して主張ができます。
4-3. 相手側の主張に反論しすぎない
調停では、調停委員を通して相手の主張を聞かされたり、相手の書面を目にしたりすることがあります。意見の食い違いがあると、相手の主張に対して事細かに反論したくなることもあるでしょう。しかし、法的な争点以外の細かい部分にまで反論を重ねると、解決を遠ざけるだけです。
調停委員は多くの調停を経験しているため、立場や視点が違えば考え方も異なることを理解しています。過度な反論や攻撃は、逆に自分の印象を悪くする原因となることもあります。話し合いの重要な部分に絞って反論するようにしましょう。
4-4. 調停委員の価値観を把握して話す
調停委員と価値観が異なる場合、意見が合わないと感じることもあります。しかし、調停委員は敵ではありませんし、調停委員と喧嘩をしても調停は有利に進みません。調停委員の価値観をよく理解し、説得できる材料を考えて伝えることが重要です。
5. 離婚調停を弁護士に依頼するメリット
離婚調停では、調停委員と相性が合わない場合や、自分の主張を上手く伝えられずに悔しい思いをすることがあります。そのような場合は、弁護士に依頼するのも一つの選択肢です。弁護士に依頼することで、以下のようなメリットがあります。
5-1. 離婚調停の見通しが立てやすく争点を整理しやすい
弁護士に依頼することにより、離婚調停の見通しが立てやすくなるのがメリットの一つです。自分の主張が法的にどの程度認められるのか、裁判になった場合にどのような結論となるのか見通しが立つため、譲歩すべき点や譲れない点など、方針を決めて調停に臨めます。
時には、調停委員が法的な説明や見通しを誤ることもありますが、離婚に詳しい弁護士がいれば、そうした場面で適切に軌道修正してくれるでしょう。
5-2. 書類の作成から調停委員へのフォローなどすべてを任せられる
調停は話し合いの場ではありますが、夫婦間のパワーバランスが影響し、どうしても強い立場の意見が通りやすくなるケースが散見されます。弁護士が同席することで、その場でフォローをしてもらうことができます。
また、調停では口頭のやり取りだけでなく、書面の提出が必要または有効になる場合もあります。どの主張や証拠が自分に有利か、不利か、適切な提出タイミングなど、判断が難しい場面でも、弁護士がいれば書面の作成から提出までを任せられるので安心です。
5-3. 調停以外の時間で意見交換を進められる
お互いに弁護士がついている場合、調停の日程以外の期間にも、意見交換や調整が進められることがあります。調停は通常、1カ月から2カ月に1回程度のペースで行われますが、その間にも話が進展することで、調停が早く成立する可能性もあります。
6. 調停委員についてよくある質問
調停と裁判は異なる手続きであり、調停委員の心証や記録が裁判に引き継がれることはありません。ただし、裁判官が調停の記録を確認する場合もあります。また、小規模の裁判所などでは、同じ裁判官が調停と訴訟を担当する可能性もゼロではありません。
調停委員が非開示情報を相手に漏らすことは極めて稀ですが、もしそのようなことが起きても証明は難しいでしょう。たとえば、相手から「調停委員からお前の別居先の住所を聞いたぞ」と言われても、本当に調停委員から聞いたのか、探偵を使って調べたのかなどの判断は困難です。
そのため、相手に絶対に知られたくない情報がある場合は、裁判所への開示の必要性を慎重に検討することが大切です。調停申し立て時には、裁判所にも確認をしながら手続きを進め、「自分の身は自分で守る」という意識で臨むことが望ましいでしょう。
7. まとめ 離婚調停では調停委員を味方につけることが重要
調停委員は当事者双方の話を聞き、紛争解決を手助けする中立・公平な立場です。しかし、調停委員も人間であるため、価値観の違いや相性の問題が生じることもあります。そのような場合でも、調停委員の価値観をよく理解して、説得材料を見つけて話し合うことが重要です。離婚調停が進む中で、調停委員の対応に納得できない場合や、自分で対応が難しいと感じた場合には、弁護士に相談ししましょう。
(記事は2025年6月1日時点の情報に基づいています)